アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:しーくれっとなたかなほと胃痛秋日様とその元凶とりみりん。りみりん。
いや、ね。先月イルマやってたじゃないですか?作中はオタク解説の通り、まだ一作目の途中くらいで半端な時系列のつもりですけど。

神庭の濃さと久々のリリィオタク大暴走とでまだ百合ヶ丘に帰れませんが、ここまで来たら拾い切ってからでいいやと突撃するのみ。
それと、今更ながら新年初更新ということで、明けましておめでとうございました!



すれ違う花びら

「お待たせしましたー」

 

「お、おん……」

 

 さて、話している内に用意も済んだようで、私の前にはお皿に乗った結構なサイズのハンバーガーと、左右の二人には言ってた通りに真っ赤な……本当になんだろうねこれ。

 ライスの小山を端に、赤いクリームソースがカレーとかみたいな感じに盛られてて、そこに星型のポテトやオクラをちりばめて彩りのバランスは取ろうとしてるんだろうけど、なんとも見た目のインパクトが凄い。ともかく自分の注文を受け取ると、こっちもしみじみと眺めてみよう。

 

「にしても、こういうお店でハンバーガー頼むのって初めてなんだけど、お皿に乗ってるとまたイメージ違うねぇ」

 

 普段は乗せて包んでドン! な早くて安いファーストフードのばっかり食べてるもんだから、ちゃんとした感じで出されると、中々新鮮。

 上のパン……こういうタイプってバンズ呼びだっけ? ともかくそれが少しズラされてることで具材がよく見えるし、自分で位置を合わせれば、今から食べるぞとスイッチが入る。

 

「はむ……」

 

 ふむ、良いのは見た目だけではないぞと、フライ物でなく焼いたチキンでのハンバーガーというのも、これは中々……で。

 

「なにさ、その物欲しげな顔は」

 

「ほら、アタシのも一口あげるからさー」

 

 そう言いながら、あやちゃんがひとすくいルナトライスを乗せたスプーンを向けて来るけど……

 

「あむ。はいはい、一口同士ね」

 

「いえーい、雪華姉は話が分かるぅ~♪」

 

 いや、大分大口開けて食らい付くね? まあ神庭の近くだし、何かしらの用事で寄ったついでにまた来れば……ああいや、こっち側のメニューは変わるって話か。なんなら定食も日替わりだし、安定してるのってラーメンくらい?

 

「雪華様、こうしてるとホントにお姉さんみたいですねー」

 

「従姉妹よ従姉妹。てか二水ちゃんは一応あたしが『お姉様』なの知ってるでしょうに」

 

 とはいえ結梨ちゃんに関しては、経緯が経緯なもんだから一柳隊総出で保護者モードだ。シュッツエンゲルだろうと、別に私だけが特別妹扱いしている訳でもなし。

 

「はー、お姉様ねぇ。いくら百合ヶ丘通ってるからって、雪華姉にそんな少女マンガ的キラキラ~ってしたのがやれるとは思わないけど」

 

「立場上そうってだけで、特にそれっぽいことはやってないってば。『タイが曲がっていてよ』なんてのは、同室の楓さんが朝部屋出る前に終わらせてるだろうし」

 

 逆にそっちはやけに絵になるというか、無駄に様になりそうというか。もし本人に伝えても、どこか悔しそうに「梨璃さんとやる時に備えてのトレーニングですわ」とか言いそうだけど。肝心の閑さんの牙城を崩せる目処は、まだまだ立っていないようだ。

 てか、そもそものチャンス自体、寮を移る年度終わりだけじゃないかなぁ?

 

「ちぇー、つまんないの」

 

「つまんなくていいんだよ、つまんなくて」

 

 勿論何か困ったことがあったと頼られれば、その時はお姉様として全力で応えるけど、そうでないのなら結梨ちゃんは産まれが産まれだ、まずは普通に学生らしく過ごしてくれれば、私はそれでいい。

 なんて駄弁りながらも間に食べ進めてはいたから、二杯目になるラムネを飲み干す頃には私のお皿は空になっていて、左右の二人も大体後一口二口くらいの量。

 

「んじゃ、ここは私が払うよ。お会計は?」

 

「600円のテスタメントバーガーがひとつ、1300円のルナティックトランサーライスがふたつで、3200円になります♪」

 

「あれ、ラムネ分は?」

 

 追加までしたんだから忘れられてることはないんだろうけど、一応確認すれば「今回はサービスです♪」とのことで。まあそれ抜きでも一人分大体1000円とすれば、東京で食べたにしては安過ぎる方でしょ? 私も今日は昼間で結構懐寂しくなってたし、有り難い話ではあるんだけど。

 で、リリィに人気ってことは学生の相手が基本な穴場みたいなとこだろうし、採算は度外視なのかねぇ?

