アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:ドーナツとフラグ色々とシュベスターの誓い(インスト)と。
だって広沢さん誓いからのアサルト入りだし…などと供述しており。
引き続き東京出張編セカンドイグニッション、二校分は後回しにしてもこの人数なのでわちゃわちゃと…なんならガーデン突っ込むんで?


広がる緣ーえにしーの先に(後編)

「んー?」

 

 藍ちゃんの方も首を傾げている通り少し気になることはあったけども、ふよふよと空中に佇むウィッパー種はギガント級の対処をテンプルレギオンがするのなら、こっちのやることはさして変わらない。

 

「一葉ちゃん、さっきの組み合わせで左右からやってったんでいい?」

 

「そうですね、今度もお願いします。ほら藍も、ヒュージまた来たよ?」

 

 ともかく、藍ちゃんの事は身内に任せるとして、雑魚はこっちで受け持ちますかと駆け出しながらソードガンを連結、今度は素直にナギナタにして突っ込むのみ!

 

「ノインヴェルト戦術、開始! クララ!」

 

 そうしていればマギの感じと日葵の号令とでノインヴェルトが始まったのも伝わるから、レーザーブレードを展開したナギナタを盾にするよう振り回して、進路上のヒュージを切り刻む。

 

「せいっ!」

 

 良い感じに切り込めたところで、シールドのビームソードも合わせた回転斬りでヒュージをまとめて薙ぎ払っていると、多少の生き残りは今度も一緒な恋花と葵ちゃんが片付けてくれていた。

 

「相変わらず派手っすねー」

 

「うむ、流石は百合ヶ丘『はいから』というやつじゃの」

 

「『ハイカラですね』って? ……あれ、あなたルド女の。ごめん、邪魔だった?」

 

 それはそうと、この前佳世と話してたミリアムちゃんみたいな喋り方をしたサイドテールの子が、いつの間にか腕組みして頷きながら恋花と並んでこっちを眺めてるのはなんなのか。謝りついでに眺めてみれば、一応ジャケットは着てるから今日もテンプルレギオンではあるとして。

 

「いやいや、うちが隙を見て覗きに来ただけじゃ。お気になさらず」

 

「ちょっとこころー、射線通ったのに渡す相手がいないんだけど?」

 

 まあ、当然ノインヴェルト中にそんなことをしてれば色々ズレる訳で、確か副隊長だっていう渚の何処か聞き覚えのある声が、彼女を呼んでいる。

 

「おっと。ならばお客人もうちの──ルド女1のアイドルになる佐野(さの)・マチルダ・こころが実力をご覧あれ! 駆けよ《縮地》!」

 

 アイドルねぇ、グラン・エプレの姫歌ちゃんといい上京理由としちゃベタというか、口調同様年代物というか。

 とはいえ駆け出したこころが腰だめに構えたグングニル・カービンを居合いのように振り抜けば、たちまち複数のヒュージをまとめてずんばらりんと斬り捨てているのだから、その速さは疑い様もなく本物で、締めに見栄を切るように納刀するような素振りを見せる余裕があるのも納得だ。

 

「オーケイ、持っていきなさい!」

 

「……ちょうちょ?」

 

「どしたの先輩? もうそんな歳でもないでしょ」

 

 いやだって、渚の専用にカスタムされたグングニル・カービンからこころへマギスフィアが放たれた瞬間、マギの影響なのか青みがかった蝶のエフェクト的なのが見えたし……とか説明するのもなんか言い訳じみてるし、葵ちゃんに怪訝そうな顔をされるがままになるけど。

 

「コホン。一葉ちゃん、そっちは?」

 

 露骨に話を逸らすというか、相手すら変えてなんとも言えない空気をなかったことにすれば、返事は一拍置いて。

 

『せいっ! ……あ、雪華様。こちらはほぼ片付きました、テンプルレギオンの方も大体半分ほど──危ない!』

 

「──っと、そういうパターンかよ!」

 

