アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:夜会話とバカンス・ア・ライブとぴゅーじと謎テンションと。
ゆーて季節イベントって全体的にみんなノリが狂ってるし…などと供述しており(斜め45度されそうになる恋花様や、燃え残った全てに魂の正拳突きしそうな藤乃様を見ながら)

今回は同時平行な都合上片方しか関われんなりに、合間に漂流組を挟んでみる感じでいきますわよ。


更に流されるものたち

「一葉ちゃんたちが帰ってない?」

 

 あれから改めて遊ぶかって気分にもなれず、交代交代に見回りをして周辺のヒュージを多少は倒した後の夜、私たちの─といっても同じ部屋の梅も夢結も釣りが長丁場になったのか、まだ帰ってないから一人だったけど─泊まってる部屋にやってきた瑤と千香瑠から聞かされたのは、昼間に水上スキーで出ていった一葉ちゃんと藍ちゃんの二人も、まだ帰ってきていないという話。

 

「はい、流石に燃料切れで戻ってこれなくなるまで遠くには行かないと思うのですが……」

 

「さっきもヒュージの襲撃があったから、この辺りの海は大分怪しい」

 

 まあ、ヒュージが海の方から来ている以上、ネスト程規模は大きくなくとも近海の島にヒュージの巣か何かはあるのだろうとして、そこから攻撃を受けた可能性というのは高そうだ。一応二人もCHARMを積んでるのは見えたから、無抵抗にはならないとしても。

 

「んー、このまま放置ってのも色々アレだし、ちょっと頼れるとこは頼ってみるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 これで用事が終わりなら、ノースリーブのジャケットを羽織りながら次の話題へ。

 

「で、バタバタしてたしそっちも晩御飯まだでしょ? 開いてるお店でよかったら奢るよ」

 

「じゃあ、ゴチになろうか」

 

「ええ、お願いします」

 

 ん、くるしゅうない。

 

◆◆◆

 

 ということでフードコートに足を運べば、いくつか開いてないお店はあっても、最低限メインに食べるようなのとドリンク・デザート類は揃ってるから、まあ問題はないか。

 

「やっほ、梨璃ちゃんたちも今から?」

 

「はい! テーブルくっつけますかー?」

 

 とりあえず注文だけして各々ブザーを受け取って席の方に行けば、先にいた残りの七人も似たような具合。

 

「うん、まあお願い」

 

「はーい。灯莉ちゃーん、そっち持っててー」

 

「はいはーい♪」

 

 まだ直接会うのは数度目くらい─と言っても、私もまだ片手の指で足りるけど─にしては随分と仲良くなってるようで、二人がテーブルを動かすのを目で追うと、叶星も微笑まそうに見ていたのと目が合う。

 

「いやはや、後輩たちってばすぐ仲良くなるよねぇ。この前も雨嘉ちゃんの妹さんが来た時、少し目を離してる内に結梨ちゃんがさー」

 

「へー、雨嘉さんの姉妹ってことは、その子もリリィなのよね?」

 

「あ、はい。でも莉芬って見てて危なっかしいから、結梨としては少し前の自分を見てるみたいだったのかな、なんて……」

 

 まあ、そういうところもなきにしもあらず。私としては、末っ子同士って部分もあると思ってるけどね。なら藍ちゃんも放り込めば、更に賑やかになるか……? 結梨ちゃんはもう仲良くなってるって聞くし。

 

「で、改めてにはなるけど、こないだはそっちの面々に鶴紗ちゃんって組み合わせだったんでしょ? どうだった」

 

「あ、それわたしも気になるかも!」

 

 メンバーとしては今いるのが梨璃ちゃんと瑤だけな初回組より、一人欠けてるだけな二回目の方がまだ聞けることは多いだろうと、待ち時間を潰す話題に選んでみれば、梨璃ちゃんに応えるように元気よく手を挙げるのは灯莉ちゃん。

 

「えっとー、まず定盛が神琳のおっかけしてー」

 