 

「って、なーにカッコつけてるのさ雪華姉。今はアタシも生徒会のヘルプでそこそこ稼げてるんだから、自分のくらい払うってばー」

 

「わ、わたしも流石にこれくらいなら出せますよ、雪華様!」

 

 いや、本当にただのカッコつけではあるんだから、素直に奢られてて欲しいんだけど……うーむ。

 

「じゃあ、せめて割り勘で」

 

「それ結局三桁の雪華姉が損するだけじゃん~」

 

 むう、やっぱり似合わない背伸びなんてするなってことなのか……でも、こういう時ってなんか奢りたいじゃん? それで昼間は大ダメージ負ってるけど。

 

「えっと、せん、さんびゃく……あった!」

 

「はい、丁度頂きます」

 

 で、あーだこーだ言ってる内に二水ちゃんは自分の分を払ってると。そもそもゴネられてる時点で、私の負けか。

 

「はぁ、どうにもカッコつかんね」

 

「そんなもんでしょ。雪華姉のくせにらしくないことするからー」

 

 分かっちゃいるんだよそんなことは。それでもこう、雰囲気とかね? ……これ以上は傷に塩か、さっさとお金払って出よ。

 

「じゃ、多分また来るよ」

 

「はい、いつでも歓迎しますね♪」

 

 うん、まあお店としてはいいと思うよ、お店としては。

 

◆◆◆

 

「ほ、本当に貰っていいんですか!?」

 

「まー、アタシも雪華姉もそういう系は最低限って感じだしねー」

 

 もう完全に日の落ちている帰り道、ブロマイドと言われてもあんまりピンと来ない人種な私たちが、刺さる人種な二水ちゃんに自分のをあげていると、話の途中であやちゃんの足がピタッと止まる。

 

「あれ?」

「どしたん?」

 

「んー……このまま進むと、ちょっと面倒なことになるかなー」

 

 額に人差し指を当てながらのそんな言い方には、思い当たる節があるから念のため確認を。

 

「……覚醒したの、いつ?」

 

「えーと、多分上京してからかなー。明確なタイミングは分かんないけど、前に『あの子危ないなー』って思った時に、こうピキーンと()()()

 

 あやちゃんとは親戚ってこともあって、お互い家は近かったし昔からよく会ってはいたけど、その頃から時々やけに勘が鋭かったというか、今思えば無自覚に『虹の軌跡』程度を使ってたんだろうなって場面が、いくつかあった。トラックに轢かれそうだった猫を、無傷で助けたりね。

 

「つ、つまり、彩文さんのレアスキルは……?」

 

「うん、『ファンタズム』だってさー。レアものだーって言うけど、有名どころのレギオンってこれか『カリスマ』持ちかのどっちかがほぼ確でいる気がするのは、アタシの気のせい?」

 

 まあ、私の『円環の御手』共々発見からそこまで時間が経ってないから、相対的に発覚している人数も少ない……っていうのが希少スキルって呼ばれてるレアスキルの実態で、ファンタズム持ちもOGで勘の良かったレアスキル未覚醒の子に何人か混ざってても不思議じゃないとは、なんとなく思ってはいる。

 

「うーん……スタメン九人の中でなるべく被りを避けるなら、この辺りはどうしても確保しておきたいラインではありますからねー」

 

「先読みにMP回復、固定の『レジスタ』は当然として、『ヘリオスフィア』でも置いとけば後は他に回していい感じ?」

 

 その辺りの土台がしっかりしているなら、攻めるにせよ守るにせよバランスは取りやすいだろうね。

 なんてレギオン編成談義はともかく、今の都内で面倒なことなんてほとんど一択ではあるけど、一応聞いておこう。

 

「で、面倒なことってーと、どうせヒュージでしょ?」

 

「せーかい、このまま進めばぶつかるよー」

 

「んー、正直めんどくさいけど、見過ごすのもなんかなぁ」

 

「あれ、意外とやる気ない感じ?」

 

 別に理由なら昼間改めて確かめてはいるけど、問題はそっちじゃないというか。ケータイのサーチャーやヘッドセットで少しサーチをかけてみても、今のところ反応がないし。

 

「いや、私らは別に今更いいけどさぁ。あやちゃんゲヘナに喧嘩売って大丈夫なん?」

 

 こんな半端なところで、なんの反応もないヒュージ……と言われると大体ゲヘナの仕業でしかないだろうし、勢力外な神庭のお膝元となると、余計嫌な雰囲気。

 

「……え、わたしもアウト扱いですか?」

 

「というより、『私の』レギオン仲間全員かなぁ」

 

 散々カチコミかけてた烏丸隊は言うに及ばず、一柳隊も鶴紗ちゃんと結梨ちゃんの件で真っ正面からゲヘナの企みを蹴飛ばしちゃってる訳で。これでノーマークですっていうのは、情報を伏せて誤魔化せたであろうおじさまが政府に食い込む前な以上、流石にあり得ない。

 

「んー? いや、普通あいつらのやってるコト知ったら『ぜってえ許さねえ!』ってならない?」

 

「まあ、それはそう」

 

 仮にゲヘナの世界への貢献が100点あったとしても、既にその万倍以上の減点があるのだから、もう許されようだなんて思うなよ?

