ということで、季節イベシリーズはっじまっるよー。リアルはまだまだ寒いっすけどね!
なお、こっちに同行はせんのでまだお留守番ですわ。や、メイン蹴っ飛ばした補填の最後がね?
「──海で梨璃さんの水着姿を堪能したいですわ」
急にどうした。なんて感想は楓さんを挟んで同じソファの反対側な二水ちゃんも同じようで、楓さん越しに目と目が合う。
「海で梨璃さんの水着姿を堪能したいですわ」
「二回言うことですかっ!?」
「とりあえず、夢結に突き出した方がいい感じ?」
「人を爆弾処理班か何か扱いしないでください」
で、なんでこんなことになっているかというと、控室にて集まってる中、二人揃って休暇申請の通った夢結と梨璃ちゃんがお休みをどう過ごすかなんて話をしていたら、いきなり隣から爆弾発言が飛び出しての今。
「海、かぁ……ねー楓」
「ええ、皆まで仰られずとも分かりますわ。さあ夢結様、この結梨さんの期待に満ちた眼差しを裏切れますかっ!?」
うっわ、遂に人情に訴えだしたよこの子。とはいえ楓さんが興味ありそうな結梨ちゃんを捕まえて両手でズイッと向けてきても、夢結にはノーダメージなようだけど。
「別に除け者にする理由もないのだから、あなたたちも早く休暇申請を出してきなさい」
「……あら?」
とはいえ書類の書き方なんて分からないだろうから、梅が肩を組みながら確認を。
「結梨、書き方分かるか?」
「ううん。でも楓に聞くから大丈夫」
「ついでに変なことまで教えられないといいけど……」
「あらあら?」
会心の策だったわりに空振りどころか、そもそも使わずとも問題ない空気に、鶴紗ちゃんに疑いの目を向けられる楓さんの方が振り回されていた。なんて状況になっていると、夢結がなんの気なしに告げる。
「楓さんが休暇をどう使おうと、それはあなたの自由よ、わたしに強制する権利なんてないわ。それに、学年の都合があったとはいえ、結梨の世話を押し付けたような形になってしまっているのだから……そのお礼だとでも思って頂戴」
「では、その弱みに付け入る訳ではありませんが、デー……コホン。旅行プランの方はわたくしに任せて頂いても?」
なんか大袈裟なことになってるなぁと眺めながら、楓さんが夢結とバチバチやってる間に空いた隙間へぽすんと座って来た結梨ちゃんに、そういえばな確認を。
「で、海行くんならどうせだし、明日にでも水着買いに行く?」
「あ、それならこの前わたしのお古が合ってたから、多分大丈夫かなと?」
「うん!」
おん? 返事は梨璃ちゃんの方から来るけど、なんでまたそんなことを……という疑問は、ドアの開く音に飲まれてタイミングを逃す。
「お、おう。盛大な出迎えを期待したわけでもないが、また楓が何やら企んでそうな顔して飛び出していきおったぞ?」
「あら、お帰りなさいミーさん。その認識で概ね間違ってはいないかと、本音も隠せていませんでしたし」
「でも、多分楓は梨璃に迷惑……はかけてるかもしれないけど、本当に嫌がるようなことはしないと思う」
そうしてドン引きしながら同室コンビに迎えられるのは、百由とお休みが合わせられそうだったと、一足先に休暇を取っていたミリアムちゃん。
「あ、ミリアムさんお帰りなさい!」
「で、百由とのハネムーンはどうだった?」
例えというにはド直球が過ぎる言い方には「んなっ!?」と顔を真っ赤にしてくれてるから、ういやつめって感じだけど、ミリアムちゃんもある程度予想はしてたのか咳払いをして持ち直せば、頬は赤く染めたまま語りだす。
「う、うむ。百由様がまたなんぞ変な機械を買ったりはしたが、まあ楽しかったぞい」
「ふーん、百由のことだからてっきり無人島にメカヒュージの王国でも作ってそうとか思ってたけど」
私の零した感想には「そっちはもうありますからね……」とか二水ちゃんが物凄く遠い目をして呟いていたから、まあこないだの『犯行』現場がそうなんだろうけど。いや、よくそれで結梨ちゃんだけ巻き込まないなんて理性残ってたね?