 一葉ちゃんからの警告が飛んだ次の瞬間、ギガント級が蛇腹状の触腕を振り回して辺りのビルを粉砕しだしたのだから、地上に向けて破片が雨あられと降ってくることに。

 

「おおっ!?」

 

「こころ、こっちに!」

 

「お、おう。頼むぞ幸恵殿!」

 

 恐らく一番の標的だろうマギスフィアは、『円環の御手』でシャルルマーニュを起動させながら掲げる幸恵が受け持ってくれたようで、重石のなくなったこころの方は自慢の速度で範囲外まで抜けている。

 なら当然こちらもそんなものをまともに食らう義理もないのだから、ビルの破片は射出したビットのバリアで防ぎながらシールド三枚のフィールドジェネレーターを最大稼働させ、無数の足場を空中に形成し飛び乗る。

 

「なるほど、あれは使えそうね。行くわよ二人とも」

 

「へっ、ちょっとお姉様!?」

 

 ふむ、この感じは『テスタメント』……そして何人か足場のフィールドに飛び込んで来るようなら、便乗させてもらって範囲は広げておこう。

 

「あ、待ってよ聖恋ちゃーん!」

 

「あのっ、わたしもまだなんですけど!?」

 

 ノインヴェルトも大体さっきかこの前見たような顔ぶれだけが残っているようなら、あまり遠慮の必要もないかと邪魔な破片、ないしギガント級周りの飛行型ヒュージはこっちで面倒見ますかと、足場を乗り継ぎながらソードとシールドから散弾をばら蒔いておこうか。

 

◆◆◆

 

「うわっ!? 百合ヶ丘ってあんなのばっかりなのかなぁ」

 

 ヒュージの気を引こうというのは分かるが、それでも躊躇いなく広範囲への爆撃染みた攻撃を選んだ雪華に聖恋が戸惑っていると、雪華の出していたマギの足場を乗り継いで先に着地場所なビルの屋上で待っていた百合亜は、最低限ガーデン単位での誤解は解いておいた方がいいかと言葉を紡ぐ。

 

「多分、あの人が特別側なだけよ。迎撃戦で見た百合ヶ丘のリリィたちは……どちらかと言えば真面目な子の方が多かったもの」

 

「どちらかと言えば、ってことは、あっち側も?」

 

「ええ。どこにでもああいうタイプは何人かいるものでしょう?」

 

 途中百合亜も第4部隊の仲間を思い出してはみたが、その中で百合ヶ丘組となると現サングリーズルな日羽梨と誉なのだから、どう言葉を選んでも癖の強い方ではあったが故に、少しの間が空いた上にこういう言い方になってしまう。

 これが幸恵や日葵のいた第1部隊であれば、文句無しに彼女たちは立派なリリィであったと言えたのだろうが……勿論、百合亜とて二人のことは同じ部隊の仲間として大事に思ってはいるけども、それはそれ。

 

「つまり、佳世様とかこころ様とかみたいな……?」

 

「そう、あまり参考にしない方がいいタイプね」

 

 いつぞやの訓練でも『ルナティックトランサー』を抜きにCHARMを持つだけで興奮する、なんて昔の漫画で見たような性格面の問題から大暴れしていた佳世と、彼女とよくつるんで怪しげなことをしているイメージがあるこころの名を聖恋が出せば、雪華も彼女らと同じ手合いだろうと百合亜は補足する。

 

「さあ、行くわよ百合亜!」

 

 そうしていると雑談もここまでだと都内の摩天楼に響くのは、ギガント級の伸ばす触腕を避けることも防ぐこともせず、敢えてその上を足場と駆けることでギガント級の懐へ入ってマギスフィアへのチャージを加速させ、跳び上がった中空でフィエルボワをシューティングモードに構えている幸恵の声。

 

「聖恋、中継をお願い」

 

「はい、お姉様!」

 

 シュベスター組より少し出遅れた故に、まだ追い掛けている途中な佳世と来夢、二人の位置を確かめながら百合亜が屋上から飛び下りれば、彼女と幸恵の間となる位置を聖恋は見極めようとして……これは言葉のわりに結構な難題かもしれないと気付く。