 なんて、単純過ぎる算数の話──とまで言うと少し冷めて聞こえるだろうけど、結局はその程度の話でしかない。世のため人のためなんてありきたりな建前では誤魔化せない程、やつらは血を流しすぎた。

 

「とりあえず、ガーデンにも連絡だけはしといて。何かあった時のために」

 

「はーい」

 

 こういうとこは素直なんだけどなぁと、こんな連絡を受けたら秋日さんが頭を抱える羽目になりそうと他人事に考えながら、こっちも念のため短めにメッセージを送って、CHARMとアーマーを展開しておこうか。

 

◆◆◆

 

 そのまま多少辺りを警戒しながら路地を抜けると、川を挟んで向こう側が少し騒がしく感じる。

 

「この先かね。あやちゃん、橋はどっちに?」

 

「こっちだけどー、飛び越えた方が早くない?」

 

 まあ、それはそう。ヒュージが出てるらしいのに警報もメールのひとつもありはしないとくれば、もうお行儀よくする必要のある場面でもないということで。

 なら遠慮もいらないかと、向かい側の道の塀にアンカーを打ち込み、一足先に突入するとしよう。

 

「雪華様!」

 

「っと、東京はこういうタイプ多いよねぇ!」

 

 二水ちゃんの『鷹の目』で見たのだろう警告の理由は、左前の道から飛び出して来た小型ヒュージ。都内でよく見るダニだかノミだかの巨大化したようなタイプだけど、今更この程度不意討ちにすらならないと左のシールドで受ければ、タンと跳ぶ音に次いであやちゃんの声が。

 

「そのまま受けてて、てやっ!」

 

 さて、ヒュージに突き刺しているCHARMは、見た感じティルフィングのR型。鶴紗ちゃんたちの使っているT型が威力重視なら、こちらはスピード重視……にしては、記憶にあるのより幾分かゴツく見えたし、シューティングモードで刀身が真ん中で上下に開くのは、ダインスレイフ系列の特徴なはず。

 なんて分析している間に、刺し傷を抉じ開けながら撃ち抜かれてヒュージが吹き飛べば、すたりとあやちゃんも着地している。

 

「なんか妙なカスタムしてるねぇ、それ?」

 

「そう? まーまだ試作品も試作品だしなー、一応れいにゃんさんの自信作だって話だけど」

 

 れいにゃん─いや来夢ちゃんじゃなくて。てへぺろ顔も可愛いね?─響き的に、霊奈さんか? そりゃあこっちも都内同士だろうけど、まーた何を企んでるのやら。

 

「雪華様、誰かが戦ってるみたいです。光から……さん、し、五人?」

 

 ともかく二水ちゃんが鷹の目を続けていると、暗いながらに最低限見えはしているようで、曰くその内の一人はこちらに向かって来ているらしい。

 まあ、自分たち以外の戦闘音が聞こえたら、敵か乱入者かの警戒はするでしょう。

 

「……竜胆(りんどう)様。百合ヶ丘のリリィ二名と、神庭のリリィを一名確認しました」

 

 さて、近くの道から出てきたのは、エレンスゲの制服を着た紫のツインテールなリリィ。咄嗟に手にした紅いマルテを構えようとしたのを下げながら、通信先の相手に報告をしているようだけど、何故か二水ちゃんに反応が。

 

松村(まつむら)優珂(ふうか)さん?」

 

「まさかこんなところであなたに会うとはね、二川二水」

 

 エレンスゲの知り合い……あー、つまりこの子が、こないだ聞いた序列2位の子か。

 

「知り合いなのー? 二水ちゃん」

 

「その、色々ありまして……」

 

 そこら辺知らないあやちゃんは意外そうにしてるけど、二水ちゃんって確か百合ヶ丘に入学する前、関東のガーデンを自力で回ってたとかなんとか、自力で。んなことしてたもんだから、当然その間に培われた技術は最早サバイバルレベルだったらしい。

 ──これは完全な余談だけど、いつぞやキャンプと言われて誘われた日羽梨は、ウキウキで出掛けたものの二水ちゃんのあまりのガチっぷりに『テント、ペットボトル、ライター!!』と魂の叫びを上げる羽目になったらしい。御愁傷様。

 

 ともかく、そうして色々と回っていた時の知り合いなのだろう、序列2位さんは頭を押さえて「なんでこんなところに……」と呆れ気味。

 

「まあいいわ。とにかくこの状況の意味、横浜に殴り込みをかけておいて、今更分からないとは言わせないわよ」

 

「……やっぱり、そういうことですか」

 

「…………」

 

 そりゃあ、反過激派とでも呼ぶべき立場のクエレブレ(特務レギオン)がわざわざ動いている以上はゲヘナ絡みなんだろうけど、裏側では大分詰みが近い国内のゲヘナも、社会的にはまだ単なる一般企業なのだから、表立って攻撃などしてしまえば、世間には殴った側が悪いと映ってしまう。

 

 故にお互い内容をボカしたからには向こうの反応は肯定も否定もなく、答えないことこそを回答としているのだから、こうして見られたのすらあまり良くはないのだろう。

 

「ま、そのこと知ってるならこっちもスタンスは同じ……って言いたいところだけど、初見じゃイマイチ信用ならないか」

 

「では、神庭の生徒会として約束させてもらいましょうか」

 

 なるほど、確かに校長直属の特務レギオンと他校の生徒会との確約とすれば、お互い下手なことをすればガーデン間の政治的な問題に発展し……いや、生徒会としてって??