「はい、おっかけられました」

 

「うっ。だからそれは……事実だけど」

 

 いつものあんまりな言い回しにも、神琳ちゃんまで乗ってくれば姫歌ちゃんも返しにキレがなく、なれば灯莉ちゃんのトークはつつがなく進行する。

 

「それでヒュージをやっつけたり、写真録ったりしてたらー、イルイルがいたんだ☆」

 

「イルイル?」

 

「多分、こっちで言うキュルルかな」

 

 そこで聞き返す梨璃ちゃんに、同じ期間に例の海岸で遊んでいた瑤が予想を伝えれば「あーなるほどー」と納得した様子。とはいえ、どっちにも行ってない紅巴ちゃんは、逆に首を傾げてるけど。

 

「キュルル、さん?」

 

「わたしたちが行った時にいたリスさん、名付け親は藍。可愛かった、可愛かった……!」

 

 わざわざ繰り返すくらい感慨深そうに瑤が語れば、とりあえず脇道に逸れるのは終わりだと、再度灯莉ちゃんのターン。

 

「でね、イルイルはイルカさんでー──あ、命名はぼくだよ☆」

 

「安直過ぎるとは言ったんですけど、案外気に入ってくれたみたいで……」

 

 即フォローというか草臥れてる様子で入ってくる姫歌ちゃんの調子から、ついでに私や身内も即座にあだ名付けられてるって経験からしても、まあ灯莉ちゃんって本当に誰にでもこんな感じなんだろうね。

 

「それでー、イルイルが入り江に迷い混んじゃって群れからはぐれちゃってたところに、ヒュージとの戦いで崩れた建物に海へ帰る道を塞がれちゃったりで色々あって、ぼくたちのこともはじめは警戒してたんだけど、雨嘉がお母さんになって問題解決☆」

 

 ……いや、また白い大尉はやらないよ? これ以上は『そういうことはしなくていい…!』になるし。

 で、例の海岸は近くに泊まれるくらい保存状態の良かったコテージのある水没都市──と言える程物は残ってなかったみたいだけど、それ故にまばらにある朽ちた建物のいくつかが、戦闘の余波で崩れたということで。

 

「なので、わたくしが父親役に立候補致しました」

 

「ああ、やっぱり郭雨嘉コースなんだ」

 

 神琳ちゃんの調子からして、その場の雰囲気で言った冗談半分なんだろうけど、普段からなんとなくそんなイメージはあったから、莉芬ちゃんの脳は破壊される!

 

「も、もう、神琳ったら……」

 

「紅巴ちゃん、息してる?」

 

「……なんとか、ギリギリで耐えられました」

 

 うんまあ、私も煽っといてあれだけどこの程度は慣れとかないと、たかなほ程じゃないにせよ、この二人も近頃大分距離感近くなってるからね。

 ともかく無言で椅子から転げ落ちかけた紅巴ちゃんを横から支えながら、灯莉ちゃんのトークも締めに近付くのを拝聴しようか。

 

「でー、出てきたラージ級を……えっと、六人だからゼクス()ヴェルトだ! って狭いところに出てきちゃったから、思ったように動けないのを雨嘉のフィニッシュで建物の残骸ごと爆☆破して、イルイルは無事家族の待つ海に帰れたのでした~。ちゃんちゃん♪」

 

「いや、そこで終わりじゃなかったでしょ!」

 

「うん♪次の日にもイルイルがまた遊びに来てくれたから、一緒に〈スーパーかわいいジャンプ!〉練習したりー」

 

「え、あれそんな名前だったの?」

 

 姫歌ちゃんが合間合間にリアクションしてくれるおかげか、わりと話はスーッと入っては来るけど、程々に盛り上がったところで、叶星の持っていたブザーが鳴る。

 

「手伝うよ。流石に一人じゃ物理的に無理でしょ?」

 

「ええ、助かります」

 

 言った通りの理由で連れ立ってお店の方に向かうけど、叶星から私への対応はなんというか、半端に固いなぁと今更ながらに。

 

「で、もう少し気楽にしてくれてもいいのよ? 三年っていっても、どーせあたしゃあ平だし」

 

「うーん、瑤さんや梅さんくらいにっていうのなら、まだなんとも?」

 

 まあ、そこの二人は単に割り切りが早いだけだろうし、無理に真似しろっていうのも違うしなぁ。とはいえ後輩連れという点では一葉ちゃんたちが帰って来ない以上、ある意味では私たち二人だけになったんだし、この機会にかね?