◆◆◆
「む~……」
さて、数日経って休暇の始まりの日にも関わらず、朝から結梨ちゃんが不服そうに頬を膨らませて医務室から出てくる理由は、出発と毎週の検査の日が被っていたからで、同室故のシルト情報によると楓さんがヘルヴォルの恋花となんか変なコードネームを使って色々と打ち合わせをしていたらしいちょっとした旅行も、一人見送る側になってしまっていた。
で、都内の2レギオンとうちのレギオンとの同盟も、都道府県の大枠では隣接していようが、ガーデン同士の場所はそんなに近い訳でもなく、同じ任務に出るような機会がそうそうあるかというと……まあほとんどない訳で。私? 二回とも個人的な外出のついでだし、ノーカンで。
だから触りとして、休暇を合わせての交流会的なのから入る。ってのは分かるけど、最後の最後に調整が甘かったのは、まあ皆浮かれてたってことで?
「ほら、結果が出れば行っていいって言われたんでしょ? 午後には私が送ってくからさ」
「……わかってる」
まあ、理解してるのと納得してるかは別っていうのは分かるから、宥めるように頭をポンポンとするしかないんだけど。
◆◆◆
その後、寂しいのかなんか妙に結梨ちゃんが密着してくるもんだから、後ろを歩く私が肩から手を回す感じになっていると、通り掛かったラウンジのテーブルに、見覚えのある顔がくたびれていたから、ある程度分かってはいても確認を。
「朝から巡回ご苦労様。結果どうよ?」
「あー……それなんだけどナ」
「くんくん……なんか面倒なことになってそうな匂い」
返事をしながらバツが悪そうに頬を掻いている梅と、その様子やいつもの嗅覚で色々察している結梨ちゃんの反応からもう怪しいけど、続きは一緒に出ていたミリアムちゃんから。
「うむ、わしらが担当した辺りにヒュージが複数で移動したと思しき痕跡があってのう。辿ってみたらラージ級もいる、結構な規模の群れだったんじゃよ……」
「しかも、戻って報告してたらその近くにケイブの反応まで出たから、午後にでもうちのレギオンで対応するようにー……って話になったんだけど」
あー、よりによって隊長に副隊長、加えて唯一の『レジスタ』持ちまで抜けてるタイミングでの出撃。それも結構な規模の群れを、レジスタ不在の定員割れでやれるかどうか……
「……いや、それなら『あの二人』呼べばいいか。そのためのフリーランスなんだし」
ちょうど二人、頼りになる心当たりを口にすれば、梅にはわざわざ説明の必要はないようで。
「あー、あの二人か。なんか雪華サマも知り合いだったみたいだしナ」
「ま、あたしもこの前、ついでにちょっとしたお手伝い頼んだしね?」
「「……?」」
とはいえ、ここで上級生でしか分からない話をするものだから、一年二人は頭にハテナを浮かべて置いてきぼりになっちゃってるけど、そういう時遠慮なく踏み込んでくれるのがミリアムちゃんだから、特に問題にもならない。
「のう梅様、あの二人──とはいったい誰のことなんじゃ?」
「んー? まあ、ちょっとした戦友って感じだゾ。二人揃って〈最強のフリーランス〉なんて呼ばれてるくらいのコンビだからナー、この前の特型の調査でも梅たちは引き継ぎ頼んだし、ハチ型の時も結構走り回ってたみたいだし」
そもそも私がこの前お手伝い頼んだのも前者の準備に入ってたからだし、後者で二回来てくれた『助っ人』もその二人だったりと、色々と縁ってのは転がってるもので。
「で、あれからどっかの戦場に呼ばれたとかって話も聞かないし、今から依頼しに行きますかー」
「だナ、善は急げだ!」
ともかく話は決まったと私たちが寮の方へ向かえば、一年二人も置いてかれまいと着いて来るから、説明はその道中でね?