 

「あれ、いしちゃんセンパイお店はいいのー?」

 

「ええ、『生徒会役員として問題解決に当たるように』と指示が出ましたので。お店はヘルプをお願いしています」

 

 まあ、生徒会のメンバーで一番近いのなんて外に出てる藤乃になるんだろうけど、任せて大丈夫なんだろうか? 色々と。

 

「……意外ね。神庭はゲヘナ絡みに関しては中立だったと思うのだけれど」

 

「中立というのは、故あればどちらにでも転ぶ立場でもありますから。ですので今回の件は『不明ヒュージの対処のため、()()()()()()()()()他校のリリィのみなさんに、わたくしから協力をお願いした』という形でどうでしょう?」

 

 「いっそのことお客様でした。ということにしても構いませんよ♪」なんて藤乃が付け足すように、問題解決が最優先であり誰がいたかなんて部分はこの際重要ではないと、妙に物分かりがいい。

 

(んー、これシモキタのやつ多少は上にも話通してるのかなぁ)

 

(どうなんでしょう……後で紅巴さんに確認してみます)

 

 私が優珂ちゃんに無警戒なのも、二水ちゃんの知り合いだって以上に、敵の敵ならほとんど味方のようなものだってそこで得た情報の先入観あってのことだし、神庭の生徒会にも最低限そこの報告があったなら、この流れも分かる話ではある。

 

 私はどうかって? 姉さんたちは勝手に覗いてるって白状してたし、今更報告するようなことでもないでしょ……ガーデンの方? 前のレギオンからの素行の悪さのせいで、上からの覚えも根本的に悪い私が言ったところでなぁ。

 仮に生徒会までは本人捕まえて直に話せばいいとしても、それ以上は理事長どころか代行にすら届くかどうか。

 

 まあ、二水ちゃんには細かいこと抜きで伝わったように、当たり障りのない部分はレギオン内で共有してはいるけど。神庭もそこから叶星や高嶺辺りが、かなぁ?

 

「……助かります」

 

「いえいえ♪人にだけ周りの目を気にしながらヒュージと戦え、だなんて言えませんから」

 

 ともかく納得はしたらしい優珂ちゃんへの藤乃の言い回しには、自覚あってアレかぁと言いたくはなるけど、アレもアレで彼女なりの芸術、アートの一種なのかも……苦しいか。

 

「話がまとまったなら確認しときたいけど、何かアウトなことは?」

 

「戦闘においてなら、特には。通信はエリア内ではともかく、外からや内から外への物はジャミングをかけていますので、そのつもりで」

 

 ふむ、大体背景は読めてきたかな? この手のジャミングは、烏丸時代何度か仕掛けた側として経験があるけど……つまり、このエリア内に逃がしたくない『誰か』がいるということ。別働隊もいるみたいだし、そこの深入りは厳禁として。

 

「了解。なら軽く挨拶だけはしとくけど、私は百合ヶ丘三年の黒紅雪華。こっちのが従姉妹の神代彩文」

 

「こっちのでーす」

 

「では改めて、神庭の生徒会二年、石塚藤乃です」

 

「さっきも二川二水に呼ばれたけれど、エレンスゲ女学園一年、松村優珂よ。一応、よろしく」

 

 素っ気ない態度から、過度に馴れ合いはしないと。それくらいがいいんだろうね、本物の特務レギオンっていうのは。

 

◆◆◆

 

 少し進めばもう一人、オレンジの髪に黄色のメッシュを入れた長髪のエレンスゲ生がいて、こっちのメンバーを見て「ふーん」と声を上げる。

 

「で、ほんとに百合ヶ丘と神庭の生徒連れて来たのか」

 

「疑っていたんですか、緋紅(ひぐれ)様?」

 

「いいや。ここは神庭のシマだ、そっちのリリィが出てくる方が自然ってもんだろ? 百合ヶ丘も、まー無関係な顔ぶれってワケでもなさそーだし」

 

 先輩らしいその子は胸元辺りまで制服の前を開けていたり、ジャケットをスカートにインして袖を軽くまくっていたりで、口調も合わせて少しワイルド系な感じはあるけど、流石に上位レギオンの一員らしく、理解は早い。

 

「ま、黙って協力してくれるってんなら断る理由もねぇ。あたしは二年の苅谷(かりや)緋紅(ひぐれ)だ、足だけは引っ張んじゃねーぞ?」

 

