アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:女子力は低くないとメカダヨーとシュッツエンゲルアタック(ゆ)とああああああ!!
毎度の戦闘で文字数増えすぎて、結局分割数の増えるやつですわ。8月は!終わらねぇ!

ちなみに、コラボイベントは㍉知ら祭り(シリーズの大枠では知ってる作品も、コラボ範囲は既に離れてて分からぬ)で全く扱える気がしないので、小ネタの遠回し拾いが限界っす。


ステージ・ア・ライブ

 何かよく分からない寸劇はあったものの、船に残っていた三人も降りてくれば、各々探し人の元へ。

 

「一葉と藍、見付けた」

 

「なんだか、前にも同じようなことがありましたね」

 

「ミイラ取りがミイラになるとこまで、あの時と同じだねぇ」

 

 勿論、あの時二人を追っていた中の恋花が一人寂しくお留守番だから、丸っきり同じではないけど。

 

「うっ……それにわざわざ流された水上バイクの確保まで、申し訳ありません」

 

「レンタルだから、失くしたらべんしょーだったよね」

 

 それはそう、借り物なら余計大事にしないといけないでしょうに。なんてヘルヴォル側に混ざっていると、横を駆けていくのは桃色のサイドテール。

 

「お姉様ー!」

 

「梨璃ー!」

 

 こっちの返事は結梨ちゃんだけど。ともかく数日ぶりの再会だと梨璃ちゃんが夢結に飛び付けば、その後ろから結梨ちゃんも混ざって団子になっていた。とはいえ私が気になるのは、少しズレたところ。

 

「にしても、二水ちゃんのもその仕様なのね?」

 

 視界に入った梨璃ちゃんたちのもそうだったしと改めて眺めてみれば、結構なカスタムが施されたグングニルのグリップエンドにマギを蓄えるコンデンサーを追加したのを、空色基調な本体カラーに合わせて水鉄砲のタンクに見立ててるのか……だからサマー仕様?

 

「あはは……水着になるとどうしても守りが薄くなるから、マギを防御に回しやすいようにと、百由様が特別に用意して下さったんです!」

 

「ま、効果の方は保証するぞい。思わぬデータも取れたしのう」

 

「やれやれ、転んでもただでは起きませんわね、ちびっこ2号は」

 

 で、ウチの隊でグングニル持ちの三人といえば揃って新米リリィだ。同じく新人なシルトのミリアムちゃんは最悪『フェイズトランセンデンス』で全力防御に走ればいいとして、中々に凝ったことをしてくれる。

 

「梨璃ちゃんの子を診た時も思いましたけど、また面白い装備ですよねー」

 

「じゃあ、霊奈さんならどのCHARMでやります? サマー仕様」

 

「スイカバーデュランダル~女たちのところへ戻るんだカスタム~」

 

 ああ、ちゃんと生還出来るように劇場版なのね。

 

◆◆◆

 

 雑談も程々に揃って船に乗れば、甲板で改めて全員いるかを梨璃ちゃんが確認している。

 

「えっと、お姉様に梅様、楓さんに二水ちゃん、鶴紗ちゃんにミリアムちゃ……あ、ごめんね」

 

「んっ? おお、流れで呼び間違えたくらい構わんぞい。この間の迷子扱いにくらべたらのう……

 

 ジト目になりつつ、苦笑いしてる二水ちゃんの方に視線をズラしてとミリアムちゃんが微妙に根に持ってるのはともかく、続いて私に結梨ちゃん、一葉ちゃんに藍ちゃんと全員揃っているのを……待った、何故に私もそっち側?