◆◆◆
「いやあ今日も平和やなー」
「……それ、口にした途端平穏が崩れ去るフラグって言わない?」
講義までの時間、真と弥宏が寮室にて寛いでいる中でそんな話になった途端、誰かが部屋のドアをノックする音がするのだから、「そんなベタな……」と一瞬お互いに口を開けたままになってしまうが、自分たちの稼業的にまた何かしらの依頼だろうと、気持ちを切り替える。
「こほん。はい、どうぞ」
弥宏の返事を聞いて入って来るのは、編入前後で色々とあったものだから、もう百合ヶ丘で知らない者はいないだろう編み込みおさげの一年生──つまりは結梨なのだが、彼女は何かしらのメモ紙を持ったまま、微妙な位置で立ち止まった。
「えっと、お邪魔し……じゃなくて、『邪魔するでー』?」
彼女が意味も分からず、カンペの指示に従っているだけなのが丸分かりな様子で首を傾げながらの『台詞』を読み上げたのを見れば、真の身体に流れる関西魂は即座に返しの台詞を組み上げる。
「邪魔するんやったら帰って~」
「『あいよー』?」
恐らく、いや確実に完璧だったろう返しに『筋書き通り』結梨が回れ右して部屋を出て行けば、真は会心のガッツポーズ。
「今の、昔のお笑いのネタだっけ?」
「ふふん、今度は中々
◆◆◆
「ただいまー」
「いや、今のコントになんの意味があったのじゃ?」
「まあ、軽い掴みっていうか?」
まさかここまで完璧な返しをしてくるとは、関西人恐るべし……なんてのはいいとして、次はミリアムちゃんだともう一枚カンペを投げ渡すけど、今度は入る前に内容を確認される訳で。
「なになに……『ミッションを説明しましょ──ん? 最後の方に『そちらにとっても』まであるとくれば、もうあのゲームのブリーフィングではないか!? しかも最新作でなく、何作か前におった感じの悪い」
「そう? あの仲介人が一番まともに情報くれてると思うけど。他はあからさまに調査足りてないか、わざと伏せてやがるかだし」
そっちの『元ネタ』は近頃工廠科で流行りの傭兵ロボアクションから、私の好きなシリーズのにはなるけど、流石に遊びが過ぎてると梅からは呆れ気味の反応が。
「そんな趣味に走らなくても、梅が頼めば一発だゾ?」
「いや、そりゃあそうだろうけどさー」
「別に真を笑わせないと依頼を受けないとか、そういう変な条件は設けてませんよ?」
まあ、わざわざ使いをやっておいて部屋の前で騒いでたら、当然中からも反応はある訳で。そしてドアを開けて出てきた本人からそこまで言われれば、遊びもお終いか。
「分かった。じゃあ単刀直入に言うけど、ちょっと今何人か抜けててね」
「そんな時に出撃になった、と」
「あー、確か今夢結が休暇中やったっけ?」
「うむ、その上で夢結様のシルトな梨璃や楓と、軸になるスキル持ちも抜けたとあって、んー……」
二人が出てくれば自然と会話になりはしたものの、ミリアムちゃんとしてはまだ名前も知らぬ先輩なもんだから、呼び方で詰まっていた。
「はい雪華様は邪魔やから退いて退いてー」
そして、わざと表札を身体で隠してたのはバレバレだったと真に両手で退かされた後、二人の自己紹介に。
「改めて、うちが
「それ、最近工廠科で流行ってるゲームの……ん?」
「いや、雪華様と同じ次元の御仁なのはよーく分かったぞい」
まあ、私みたく知り合いから布教に投げ付けられた手合いだっていうのなら、同じシリーズから取ってるし多分そうなんだろうけど。
「アハハ。まあ、付き合ってて楽しい相手って意味ならそうだナ」
そんな風に自分の周りの上級生はこんなのばっかりか。と悟っているミリアムちゃんを眺めながら、梅がいつものように頭の後ろで手を組んでいると、こっちに寄って来た結梨ちゃんには鼻をヒクヒクされる。