 

「お待たせー。焼きそばの人ー?」

 

「はいはーい♪定盛のもよろしく~」

 

 ともかく両手に持って戻ったトレーの内、片方に乗ってる分を後ろから神庭の同室コンビの前に置けば、残りのカレーは隣の紅巴ちゃんのらしいので、もうひとつのトレーはそちらに。

 

「あ、ありがとうございます……あれ、このたこ焼きは?」

 

「三人でシェアしてってさ。ほら、向こうも」

 

 一皿六個ずつだから、もうひとつ梨璃ちゃんたちの前に叶星が置いているしで一年一人に二個ずつになるよう、席やお水の確保に一年の皆を行かせてから追加で頼んでおいたとか。

 

「そういう気配りも、リーダーらしさなのかねぇ」

 

「実際、叶星様たちっておやつ時によくお手製のお菓子出してくれてるわよね?」

 

「ぼくマカロン好き~♪」

 

 ほむ、流石に出先でまでは用意がないから、その代わりってところ?

 とりあえずこっちのブザーも鳴ったし、私たちの分を取ってきますか。ちなみにこっちの三人はラーメン、特に示し合わせることもなくこうなったって、まさか恋花の亡霊が……え、死んでないって? うん。

 

◆◆◆

 

 翌日、とりあえずまだヒュージの気配はなさそうだし朝は遊びに使っていい感じではあるけど、沖に行った面々から連絡すらないっていうのは、少し気になるところではある。

 

「はうぅ~……」

 

 ──なんて考え込みながらパラソルの下でビーチチェアに寝転んでいると、他のメンバーが遊んでいるのを眺めて感動してるのか、よく分からない鳴き声を上げている紅巴ちゃんが目につく訳で。

 

「一緒に遊ばないの? 神琳ちゃんたちのビーチバレーはともかく、灯莉ちゃんと梨璃ちゃんの砂のお城ならまだ混ざれるでしょうに」

 

「何を仰いますか! リリィ×リリィの尊い関係は眺めてこそ至高! 飛び込むだなんて不遜な「ねえねえねえ、とっきーもやろうよ~」あー」

 

 うん、まあそうなるよね。いつも誰かが誰かの隣にいてくれる、そんな距離感がグラン・エプレの強みなのかなぁとサングラスを下にズラして覗きながら、私もそのやり方に倣ってもう一人のところへ行こうか。

 

◆◆◆

 

「むにゅ……あとごふん……」

 

「そう言って時間通りに起きたことがありまして? ほら、早く起きてくださいまし……!」

 

 初日は最低限雨風を凌げる程度の仮拠点を組むに終わった漂流組だが、そんな中でも普段通りな結梨と楓の同室組を見て、同じように藍を起こそうとしていた一葉は納得したような反応。

 

「やはり、そちらも朝は苦労されているのですね」

 

「あら、一葉さんと藍さんも同室で?」

 

「いえ、むしろそうでないからこそ、余計に大変といいますか……」

 

 だとしても、放っておけば放課後までスヤスヤと眠っていそうな藍の様子を見てしまえば、一葉も毎朝あくびを堪えて彼女の部屋まで向かい、リーダーらしくシャキっとして朝の面倒を見ている形にはなる。

 

「なるほど、わざわざ出向いて起こすために、その分支度も早く済ませねばならないと」

 

「……そんなところです」

 