 

「大丈夫そうなら戻りますよー?」

 

「はーい、全員いまーす!」

 

 ともかく中から顔を出して確認してきた霊奈さんに梨璃ちゃんが返事をすれば、船も島を離れて浜辺へ向かうことになるから、さっきまでいた無人島を眺めつつ確認を。

 

「それはそうと、あんなところに流されたのもやっぱり海でヒュージに襲われてー、って感じ?」

 

「ええ、流石に気を抜きすぎていました……」

 

 まあ、夢結は普段から気を張りすぎなくらいだから、途中まででも息抜きになったなら良かったんだろうけど。

 

「なら、この後はもっと気を抜いてていいよー」

 

「……何か、あるのですか?」

 

「はい、とびきりのが!」

 

 そこで梨璃ちゃんがズイッと割り込んでくるのなら、チラシ配りの手応えも結構あったのだろうなと、腕を組んで頷きながら船内に入っていよう。

 

◆◆◆

 

 流石に大本を叩いたからには帰り道は特に何もなく、船が元の浜辺へ戻れば、降りた先には元気のない雨嘉ちゃんが。

 

「あ、皆……」

 

「雨嘉ちゃん? どうしたの?」

 

「その……ごめん……」

 

 ふむ、上手く言えそうにない感じから不在の間に何かあったのかと、雨嘉ちゃんの相手を梨璃ちゃんに任せつつ、私たちはステージの方へ。

 

◆◆◆

 

「……まだこんなもん?」

 

 ともかく戻ってみれば、もう夕方だというのに大分設営の進みが遅いというか、行く前より後退してるように見えて、最初からやり直しにでもなったのかという具合。

 

「あらみなさん、お帰りなさい」

 

 そんな風に違和感を抱えてしまった以上、出迎えてくれた神琳ちゃんに確認せざるを得ない。

 

「うん、ただいま。で、これってもしかして」

 

「ええ、雪華様たちの出たしばらく後に、先日の生き残りのヒュージがこちらを襲撃して……」

 

 だろうね。もう何人か残しといた方がよかったか……なんて後悔にも、誰かがぶつかった感じがして、浸っている暇もなく。

 

「おっと、そこ邪魔っすよー」

 

「あぁ、ごめん」

 

 襲撃があった……というわりには行く前より作業の人数が多いというか、昨日姫歌ちゃんにスカウトされていたガールズバンドの面々や、リゾートのお客さんなんかも加わってくれているようだ。

 

「あ、せっちゃんせんぱいに一葉たちー。暇してるなら手伝って~☆」

 

「灯莉ちゃん、大丈夫だったの?」

 

「んー、作業してた皆に怪我はなかったんだけど、定盛はステージが壊れたショックで部屋に籠っちゃってるから、改めてぼくらで最高のステージを用意してあげなきゃ!」

 

「なるほど……よく分かりませんが、全力を尽くします!」

 

 そうして端に避ける途中、相変わらず忙しなく駆け回っていた灯莉ちゃんに見付かったなら、私たちも加わるとしましょうかね?

 

◆◆◆

 

 ともかく改めて詳しい話を聞いてみれば、最初の機材がヒュージの襲撃でほとんど壊れてしまったからと、古い物まで持ち出してなんとか形にしようとしているところなら、力仕事は任されようか。

 

「灯莉ちゃん、この機材はどこに?」

 

「んーと、そこの段の上で!」

 

 そんなこんなで今は鶴紗ちゃんと左右からとある物を運んでいると、物珍しそうな顔をした結梨ちゃんに覗かれる。

 

「雪華ー、これなに?」

 

「うーん、DJ……テーブルでいいか」

 

 細かい呼び方はともかく、まとめてなら多分これでいいはず。

 

「でぃーじぇー?」

 

「『DJは、人と音とを繋ぐ者。胸に刻んで精進します』なんちゃってー」

 

 そこは陣頭指揮を執ってるだけあって色々分かってそうな灯莉ちゃんが説明してくれるけど、なんか途中のキャラが妙に違う。

 

「なに、友達の受け売りとか?」

 

「そんなところー☆ゆりゆりも色々言うより見た方が早いよね? えっとねー、ここをこうしてー……ぎゅいーん♪」

 

 流れで察した私が電源を繋いでおいたからって、早速灯莉ちゃんが弄ってるけど、迷いがなさすぎるから初見で適当に触ってる訳じゃないな? 隣から見てる結梨ちゃんも目を丸くしてるし。

 

「おー……あれ、なんか急に変わった?」

 

「うん☆こうやって違う曲と曲を繋いだり、ちょっとテンポいじってみたりー、巻き戻してみたり!」

 

 いや、本当に手慣れてるね? 私も別に専門家ってつもりは微塵もないけど、完全に手付きが素人のそれじゃないな?