 

(いや、行けるよな……? オレだってリリィなんだし、このくらいの距離ならなんとか……うん。最悪パスだけ回せれば、後は近くの足場に落ちればいい)

 

 なんならこの間の下北沢での戦闘を記録した映像の中で、他校のリリィだって似たようなことをやっていたのだから……そうまだ持ち慣れない鎌型の相棒を手に、聖恋も覚悟は決める。

 

「幸恵様、先にオレが受けます!」

 

「ええ、頼んだわよ!!」

 

 幸恵に声を掛けてから飛び下り、少し軌道の下に入ってしまったなと足をビルの側面に付け、斜めに駆け上がってからタンと跳べば、目の前に来るマギスフィアを聖恋はCHARMで掬うように捕えた。

 

「お姉様!」

 

 更に身体の周りを通すようにシュガールを、そしてマギスフィアを回しながらマギを込めると、先に降りていた百合亜の方へCHARMを振るい、マギスフィアを飛ばす。

 とはいえ翼もない人の身ではそこまでが限界で、後は目星を付けていた足場に落ちるだけと聖恋が身構えていたら、不意に浮遊感を覚えて辺りを見渡すことに。

 

「…………?」

 

「やるじゃん一年生、流石テンプルレギオン」

 

 その理由は顔半分で振り向く雪華が袖口からのアンカーを聖恋のジャケットに打ち込みながら、ソードビットもシュガールを受けるよう回り込ませていたからになるが、そうしている間も小型ヒュージへの攻撃はサブアーム越しのシールドで続行している姿に、思ったよりはとっつきやすいのだろうかと、見慣れぬバイザーを始めとしたメカメカしい装備の数々からやっぱり変な人ではあるとの、両方のイメージを聖恋に与えた。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いやいや、これくらい軽いもんだからさ」

 

 とはいえ、どちらにせよお礼くらいは言っておくべきかと聖恋が返せば、スッと動かした足場の上に彼女を降ろした雪華は連結させたソードガンを上機嫌そうにクルリと手の中で回しているから、多分両方で間違いはないのだろう。

 

◆◆◆

 

「佳世、いるわね? 回すわ」

 

 さらりと一方的に呼び掛けながら、聖恋からのパスを受け最低限の時間でマギを込めながら横薙ぎに高架橋の上にいる佳代へ繋ぎ、振り向く前に見えていた攻撃はどうせ『誰かさん』が防いでくれるだろうと、百合亜はそれ以上特に何もせず真顔で落ちていく。

 

「ああもう! いる扱いなのかいない扱いなのか、はっきりしてくださいってばぁ!」

 

 などと派手にリアクションをするからこそ、いつも誰かしらにからかわれるのだろうとは悪友のこころに散々振り回されている内に、佳世自身なんとなく思ってはいるが、だからといってなんだかんだで反応してしまうのが彼女だから、結局こうなっているのだ。

 

「いきなりなのにこれって、信用されてるんだとは思いたいけど……結構心臓に悪いね?」

 

「すみません。百合亜お姉様って、いつも自分の守りとか二の次なんで……」

 

 そしてギガント級が百合亜へ向け放ったレーザーを、片手間に飛ばしたソードビット二基のバリアで防がせた雪華のぼやきには、シュベスターとして申し訳なくする聖恋。

 

(ま、今更私が他人にどうこう言える立場でもないけどさ。自分だっていっつもこんななくせに、毎度姉さんや結梨ちゃん(シルト)の心配なんて)

 

 とはいえそんなことを二度目ましてな聖恋に話しても仕方ないかと、どうにも自分は擬似姉妹甲斐のないやつなことは置いておいて、次でノインヴェルトも最後ならと距離は取っておくべきだと雪華が後ろの方の足場へ下がれば、聖恋も行動の意味は分かって後に続く。

 その間に百合亜も佳世のいる高架橋までスタリと降りてくると、二人して上を見上げることに。

 

「えーと、来夢さんは……け、結構思い切りいいですね」

 

