アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:mgmgと一人助っ人なクエレブレと再生怪人はサクサク倒せる法則とオーダー解釈と。
ゲームの都合とか抜きにすると、こういう感じのシステムになるのかなぁと…CHARMの形としてのモチーフ含めて、いくつかのモデルが混ざってるケド。

今回は女子会(?)ですってよ奥さん、なお一部某ユニコーンの暴走からの連想も込み込みでは。



乙女たちの夜会って話

 あのままお店に戻るという藤乃と別れて、ガーデンに戻れば今度こそあやちゃんの部屋に……の前に戦闘後の検査があったし、二水ちゃんも結局こっちに泊まることにしたしで、いざ揃ってみるとそれなりに時間は経っていた。

 ちなみに紅巴ちゃんはまたしても機能停止していたから、結局あやちゃんの方に二人してお邪魔することに。「たかなほ……手料理……」なんてダイイングメッセージ(肉声)から察するに、多分ふじの食堂のヘルプに行くのを聞いたと思われ。

 

「で、二人とも着替えアタシのでいい? 二水ちゃんはサイズ変わんないだろうしー、雪華姉も……まあジャージでいいでしょ」

 

「は、はい!」

 

「そりゃ、押し掛けたのはこっちだし贅沢は言わないけど……にしても部屋にバスルーム付きねぇ、流石に都内は設備が違う」

 

 百合ヶ丘の寮室も軽めの料理が作れるくらいのキッチンはあるけど、この辺りは方向性の違いかねぇ? 大浴場の有無もあるとして。

 

 ついでに、二水ちゃんとあやちゃんが並んでるのを見るにスケール感は大体同じな、二人して150cmをちょっと越えた辺り……つまり、こないだ測った時に162はあったはずの私からすれば、体感一段下くらい。

 

「あ、見ての通りアタシは先にお風呂入ったから、後はお好きに~」

 

 言いながらあやちゃんは既に赤いジャージに着替えてソファに座り込んでいるのだからまあ、言われずともというか。

 

◆◆◆

 

 ともかく先にお風呂に入って、とりあえず用意されていた青いジャージを着てはみたけど……

 

「や、なんで丈足りてるのよ」

 

「それ、まだちょっとは伸びる予定で大きめのサイズ買ったやつだからねー」

 

 んー、私で多少長いくらいじゃ、あやちゃんだとぶかぶかでしょうに。遅めの成長期でも期待して?

 

「いただきましたー」

 

「はいはーい、電源全部切っといてねー」

 

 何にせよ、二水ちゃんがお風呂から上がれば寮の消灯時間も近いだろうし後は寝るだけ……にしては、あやちゃんはなんかお菓子とかジュースとか色々持ち出してるし。てか、消灯近いからってテーブルライトでいいの?

 

「さーて、年頃のおにゃのこが三人揃えば姦しい。その心は?」

 

「……あーはいはい、パジャマパーティーの類いね」

 

 ほとんどジャージだけど、寝巻きには違いない? まあそう。

 

「いいじゃん、折角なんだし色々聞かせてよ? はい、年功序列で雪華姉からねー」

 

「それそういう意味じゃないでしょ? ま、別に面白いもんでもないけどさぁ……」

 

◆◆◆

 

 当然、中等部や烏丸隊時代のあんまり他人に話せないような暗い部分は伏せるとして、まずはこの前結梨ちゃんに話したような、リリィになったきっかけの部分から。

 

「まー、華おばさんに雪おばさんも百合ヶ丘だったしねー」

 

「そっちのおばさん現役時代どこだっけ、相模?」

 

「そうそう。だからそっちからも一応声は掛かってたんだけどー、なーんかあそこ堅苦しそうじゃん?」

 

 どうなんだろうなぁ。知ってる面子が大分自由な葵ちゃんとあの子にあげたお土産パクろうとしてた先輩、んでわりと葵ちゃんサイドな苗陽……ガーデンの規律とかの面はともかく、個性は大概強いな?