 

「あ、次は向こうおねがーい」

 

 とはいえやることがまだあるなら、まあ器用なんだなで済ませるしかない。

 

「はいはい、行くよ二人とも」

 

「はーい」

 

『~♪』

 

「あれ、この曲……?」

 

 ──そこで灯莉ちゃんが次に流してた曲に鶴紗ちゃんが反応してたから、後で“レギオンとして”やることが決まった訳なんだけども。

 

◆◆◆

 

「あの、これは一体……?」

 

「ん、遅かったねひめひめP」

 

 ステージも程よい感じになってきた頃、灯莉ちゃんに肩車された状態で姫歌ちゃんが連れてこられたなら、今回ばかりは私も流れに従ってこう呼んでおこう。

 

「ふふ、そろそろ主役のご到着と思っておりました」

 

「すみません、このスピーカーはどこへ?」

 

「神琳さん……と、一葉さん? は無事で何よりだけど、ステージが……」

 

 色々と情報の洪水に飲まれて混乱してるようだけど、姫歌ちゃんが頑張った結果集まった人たちが、今度は姫歌ちゃんのために頑張ってくれた──というのは作業に加わっている顔触れを見れば伝わったようで、驚きが収まるとやる気を取り戻していた。

 

「いける……これはきっといけるわ! あ、それとそのスピーカーは、ステージの前に等間隔でお願いします」

 

「分かりました! 藍、そっちからもお願い」

 

「はーい」

 

「お、ひめぴー遅いっすよー」

 

 そして音響周りとくれば手抜かりもなく返していれば、復活に気付かれて関係者諸々に囲まれているのだから、もう心配はなさそうだ。なんて眺めていると、姫歌ちゃんの後ろからグラン・エプレの残りのメンバーがこっちに。

 

「ごめんなさい、こうなっていたのなら私たちも先に加わっておくべきだったかしら」

 

「いいよ、残ってた皆こそ大変だったみたいだしね」

 

 叶星からの字面よりは気楽な調子の言葉に返せば、それを受けた紅巴ちゃんは気合い十分な感じ。

 

「はい……ですが、その遅れは今から取り戻させていただきます!」

 

「うん♪定盛もとっきーも元通りだ!」

 

 いいね、流れが出来てきた、これなら遅れも取り戻せそうだ。

 

「お、お待たせしました……」

 

「今度も手作りですよー!」

 

 なんて感じていると、朝と同じように──今度は私の代わりに、雨嘉ちゃんの入ってくれていたメンバーで作った差し入れが届くのだから、もうひと頑張りといこう!

 

◆◆◆

 

 そして、ライブステージが開幕してしばらく──

 

「「イエー!!」」

 

「盛り上がってるねぇ」

 

「なんだかこっちまでテンションが上がってきちゃいます!」

 

 私たちはそのまま裏方として、ステージ袖から眺める形にはなるけど、お客さんの入りも予想以上だし、バンドの子たちも他の参加者も、大分白熱しているのもあって梨璃ちゃんも元気満タンだ。

 

「ですが、少しクラクラしますね……」

 

「夢結、大丈夫か?」

 

 実際大分音でビリビリ来る感じはあるから、箱入り寄りな夢結には刺激が強いかなって感じはするけど、そこはまあ、梅の役得ってことで?