「こっちは通信で聞こえてるだろうから割愛で、邪魔にならない程度に張り切らせてもらうよ」

 

「それでは緋紅様、こちらはお任せします。二川二水、あなたは私と来なさい」

 

 まあ、知り合いだっていうんなら二水ちゃん相手には目を光らせておかないといけないって分かるだろうし、こっちはあやちゃんの方付いときたいしで、そこら辺は任せようか。

 

「は、はいっ!」

 

「では、こちらのもう一人はわたくしで」

 

 言いながらわざわざこっちをチラリと見たし、藤乃は空気を読んでくれた……ということでいいのだろうか? うーむ、趣味はともかく他は気配りも上手く随分とやり手だからこそ、生徒会役員をやりながら食堂まで経営してられるということなのやら。

 

「じゃ、こっちは従姉妹でお邪魔しまーす♪」

 

「おう! にしても百合ヶ丘、それも『一柳隊』ねぇ……

 

 呟きながら、人懐っこいあやちゃん相手はともかく、私には微妙そうな視線を送ってくる緋紅。

 そうなる理由なんて、ウチがどこと同盟を結んでるかと色々入り組んでるエレンスゲの事情から来てるっていうのは分かるから、こっちとしては特に気にするようなことでもなく。

 

「ま、こっちはそっちの政治的アレコレに首を突っ込む気はないからさ、同じ敵がいる内は好きに使ってよ?」

 

「……そー言われると、あの連中の同盟相手だからってだけでヘンな目向けた、あたしの方がワルモノみてーじゃん」

 

 実際、ヘルヴォルは校長サイドとは意図的に接触の機会を奪われてるみたいだし、連携なんて望めない以上あくまで敵の敵止まりで、仲間とまでは行かないんだろうけども。

 それに、結局一葉ちゃんも学園から正式に出された任務自体はこなしてるみたいだし、仮にその中で本人たちに気付かれない程度でも過激派に利益を出していたら、気に入らない感じになるのも仕方ないとは?

 

「ま、派閥単位でピリピリしがちな百合ヶ丘に比べたら、この程度は可愛いもんだよ」

 

 なんて最後に肩を竦めてみれば、緋紅も最低限警戒は解いてくれたようで、髪をくしゃくしゃと掻きながら返してくる。

 

「わかった、同盟だなんだってのは今は気にしねー! 代わりに、別行動のあいつら以上には働いてもらうからな?」

 

「そういうのは慣れっこだよ。ポジション的にも、学年的にも」

 

「んー、盛り上がってるとこ悪いけど、アタシにも分かるよーに話すべきだと思うなー?」

 

 勝手に通じ合っていると、一人仲間外れなあやちゃんとしては面白くないようで、頬を膨らませて抗議を。

 

「そんな難しいことじゃねーよ。クエレブレと仲悪いレギオンが……雪華様、だっけか? そっちのレギオンと同盟結んでるってだけで、別にあたしら同士に直接の因縁があるってわけじゃねーからな。それでケンカすんのも、なんかバカらしいだろ?」

 

「おー、わっかりやすーい♪やりますねー姐御」

 

「……あたしって、やっぱそういう風に見えるのか?」

 

 おや、存外そこら辺気にしてらっしゃる。とはいえ、パッと見た感じどう呼ぶかってなると……まあ同意見かなぁと、ノーコメント。

 

「じゃ、早速行ってみよー! 《ファンタズム》っ!」

 

◆◆◆

 

─ファンタズム─

 

「……今、わたしの未来に誰かが触れた?」

 

「いや、いきなり詩的なこと言ってどーしたのさ結爾(ゆに)?」

 

「止めないでください蒔菜(まきな)! 今のは確実にわたしと運命の──」

 

◆◆◆

 

「んー?」

 

 意気揚々とレアスキルを発動したわりに、すぐに首を傾げて解除した風にされれば、気にするなと言う方が無理というわけで。

 

「どしたんあやちゃん?」

 

「いや、なーんかファンタズム使った時ノイズ? じゃないけど、ちょっと混線したっていうかー」

 

 という訳で聞いてみても、要領を得ない返しに二人して疑問符を浮かべていると、心当たりがあったのか緋紅は片手で頭を押さえている。

 

「あー、そりゃ多分ウチの後輩だ……うん、確かにストライクゾーン入ってんな」

 

「はいはい。どこにでもいるのね、そういうタイプは」

 

 なんなら今日行った各ガーデンも最低一人は『その手の子』がいたように、ガーデンも結局は年頃の女の子を集めた女子高な訳で、そんな同姓だらけの中()()()に走るっていうのは、わりとあるのかどうか……制度のせいか、百合ヶ丘内だけでも該当者が大分いるもんだから、正直コメントに困る。

 

「まあいいや、それじゃ……切り捨て御免!」

 