「くんくん……雪華、なんか楽しそう」
「そう? ま、そうなんだろうね」
はしゃいでるって意味なら自覚はあるし、そうしていいタイミングだとも思っていた。だからそこを見抜かれても何を取り繕うこともなく、助っ人を頼む二人に状況を伝えるため話に混ざろうか。
◆◆◆
「なるほど、フリーランスの方を雇ったと」
「ま、今日は検査の結果待ちで結梨ちゃんも出れんしね。これで万が一ノインヴェルトが必要になっても、人数ちょうどでしょ?」
二人には出撃時間になったらまた呼ぶと、旧館を後にして控室に入れば、残りの面子は揃ってたしで情報共有すると、神琳ちゃんも特に文句はなさそうだし、雨嘉ちゃんは二水ちゃんがタブレットに出したデータを眺めている。
「『ヘリオスフィア』に『レジスタ』持ちの二年生、バランスはいいのかな……?」
「いいどころではありませんよ雨嘉さん! 富永真様に早川弥宏様とくれば、現二年生でも初代アールヴヘイム組に並ぶ実力者! おふたりは初代アールヴヘイムと共に戦った〈房総半島解放戦〉の活躍で、そのメンバーでないにも関わらずアールヴヘイム専用に開発されたグラムのユーザーとして認められる程の──」
「ま、そんな訳だから実力は保証するゾ?」
二水ちゃんが毎度のオタクトークで興奮しているのを横目に梅がまとめれば、『私たちの知り合い』と聞いた鶴紗ちゃんの方は、微妙そうな顔。
「先輩たちの知り合いって……そういうこと?」
「ご同類という意味で聞かれたのなら、そうと返すしかないが。のう結梨?」
「雪華も楽しそうだった!」
同行組の言い種には、人格と実力は別に比例せんでしょうがと言いたくはなるけど、変わり者ばかり集まる類友って部分は、どうにも否定しにくいのが困り者。
「さて、そろそろ講義の時間ですし、また後程」
神琳ちゃんが横目でチラリと時計を確認しながらそう告げれば、学生として逆らう理由もないのだから皆もそれぞれの教室へ──
「──って、梅は当たり前のように寝ようとしないの」
「おっと、流石に見逃しちゃくれないか」
「雪華ー、置いてくぞー?」
開けっ放しのドアから結梨ちゃんが頭だけ出して呼ぶから、抗議の暇など与えんぞと、梅はこのまま抱えて行こう。
◆◆◆
梅が先導する形で近場の山道を少し行けば、そこにヒュージの群れがいた。場所としては以前ギガント級が降って来た時に、三年生や生徒会組が集まっていた辺りが近いとは、この場では唯一の最上級生な雪華だけが分かる話。
「それでは、事前の打ち合わせ通り先制砲撃で数を減らした後、前衛が突入し敵陣を乱す流れで」
対する一柳隊は、待機の結梨を含めた旅行メンバー四人が抜けフリーランスの二人を加えた九人で茂みからその様子を眺めていて、内砲戦装備持ちは大体半分といったところ。その中には、当然前衛の鶴紗と、夢結が抜け空いたポジションに入った雪華もいる。
「こういう感じに、臨機応変に入るのが私のやりたかった役割なんだけどねぇ」
「だから、わたしが入る前から自分はサブだって言い張ってたんですか?」
「そうでもないと、どう動くやつかってのはもう分かってるでしょ?」
つまり、フォーメーションという形で行動を縛っておかないと、何処へなりと物理的に飛んで行くだろうということ。
黒紅雪華という先輩は、身の安全をギリギリまで思考から消しながらそういうことをやるタイプだとは、鶴紗に限らず一柳隊……いや、彼女を知る者の大半が分かっている。そうでなければ、ギガント級の砲撃すら真っ向から突き抜けていくような真似はしないのだから。