「問題ないわ。あの子たちがフォローするでしょう」

 

 出遅れた分を取り戻すため相当急いでいるようで、ギガント級を射程に捉えようとマギの足場どころか、ビルの壁面やヒュージの攻撃によって崩れた破片をも蹴って上へ上へと突き進む来夢だが、その強行軍を叶えているのは道標となる日葵の『レジスタ』は元より、テスタメントを展開している側の百合亜だからこそ分かる、聖恋の『この世の理』の感覚。

 

「パスコースはこれで……こっちは……」

 

「オレが道を作る!」

 

 どうしても邪魔になるビルや道路の破片などの瓦礫を撃ち抜きながら、聖恋はいつの間にか雪華が離れているのに気付く。

 あくまで客分な自分はフィニッシュまで関わるべきではない……と下がったにしては今も足場はそのままだし、彼女が置いていったのだろうビットの風切り音もこの世の理での予測線に遅れて聞こえるのなら、なんともヘンな先輩だとの認識が聖恋の中でより強く固まった。

 

「佳世、今よ!」

 

 加えて駆け上がって来たのだろう幸恵が横合いからギガント級の触腕を弾きながら叫べば、確かに佳世から来夢と上空のギガント級までは一直線に開けており、後は彼女の問題だ。

 そんな中『ザッ』と背後からした靴音に佳世が振り向けば、日葵を中心に陣形を組んだテンプルレギオンの残るメンバーが一斉射の用意をしていて、その中にはクルリとCHARMのみならず自身も優雅に一回転しながら加わる百合亜の姿と、佳世の肩に手を置いて『ブレイブ』を発動してくれている、シュベスターであるつぐみの姿もあった。

 

「っ……うぉりぁぁぁぁあっ!!」

 

 ここまでの援護が入るのだ、決めてみせねばシュベスターの姉側として胸が張れない。となれば佳世も気合いを入れ直し、両手でCHARMのグリップを握り締めての大上段からパスを飛ばす。

 

「「来夢!」」

 

「大丈夫……これでっ!」

 

 フィニッシュの爆風に巻き込まれないよう、斉射の中幸恵と聖恋も牽制に射撃を送りつつ離れれば、諸々の間を縫うように瓦礫を蹴って跳ぶ来夢が空中で逆立ちのようになりながらアステリオンの銃口の先にマギスフィアを携え、足の止まったギガント級を真っ直ぐ見据えてトリガーを。

 放たれた一撃がヒュージの中央を撃ち抜けば、触腕をダラリと力無く下へ垂らして自身も浮力を失い、頭から後ろに向け落ちるようにしながら爆発の中にギガント級は消えていった。

 

◆◆◆

 

 そんな終わりをビルの屋上から眺めながら、存外あっけない結末に「どうにもなぁ」と髪を掻く。

 

「特に何もなし、と……余所者な私らもいるからって小手調べなのか、単なる『ガス抜き』の類いだったのやら」

 

 ゲヘナがヒュージを完全な制御下に置いているのであれば、これまでの迂闊な行動も少しはマシな形になっていたはずなのだから、御三家の守備範囲へ不定期に現れるヒュージなどは、扱いきれなかった分の廃棄も兼ねているんじゃないか……

 

 なんて仮説は、私でなく姉さんたちが在学中言っていたことになるけど、警戒したわりに何事も……なかった訳じゃないか。

 一応、強化されたばかりな元エレンスゲの子がまた襲われてたけど、特に特型もいなかったし、あれはついでなのやら……まあいいや。どうせ姉さんか霊奈さん辺りが来てるだろうし、ついでに問い詰めますか。

 

「おーい外様組ー、とりあえずこの前の公園行くよー」

 

 とにかくやることは終わった以上、あまり縄張り荒らしのような真似もよろしくはない。別にルド女に喧嘩売るのもやぶさかじゃないけど、今日は幸恵たちの顔を立てる意味合いのが強いかな?