 同室ではない──と告げるだけでもその辺りは楓に伝わるのだから、苦労する立場同士、どこか分かり合えたような空気が二人の間に流れた。

 

「あのー、そろそろ今日の活動について話したいんですが……?」

 

 ──とはいえ、それで勝手に事態が好転してくれたりはしないのだから、昨日からこのサバイバルな状況でやけにリーダーシップを発揮する二水にそう告げられれば、お互い眠り姫を揺り起こしに戻るしかない。

 

◆◆◆

 

 さて、とりあえず手ぶらもあれだしとドリンクを買ってからにしたら、皆考えることは同じだったようで、波打ち際で一人黄昏ていたはずな姫歌ちゃんのいる辺りには既に先客がわりと……というか私以外皆いるな?

 近くには叶星と神琳ちゃんだけで、灯莉ちゃんは今にも飛び出しそうなのを梨璃ちゃんに「ダメだよ~」と引っ張られてるけど。

 

「むぅ、出遅れたか」

 

「やっぱり、一番気にしてたのは姫歌さんみたいだから……」

 

 その中でも一番遠巻きだった雨嘉ちゃんが言ってくれたように、昨日からのヒュージ騒ぎで大分お客さんも帰っちゃったみたいだし、その影響でキャンセルも相次いでいるなんてくれば、観客がいてこそなコンテストの開催も危ぶまれる訳で。

 ついでに、姫歌ちゃん的に食い付きよさそうなライブイベントも当然セットでアウトとなれば、まあ落ち込むよねと。

 

「とりあえず、神琳ちゃんが張り切ってるしで今更乗り込み辛いから、ついでに飲んどく?」

 

「えと、後で渡せばいいような……?」

 

 まあそれはそう、なら自分の分だけ勝手に飲んどこうか。うーんマンゴー。

 ともあれ神琳ちゃんが珍しくあだ名呼びしながら発破をかければ、見るからに落ち込んでいた姫歌ちゃんも元気を取り戻したようで、今ならOKかなと梨璃ちゃんも手を離した途端、灯莉ちゃんがズサーっと目の前へ滑り込んで、そのままいつも通りにじゃれているなら、もう出ていってもいいか。

 

「気合いは十分みたいだね? はい差し入れ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 ちなみに姫歌ちゃん用のはなんかトロピカルなやつ、見た目からしてベースはソーダ辺りなのかなぁ?

 そんなこんなである程度話はまとまったと見れば、他の面々もぞろぞろと集まっては来るけど──

 

「なんで花?」

 

「え?」

 

「千香瑠、髪についてるよ」

 

 私が指摘してもなんのことやらな様子でも、瑤の指差しながらの付け足しがあればようやく千香瑠も気付いて頭の上の花びらを取ったところに、なんでか自慢気な灯莉ちゃんが割り込んで来る。

 

「あはははっ、ぼくと梨璃からのさぷらーいず♪なんだー☆」

 

「え、えっと、叶星様に用意して頂いた飾り用のお花を、千香瑠様が浮いてるところに、こうばーんっと?」

 

 あんまりにフィーリングが過ぎる言い回しも、一緒にやったらしい梨璃ちゃんが身振り手振りを交えて補足してくれれば、千香瑠が水から上がって来る時についてたのを、多分面白全部で黙ってたとかそんなオチなんだろうとはなんとなく分かった。

 

◆◆◆

 

 姫歌ちゃんがやる気MAXになったからと、早速神琳ちゃんと関係各所へ話を通しに行った──

 なんて話を聞いたからには、その間に物理的な問題はこっちでなんとかしようとはなるものの、親玉らしいのも特に見付からないまま、午前中はまちまちな規模のヒュージの群れを見付けては狩っていく場当たり的な対処にはなったけど、まだその手の大物が出てない内は、向こうの進攻も本格的になってないと見るべきか。

 

「てか、ひめひめPって何よ? なんかランクアップしてない?」

 

「ふふっ、折角この海水浴場をプロデュースしようというのですから、ただのひめひめよりこの呼び方の方が相応しいと思いまして」

 

 よー分からん。けど好意的なのだけはとてもよく伝わるから、仲が良くてなにより?