──なお、後日クラスにて一柳隊のメンバーで集まってる中その話題を出した時、以前シュッツエンゲルの天葉が同じような、こちらは定員の二倍を越える人数で行っていたノインヴェルトのフィニッシュを抱えたままやらかしたなんて経験のある樟美が、コクコクと無言の同意を示していて、その日の天葉が夕食後何故か寂しそうにしていたというのは、完全な余談である。
「だから今日はわたしが最前線を張ります。援護、任せました」
「ま、この子使うと一番前って疲れるからね」
確かに、一応接近戦用の武装はあるにせよ自らの背丈より遥かに長いストライカービットを振るうというのは、同程度のスケールな相手には些か過剰にすぎる。
「にしても、あのビット烏丸のCHARMにしてはデカすぎへんか?」
「そういえば、烏丸重工って百合ヶ丘じゃ有名なんですか……?」
そんな二人の様子を眺めながらな真の呟きに雨嘉が反応すれば、返事は弥宏の方から。
「うん、去年までは零夜様──つまり烏丸のご令嬢が通っていたこともあって、搬入の車両を見ることも多かったしね。今年はまあ、雪華様の装備を見てれば色々手を広げたんだなあってくらい?」
「確かに……霊奈様じゃったか、あの御仁のCHARMもこの間佐世保で見た時は大分ごちゃっとしておったのう」
「烏丸隊のCHARMが趣味的な理由、九割はあの人の趣味やって聞いたからなー」
そこでCHARMの話とあってミリアムも混ざってくるが、他にも色々と戦闘用の小道具が納品されているなどと百由から聞いた話をする前に、神琳がヒュージの動きに気付き号令を下していた。
「今です、攻撃開始!」
「おっと。ではお二方も頼むぞい!」
気持ちを切り替えたミリアムがニョルニールを構えれば、話していた面々も同じようにCHARMをヒュージの群れへ向け、一斉に射撃を送る。
今回取った作戦は最初に神琳が確認したような、至ってシンプルなもの。それなりの規模の群れとはいえ、特型も確認されていない以上は特に奇をてらう必要もなく、基本に忠実、かつ突入する二人の実力を信じた選択に。
「さて、始めますか」
「……行きます」
後ろからの攻撃を見て、作戦通り真っ先に飛び出す鶴紗をフォローするように雪華が追って飛び出せば、注意が向いたところへ更に追加の砲撃、その混乱の中更に突入した二人が内側から攻撃すれば、拍子抜けするくらい順調に事態は進む。
◆◆◆
(確か、前のレギオンだと雪華様は前から二番目が定位置だったって……)
一柳隊に入った後、いつだったかそんな話を二水から聞いたなと鶴紗が思い出すくらいに、自分の一歩後ろからストライカーでの砲撃や、ライザーのシールド裏に二門ずつ付けているガトリングでの弾幕を送ってくる雪華の様子は、妙に手慣れていた。
「せいっ!」
それでいて自分の方にヒュージが来れば、ソードガンを逆手に引き抜いて切り払いガンモードで撃ち抜くと、すぐにシールドへ戻しストライカーを両手で保持し片側へロングレンジバスターキャノンを照射。撃ち終わればストライカーは背中に回して、代わりにサブアームから外したライザーのグリップを握りビームソードを起動、反対側から近寄るヒュージを迎撃している。
「…………」
「気になるのか?」
「ん……また色々言われますよ、梅様」
雪華の様子を見る間も呆けているつもりはなく、淡々とヒュージを撃ち続けていた鶴紗の横に当然のように前線へ出てきた梅がやってくれば、毎度の突撃癖かと呆れた言い方になってしまうが、やはりこちらも毎度のことだと、特に効果はなさそうだ。
「いやいや、このまま押し切るべきだって神琳の判断だゾ? ラージ級も姿が見えないってことは……ほら来た」
ケイブの気配を感じ鶴紗も前を向くと、襲撃に慌てて這い出したように現れるのは、よく見る巨人型のラージ級。しかし登場も読めていたと後衛組からの砲撃に曝されれば、たまらず腕でガードしようとして動きが止まる。