 

「実際のところ、どこ選んでも住めば都だとは思うけどねぇ。一般家庭からお嬢様の群れに飛び込んだあたしとかどーよ?」

 

「い、一応百合ヶ丘は『元』お嬢様校というか、あくまでベースですから……?」

 

 まあ、そんなこと言うと真面目にお嬢様なのってウチのレギオンで考えても……実家が会社やってる夢結と楓さん、家の太い神琳ちゃんと雨嘉ちゃん、一応貴族なミリアムちゃんくらい?

 梅とか鶴紗ちゃんはちょっと方向性違うし、梨璃ちゃん二水ちゃん、ついでに私は特にそんなのとは無縁な家、結梨ちゃんは特別枠と除外したら、ちょうど半々にはなるか。

 

「で、そういう二水ちゃんはなんで百合ヶ丘? 色々見て回りはしたんでしょ」

 

「えっ……あー、やっぱり聞かれますか」

 

 そりゃあね。触りとはいえ私だけ喋りましたじゃあ面白くない、こういう時の道連れは多い方がいいでしょうに。

 

「その、わたしは別に親がリリィだったとかそんなことのない、パン屋さんの生まれでした」

 

「あ、そこから?」

 

 とはいえ、わざわざそんな前置きがあるからにはやっぱり家に理由があるのかと、一言挟んだ後は口にクッキーを放り込んで、続きを促してみる。

 

「はい。それでなんでリリィに興味を持ったか、というかリリィオタクにまでなったかと言いますと……兄弟の影響でいつの間にかってくらい、自然と」

 

 そこら辺はどこの家も変わらないか、ウチも父さん→私→あやちゃんってオタクの系譜だし。

 なんて納得していると、きょうだいの話が物珍しいのか、あやちゃんは棒付きの飴を咥えたままズイッと二水ちゃんの方に寄って、興味津々。

 

「へー、何人いるの?」

 

「えっと、兄が二人に弟が一人、わたしは上から三番目です」

 

 ほむ、見事に男兄弟に囲まれてらっしゃる。それならあたしの趣味についてこれてるのも、大体その流れかね?

 

「おー、ウチはお母さんはともかくお父さん一人っ子だったから、きょうだいどころかイトコも雪華姉くらいなんだよねー」

 

「こっちは男女逆だけど、一番下の雪おばさんに至っては軍人上がりでまだ旦那さんも貰えてないと来た。今は百合ヶ丘で用務員さん的に働いてるけど」

 

 とはいえそこはお互い弁えてるというか、たまにすれ違えば挨拶する程度の距離感ではいる。てか、学校にまで身内がいるとかなんかこそばゆいし、若干意識しておばさんがいそうな場所を避けてるところは。

 

「それからリリィへの興味と憧れで、百合ヶ丘にも初・中とセレクションを受けてはいたのですが……どうにも空振りで」

 

「あたしも受かったのは中等部からだしねぇ、初等部とかどんだけ狭き門なのやら」

 

 神琳ちゃんとか依奈とか亜羅椰ちゃんとか茜たち五人とか、ざっと浮かぶだけでも真の意味での生え抜き組は層がとんでもない。

 まあ、梅とか天葉とかすら中等部からなんだから、実力以上に本当に早い頃から才能を開花してないとっていうのもあるんだろうけど。

 

「ですねー……それでもなんとか、高等部はギリギリ補欠合格で受かれたんですけど。わたしなんかのどこが飛び抜けてたのかなぁ」

 

「……それ、本気で言ってる?」

 

 口振りから二水ちゃんも『百合ヶ丘における』補欠合格の意味は知ってるんだろうけど、日羽梨にまで目を付けられておいてその理由に心当たりがありませんだなんて、私が吉阪先生に聞かされていたのを差し引いても、未だに自覚なしというのはなんとも言えない。

 

「? これが梨璃さんや鶴紗さんみたいな稀少スキル持ちならまだ分かります、それだけで獲得すればガーデンとしては大きなアドバンテージですから。でもわたし『鷹の目』ですよ? 近頃必須の『レジスタ』で済むからって、デュエル世代でS級固有技がちやほやされてたのが嘘みたいな扱いの」