 

「はーい。じゃあクララと朝妃、また後で!」

 

「こちらも用意はしておきますわねー」

 

 なんて色々考えつつ飛び下りていると、シールドのスラスターでホバリングしながら地上に降りる間にヘルヴォル組と、ギリギリまで知り合いと話してたんだろう葵ちゃんとが寄ってくる。

 

「で、この後はルド女寄ってく感じ?」

 

「元からメインはそっちだったからねー、向こうもこれから色々忙しくなりそうだし」

 

 まあ、今の日本国内でのゲヘナは結梨ちゃん絡みのスキャンダルのせいで政府内の後ろ楯を、そのまま烏丸に乗っ取られる形で失った以上国からのバックアップも日に日に弱まり、余裕のなくなった研究バカどもが次は何をしでかすのやら。なんて段階だ。

 それで真っ先に被害を受けるのなんて、ゲヘナ内でも過激派が支配するガーデンの所属リリィだというのは、傍迷惑ながら否定のしようがない現実になる。

 

「そういう意味では、エレンスゲはどうなの?」

 

「こちらも、何名かの教員が更迭されそうだ……なんて噂が、あちこちで聞こえています」

 

「ま、ほとんどトカゲの尻尾切りって感じですけどねー。いくらでも替えの利くやつだけ差し出して『ウチはもう健全ですよー』ってポーズするためだけの」

 

 ということで、その親ゲヘナガーデン所属のトップレギオンな面々がいるからと聞いてみれば、一葉ちゃんに続く恋花のやれやれっぷりから、ゲヘナは結局自分たちの有利が崩れた後のことなど考えもしてなかったんだなと、呆れるしかない。

 学生にすらバレバレの姑息な延命行為など、とっくに他所にも筒抜けに決まっているだろうに……なんともまあ。

 

「ねー雪華、なんでこうえん?」

 

「あー、こないだもあそこ烏丸が来てたでしょ? ルド女の世話になるのもなんかアレだし、軽い検査くらいになるけど」

 

 まあ、ヘルヴォルは帰った方が早いかもしれないけど、聞いてきた藍ちゃん以外他に意見が出るでもないなら、乗ってはくれるとして。

 

「救援、感謝します」

 

 そうこうしているとテンプルレギオン隊長の日葵がお礼を言いに来てくれたから、代表して私が応対を。

 

「ま、そっちはこれからが大変だろうし、これくらいはね」

 

「そう、ですね。けれど私は、テンプルレギオンの隊長として仲間たちと成すべきことを成すだけです。例えガーデンの思惑がどうあろうと、リリィとしての誇りを持って」

 

 生真面目だねぇ。とはいえそう言えるだけの物を背負っているからこそ、二つのガーデンでリリィの代表的な立場にいられるんだろうけど。

 

「ご心配なく、そこはわたしたちがちゃんと……あれ」

 

 なんて納得をしていると、もう一人テンプルレギオンから副隊長の渚が日葵の隣へ来て、肩を組もうとしたのを見事に避けられている。

 

「ちょっと日葵隊長~?」

 

「いや、だからあなたは距離感近すぎるって言ってるでしょ。本当に『天の秤目』持ち?」

 

 日葵のスッと離れる感じからしてこれはあれか、前に帰国子女だって佳世に紹介されてたし、この手の子特有の距離詰めすぎる的なアレ? 日葵が咄嗟に頬を手でガードしてるのも、まあそういうこととして。

 

◆◆◆

 

 とりあえず例の公園に着いて、検査をやってるテントに向かう他六人を置いて辺りを漁っていると、探していた誰かさんが大きめのテントに入るのを追ってみる。

 

「また随分と趣味に走りましたねぇ」

 

「そうです? わりと理に適ってると思うんですけどねー。仮面とマントで姿を隠し、CHARMも広く流通している物に統一すれば、大多数にはその正体が誰かなんて気にもされないって」

 

 それでもマントの下は烏丸の隊服がベースなスーツタイプのそれで、髪やカチューシャも見慣れたそれのままとなれば、顔の上半分を隠すだけの仮面じゃ限界があるでしょと言いたくなるけど、珍しくノーマルのアステリオンを手にした霊奈さんは、それで十分と言いたげに仮面を外しながら振り向く。