「もらったぁ!」
そうなればあからさまな隙を見逃す雪華ではないのだから、ラージ級の腕へアンカーを打ち込み跳躍すると、ガードの内側へ飛び込むとビームソードの出力を上げて、ヒュージの首元をX字に切り上げ、追撃に両手のシールドを前へ向けバルカンとガトリングでレーザーの雨霰を叩き込む。
「まったく、結局こうなるんだよナ……鶴紗!」
「……了解!」
当然そうなればラージ級もたまらず雪華を手で払おうとするが、梅のタンキエムと鶴紗のティルフィングからの砲撃がそれぞれの肩を撃ち動きを止めれば、トドメだと雪華も対艦ビームソードを最大出力で伸ばすストライカーのグリップをトンファーのように持ち、ビットのスラスターも合わせラージ級を頭から一文字に叩き斬り、爆発に巻き込まれないよう後ろに倒れたのを確認してから、梅たちの近くへ降りてくる。
「まーたなんかの真似かー?」
「いや、別に何も意識はしてないけど……でもまあ、言われると確かにそれっぽくはあるか」
細かい部分がぶつかっただけにはなるが、『推進機付きの大剣で一刀両断』とだけ抜き出せば一応雪華の脳裏に該当する『ネタ』は浮かんだが「あそこまでエコーはかけられないかな」などと、そのまま脳内で話を終わらせておく。
「さて、後は残党狩りかな」
梅以外の後衛組も、生き残りのヒュージを囲うように前進しているのを確かめると雪華もそちら側に混ざるが、鶴紗の方にはどうにも言葉にし難いモノが残っていた。
「で、鶴紗も結構雪華サマと組むこと増えて来たけど、色々言いたいことあるだろ?」
「……はい。その、CHARM使いが荒いってだけじゃなくて、もっと根本の部分が」
そこまで口にしても、鶴紗にはまだ「自分に言えたことだろうか」との遠慮が見えるから、どうその先を聞き出すもんかと梅がヒュージを狙う片手間に考えていると、するりと真が会話に混ざってくる。
「まあ、雪華様も大概夢結側の人やからなー」
「……夢結様側?」
いや、そうと言われれば鶴紗にも納得出来る部分は多い。6月のギガント級相手ではどちらも独断専行に走っていたし、そうなっていた時の夢結も自らの身を省みてはいなかった……だが夢結はともかく雪華の憎悪が向く先は、ヒュージでなくその向こうの世界そのものだろう。というのは、これまでの彼女の言動からなんとなく分かっていた。
「例の、先輩たちのことですか?」
「それも理由のひとつではあるやろーな」
「けど、夢結の方は過去が理由だったとして、雪華サマは今でもその理由が増え続けてる」
そのひとつに、鶴紗も絡んだ横浜での一件が含まれているのは今更確認するでもないだろうし、結梨の件でも露骨に機嫌が悪くなっていたのだから、首謀者たちが烏丸にその地位を追われるという結末でなければ、彼女が物理的に『そう』していたのも想像に難くない。
「あの人がフリーランスやってた数ヶ月、戦場で時々すれ違ったうちらですら心配になるくらいなんや、ありゃあ相当根が深いで」
「だから、わたしたちでちゃんと見ててやんないとナ」
「……はい!」
そのくせ本人はなんでもない風に装って、他人の面倒を見る側に回ろうとしているのだ。同じレギオンの自分たちくらいは、雪華が楽に過ごせるようにしてもバチは当たらないだろう。
「終わり、かな? 二水ちゃん!」
「はい! ……そうですね、見える範囲にヒュージの姿はありません。反応はどうですか?」
「大きいのは特にないし、ついでに巡回でもして帰ればいいかな」
三人が話しながらも適宜射撃を送っていたが、親玉は既に倒れた後だからかヒュージの討伐自体は問題なく終了したようだ。
◆◆◆
そうなれば後は撤収だけど、真は弥宏の隣へ戻ると、腕を絡めながら私たちとは別方向へ。また極自然にやったね?