 

「……うーん、なるほどねー」

 

 ここまで自己評価低いのを見せ付けられると、あやちゃんも『ただ本人が気付いてないだけ』との察しはついたようで。隣の芝生は青いとはいうけど、いくら知識はあっても、自分のことだからこそ客観的には見れないというか。

 大体鷹の目とレジスタの関係にしたって、確かに日葵のように指揮を執りながら平行して俯瞰視野まで使っていられるならその方が情報のラグは少なくとも、実際にやれる器用さなり余裕がない時なら、役割分担した方が効率的でしょうに。

 

「んじゃ次アタシねー」

 

 言いながら飴を舐め……というより小さくなってきたからか噛み砕いて残った棒をゴミ箱へポイして、狙い通り入ったのにあやちゃんは軽くガッツポーズ。

 

「てかあやちゃん、中等部は普通に地元のガーデンだったんでしょ。それがなんでわざわざ東京まで?」

 

「制服のデザインで選んだーって部分もなくはないけど、お母さん、現役時代学生とか女の子らしいこと、あんまりやれなかったって後悔してたみたいなんだよねー。だからよく言ってたんだ『リリィになるのもいいけど、一度しかない青春は好きなように生きなさい』って」

 

 ふむ、まあ確かに高三の夏にもなってようやくそんな当たり前のことに気が付いた私なんてのがいるくらいだ、卒業してから後悔先に立たず。なんてのも珍しくはないんだろう、リリィなんてのをやってれば、尚更。

 

「で、芸術系?」

 

「ってのはついでかなー。ほら、神庭って『一番リリィが人らしく生きられるガーデン』とか言うじゃん?」

 

「あー、そりゃあね」

 

 言い方は悪くなってしまうけど、大多数のガーデンというものはリリィを一人の人間より戦力単位で見ることの方が多いだろうし、私の場合ゲヘナ絡みであまり個人として守られてない知り合いたちを散々見ているものだから、余計にそう感じてしまう。

 

 ともかく、そういう部分で見てみると確かに神庭は自由が過ぎる感じから皆好きにしているなっていうのは見ていて分かるし、そのしわ寄せが生徒会に……っていうのも、自由なりの責任ということで?

 

「それで、学科は紅巴ちゃんたちと同じ声楽だっけ?」

 

「元はアナウンサーとかテレビ絡みー、ってつもりだったけど、今は目指せアイドルリリィ部入り! かな?」

 

「姫歌ちゃんの言ってたあれねぇ」

 

 とは言うけど、6月の末シモキタで会った時はまだ自称止まりだったみたいだし、まず部活として承認されるところからでは……だから、そのための頭数になるって?

 

「普段の姫歌さんのノリからして、スクールアイドルとかそっち系なんでしょうか?」

 

「『アイドルリリィ』って言っても神琳ちゃんタイプのつもりなら、ガーデンで唯一のレギオンな時点で、ちょくちょく取材とか入るのは約束されてるようなもんだしねぇ」

 

 まあ、初対面の時私が百合ヶ丘なのを見て即神琳ちゃんの名前出してたし、個人として意識はしてるんだろうけども。

 

「んで、結局どういう流れで知ったの?」

 

「それはねー──」

 

◇◇◇

 

 4月、ちょっとした用事で帰省してたもんだから、置いてくような荷物もないし電車を降りても寮には寄らずそのまま校舎まで直行する訳だけど、そうなるとアタシ的にちょっと気になるのは、キザに決めようとしてる癖に色々抜けてて締まらないルームメイトのコト。

 

「あ、ユウ起きてるー?」

 

『君は僕をなんだと思ってるのさ。流石に起きてるし今着替えてるから邪魔しないで、OK?』

 

 だからお優しいルームメイトがモーニングコールをしてあげたのに、言うだけ言ったら即切りって、相変わらずデレがない。今時そういうの流行らないと思うんだけどなー?