 とはいえ混線していたとしても未来はしっかりと視えたようで、右手で吊り下げるようにティルフィングの刀身の裏に増設されていた取っ手を持ち、本体側のグリップに左手を添えたあやちゃんは、曲がり角から現れたヒュージを居合い一閃。更に近くの塀を駆けて跳び上がると、落下の勢いも乗せた一撃でその後ろの二体目も一刀両断。

 

「へー、大分イカしたカスタムしてんじゃねーか。R型がベースなんだろーけど、本体側はもうショートどころか刀だな」

 

 緋紅が少し面白そうに眺めるように、あやちゃんのティルフィングは刀身パーツ側の峰の部分が鞘のようになっていて、そこに納まっていた本体側のブレードも、長さだけならほとんど差がないまでになっている。

 

「あの主任の趣味だ、これって多分……まさか、ねぇ?」

 

 あやちゃんが納刀するのを眺めていると、マギクリスタルコアの辺りにカバーガラスのようなパーツがあるのが目に入り──漢字浮かんだら一発アウトなやつだこれ。

 そろそろ色々な問題で襲撃されるんじゃないかなぁ、あの人。渡された『それっぽい』CHARMにノリノリで一切隠す気のない名前を付けてる私が、今更霊奈さんのこと言えた義理じゃないけどさ。

 

「ん。そろそろボス来るよ、ほら早く!」

 

「従姉妹が随分張り切ってるぜ、ねーちゃん?」

 

「はいよ、さっさと終わらせる!」

 

 警報を出さずとも誤魔化せる程度のヒュージなら、三分割出来る戦力じゃ過剰だったかもしれないけど、だからってノースコアってのは格好が付かないからね!

 

◆◆◆

 

「せぇぁっ!」

 

 バスターソードでミドル級を突き刺し、そのまま合体を解いたソードビットで内側から引き裂いて、上に放り投げたソードライフルの代わりに抜いたソードガン二挺の散弾モードで残骸を吹き飛ばし、落ちてきたソードライフルは背中のシールドに納めるように受ける。

 

「ほとんど曲芸だなぁ、っと!」

 

 そう言う緋紅も大型のCHARMなモンドラゴンを慣れた風に振るい、突っ込んで来た飛行型ヒュージへ痛烈なカウンターをお見舞いしているのだから、お互い様ということで。

 

「邪魔邪魔~!」

 

「……それ、そういうCHARMだっけ?」

 

「こういう風にしてってお願いしたからねー」

 

 一方あやちゃんは、抜刀したショート……ロングブレードと逆手に構えた刀身パーツの二刀流で、ヒュージの動きが視えていると言わんばかりの勢いで攻めと受けを同時にこなしながら先頭を独走しているのだから、覚醒して日が浅くともファンタズムはもう馴染んでいるようで。

 

 そのまま駆ければ開けた道に出た、なんてタイミングで向こうから見えるのは優珂ちゃんのチーム。上手い具合に、挟み撃ちの形は取れたようだけど。

 

「おっとと、お出ましかい?」

 

 少しの揺れの後地面を割って飛び出てくるのは、どうにも見覚えがあるヒュージ。試しにガトリングを展開して撃ち込んでみれば、付いた傷もすぐに──

 

「おいおい。丸々使い回しは流石に芸が無さすぎでしょーが」

 

「つーことはアレか、横浜の?」

 

 警戒しながらだし、緋紅への返事は首肯で済ませるけど、そりゃあベースは別段特型という程でもないたまに見るようなクラッシャー種のヒュージではあったにせよ……いくらデータが姉さんたちの横入りで取れなかったからって、また同じの作りましたー。なんてのはもう呆れの方が強い。

 

◆◆◆

 

「このタイプのラージ級は、以前あなたたちのレギオンが対処したと聞いているわ、特徴は?」

 

 ラージ級──クロコと呼ばれるタイプだったかと記憶を探って、そのヒュージに引き連れられるように現れた小型ヒュージを、優珂がマルテで牽制しながら二水を引き寄せると、答えは即座に。

 

「は、はい! このタイプは『リジェネレーター』を付与されていて、通常攻撃では有効打を望めないと、ノインヴェルト戦術での一撃必殺で撃破しました!」

 

「へぇ。それはそれは長く楽しめそうな相手ですが……あまり時間も?」

 

 建前はともかく、この場の主導はあくまでクエレブレだと、藤乃も手頃なヒュージをクリューサーオールで突き刺し、そのまま振り回して地面に叩き付けながら聞いてくれば、そこの部分は隠す必要もないと優珂も事実のみを告げる。

 

「ええ。そろそろ撤収に入りたいところでは……」

 

『ならば迷うこともないでしょう。ノインヴェルト戦術、開始するわ』

 

 そのタイミングで竜胆からの通信が復帰したということは、同時に主目的も達成されたのだから、もう親玉だけ片付ければ後は任せていい──とは言わずとも伝わるから、優珂も意識を切り替えていく。

 

「分かりました。ラージ級を釘付けにするわ、緋紅様!」

 

「おっしゃ! 任せとけ!」

 

─ヘリオスフィア─

─テスタメント─

 

