アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:めぐりあい新宿とガチャ演出順なパス回しと引き続きフラグっぽいあれこれとパワー系と。
だってあの子に案内任せたら絶対こうなるじゃんと…はい。
ちなみに元上げてたのからだと今日で三周年なので、この時間更新ですってよ。


蝶と花とに囲まれて

「はーるーさーまーーー! お客様連れてきましたー!!」

 

「うわっ、どうしたのその人……?」

 

 廊下を駆け抜けた勢いのままバタンとドアを開けて入って来た因──というより彼女に引っ張られて凧か何かのようにされていた雪華のぐったりしている様子に、生徒会室にいた紫ツインテールの先輩は大分引いている。

 

「あれ? おーい」

 

「っつつ……」

 

「……私じゃなくて椛やゆずのお客さんだって、ちゃんと話してたはずなんだけどなぁ」

 

 あるいは彼女のはりきり具合は、今は席を外している二人でなく自分が生徒会室で待っていたからかもしれない。と先輩──二年生の菱田(ひしだ)(はる)が頭を抱えていると、一応自力で起き上がろうとしている、程度に雪華の無事を確かめた因は、テクテクと治の元へ。

 

「治様はるさま! 褒め……あっ!!」

 

「今度はどうし……って、あぁ」

 

 入り口からでは机の影になっていて分からなかったろうが、近寄ったところで因の目に入るのは、椅子に座る治の太股に頭を乗せて眠っている、同じ一年生の姿。故に知らない仲でもないのだからと、治の説明も簡単なものになる。

 

「その、(なずな)ってばまたいつもの『アレ』で……」

 

「あー……普通ハーブティーでこんなになるかなぁ、燈のはちゃんと飲めるのに」

 

 首を傾げながらな因の呟きを聞いた治は、ヘオロットセインツとロネスネスの一年生は比較的仲がいいことに、予備隊があんな形の解散になってしまった自分たち二年生と違い、この子たちは良い関係を築けてそうだと心の中で頷いていたら、もぞもぞと動く感覚にそのまま下を覗く。

 

「むー、んー……」

 

「ああごめん、起こしちゃった?」

 

 目を擦りながら身体を起こした後、しばらくボーッとしていた薺は今部屋に誰がいるかに気付くと、元よりやけに真っ赤な頬を更に赤くして、がっしりと治の腕にしがみつく。

 

「はるさまはわたさないから!」

 

「こっちこそ抜け駆けはダメだってば!」

 

「えっ。いやちょっと二人といった……」

 

 寝惚けと酩酊状態とで舌も回らないまま、当然頭も回らずな薺は『治の隣に因がいる』という目に入った情報だけで自分が先程まで彼女を枕にして寝ていた。なんてことも頭から抜け落ちて渡すまいと治を引き寄せ、それを見た因も負けじと反対側へ引っ張るものだから、挟まれた治としてはたまったものではないが。

 

◆◆◆

 

 さて、ちょっと意識が飛んでたと思ったらこれはなんだろうか。多分生徒会室なのだろう部屋の中で、因ちゃんともう一人に先輩らしき子が大岡裁きのように左右から引っ張られる様子……なお被害者の悲鳴は、どちらも聞き届けていない模様。

 

「楽しそうだねぇ」

 

「そ、そう思ってるなら代わってくださ……」

「わんわんわんわん!」

「きゃんきゃんきゃんきゃん!」

 

 左右から取り合いになってるのを「まあまあまあまあ…」と宥めてるのは、なんかもうペットと飼い主って感じ。とはいえ下手に割り込んだら裂けそうだし、どうしたものやら……とか悩んでいると、ドアの開く音に振り向く。

 

「あ、例のお客さ……わーっ! 治様大丈夫ですか!?」

 

(かつら)は因を止めます。(なかば)は薺の方を」

 

「う、うん!」

 

 入ってきたのは何処か見覚えのあるような、帽子を被ったアンダーツインテの子と蒼髪の子。どうやら他の生徒会メンバーらしいけど……

 

「ほらなっちゃん、治様困ってるでしょ?」

 

「因も、好意とは力尽くで手に入れるものではないでしょう」

 