 

「さて、姫歌ちゃんも忙しそうにしてるし……そろそろサプライズの時間だ。一柳隊各員、それとヘルヴォルの皆も、準備はいい?」

 

「はい、全員揃ってます!」

 

「こちらも、機材の方はお任せください!」

 

 うん、いい返事だ。一応ヘルヴォルの方にも何かやらないかとは聞いてみたけど『恋花様を残していますから、余り派手にやるのも少し心苦しいので』と断られた以上、そっちに専念してもらうとして。

 

「じゃ、私は先に行くから、華麗に舞い踊って来るように!」

 

◆◆◆

 

「姫歌ちゃん、ここの機材が……」

 

「あー、それなら……あれ、その辺りのは瑤様と千香瑠様にお任せしてたはずなんだけど」

 

 舞台裏、紅巴に連れられた姫歌が機材があったはずの場所を確認していると、そういえば何人かの知り合いを配置した場所で見掛けないことに気付いたと同時、ステージ側で何かが落ちたような轟音の後、ウーウーと警報のようにサイレンの音がする。

 

「えっ、なんなのよ!?」

 

「ほら定盛もとっきーも、はーやーくー!」

 

 しかし狙ったかのように現れた灯莉に腕を引かれては、驚いている暇もないという物で。

 

「灯莉! 分かったから離しな……さ?」

 

「なんでしょうか、あれ……?」

 

 そのままステージの袖まで連れられれば、眩く光る何かがステージの中央に落ちて、不自然過ぎるくらいに煙を上げている様子。

 

「いや、ステージ台無しじゃなむぐっ」

 

「はいはーい、今の主役はぼくたちじゃないよー」

 

 灯莉に口を塞がれながらも目はステージの方に向ければ、確かに前の出演者たちも誰も慌てた様子はなくそそくさとはけていて、となれば演出の一環だろうかとの考えが姫歌の頭に過ったところで、彼女の身体を紅巴にパスしながら、ステージ中央に集まる照明の隙間を縫って、灯莉が上段のDJテーブルへ駆け寄る。

 

「ミュージック・スタート♪」

 

『吹き荒ぶレイス 立ち向かえ

 Minds to fighter』

 

「これ、さっき準備中に流してた曲よね……?」

 

 開幕から歌い出すタイプの曲故に、記憶から引き出すのも早かったが、それで何をするのか──に対する答えは、インカムの方から。

 

『ひ、一柳隊、出撃っ!!』

 

「あ、出てきました」

 

 緊張からか少し噛んでしまったのだろう梨璃の声に続いて、一柳隊の十人……雪華を除いたメンバーがステージのあちこちから出てきたのを見れば、姫歌にもこの状況の仕掛人が見えてくる。

 

「それに、あそこに置いてたのは新しい機材の中で唯一無事だったって最新式のプロジェクター……まさか」

 

「すみません姫歌さん、これもサプライズだという話だったので」

 

 そこで物陰から一葉が藍を連れて申し訳なさそうに出てくれば、こうしてライブステージが開催出来た時点で奇跡のようなものなのだから、協力してくれた面々の遊び心にも、とやかく言えなくなってしまう。

 

◆◆◆

 

「ノインヴェルト戦術、開始!」

 

 参加者が各々の楽器を持ち込め、パフォーマンスにある程度動けるよう、ステージはそれなりの広さに組んではいたが、当然跳んだり跳ねたり駆け回ったりなリリィの戦う場としては、いささか以上に狭くなる。

 故に最初から、激しく動くのではなくノインヴェルトのパス回しを、当然本物を使う訳にもいかないのだから演出としての光球──しかし触れる感覚はあるという不思議なそれを使ってやる。と決まったはいいが、姫歌にバレないようぶっつけ本番となれば、先程噛んでしまったのといい梨璃の顔も緊張の色が強い。

 

「…………」

 

「ぁ……お姉様!」

 

 とはいえこういう浮いた場など不慣れなはずの夢結が、パスを待つ構えで真剣な表情を向けて頷いてくれた。それだけで心の揺らぎが収まるのだから、理屈は上手く言葉に出来ないけれど、梨璃にはそれだけで十分だから、グングニルを振るい仮想のマギスフィアを飛ばす。

 

『あ、今更だけど今回も邪魔はするからね? 気を抜きすぎないように』

 

「……ふぇ?」

 

 自分の出番な時以外はマイクを切るようにしていたから、梨璃も思わず出てしまった自分の間の抜けた声は拾われなかったとは思うが、パスを投げ渡した後でインカムより聞こえた雪華の言葉に偽りはなく、ステージ中央の光る球体──ライザーの防御フィールド、その透過を完全に切った状態のそれに包まれた雪華が少し浮かび上がったと思えば、中からレーザーで攻撃してくる。