 『テスタメント』の影響下で無数に展開される光の壁が小型ヒュージを阻み、クロコの動きをも多少鈍らせた隙に各々が手近なヒュージを撃破すれば、六人で残った一体を囲む形になったところで『円環の御手』の二人が飛び込んだ。

 

「ふふふ。そう簡単に壊れないでくださいね♪」

 

「簡単に壊れないから苦労したんだけど、ね!」

 

 藤乃のクリューサーオールとグングニル・カービン、雪華のバスターソードとナギナタの連撃の隙間に残りの四人からの集中砲火が刺さり、当然そこまでされればクロコも再生の合間に反撃を試みるが、伸ばそうとした触手はその場でグングニル・カービンにより刈り取られ、レーザー攻撃も優珂の『ヘリオスフィア』による障壁が防ぐ。

 

「ま、いくら強化されててもこの数相手にラージ級じゃあね」

 

「とはいえ、確かにタフだなこいつ。再生の速度がハンパねーぞ!」

 

 突入した二人が一旦下がった時点で、もう目立った傷は残っていない。大型ヒュージ故のマギ総量で回復に専念されれば、やはり囲んでも中々仕留め切れないようで。

 

「おっまたせ~」

 

 であればやはりノインヴェルトしかないか。と改めて確認したところに、どこか気の抜けた声と共に駆け付けたのは薄紫の髪に赤紫と紺色のオッドアイな、クエレブレ一年の賀川(かがわ)蒔菜(まきな)

 

「あれ、蒔菜一人だけか?」

 

「パスはちゃんと回してから来ましたよー? 緋紅姉さん。それに、結爾は今いつものアレ発症しちゃってるんで、連れてくるワケにもいかないっしょ」

 

 いつもの、なんて蒔菜の発言と少し前に彩文の感じていたレアスキル(ファンタズム)の混線……となると電流でも走ったような反応をしているクエレブレ『最後の』メンバーの様子がありありと浮かぶから、助っ人の竜胆に結爾の相手は任せてきたと言われれば、緋紅も「あー……」と納得した様子を見せるしかない。

 

「んじゃ、そういうことなんでちゃっちゃと終わらせちゃいます?」

 

「だな。もらうぞ!」

 

◆◆◆

 

 さて、蒔菜ちゃんだかから緋紅にマギスフィアが渡って、言葉通りならこれで四人目……そうなると。

 

「クエレブレは回し終えたら離脱して、こっちで仕留めとく!」

 

「しゃーねー、時間的にもそうなるか。優珂!」

 

 この状況、大捕物の最中ターゲットが苦し紛れに実験体ヒュージを出してきたとか、そういうパターンだ。烏丸隊として特務レギオンの真似事でラボを襲撃した時に、私も覚えがある。

 なら、緋紅からリーダーの優珂ちゃんまで回った以上、もう引き留めておく理由もない。

 

「不本意だけど、後は任せるわ。あなたもアルトラ級を仕留めたレギオンのメンバーなら、この程度はやれるわね?」

 

「あはは、アルトラ級の件はほとんど百由様のおかげで、わたしは対面すらしていないんですが……」

 

 それでも、対外的には一応由比ヶ浜ネストの討滅は一柳隊の手で成された、という形にはなっている。まあ百由がそこら辺のスコア稼ぎに一切興味ないのもあるけど、ネストに乗り込んだのは夢結と梨璃ちゃんの二人だし、トドメを刺したのも同上ではある以上間違ってはいないのがなんとも。

 ともかく、マギスフィアを二水ちゃんに渡した段階で、クエレブレの面々は散らばるように退避したのなら、後はこっちで面倒を見るだけ……ん、藤乃が優珂ちゃんに何か渡してる?

 

「ま、こういうシンプルな殴り合いってのが、一番気が楽だ!」

 

 今は気にすることでもないかとバスターソードを展開、バスターライフルに移行して一撃をラージ級に叩き込むと、怯んだ隙にソードへ戻して斬り抜け、二水ちゃんの側へ。

 

「二水ちゃん!」

 

「はい!」

 

 謙遜はしても、こういう場面ではもう躊躇いはない。そういうところは、確実に成長してると思うよ。

 なんて謎目線で二水ちゃんからのパスを受け取ると、背後の気配にはシールドだけを向けた一斉射を。

 

「さて、どっちにする?」

 

「アタシフィニッシュがいい!」

 

「はい、よ!」

 

 あやちゃんの返事を聞く間も藤乃は特に何も言わず微笑んでいるのなら、そこまで楽しめない相手だからと後輩に譲ってくれるようで。

 ……こういうのを察するのに、早くも慣れちゃったのはなんなんだろう。

 

「まあいい、かっ!」

 

 わざわざ戦場で考えるようなことでもなし、シールドのビームソードを起動しながらバク宙をして、ラージ級の頭上でサブアームに任せるがまま斬り付けながらバスターライフルは藤乃へ照準、マギスフィアを飛ばした反動にシールドからのブーストを加えて、ヒュージからの反撃をかわしつつ再びあやちゃん側へ。