「「う、う~……」」

 

 ともかく二人がそれぞれの担当を引き剥がせば、解放された治もホッと一息。

 

「ふぅ、ありがとう二人とも。それで、聞いていた百合ヶ丘三年の黒紅雪華様ですね? 私は二年生の菱田治です。椛とゆずは、少し前に呼び出しが入っちゃって……」

 

「うん、まあ待ち時間も退屈はしなさそうかな?」

 

 あくまでも率直な感想だけど、「あはは……」と苦笑いが返ってくる辺り、もうこの賑やかさにも慣れてしまっているのだろう。

 

「で、そっちの子はなんであんなんなってたの?」

 

「その、あの子……薺はハーブティーを淹れるのが好きなんですけど、話を聞く限りなんでもかんでも好きに突っ込んじゃうから、変なことになっちゃってるみたいで」

 

 確かに、後から来た二人に左右から抱えられてる薺ちゃんはその上でもなんかフラフラで、酔っぱらいか何かみたいになってるけども。それ本当にハーブだけ使ってる? 法的に怪しいやつ入ってない?

 

「治様、なっちゃん介抱してきます!」

 

「うん、お願いね央、桂も」

 

「はい。それでは」

 

 そのまま三人が隣の部屋へ去って行けば、疑問の正体にひとつ心当たりが。

 

「あー、そういやあの二人、ドール出てたよね」

 

「そう、ですね。薺は『ファンタズム』持ちで央は『円環の御手』に覚醒したからと、一時期それなりに取材があったりしたので」

 

 そうそう、寝てたのがいつぞやも話題にした、ドールでやけにアイス落とさせられてた子。流石にその理由はべろんべろんになってる、って意味じゃないとは思うけど……そして帽子の子、央ちゃんの方は私が前に取材受けた時にでも見掛けたかな?

 

「ん、そうなるともう一人は……」

 

「桂のことなら、元は百合ヶ丘に通っていたので? 新潟でもアールヴヘイムにいた昔の知り合いと話してたみたいですし」

 

 ふむ? 何か事情があって転校した、とかそんなとこかね。知り合いの知り合いですらない他学年ってなると、流石にリリィオタクでもなきゃ詳しい部分は分からんけども。

 

「ところで治様!」

 

「う、うん。今はお客さんがいるから、また後でいい?」

 

 まあ、この子らの大体の関係性は分かったけど、ライバルが抜けたからって遠慮とかは特にないようで。とグイグイしてる因ちゃんに治が抵抗するのを眺めていたら、また誰かが入ってくる。

 

「たっだいまー、ってなんか人数少なくない?」

 

「あ、ゆず。椛は?」

 

「なんか話長くなりそうだから、先に戻ってていいってさ」

 

 それでいいのか副会長さんや。まあ幼なじみとか言われてたし、椛さんもそこら辺分かってるからなこの扱いなんだろうけど。ともかくお目当ての相手が来たなら、こっちもお土産を出そうか。

 

「元気そうだねぇ。とりあえず、どっちか選んでよ」

 

「雪華様こそ。で、何々……おっ? ハムじゃん」

 

 一応は鎌倉らしく、ね? ロースハムとボンレスハム、布巻きのしっかりとしたやつを丸々一本ずつ、折角ガーデンに直接行くんならと奮発した形にはなるけど、ぶっちゃけ出費だけならさっきのドーナツ屋さんのが上っていう。いや、わりと皆遠慮なくドリンクまで頼んでたけどさぁ。

 

「うーん、片方だけって言われると悩むよなぁ……二人はどう?」

 

「私は、お任せで」

 

「じゃあ因、せーのでいい?」

 

 「はーい!」と因ちゃんが元気に返事をした後、合図と共に二人で指差すのは……ボンレスハムの方。

 

「こっちね。流石御台場、ガッツリ行くねぇ」

 

「ま、そんな頻繁に買い物行ける暇もないからさ。折角ならってね」

 

 まあ、生徒会に直下のレギオンも兼任とくれば、仕事量も平の一柳隊(ウチ)とは大違いだろうけどさ。何にせよ選ばれたならと箱ごと渡して、残った方は神庭行きっと。

 