 

「!?」

 

 跳び退くにはもう遅く、そもそもステージを傷付ける訳にもいかないだろうと梨璃はサマー仕様なCHARMの補助も受けながら障壁で受けるが、逸れた分がステージに当た……ったにしては変な消え方をして、ステージ全体をプロジェクターとは別の光が包んでいると気付けた。

 

「……雪華様?」

 

『ま、ステージ壊す訳にもいかないからさ? 代わりにめっちゃ疲れるから、曲が一番の間に終わるよう早回しでね!』

 

 つまりはいつもの足場のように無数に出すのではなく、ひとつ大きなそれとしてステージを包んでいるフィールドを追加で展開しているようで、その上『謎の敵』役らしく攻撃もしていれば、負担は大分あるのだろうなとは察せる。

 

「次、梅!」

 

「任せろ!」

 

 ともあれ急に割り込んだ形な以上時間も取れないと、サッと夢結がパスを送れば雪華からの妨害を避けるように跳びながら梅が空中で受け取り、そのまま狙いを定めていた。

 

「行くゾふーみん!」

 

「は、はいっ!」

 

◆◆◆

 

「なるほど、『リリィが守ってます』アピールのために飛び入りで……でも、わざわざ水着のままで?」

 

「今、今二水さんが目線くれましたよ姫歌ちゃん!」

 

 そんな様子をステージ袖から眺めているグラン・エプレ一年組になるが、サプライズ窓口だとあらかじめ話の通っていた灯莉や、共犯になる一葉から軽い説明を受け、ツッコミも程々に折角だからこの機会に名門百合ヶ丘のノインヴェルト戦術を見学させてもらおうと切り替え、二水から雨嘉、神琳と呼び掛けと共にパスを回していくのを眺めていれば、その視線に気付いた神琳からはお返しのウインクが。

 

「っ……さ、流石にファンサも手慣れてるわね」

 

「おー、定盛照れてる☆」

 

「て、照れてないわよ! あと、ひめひめね! P付けるかは任せるけど」

 

「すぅー…………」

 

 などといつものように姫歌と灯莉が同室同士でじゃれていると、紅巴は決して彼女らの間に割り込まぬよう黙って柱の影に隠れ背景に同化しようとしていて、そこに反応しようとした藍は一葉が先んじて手で制している。

 その間にも一柳隊の擬似ノインヴェルトは神琳から楓、ミリアムと続きフィニッシュへ一直線だ。

 

「フィニッシュは鶴紗じゃ、頼むぞ結梨!」

 

「おー!」

 

 全体のアイデア自体は雪華と裏方組のそれとしても、何かをやりたいと言い出したのは鶴紗だったとなれば、その手前な二人も最初から締めを譲るつもりで、ミリアムから引き継いだ結梨はマギスフィアのような何かをステージ上段ど真ん中に放る。

 

「鶴紗、やっちゃえ!」

 

「っ、決める……!」

 

 キャッチは滑り込む形のギリギリになってしまったが、流れる歌はちょうどサビの一番盛り上がる部分。であればフィニッシュにはちょうどいいと、雪華の高さまで跳んだ鶴紗は、そのまま防御フィールドへティルフィングごとマギスフィア代わりの光球を叩き付ける。

 

(……こうなるのね)

 

 あくまで演出な以上実際に爆発が起きる訳ではないが、激しい発光と爆音からその分派手にはやるとなれば、鶴紗はそのまますれ違うように下へ降りる。

 

「……あっ」

 

「「わああああああっ!!」」

 

 そうなるとステージの前の方へ降り立つことになるのだが、前方の観客から一斉に歓声や拍手を送られて、どうしたものかと一瞬呆けてしまう。

 

「ふふ、手でも振り返してみますか?」

 

「……ん、そういうのでいいの?」

 