 

「で、話し合いの方は順調?」

 

「はい、今はお昼休憩というところです。次からは灯莉さんも参加してくださるようですから、わたくしたちにない視点から意見がいただけるかと」

 

 というのもステージなりの企画をした会社の、担当の人がこの辺りの生まれらしく、あの手この手でどうにか地元をかつてのように盛り上げようとしていたところに、神琳ちゃんのツテで協力を申し出たものだから、トントン拍子に話が進んだそうな。

 

「なるほど? そのあれこれが有名人な神琳ちゃんを呼んだり、そっちの当てた懸賞なりくじ引きって訳ね」

 

「当ててくれた恋花の分も、目一杯楽しむ……!」

 

「こっちはこっちで、灯莉があたしの券を使って勝手に引いたってだけだったんですけど……もうきっかけなんて関係ない! アイドルとして、一人のリリィとして、全ての笑顔は守ってみせるわ!」

 

 ここまで吹っ切れたなら後は勢いで……なんとかならない分は神琳ちゃんがしっかりフォローしてくれるだろうから、ステージ周りの調整は任せていいだろう。

 

「それと、梨璃ちゃんと紅巴ちゃんはチラシ配りだからって気を抜きすぎないように。亜羅椰ちゃんみたいなのに襲われても知らないからね?」

 

「あ、亜羅椰さん……アールヴヘイムの、遠藤亜羅椰さんのことですか?」

 

「そ、男女問わずのナンパ全振りウーマン。梨璃ちゃんはとっくに目付けられてるし、紅巴ちゃんも……まあ隙を見せたら危ないか」

 

 身長的にはそこまで積極的に狙われそうにないけど、リリィオタク特有の腰の低さを見せちゃうと、多分アウト。それに、夢結がいない内に梨璃ちゃんが変な目に遭いましたなんて、あんまり報告したくないし。

 

「てか、夢結たちまだ帰って来てないの?」

 

「あはは……出発前の夜、こっちの寮にいらした梅様の話してた感じからして、お姉様に限らず大分気合い入ってたみたいですから?」

 

 なんだその謎な手回し? とはいえ今日中に帰ってこないようなら、一葉ちゃんたちの件もあるし流石にこっちも動かないといけないんだろうけど。身体がいくつあっても足りないね、こりゃ。

 

「あっ、円陣組むみたいですよ!」

 

「いいねぇ、青春っぽくて」

 

 まあ、問題が多すぎるなら、手分けしてひとつひとつ潰して行くだけだ。一人じゃない、なんてのは今更だし。

 

「海水浴場リバイバル計画……そして、アイドルリリィ・トロピカル・サマーナイトフェス! 絶対に成功させるわよーっ!!」

 

「「おーーーーっ!!」」

 

 うん。立派なステージ名も付いたんだ、張り切るとしますかね?

 

◆◆◆

 

 昼食を終えれば改めて神琳ちゃんたちは打ち合わせへ、梨璃ちゃんたちは宣伝のため街へチラシ配りへ、なら残された上級生のやることなど決まっている──リリィのおしごとだ。

 

「はぁぁぁっ!」

 

「残りはまとめて、フルバースト!」

 

 なんて叫んではみても今はアーマーを整備に回したついでに、アタッチメントも空な完全に素の状態に戻したライザーなものだから、シールドからの射撃はバルカンだけで大分寂しい。

 とはいえソードガンは散弾に切り替えてるし、バルカンはシールド二枚で計四門とリリィ単騎にしては十二分な火力ではあるから、切り込んだ叶星を取り囲もうと動いたヒュージを一掃するくらいは、余裕でこなせる。

 

「っ、群れをふたつに分けて……雪華様!」

 

「オーライ、こっちは任された!」

 

 そんな風に派手にかましたからか、生き残りの半分は海側に撤退して、もう半分は囮のつもりなのか浜辺を抜けて市街地方面へ向かうと来た。

 一応梨璃ちゃんたちにもヒュージ出現の話は行ってるだろうけど、折角宣伝役をやってくれてるんだし、邪魔なんてさせるかっての!