「それはそうと、こないだはうちの子たちが無茶振りしたんだって?」

 

「あー、ダブルファンタズムを繋いだやつ? 言っても向こうのカップルは手慣れてる風だったし、私よりそっちの鶴紗って子の方が心配だったけど」

 

 カップル。まあ楓さんと葵ちゃんはその認識でいいとして、確かに倒れるまでファンタズムを使ったらしい鶴紗ちゃんのが問題ではあるけど……

 

「ま、鶴紗ちゃんってば見ての通りだからね。そこは私や夢結の後輩らしいってことで」

 

「それ、反面教師ってよりもう類友の方になってない?」

 

 否定は……出来ないかなぁ。だからこそフォローにも入りやすいと、前向きに取るとして。

 

「~♪」

 

 こっちが話し込んでいると、もういいかと判断されたのか因ちゃんが治の横に座って、大分ご機嫌で身を寄せているから、こっちの視線に気付いた治は気まずそうにしている。

 

「……あ、お気になさらず」

 

「あはは。まあ私の方が押し掛けてる形だし? 普段通りにしてていいよ」

 

 知り合いの知り合いっていうのが一番距離感に困るのは分かるし、この前のお礼ってだけならもう終わってるしで、楽にしてくれた方が私としても助かるというか。

 

「お待たせしました」

 

「お、椛お帰りー」

 

 そうこうしていたら椛さんも帰って来たし、挨拶済ませて次に行くかな……ってところで、メールの着信が。

 

「っと、ごめんあたしの……んん?」

 

 送り主は純で、『こちらに』と短いメッセージと一緒に目印のある画像が添付されてるけど、位置関係がよく分からんので見てもらおうと画面を楪たちの方へ向ける。

 

「どれどれ……これ御台場(ウチ)のマップじゃん」

 

「この位置なら、出て一番近くのエレベーターからが早いですわね」

 

 ふむ、流石に普段から通ってる生徒は話が早い。そのまま道順を聞いて、マップの確認もすればまあ迷いはしないだろう……初めから生徒会室に来るのもこうしとけば、わざわざ案内役いなくてもよかったんじゃないかって? うん。

 

「で、改めてこないだ、そして今もありがとね」

 

「いやいや、困った時はお互い様でしょ?」

 

 気前のいいことで、とはいえ時間も結構経ってるし、このままだと神庭に着く頃は夕方だ。一応ロネスネスはこないだの件では関わってないから寄り道とはいえ、行くって話はして向こうも場所をセッティングしてくれてるのなら、ね?

 

◆◆◆

 

 さて、言われた通りならこの場所で間違ってないとは思うけど……ここ、工廠科の工房よね?

 

「まあ、来いと言われたからにはねぇ。お邪魔しまーす」

 

「はいはーい、純様から話聞いてるんでどうぞどうぞー」

 

 とりあえず入ってみれば、大分気軽に迎えてくれるのは初のそれに似た隊服を着た、茶色のロングヘアーなリリィ。

 二年の純を様付けだからロネスネスの一年なんだろうその子は、整備中だったCHARMを「よっ、ほっ」とジャグリングでもするような感じで片付けると、空いた作業台を両手で指している。つまりは、整備をしてくれるということか。

 

「これ、さっきの戦闘のことも把握されてる感じ?」

 

「というか今純様たちが呼び出されてるのも、最近やけに都内のヒュージ出没率が高いからってのがありますからねー」

 

 なるほど。ならまあ、待つ時間は有意義に使えってことか。

 

「んじゃお願いしようか、えっと」

 

「我こそは、人呼んで〈御台場工廠科の至宝〉(こずえ)・ウェストなり! なんちゃって」

 

 おん、見栄まで切って大分芝居がかった言い方はともかく、名前からハーフっぽい子に『至宝』ねぇ。ガーデンのセンスはわりとウチに近いのかどうか……あるいはそこら辺、国内で何かしらの基準がある感じ?