 

「ま、起きてるならいいけどね~」

 

 ポイっと上に投げたケータイを、口を開けてたカバンでキャッチ。心配がいらないなら遠慮もいらないってことで、そのまま校門までダッシュ!

 

◆◆◆

 

「せーのっ!」

 

 入学式の時間にはちょっと早かったのもあって、まだ校門を通る子はまばら──だったら一旦手前で止まって、両足揃えて前にジャンプ!

 

「得点付けてくれる人もいないけどねー」

 

 ピンっと腕も伸ばしてはみるけど、いやー、なんか記念にといいますか?

 

「……6点」

 

「えー、他にいないんだし10点くれていいじゃん~」

 

 とかやってると後ろから採点されたけど、微妙な数値に文句言いながら振り向けば、声で分かっていたけど上京して初めての知り合いなルームメイトが、無駄に長い前髪を指で弄っている。

 

「続く人がいないようにって辛口評価だよ」

 

「いーじゃん、高校デビューなんて人生に一度きりなんだし。そう言うユウたちはなんかやりたいことないのー?」

 

 ちょんちょんと背負ってたCHARMケースの下の角で脇腹をつつきながら聞いてみれば、呆れたようなため息を挟んで一応返事はしてくれるから、少しはデレてきたのかなぁ?

 

「特に何も。そもそも平穏無事な生活を求めて神庭に来たんだから、学生として、リリィとして、最低限問題を起こさない程度に暮らせればそれでいいんだよ」

 

「リリィに平穏とか、一番遠い言葉なんじゃないかなー?」

 

 勿論、ユウがそういう雰囲気でいる理由は『余計なトラブルを避けるため』なんて前置きとセットで言われたけどこの子の身体、元々の髪色は今と別物だったらしいし、目の色は前髪に隠れてる左側の緑が素で、右目が紫になったのは後天的、つまり強化リリィにされる実験だかなんだかの結果だって。

 それで、なんやかんやあってラボ近くのガーデンで保護されたはいいけど『これ以上迷惑はかけられない』とかカッコつけて去ろうとしたら、ゲヘナ絡みで中立な神庭を紹介された──っていうのが、同室相手になるのが決まった時の顔見せで言われた話。

 

「正直ゲヘナとか全然興味無かったけど、まさかバイオでハザードなテロまがいなこと平気でする連中だったなんてねー。ヘリにロケランぶちこめばいいの?」

 

「随分話が飛躍してないかい? それに、僕らはそういうのもなるべくなら避けたくて神庭にだね」

 

「でも、実際撃っていいって言われたら?」

 

「勿論撃つさ。よくもこんな身体にしやがってと、文句を言うだけで収まるもんか」

 

 うーん、普段からこれくらい素直ならいいんだけど、こーゆーのはたまにだからこそステータスなのだよ。

 

「それで話戻すけどさー、ユウって学科なんだっけ?」

 

「造園科だよ、声楽科の神代彩文さん?」

 

「うへぁ、ホントデレが少ないなぁ遊城(ゆうき)ユウさんは」

 

 なーんてお互い冗談っぽく名前を呼び合えるくらいだから、ツンとデレの比率はともかく、仲は良いと言えるんだろーけど。

 

◇◇◇

 

「で、入学式で三人の誰かと隣だったとか?」

 

「いや、ズバリその通りなんだけどさー。こっちからの初見はもうちょい前だから、まずはそっちから」

 

◇◇◇

 

 どこまで話したっけ? あー、ユウと合流したとこ。とにかくそのまま駄弁りながら講堂の方に向かってたら、途中で人だかり……って程じゃないけど、何かを遠巻きに眺めてる子たちがポツポツと。

 

「入学式前から喧嘩か何かかい?」

 

「そんなんじゃなさそうだけどねー。ほら、たかなほセンパイいるし」

 

「『たかなほ』?」

 

 『高』嶺センパイと『叶』星センパイ、たかとかなで被ってる部分からくっつけてたかなほ。なんて一部界隈で使われてる呼び方の由来を話せばユウも「ああ、リリィオタクね……」と経路ごと一発で伝わるんだし、とにかくヨシ!