 

「だから、とっとと消えろぉ!」

 

 スラスターを全開にしたシールドのグリップを掴み、強引に先頭のヒュージまで抜き去って振り向き様にビームソードを最大出力、三体程まとめて切り裂いてから左右を抜けようとしたヒュージには光刃を出したままなシールドを投擲、抵抗も虚しく貫かれる中射出されたソードガンを連結し、残る三体はレーザーブレードで切り刻む。

 

「うん、少しは最上級生らしいとこが「「瑤さん!?」」……なんてキメてる場合じゃないか」

 

 こっちは私一人で殲滅できたのだから、大分場数を積んでるはずな三人が苦戦する数とは思えなかったけど、海岸沿いってなると地形の問題があったか?

 

◆◆◆

 

「えっと、どういう状況?」

 

 ともかく瑤のピンチならと行きのやり方に『インビジブルワン』も加えた今出せる最高速で海側に戻って来たら、何故か海に入ったまま上がって来ない瑤と、その周りでやけに慌てている千香瑠と叶星の様子が目に入る。とりあえず逃げたにせよ倒されたにせよ、残っているヒュージはたったの二体だし、こっちで対処しようとシールドを飛ばして蜂の巣にしておこう。

 

「んーと、崖上からヒュージを狙おうとしたら先に攻撃されて、足場が崩れて落下した……ってところ?」

 

 これで落ち着けるかと観察してみれば、CHARMを手放してまで腕で胸元を庇うようにしている瑤の近くの崖が、不自然に崩れていたのが見えたからそういう感想になるけど……ん? 胸元。

 

「あっ……そっちに……!」

 

 で、膝まで浸かるくらいに海に入っていた私の近くに、何か見覚えがあるような物を引っ掻けて泳いでくるのは、カクレ……てないクマノミだっけ? 色的に。

 

「せ、雪華様! そのお魚を!」

 

「あーはいはい、そういう感じね」

 

 瑤は明らかに恥ずかしがっててまともに話せてないし、千香瑠の方も大分要領を得てないけど、ヒュージ出現の警報に慌てて沖から戻って来たのか、近くを一般の船が通ろうとしているのを避けるように、大回りで瑤が顔だけ水面から出しながらこっちに来るとなれば、流石に理解した。

 

「んじゃ、やっちゃえオーバーライザー!」

 

 真ん中の方のクマノミが瑤の水着、それも上の方を引っ掻けてるのなら、群れごと対処するのみと近くの水面に思いっきりシールドを突っ込ませ、海面を揺らす。

 そうすれば当然クマノミたちはすわ襲撃かとパニックになって、しっちゃかめっちゃかに動き出すけど──

 

「そこだ、いけぇ!」

 

 ──手元に残してたもう一枚のシールドを投げて、クマノミから水着が離れたところを引ったくるように回収。そのまま波乗りのように瑤の元へ向かわせれば、ミッション完了かな。

 

「また、一段とCHARM捌きが凄いことになってますね?」

 

「これでも元からそれ用に作られてるソードビットに比べれば、大雑把にしか動かせないけどね」

 

 千香瑠が瑤のガードに向かったならと、そこら辺に突き刺さっていたクリューサーオールを拾っていた叶星には感心なのかどうかな反応をされるけど、後乗せ改造の無理矢理な運用には違いないから、まだまだだ。

 

「あっ……えぅ……かえってきた……よかった……」

 

「大丈夫……瑤さんは私がぜったいに護りますから……だいじょうぶよ……」

 

 なんか、ヘルヴォルの方はあんまり大丈夫じゃなさそうな雰囲気だけど、とりあえず千香瑠が楯になって船の方からは隠してるみたいだし、こっちもなるべく見ないようにしながら、援護にシールドを飛ばしておこう。

 

◆◆◆

 

「なんか、戦闘したって以上に疲れた気がする」

 

「あ、あはは。二人ももう少し時間が経てば……あら、姫歌ちゃん?」

 

 あの後「もうお嫁に行けない……」なんてまだ様子がおかしかった瑤を千香瑠とセットでペンションまで送り、外に出てみると……楽器持ってるし、バンドか何かかな?