 まあそんなこと考えても仕方ないかと、一番酷使したブレイザーを取り出して作業台へ置けば、最新式のCHARMに梢ちゃんも一人のアーセナルとして興味津々な様子。

 

「ほほう、これが噂の烏丸製の第4世代CHARMですか。確かに大本は基本のやつと変わらずみたいですけど……なんです、このカリッカリのチューニング? ロネスネスでもここまでのは……いや、わりとあるか」

 

 ロネスネスのCHARMは百由が提供元とはいえ、当然渡してからこっちでそれらを直してるのはこの子な訳で。そんな梢ちゃんもブレイザーのコアに端末を繋ぐと、その設定を見て一瞬遠い目をしていたけど、気を取り直して今度は物理的な方を見てまた驚いてる。

 

「うわすご……これ先月出たばっかりで、まだ都内の御台場(ウチ)にも卸されてない最新型のパーツですよ?」

 

「あー、本社直送というか新しい社長が元シュッツエンゲルだし、開発部にも先輩いるしで、その縁?」

 

 改めてまとめてみれば、私もコネだけは結構な物があるんだなとしみじみ感じていると、梢ちゃんの方はドライバーを手の中で回しながら、もう片方の手の甲を額に当てて結構オーバー気味なリアクション。

 

「ひゃー、コネのある人は違いますねぇ。今のレギオンだって、あのグランギニョルのご令嬢がいるんでしょ?」

 

「おん、流石に有名人だねぇ楓さんは」

 

「まあ、これ友達から聞いた話なんで? ほら、グラン・エプレの灯莉。少し前に同盟レギオンだーって話もしてたし、この後神庭(そっち)にも行くんですよね」

 

 んん? また変なとこで知り合いが。本当に世間は狭いというか、今回は都内同士だけども。あるいはそこの縁を知ってたから、私の相手に梢ちゃんが選ばれたのかどうか。

 

「んー、なんかこう色々考えられてはいるんだろうけど、この文面からは一切伝わらないのがなんとも」

 

「というと? ……うわ、せめてわたしの名前くらい伝えといてくれてもいいのに」

 

 そこで純からのメールを見せてみれば、簡潔に過ぎる文面は梢ちゃん的にも「ないわー」な感じが全開。

 

「なんていうか、純って悪い人じゃないのは会ってみれば分かるけど、言葉とか色々足りてないよね」

 

「ですよねー。純様も普段からもう少し素直になってくれれば、槿(あさがお)様たちとももっと上手くやれるはずなんですけど」

 

「なに、レギオン内も結構難しい感じ?」

 

「いやいや、ツンとツンじゃデレがないと言いますか」

 

 そう言って梢ちゃんが左右の人差し指を外側に向けて伸ばして、デレのタイミングで✕を作ってみせる様子は、若干面白がってるようで本音のような感じ。

 

「まあ、純様が行き過ぎる前に初様がからかい半分か全部でフォローを入れてくれてるから、ある意味では分かりやすいんですけど」

 

「そこら辺は双子だからこそ、って感じよね」

 

 シモキタでも基本的に話をリードしてるのは初の方だったんだし、そうして姉の自分がしっかり見てますよ。としてるから、純があの感じでも案外上手く回ってるのだろう。

 なんてまとめていると、特に異常もなくチェックは進んでいるようで、ソードガンがシールドに戻されている。

 

「はい、ソード・シールド終わり。後はビットですけど……まあこのサイズでバリアまで積んでたら、射撃機構なんて入るスペースないかぁ」

 

「そこはビット自体が飛び道具みたいなもんだし、苦労したことはないかなぁ?」

 

 むしろビットのバリアまで使ってようやく……なんて場面も多かったし、攻撃に回すにしても結局今ので事足りてはいるし?