「じゃあ、わたしたちはこっちの方を確認しながら帰るから、皆も気をつけて」
「今度またなんかあったら、格安でお願いされてもええからなー」
見せ付けてるような絡みもいつものことなようで、特に弥宏からのツッコミも入らず、そのまま二人は去っていく。
「きゅう……」
……けど、こっちでは要救助者が約一名。いや、刺激が過ぎたのか目を回して倒れてる二水ちゃんがね?
「で、二水ちゃんは戦闘終わったら耐えられなかったと」
「えと、あの二人戦闘中も結構距離が近かったですから……」
ああうん、二人にはTZに入ってもらってたから、二水ちゃんを受け止めた雨嘉ちゃんの証言的に、BZの方からは当然丸見えだったと。
まあ、二人を助っ人に呼んだって時点で大興奮してたから、ナマのさり気無い絡みまで見せられちゃあ、たまったもんじゃなかったようで。
◆◆◆
さて、結梨ちゃんの検査結果はここしばらくと変わらず、つまりはプチ旅行にも行って問題なしだったと帰りにメールを送って来てたし、こっちの戦闘終わりの検査が終わる頃には『早く正門に!』と急かすような内容で送って来る訳で。
「雪華おそーい!」
そうして駆け足で正門を抜ければ、道路の脇にかなり古いタイプの大型バイクが停められていた。
「……まーたけったいなもんを」
一応、何かの移動に使うかもと去年の秋に二輪の免許は取ってはいたけど、自前のを持つ程詳しくはない私が見て分かるのはなんでかって? ……アニメ。というより元はゲームか、あれ。
特撮でもこの車種をベースにしたやつがあるとは聞くけど、昭和の作品は流石に古すぎて追えてないし。
「あれ、雪華様こういうの苦手でしたっけ?」
誰かに借りたにせよ、結梨ちゃんがそんなチョイスをやれるはずがないのだから、持ち出した主犯は当然のようにいた百由になる訳で、さらっとヘルメットを投げ渡してくる。
「いや、特に選り好みはしないけど、私より美鈴の方が喜んだんじゃないかなぁ、この型は」
……声的に。
「てか、結梨ちゃん荷物それだけでいいの?」
「うん、楓が必要な分は先に持っていってくれたから」
「ふっふっふっ、こういう時にピッタリなサマー仕様ですよー?」
だから念のためだろう、CHARMケースというよりその中のグングニルだけでいいと。ところで、サマー仕様って、なに? なんか「サマーアターック!」と元気に跳び跳ねる水着姿の梨璃ちゃんのイメージが浮かんだけど、いやホントになに?