 

「マスカレイドならぬ『マスカレギオン』、部隊員を作戦ごとに割り当てられた番号で呼んでいれば、中身の入れ替えは自由自在。便利な設定だと思いませんか?」

 

「設定言うなし。で、そんな規模も人数も好きにやれるモン手に入れて、姉さんと霊奈さんは何するつもりなんです?」

 

 在学中と変わらないだろう行動でなく、その目的をという意味での問いへの答えは「もう伝えていいですよね?」とここにはいない姉さんへの確認のような呟きの後に。

 

「零夜ちゃんのやることなんて、昔から少しも変わりませんよ。家族の仇を討つ、二度と同じことが繰り返されないように……それだけです」

 

「それ、レギオンの仲間たち……って意味だけじゃないですよね?」

 

 例えそうなら私だってその動機で衝動的に引き金を引いたことはあるのだから、今更誰に確認が必要ということもない。そうなると──

 

「はい。あの子の血の繋がった家族、お母さんとお兄さんの仇討ちです」

 

「──つまり、姉さんがわざと男口調なのって、そういう?」

 

「おー、よく気付きますね? 流石は元シルト」

 

 曰く、姉さんが強化されることになったヒュージの襲撃を受けたのは、仕事上がりな母親を兄妹で迎えに行った時のこと。そこで他の二人は姉さんを庇うようにしてヒュージに殺され、姉さんは運ばれた先の施設で霊奈さんと出会い、後から家族が襲われたことを知ったおじさまは、ゲヘナを見限った……

 

「……なんて、今の世界じゃ珍しくもない話ですけどね」

 

「だけど、それが許していい理由にはならないでしょ」

 

「勿論。だから私たちは卒業してもこんなことを続けていますし、だから零夜ちゃんは自分を守って亡くなったお兄さんのことを忘れないために、喋り方を同じようにしてるんですよ」

 

 二人が出会う前の話ということは、当然私もまだ姉さんのことなど知りもしない頃の話だから、理由を聞いて姉さんが私に黙っていたことに納得はしても、結局私は霊奈さんのように姉さんのパートナーにはなれてなかったんだなと、どうにも言えない感じが残ってしまう。

 

「不満です?」

 

「そんなんじゃない……とは言い切れないですけど」

 

 顔に出てたんだろうと霊奈さんにつつかれるけど、そこまで腹を割らなかったのは私を自分の復讐に最後まで付き合わせたくなかったから……とはあの人の普段の態度から分かるし、そうしたのも霊奈さんとは別の意味で大切に想ってくれての結果なのだとも、頭で理解は出来る。

 ただ、どうしても在学中に、シュッツエンゲルである内に本人から全てを話して貰いたかったというのは、私のワガママなんだろうか?

 

「まあ、私も今更に『巻き込んでるのが不本意』だなんて言われましたし、雪華ちゃんも『勝手に一人で全部背負いやがってー』くらいは言う権利あると思いますよ?」

 

「別にそこまでは言いませんよ。もし本当にそうなら、霊奈さんが真っ先にキレてるだろうし」

 

「そりゃあそうです。私だってゲヘナに人生めちゃくちゃにされてるんですから、一口と言わず噛ませてくれなきゃ末代まで恨みますよ」

 

 ならまあ、私のでない役割をそこまで気にすることもないか──なんて割り切るための言葉が必要な時点で、未練というか引っ掛かりはあるんだろうけど。

 

「さて、折角だし私が直々に検査しちゃいましょうか? あくまで簡易のですから、後でちゃんとしたとこで診てもらった方がいいですけど」

 

「従姉妹もいるし、神庭で診てもらいますよ。御台場とかダメなんでしょ?」

 

 別に個人的な好き嫌いだとかでなく、どうにもウチの先輩たちが反ゲヘナ派のガーデンのことを敵の目を集め過ぎるとあまり期待はしていないことから、私も直接会って話した生徒はともかく、ガーデンそのものに対してはそういう感じでいる。というだけ。

 

◆◆◆

 

「ありがとうございました!」

 

「いやいや~、こっちもお仕事ですから」

 

 ともかく私も先に検査してた皆も終わり、霊奈さんがいつもの白衣を羽織って向こうのテントに行けば、責任者だということで一葉ちゃんからお礼を言われてるけど……なんだろうなぁ、それを受けての笑顔が普段と比べて胡散臭い。

 

(確認、なんかヘンなことされなかった?)