 

 にしてもなんだろうか、こっちは作業の片手間で向こうは他の誰かに絡まれながらな差があるとはいえ、治の時とは大分話の弾み具合が違うのは。単に個人の空気感の違いだけなのか、あるいは……うーん、初対面じゃなんとも。

 

「梢、入りますわよ」

 

「はーい。お客様はちゃーんとおもてなししてますとも」

 

 そこで外からの声に現実に戻されれば、他校のことにそこまで首を突っ込む余裕もないかと、入り口の方に向き直ればいつぞや新聞で見たような並びで、純が初とレギオンメンバー一人を連れていた。

 

「や、お邪魔してるよ。都内は大変そうだねぇ」

 

「この程度、東京御三家たる御台場に入った時から覚悟していたことですわ。それよりも梢」

 

「ご要望通り、奥空けてますよー」

 

 ふむ、わざわざ工房にまで呼びつけたのは、空き時間を無駄にしない以上に何か他人に聞かれたくない話でもあった感じ? なら素直についてくとしますか。

 

「さて、なんか内緒話?」

 

「ええ。といってもわたくしではなくこちらの」

 

「一年の司馬燈ですわ。雪華様でしたか、あなたが烏丸の関係者だと純お姉様からお聞きしましたので」

 

 お姉様? とその部分に疑問符だと純の方を見てみれば、本人の色々と諦めたような感じからしてアレか、制度的なソレでなく勝手に慕ってるだけな『ほねぇさま』系と。そりゃ楪もオッドアイな彼女の評価が変態の一点張りになるのも納得。

 

「まあ、姉さんたちが会社入った今でも色々融通してもらってるから、一切否定のしようはないけど、それで?」

 

「先月そちらのガーデンで大捕物が起きた日に、都内で我々ロネスネスが任務帰りに討伐したギガント級、それにどうにも不可解なところがあったので」

 

 ふむ、母さんの置いてった新聞に書いてたやつかね。まあ今更そこら辺のメディアが何かを暴けるはずもないだろうから、話半分の流し読みでしかなかったけど。

 

「それがゲヘナ関係だっていうんなら、何個もラボある東京で今更無関係なヒュージの方こそ、圧倒的に少ないと思うけど?」

 

「それは勿論承知しておりますわぁ。ですがその上でもあのヒュージについては色々と不可解だったので、折角来られたのなら情報を共有しておくべきだと思いまして」

 

 話の切れ目にスッと渡されるのは、調査報告書とかの類いだろう、クリアファイルに挟まれたもの。

 

「ふむふむ……当分利用されていた痕跡のないビルに、明らかに何かを隠そうと上半分を潰しながら現れたギガント級ねぇ」

 

 他にも気になった部分に手書きだろう付け足しがあるけど、確かにまあ、何もないはずのところに何かありますよと言いたげな出方をしましたなんて、どこからでも疑ってくれと言わんばかり……足の引っ張り合いにしたってもう少し上手くやれよってやり口は、ゲヘナの内部抗争としても大分アレか。

 

「で、これは貰っていいってこと? 写しにしたって外に出していいものかって感じだけど」

 

「知るべき相手に届く分には、何も問題はありませんわ」

 

 つまりバレたら問題になるって、ようやく口を挟んできた初からの言外の圧が強いけど、それだとさっきまで霊奈さんといたんだから、ちとタイミングは悪かったか。

 まあ、今度隙見て姉さん呼び出せば……いや、二足のわらじ状態だしそんな暇あるかぁ?

 

「了解了解。とりあえずお礼って訳でもないけど、お土産どうぞ」

 

 今回の目的からこっちは本命でないとはいえ、流石に手ぶらってわけにもいかないからね。と出してみるのは──

 

「おー、鳩サブレー。いかにもって感じですね」

 

 まあその通りなんだけど、話が終わったからって遠慮ないね梢ちゃん? というよりブレイザー持ってるから、ちょうどメンテが終わっただけなんだろうけど。

 

「これでわたしの仕事終わったんで、食べていいです?」

 

「好きになさい」

 

 そういうとこやぞ。と話したばかりな純の素っ気なさだけど、最早慣れたことだと気にせずブレイザーを渡してくる梢ちゃんはそそくさと箱を空けると二袋確保して、燈ちゃんにも渡している。

 

「ほら燈も、折角だしもらっちゃいなよ」

 

「……いただきます」

 

 彼女も出自や御台場に来た経緯が色々アレだとは聞いたけど、さっきのセインツ一年の子たち含め、仲は良さそうで。

 

「ふむ、ならこれ以上はお邪魔かな? わざわざ時間作ってくれてありがとね」

 

「いえ、わたくしが主導だった訳ではありませんから」

 

 後輩の手柄は横取りしないと。そういう潔さがあるから、キツめの性格でもリーダーとしてやって行けてるのかね?