 

「で、その先輩たちがどうしたんだい?」

 

「あれ、ユウ知らないのー? 神庭唯一のレギオンの隊長とその幼なじみ、揃って転校してきて~って結構有名なネタだったと思うんだけど」

 

「僕は君と違ってそう誰彼構わず話し掛けたりはしないからね、噂なんて君が持ってきたやつくらいさ」

 

 ああそう。とジト目りながら、ともかく眺められてることに気付かないまま渦中の……五人かな? センパイたちと多分新入生三人が講堂の方に向かえば、そろそろ入学式が近いぞと眺めてた子たちも各々続いてく。

 

「じゃ、アタシたちも行きますか」

 

「思ったよりギリギリみたいだしね、誰かさんのせいで」

 

◆◆◆

 

 で、いざ入学式ってなってもどの学校でもなんかそれっぽい挨拶がどうのこうのだし、朝から電車移動なんて挟んでるせいもあるしでなんかこう……ね?

 在校生代表として叶星センパイが壇上に立って話しているのも、眠気から内容は耳から耳にすっぽ抜けてるし、頭も大分カックンカックンなっていたら、ほっぺをツンツンとされて反射的に顔は隣を向く。

 

(ねーねー、きみたちさっきぼくたちのこと見てたよね?)

 

 それからこの子が誰なのか。なんて遅れて考える前に、見るからに目立つパステルカラーのパーカーを制服の上に羽織っている、薄桃のロング+お団子ヘアー──つまりさっきたかなほセンパイたちといた子の一人が隣の席だった。と気付けば、アタシもコソコソ話を返す。

 

(まー、なんか目立ってたからねー。というより、そっちの方こそよく分かったね? あんま人いなかったにせよ、アタシたち結構離れてたのに)

 

(えっとねー、なんかもう一人の子のマギの色、結構面白い感じだったから☆)

 

 マギの色? 芸術系のガーデンらしく『共感覚』とかその手の能力持ちなのかな。と若干流し気味だけど、ユウ()()が面白い感じ、っていうのは少し気になるよね。

 

(面白いって、どんな?)

 

(んー、なんだろ、一人なのにノインヴェルトの途中みたいな『混ざってる』感じ?)

 

(うわーお)

 

 ……その手の話は半信半疑なとこはあったけど、ここまで的確に当ててくると信じたくなっちゃうよね。

 

◇◇◇

 

「実際灯莉さんは『マギの色が見える』という異能持ちらしく、百由様も一柳隊の同盟にかこつけて、一度話を聞いてみたいと仰っていました!」

 

「わりと凄いよねー、あれ。ヒュージにも通用するみたいだし」

 

◇◇◇

 

 んで、そんな灯莉ちゃんと少し話してたら入学式も終わったみたいで、とりあえず外に出てみた訳だけど、そこで教導官が待っていた。

 

「そこのあなた、丹羽灯莉さんよね。そっちの子は……」

 

「あ、声楽科一年の神代彩文です。なになにー、ご指名?」

 

「おー、なんだろ?」

 

 入学早々呼び出しとは、中々の大物め。なんて肘でつついてみても灯莉ちゃんの方に心当たりはなさそうで、そうこうしている内に人波を抜けて来るのが──

 

「ちょっと灯莉、何先に行って……教導官?」

 

「はぁ、はぁ……ま、待ってください……」

 

 ──まあ、さっき集まってた内の残り二人。入学してすぐなんだから、知り合いってのも限られるよね。とはいえ教導官としては、色々ちょうどよかったみたいだけど。

 

「定盛姫歌さんに、土岐紅巴さんね? 灯莉さんとあなたたち二人は、この後ここの教室で待機しているように」

 

「これは、あっちの校舎の……分かりました!」

 