 内心を見抜かれたのか、さらりと横へ入ってきてアドバイスをしてくる神琳の言うように、ティルフィングをつきながら空いた手を客席へ向け振ってみれば、拍手の勢いが増すのだからとりあえずは良かったようだ。

 

「さて、後は任せるよー」

 

 ともあれ役目が終われば、フィールドを解除した雪華がシールドをバトンのように回して投げ、再度キャッチした後に仰々しくお辞儀をして去って行くと、入れ替わりにステージ袖からMC用のマイクを受け取ってきた梨璃がステージ中央へ。

 

「というわけで、わたしたち百合ヶ丘女学院所属、一柳隊の飛び入り模擬ノインヴェルトでしたー! あ、今仮想敵の役をやって下さっていたのは三年生の雪華様で「梨璃ー、あんまり時間ないから巻きだってー」え?」

 

 しかし、同じく一度袖へはけていた結梨が灯莉から耳打ちされた内容をそのまま言ってくれば、挨拶も程々に本題へ。

 

「コホン、では飛び入りついでに一曲聞いてください、『GROWING*』!」

 

◆◆◆

 

「ふぅ……」

 

「お疲れ様でした。これを」

 

 引っ込んだ後、残った皆の歌い始めたステージの方を見ながら流石に無理をしたなと額の汗を袖で拭っていれば、一葉ちゃんからスポーツドリンクを手渡される。

 

「ん、ありがとね」

 

「今更になりますが、雪華様は前半だけでよろしかったのですか?」

 

「不完全燃焼かって聞かれるとまあそうだけど、流石に色々キツいってば」

 

 別に全方位防御しつつ少し浮くだけなら、今更大した負担でもなかったけど、敵役として抵抗しつつステージ全体を保護するのまではちょっと無理をし過ぎたとは思うし、そもそも思い付きだから歌詞割りとか弄ってる余裕もないしで、私の役割はあそこまでだ。

 

「大体、十人で歌える曲ですらほとんどないからね。十一人なんて尚更でしょ?」

 

「えー、別に元の人数関係なくみんなで歌った方が楽しくない?」

 

「それはそれでこれはこれ、私自身こういうところに立つってのに馴染みもないし」

 

 混ざってきた灯莉ちゃんに返すように、競技会の時もブレイザーの御披露目なんて目的のくせして、汐里ちゃんのようなソロでなくチームの一員なんて少し引いた配置にしてもらったのも、結局はそういうところ。烏丸隊の二年間で裏方が癖になってるのかっていうと、多分その通りなんだろうけど。

 

「雪華、うたうのいやなの?」

 

「いや、一応歌うの自体は嫌いじゃないからね? 不特定多数の前で目立ち過ぎるのがちょっと、ってだけで」

 

「は、はあ?」

 

 まあ、これまでの時点で目立ち過ぎてると言われればそっちもその通りでしかないけども。とにかく藍ちゃんへの返しに姫歌ちゃんにも微妙そうな反応をされてる以上、今更何をなのは間違いないとして。

 

◆◆◆

 

「お疲れ様ー、いざライブやってみてどうだった?」

 

「はい! 観客のみなさんからも元気が貰えて、これまでの疲れも吹っ飛んじゃいました!」

 

 歌い終えて戻って来た皆を出迎えれば、先頭の梨璃ちゃんを始めやりきった感じでご満悦というところ。

 

「んじゃ、次ウチらなんでマイク貰うっすよー」

 

「はーい。例の話も、よろしくお願いしますね!

 

 ん、バンドの子たちにマイク渡しながら、梨璃ちゃんがコソコソしてたのはなんだろうか?