 

「ところで純お姉様、こうなるとあたくしがお部屋に伺う件は……」

 

「当然、用件が済んだのだから無しですわ」

 

 いや、食べかけのサブレ落ちてるが。なんの約束があったか知らないけど、そこまでのショックのまま純にしがみついた燈ちゃんは、手に当たる純の髪を引っ掴んで何をトチ狂ったかそのまま食べよう──なんていうのは姉の前で許される訳もなく、威圧的な笑顔の初に蹴飛ばされているから、これもまたいつものことなんだろう。

 

「ま、お後がよろしいようで」

 

◆◆◆

 

 これで慌ただしい移動も最後だと、また色々と乗り継いでる間に一応、姉さんに色々と最近のことで問い詰めたいから時間空けられるか、とメッセージは送ってみたけど、この東京のザワつき具合からして、返事すらいつになることやら。

 

「ふぅ……」

 

 何にせよこっちは普通に地図を頼りに、校門の方に向かってみれば、見覚えがある三人の姿が。

 

「あ、雪華姉ー」

 

 その先頭にいるのは、空色の髪を腰まで届く長めのローポニーにした、やっぱり空色の瞳な従姉妹の姿。夕暮れ時なのや会うのが久しぶりなのを抜きにしても赤い神庭の制服だし、大分印象変わるなぁ。

 

「やっほ、久しぶりなのに急で悪いね」

 

「まあ、その内来てよって言ったのアタシの方だし? それがついででも、ね」

 

 実際本命はグラン・エプレだし、だからあやちゃんの後ろにも姫歌ちゃんと灯莉ちゃんがいる訳で。

 

「二人もこないだぶり。とりあえず、これお土産ね」

 

「お~、ハムだ☆定盛定盛、これでおにぎり巻いてよー」

 

 なんで最後に残ったお土産を渡してみると、早速開けて灯莉ちゃんは姫歌ちゃんへいつものように絡んでいる。

 

「一本丸ごとって、どんだけ大きいの握らせるつもりなのよ……でも、いいんですかこんなの貰っちゃって?」

 

「ん、ダメなら挨拶がてら生徒会にでも「ありがたく頂きます」

 

 や、なんか姫歌ちゃんの遠慮が、生徒会って口にした瞬間消し飛んだんだけど?

 

「え、会長さんお肉ダメとかそういう系?」

 

「いえ、その……神庭(ウチ)って、灯莉とか紅巴みたいなタイプの子、相当多いんですよね」

 

 まあ、あやちゃんもわりとそこ二人と同列な暴走寄りだとは思うけど……あぁ。

 

「つまり、生徒会にも?」

 

「彩文が何度か生徒会の手伝いだーって顔出してるって話を聞く内に、そういう感じの先輩がいるとか、なんとか……」

 

「うーん、まあハムとか持ってったら、翌朝生徒会室で煮込まれてるのが発見されるかなー」

 

 どういうこっちゃ。とはいえ事情は理解した、下手に会長さんの胃痛の種は増やしてやるなと、そういうことね。

 

「じゃあおにぎりでもお寿司でも好きに食べてよ」

 

「なんでお米限定なんですか……」

 

 いやだって新潟っていえばお米じゃん? 少なくとも灯莉ちゃんからはそういう認識みたいだし。

 

「で、ところで紅巴ちゃんは?」

 

「あれ、聞いてないんですか?」

 

 んむ? 何故に彼女の不在理由を私に知る機会があると……なんて話しながら歩いていたら、中庭のベンチでメモなりスケッチブックなりを持って見詰めあっている、リリィオタクふたりの姿がその答え。

 

「二水ちゃん?」

 

「あ、雪華様。ごきげんようです!」

 

「ああうん、ごきげんよう」

 

 いやまあ確かに今はレギオンの人数十一人だし、私と+1抜けても問題ないだろうけどさぁ。この行動力、伊達や酔狂でリリィオタクと名乗ってる訳ではないということか。

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