 

「ひゃー、よく飛ぶねー雪華姉は」

 

「そう言うあやちゃんも、わりとアクロバティックな方だと思うけど?」

 

「いやいやー、アタシは地形利用が精々だし。ブーストダッシュとかは次元が違くない?」

 

 まあ、そう言われると否定は出来んけども。あやちゃんの動きは全然人の動きの範疇として、私はもう完全にロボ系とかの軌道だし、状況的にアンカーや足場の使用を極力控えててもこれだ。

 

「それでは、後はお任せします♪」

 

「りょーかい!」

 

 気軽そうに藤乃がグングニル・カービンでラージ級を牽制……というより滅多撃ちにしながら、クリューサーオールでマギスフィアを弾いて来るのに合わせて、あやちゃんはティルフィングをドッキングさせると体の前で横に構え刀身を展開、その間へ砲口から光の刃を伸ばす。

 

「ま、あの人が関わってるならこっちも付けるよなぁ」

 

「でぇりゃぁぁぁぁっ!!」

 

(……ん?)

 

 ヒュージへ向け大振りに振り下ろす瞬間、コアの辺りに追加されているパーツに浮かんだのは……絵文字?

 それが出た瞬間ビームソードの出力も引き上げられたようで、見るからにサイズも輝きも増して浮遊していたラージ級を一撃で地面に叩き伏せる程の威力を出している。

 

「これで、終わりっ!」

 

 流石にそれだけの攻撃をしたからか、オーバーヒートし廃熱している刀身パーツをパージして跳躍、空中でマギスフィアを受け取ると、少し落ちながらチャージが済んだタイミングであやちゃんがCHARMを振り抜けば、ヒュージが浮かび上がろうとした所へ頭上からマギスフィアが降ってきて……後は、この前と大して変わらない。

 

「……ふぅ」

 

「お手数をおかけします」

 

 とはいえ今度は街中だ、あまり被害は出さない方がいいだろうと、私はフリーになっていたから『聖域転換』とシールドの防御フィールドを合わせて、多少爆風の範囲は狭まるようにしてはおいたけど。

 

◆◆◆

 

『……乃……藤乃? 聞こえているなら応答を』

 

「あら、秋日さん。ちょうど終わったところですよ」

 

 クロコの撃破直後、クエレブレが離脱したからかジャミングも解けたようで、神庭からの通信に藤乃が出ていると、刀身パーツを拾った彩文がクルリと本体側を回して納刀しているところに、寄って来た雪華から質問が。

 

「で、感じからそれ『ぎっちょん』か『穏やかじゃないですね』なんだけど、注文はどっち?」

 

「アタシ的には前のだったけど、開発的には後ろ? なんか試製オーダーシステムがどーのこーのって言ってたし」

 

 結局アウトな方に進んでいるな……なんて雪華は無言で頭を押さえていると、気になる単語があったのか二水が反応する。

 

「オーダーシステム?」

 

「そ、コア同士の相互通信を介したデータリンクで強化術式の共有を~って話だけど、まだ自分にしか効果ないし、種類も少ない上に一回使うと丸ごとオバヒだしで、ホントにお試し版ーって感じ。名前も試作機らしく『X型』って味気ないしなー」

 

 ちなみに先程使ったのが光学兵器の強化用術式で、他には榴弾強化や斬撃強化、防御強化や防壁展開がセットされているらしい。

 

「な、なるほど……最近一部の企業が合同で何かを始めたって噂、これだったのかな……?」

 

「いや、なんで二水ちゃんが知ってるのよそんなこと」

 

 一応のツッコミを入れている雪華だが、そもそも楓や先程ブロマイドを引いた伊万里のような企業令嬢リリィも探せば存外いるレベルだし、企業傘下のガーデンもいくつかあるのだから、その辺りから少しでも情報が漏れれば即座に共有されるのがリリィオタクのネットワークだと、変な納得はしている。

 ……でなければ説明のつかないような情報を、他ならぬ二水が日々垂れ流しているのもあるが。

 

『なるほど、街中にヒュージが……それ自体はよくあることとしても、サーチャーも警報も一切反応せず、ね』

 

 その間に生徒会側は大体の報告を済ませたようで、元エレンスゲ生として嫌な予感がしているのか、通信越しでも秋日の様子が険しくなったのは伝わるから、和ませるように藤乃も話を逸らす。

 

「一応、協力して頂いたレギオンの隊長さんにはお店の住所は教えておきましたので、何かお話を伺えるかもしれませんよ?」

 

『今からだと間に合わないでしょう……まだ書類残ってるのよ?』

 

 いくら恨みっぽく言われようと、食堂に関しては正式に認可された以上立派な仕事のひとつでもあるのだから、適材適所だと諦めてもらうしかない。

 どうせ、処理するのが会長でなければいけない書類しか残していないのでしょう──などと口にしない情けは、藤乃にもあるが。

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