 地図を見せながらの説明にテキパキ返事を返してる姫歌ちゃんだけど、紅巴ちゃんの方は何が何やらって感じにあたふたモード。

 

「え、えっと、わたしたち、何かしてしまったのでしょうか……?」

 

「ああ、別にそういうことじゃないわ。詳しい話はそこでしてくれるから、あんまり緊張しないで」

 

 ほーん、ガーデンの方からわざわざまとめて呼び出し。それも新入生を……いいネタになりそうな気配。

 

「はい、部外者はさっさと帰る。先生、ウチのルームメイトがお邪魔しました」

 

「うぇーい」

 

 黙ってついていこう、なんてのは見てればバレバレだったと横から出てきたユウに首根っこ掴まれるけど、生憎アタシの方が背は高いから吊られることもなく、抵抗したら抜けるの余裕だろうけど、まあバレてる以上大人しくしとくべきか。

 

「んじゃ、また後でなんだったか聞かせてねー」

 

「あややバイバーイ♪」

 

「あんた、いつの間に仲良くなったのよ?」

 

◆◆◆

 

 それで入学初日のあれこれは終わりのようで、あやちゃんはぽふんとソファに座り直している。

 

「まー、きっかけとしてはこんな感じ。その呼び出しがグラン・エプレの任命式、ってゆーのは誰に聞いたんだか灯莉ちゃんからのメールで」

 

「相変わらずさらっと距離詰めてくるなぁ灯莉ちゃん」

 

 なんか従姉妹揃って初対面であだ名付けられてるし、『天の秤目』持ちらしく間合いの見極めには敏感なのかどうか。

 

「で、アイドルリリィがどうのこうのっては同じクラスでひめひめが言ってるもんだから、自然と意識してたってゆーか?」

 

「じゃあ仲間に入れてーって言えばいいじゃん、今なら一発OKでしょ」

 

 とはいえその程度思い付きもしなかった、なんてこともないようで、足を組みながらのなんとも言えない反応が帰ってくる。

 

「いやー、なんかアレじゃん? ひめひめたち、神庭(ウチ)のトップレギオンのメンバーじゃん?」

 

「なに? だから恐れ多いって?」

 

「そうじゃないけどさー、向こうは多少なり結果残してるけど、アタシはまだ生徒会のお手伝い止まりなワケで」

 

 いや、そっちの方がある意味では助けになってるとは思うけど、なんてのは欲しい言葉じゃないだろうから、今は飲み込んでおくと代わりに二水ちゃんが。

 

「つまり、何か大きな成果が欲しいと?」

 

「一切の遠慮なく言うなら、そうなっちゃうかなー。とはいえ神庭はグラン・エプレ以外出撃()るのは自由選択だから、チャンス自体は多いはずなんだけどね」

 

 都内のヒュージ情勢など今更言うまでもなく、国内でも相当に悪い方だ。その理由は烏丸の介入によって段々取り除かれているとしても、元々全域を陰ながらゲヘナに支配されていたようなものなのだから、すぐに解決なんて望めない以上その間は一部の情勢も読めないゲヘナ職員の暴走と共に、ヒュージの出現頻度も一時的に増えてしまうだろうとは、まあ。

 だから焦らなくてもいくらでも機会は……なんて、知ってる理由共々言っていいのかどうか。結局私は百合ヶ丘の所属で、たまたま居合わせるでもないと東京の出来事になんて関われないんだから、こっちの問題まで背負わせたくはない。

 

「あんま面白くない話だし、これくらいでいいっしょ? じゃアタシはここで寝ちゃうから、ベッドは好きに使ってねー」

 

 そのまま何も言えずにいると、言い切るより早くあやちゃんは毛布を被っていたから、今更だとタイミングは逃してしまって、とりあえずお互い近い方でと二水ちゃんとそれぞれベッドへ向かう。

 

◆◆◆

 

「雪華様、その、昨日は……」

 

「あはは。まあ仲が良いのは何よりだし、プライベートなとこにお邪魔したのはこっちの方だからね?」

 