 

(使っている機材は、他で見るようなのと変わりはないようでしたが……)

 

(いたくなかったよー?)

 

 近くにいた千香瑠と藍ちゃんに確認しても、異常は特になしと。なんか陰謀巡らせてるからって、少し考え過ぎか?

 

「で、私はこれから御台場だけど」

 

「我々は、念のため見回りをしてからガーデンに戻ります。葵さんはルドビコでしたよね?」

 

「うん、クララたちとお茶してからー、まあ色々?」

 

 ならここでお別れという訳で、各々目的地は別なのだからと手を振りながら公園を出れば、入り口には既に車が回されているし、霊奈さんもなんか付いてきてる。

 

「……乗れと?」

 

「ゆりかもめまで首都高乗って大体30分、歩くよりは断然早いでしょう?」

 

 まあそうだけども、存外そこら辺の道はまだ生き残ってるんだなぁと、ヒュージを出す場所も最低限不便にならん程度は考えられてるのかどうか。

 

◆◆◆

 

 さて、後は特に苦労もなく乗り場まで着いて、近場の駅で降りてから少し歩けば御台場女学校までたどり着け、入り口で生徒会長の紹介と伝えればあっさり中まで通されはしたけども……生徒会室どこよ?

 

「しまったなぁ、どうにも気が抜けて……ん?」

 

 最後の最後で確認不足で迷子なんて笑えないなとなっていたら、明らかに周りと服装が違う深緑のツインテ、ツーサイド? あれ、区別どうなんだっけ。

 ともかく御台場でレギオン用の制服となれば、基本的にセインツかロネスネス。見た感じ彼女のは船田姉妹のとは毛色が違うし、多分セインツ側……と判断した理由に、楪程じゃないけど胸元のガード緩いからってのは、なきにしもあらず。

 

「おーい、そこの君ー」

 

「? ……あ、(ちなみ)のこと?」

 

 そうそう、と手招きしてみれば因ちゃんとやらがテクテク駆け寄って来てくれるなら、早速本題を振ってみる。

 

「ちょっと生徒会室に用があるんだけど、初めて来たもんだから道分からなくってさぁ」

 

「あ! 椛様の言ってたお客様! 生徒会室ならこっちでーーーす!」

 

 おう、話が早……って待って待ってまって、この子力つっっよ!? あたしゃケースの中ほぼフル装備よ? しかもCHARMは起動してないんだから、当然結構な重量なのになんで──

 

◆◆◆

 

「おぁぁぁぁぁあ!??」

 

 まるで漫画か何かのように、ヘオロットセインツ一年生の鈴木(すずき)(ちなみ)に引っ張られて半ば浮いてる雪華が悲鳴を上げて連れ去られていると、廊下で走るなとかそういう問題でなく目立つのだから、目についてしまったと立ち止まるのが一人。

 

「純?」

「純お姉様?」

 

 姉と後輩に左右から覗かれ、気を取り直すように咳払いを挟むと、返事を返すのは船田純。

 

「……いえ、先に『生徒会』からというのなら、筋は通っていますしそれはそれで構いませんわ」

 

 順番としては妥当だ、とは純も頭で理解してはいる。生徒会(セインツ)への対抗心から、心が納得出来るかは別として。

 それはそうと、純の反応がないからと御台場の生徒一人一人にオーダーメイドで支給される刀型のCHARM『ヨートゥンシュベルト』の柄で左から頬をつついてくる燈のことは、ペシッと手で払っておく。

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