 

「梨璃ー?」

 

「えへへ、内緒!」

 

 同じく気になった結梨ちゃんが聞いてみても、楽しそうな返しがくるばかり。灯莉ちゃんも視界の隅でニヤニヤしてるし、今度もまた二人で何か仕込んでるのかねぇ。

 

◆◆◆

 

『えーっと……い、イカしたリリィを紹介するぜー!』

 

 その結果としては、灯莉ちゃんと梨璃ちゃんにステージ上まで拉致られた姫歌ちゃんが、ガチガチのMCで紅巴ちゃんに紹介されるという、大体思った通りのそれ。

 

「まあ。随分と楽しそうなことになっていますね」

 

「……でも、折角なんだから一番頑張ってた姫歌さんもステージに上がれた方がいいよね」

 

 ステージ裏から三人を追って来たのだろう神琳ちゃんと雨嘉ちゃんも、この様子を見てどこか納得したような感じだから、これでいいんだろう、多分。

 そのままグラン・エプレの一年トリオにステージを任せて向こう側にはけた梨璃ちゃんも、驚いていた叶星にマイクを渡し、瑤や千香瑠も物理的に後押ししながらステージに送り出していた。

 

「あのー、雪華様。お身内の方がいらしたとか」

 

「身内? 誰だろこんな時にこんなとこで」

 

 なんて眺めていると、一葉ちゃんからよく分からない呼び出しが来たので、とりあえず案内してもらうことに。

 

「はー、なるほどねぇ?」

 

 とはいえ、いざ客席側の入り口まで連れられて来てみれば、待っていた顔触れには納得以外なかった。

 

◆◆◆

 

「ふぅ……」

 

 結局周りに乗せられたがまま、ソロ一曲ずつに姫歌とのデュエットまでと、上がるつもりのなかったステージで大分はしゃいでしまったなと思いつつ、どこか満足している自分に気付く叶星だが、ステージの裏に引っ込んでから自覚してしまうと、誰もいないのもあって少し欲張りになってしまう。

 

「……高嶺ちゃんにも、見てもらいたかったなぁ」

 

「あら、既に叶っている願いよ。それは」

 

「えっ?」

 

 まさか、また幻聴を……と声の聞こえた方へ向こうとすれば、誰かが肩に触れた、幻覚でも意識だけの存在でもない直の感覚が伝えてくれる。

 

「お待たせ、いいステージだったわよ」

 

「高嶺ちゃん!?」

 

◆◆◆

 

「二人もお疲れ様、かな?」

 

「あはは。たかなほセンパイたちがいいフンイキになってるんなら、アタシたちが頑張った甲斐も……」

 

 つまるところ、隊服姿でお仕事上がりな感じの高嶺にあやちゃんとユウちゃんも付き合って、ステージにギリギリ間に合わせてあげたと。にしたって、叶星がステージに上げられたのすらサプライズだっていうのに、運命の巡り合わせってのもあるもんだねぇ。

 

「で、この後水着コンテストもあるんだけど、参加してく?」

 

「無理無理。アタシら何持ってるかって、見ての通りCHARMだけでしょー?」

 

 制服姿なあやちゃんは相変わらずの魔改造ティルフィングを背負ってるし、ユウちゃんの方は……背中掛けのホルスターに分離させてしまってるのはトリグラフ。揃って疲れ果ててる様子からして、用事とやらを終えてそのまま直行だったんだろう。

 

「それで、こちらの方たちは……?」

 

「あー、こっちが従姉妹で隣の子がそのルームメイト。生徒会の手伝いとかでたかなほとも結構縁があるみたいでさ、学科的には姫歌ちゃん紅巴ちゃんと同じで、灯莉ちゃんとは入学式からの友達だとか」

 

「なるほど、それで」

 

 そして何故高嶺と一緒にいたか、についてはわりとレギオン単位で仲が良いと伝えれば聞いてきた一葉ちゃんも頷いているのだから、証明終了。

 

「ま、コンテストまで少し時間あるしね、何かしら奢るよ。一葉ちゃんもどう?」

 

「あ、では頂きます」

 

「ゴチでーす。ほらユウも、そろそろ息整ったでしょ?」

 

「はいはい……彩文共々ご馳走になります」

 

 うん、素直でよろしい。

 

 ──なお、その後の水着コンテストで、姫歌ちゃんによるステージ上からの呼び出しで同盟レギオン全員参加と相成った中、しれっと高嶺が審査員に回っていたのは、完全な余談として。

 

「高嶺ちゃん!?」

 

「ふふっ」




新衣装
解放

黒紅雪華/リリティカルサマー
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