 翌朝、百合ヶ丘へ戻る雪華と二水の見送りには神庭の校門前に彩文だけでなくグラン・エプレも勢揃いしているが、高嶺とのやり取りを見られていたと聞いた叶星は、照れを隠せずにいた。

 

「ふふ、私は見られていても構わなかったけれど?」

 

「もう、高嶺ちゃんったら……!」

 

 しかしその相手な高嶺は普段と変わらずケロリとそんなことを言うものだから、腕をピンと下に伸ばしながら叶星の顔は更に赤くなる。

 

「見ての通りと言いますか、四六時中こんな感じなので……慣れてください、なるべく早めに」

 

「うん、まあ甘めのは百合ヶ丘のが数は多いし、何組か眺めとくよ」

 

 最早何を語ることもなく無言で倒れる紅巴を、灯莉と二人受け止めながらくたびれた様子で姫歌が吐き出してくるのだから、本当に毎日こんなもんなのだろうとは雪華も理解するしかない。

 

「それと、二水さんは貴重な情報感謝するわ! これで今年の夏はひめかがいただきね!」

 

「おー、定盛のやる気がメガマックス☆」

 

 とはいえ即座に切り替えられている辺り、姫歌も言葉以上に慣れてしまっているのだろうが。

 

「そ、それはこちらも同じなので、紅巴さんが起きたら感謝していたと」

 

「うん、多分二人が帰ってちょっとしたら起きるかなー?」

 

 そして灯莉も紅巴がたかなほの尊さを前に倒れるのなど、目覚めるまでの時間をなんとなく分かるくらいには慣れっこと悩む素振りすら見せないのは、グラン・エプレがどういう形にしろ強く繋がれている……のだろうと強引に雪華は解釈する。

 

「……レギオンとして仲間のことを理解し合ってるのは、いいことなんだろうけど」

 

「なーにどこから目線してんのさ?」

 

 良い感じにまとめようにも、従姉妹として『らしくない』行動など筒抜けなのだから、彩文にからかわれてはいつも以上に締まらないのが雪華だったが、電車の時間もあるのだから、これ以上長々と話してもいられない。

 

「ま、生徒会の方にもよろしく言っといてよ。じゃあまた」

 

「お世話になりましたー!」

 

 そのまま百合ヶ丘の二人が手を振りながら去って行けば、神庭の六人(五人)も各々の調子で手を振り返し、とりあえずはお開きに──

 

「おおー、盛大なお出迎え……でもないか」

 

 ──なる前に帰って来るのは、同じ神庭の赤い制服を纏ったリリィ。彼女は見知った顔が揃ってることに一瞬自分のことを待っていたのかと思ったが、向いている方向が真逆なのだから他の誰かを見送っていた後、だろうと察している。

 

「あ、かなかなだ☆」

 

「相変わらず良く分かるわね」

 

 灯莉があだ名で迎える通り、当然門前の面々からも彼女は知り合いであるのだが、その容姿は……

 

「ほらほらとっきー、かなかな帰って来たよー?」

 

「んぅ……ユウちゃん? あれ、今は神薙(かんな)ちゃん?」

 

 起きたばかりの紅巴ではちゃんと見分けが付かないくらい、遊城ユウと酷似していた。大きな違いとしてはユウでは左目を隠していた前髪が左右反対に流れ、右目が隠れ左の綠眼を覗かせているのと、顔付きなどの雰囲気がどことなく人懐っこいところ。

 

「うん、今はわたしだよ紅巴?」

 

 『今は』その言葉が示すように神薙とユウは同じ体を共有している状態で、世間一般に言う二重人格と違い、明確に別個の存在だと最初に保護されたガーデンでの検査の結果明らかになったのも、二人が神庭へ通うことになった理由の一端であったから。

 

 ──そして、その部分を彩文から雪華へ詳しく伝えなかった、あるいは友人たちにも伏せるようにしておいてと頼んでいた理由もまた、あまりこちらの事情に巻き込みたくないと、従姉妹同士雪華と似たようなものだった。

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