 ともかくそんな女の子たちと姫歌ちゃんと神琳ちゃんが、何やら意気投合したようで大盛り上がりしていた。

 

「あ、お疲れ様です」

 

「うん、二人はどうだった?」

 

「なんとか、落ち着いたみたいで……わっ!?」

 

 そこで何かあった時に備えて待機していたからと、色々限界そうだったヘルヴォル二人を任せてた雨嘉ちゃんも出てくるけど、急なギターの音に驚いている。

 

「おぉー。流石にアイドル自称するだけあって、即興のセッションもお手の物か」

 

 さっきまで見せていたのは楽譜か何かだったのか、始まった演奏に合わせて姫歌ちゃんが歌い出せば、バンドの子たちもノリに乗って演奏の勢いも増す。

 

「び、びっくりした……でも姫歌さん、なんだか楽しそう」

 

「ふふ、姫歌ちゃんは皆を笑顔にしたいんだもの、そのためにはまずは自分が全力で楽しまなくちゃ。でしょ?」

 

「そりゃあそうだ、楽しくないって見てて分かったら、その段階で終わりだもんね」

 

 だからまずはお手本に、自分が全力で、全開の笑顔を見せてみせる。それこそがアイドルリリィと名乗り、憧れる姫歌ちゃんなりのアイドル道なんだろう。

 

◆◆◆

 

「藍ー、そっちいったよー」

 

「わかったー、それっ!」

 

 昼過ぎの漂流組は食料調達班──などといっても無人島な以上海で魚を取るくらいなのだが、そんな役割を今日割り振られたのは、結梨と藍。

 

「とったどー」

 

 拠点周りの細かい作業を末っ子コンビに任せても仕方ないとの配役なのかは分からないが、少なくとも結梨が追いやった魚を藍が続々と有り合わせの素材で作った銛で突いて確保しているのだから、適材適所ではあったのだろう。

 

「凄い凄い! たいりょーだ!」

 

「えっへん。あ、そこのほうにもいる、とってくるね」

 

「うん、じゃあ先に夢結たちのところに……藍?」

 

 ヒュージの襲撃で乗っていたボートが破壊されてしまった以上、持ち出せた道具はそう多くない。故に水底の魚を狙った藍も素潜りになるのだが、それにしては上がって来るのが遅い、と気になった結梨も少し潜ってみるが──

 

「がぼぼぼぼ(からまっちゃった)」

 

「ぼぼぼ!?(えーっ!?)」

 

 ──そんな彼女の目の前にいるのは海藻、ワカメだろうか? ともかくそれに巻き付かれるようになっている藍の姿で、どうにか引き剥がそうにも藍がもがいたせいか変になってしまって、結梨一人ではどうしようもなく、一旦海面に顔を出す。

 

「たーづーさー!」

 

「大声出さなくても聞こえてる……どうしたの?」

 

 そこで呼ぶのは念のためと近くで荷物番を兼ねて待機していた鶴紗になるが、どう伝えたものか分からず見たままを口にする。

 

「藍がからまっちゃった!」

 

「えぇ……? とりあえず二水を呼んでくるから、しっかり見てて」

 

「うん!」

 

 藍とてリリィであるのだから、水中でもしばらくは大丈夫としても、この状況では何が起こるか分からない。

 だから結梨が一度陸に上がってグングニル・サマー……今回も持ち込んでいた、百由特製の水鉄砲のような装飾をされたそれを手にしたのを確認しつつ、鶴紗は拠点開発に勤しんでいるだろう二水の元へ。

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