「とりあえず、返すのは工廠科でいいの?」
「はい。借りた子も『趣味で弄ったやつだから、よっぽど無茶なことしなきゃ大丈夫』だとは言ってましたよー」
お、おう……まあどこかしらアウトなやつはそもそも外で走らせられないだろうし、古いやつだろうと信じるしかないんだけども。
とりあえずスタンドを上げて、バイクに跨がるとキーは既に挿されているのを確認。
「じゃ、夜までには戻るから」
「そのまま行ってきてもいいんじゃないです?」
「いや、一応はちゃんと申請しての休暇でしょーが」
なんてバイクに乗るだけ乗って百由と話していると、後ろに乗ってきた結梨ちゃんがしがみついてくる。
「雪華っ」
その声は怒ってるまではいかないけど、早くしてという気持ちは抑えられてないから、流石にここまでか。
「これ以上話すのもうちのお姫様に悪いし、そろそろ行くよ」
「はーい、いってらっしゃいませー」
挿しっぱなしだったキーを回してエンジンをかけると、サイドミラー越しに手を振り見送る百由を残し、バイクを走らせる。
◆◆◆
「いやー悪いね、出迎えまで」
目的の浜辺の近く、出発前に連絡をしておいたのもあって入り口のようになっている道の前に、既に休暇を満喫していたのだろう水着姿の楓さんが待っていた。
「いえ、元はわたくしたちの不手際でしたので、これくらいならお安いものですわ」
「楓、水着!」
私にヘルメットだけ渡して降りる結梨ちゃんに手を引かれる楓さんは、黒のビキニをベースに腰にはパレオを巻いて、帽子というよりはハットって感じのふんわりとしたのを少しズラして被り、その間に見える髪にはサングラスを乗せてと、こう『らしさ』を感じる着こなし。
なんて眺めていると、バイクから降りようともしない私の態度に、どうするつもりかは察せられる訳で。
「それで、雪華様はこのままとんぼ返りですの?」
「ま、水着は家に置いてるし、予定もまだ先だしね。バイク乗るのも久しぶりだから、私なりに楽しんでくよ」
「はーやーくー!」
そして結梨ちゃんもお預けがもう限界そうなのだから、問答の必要もなしと再度ヘルメットを被って、軽く手を降って帰る。
◆◆◆
夕食後──楓さんにはああ言ったものの、結梨ちゃんがちゃんと楽しめているかどうかは気になるのだから、寮に戻るとスマホを取り出してある相手にかけてみる。
『もしもし、その……ヘルヴォルです』
しかし、仕掛人その2な恋花にかけたはずなのに、電話に出たのは違う声。
「あれ、千香瑠?」
今恋花は泳いでるなりで手が離せないから、代わりに取ったのだろうか?
そんな疑問は外にしては周りが静かなのと、『いや、あたしが出るってば』とどこか気だるげな恋花の声が聞こえたことで、嫌な方での答えが出てしまう。
『けほっ……もしもし?』
咳を抜きにしても明らかに熱っぽい声だし、調子が悪そうと一発で分かる感じになると、前置きも不要かと単刀直入に。
「あー、病院行った?」
『薬出して、一週間様子見。ですってさ』
つまりは『一週間後また来てくださいねー』の言い替えということで、夏風邪は拗らせると長いからなぁ。
「それ、後半戦大丈夫なの?」
今日からのは一柳隊とヘルヴォルだけになるけど、もうひとつ今度はグラン・エプレも巻き込んだやつが月末に計画されていると、途中から姫歌ちゃんも通話に混ざりだしたとの同室情報から察せたしで聞いてみれば、特に否定もなく。
『マジでそれが一番の問題なんすわ。今日からのはもう諦めつくけど、月末のやつもダメだったら、あたしはなんのために体調崩すまで調整に調整を重ねたのか……』
『みなさんのため、でしょう?』
最終的にはそうなんだろうけど、恋花の性格的には──
──華のJKの夏がこんな戦いまみれの灰色だなんて、マジありえないし!
なんて反骨心辺りが原動力だろうから、始まる前に真っ白に燃え尽きてお留守番なんて『我々の…計画が…』って爆発四散モノだろう。
「ま、お大事にね」
『はーい。で、結局センパイは何の用事だったんです?』
「いや、皆の様子とか聞きたかったんだけど……その身体で見てこい、とは言えんでしょ?」
『行けるもんなら今からでも行ってますっての』
ですよねー。とにかく体調崩したのは仕方ないから、もうお粥でも食べて寝てなさいとしか。