アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:平成好きなアピールはボチボチしてるとチア衣装回収と誕生日会と夜中の侵入者と。
タイトル通り頭イレギュラーになってのコラボ回ですわよ、アニメラストのノインヴェルトに彼女足したり、以降もちょこちょこ話題にしてたのは、これの前振り九割でしたとさ。

実のところ本作を書き始めたのもこっちに移しだしたのも、冗談抜きにAC6が出てシリーズ(というかフロムゲー全般)にハマる前なんで、こうなっちゃったのなんてインターネット交通事故も甚だしいところなんですけどね!
あ、それともう来月見えてますけど、新年初投稿ですので明けました。


双黒の例外─イレギュラー─たち

 三日後の第四演習場──百合ヶ丘の近場にある、半ば水没した都市を再利用する形で作られたそこを一望できる高台に、梨璃たち一柳隊の一年生と、他にも中等部の生徒など結構な人数が見学に集まっていた。

 

「で、ここで何するの?」

 

 その中にはまたしても(ちょうど)日本に来ていた莉芬も混ざっていて、隣の雨嘉に聞けば思い出すようにしながらの返答が。

 

「えっと、なんだか今企業の人たちが来てて、それ絡みのテストだとか、なんとか……?」

 

「ふーん?」

 

 雨嘉としても午前の授業終わり、クラスまでやってきた梨璃たちに誘われた形で全容は分かっていないが、姉に言われて莉芬も少し離れたところを見てみれば、確かに生徒でも教員でもなさそうな数人の大人が、テントの下で何かをしているのが見える。

 

「ねえねえ二水先輩、知ってる人?」

 

「あ、はい! まず右側で全体の指揮を執っている方が、鳥船霊奈様。今年の春卒業された工廠科のOGで、雪華様が前に所属していたレギオンの先輩アーセナルかつ、各種専用機や諸々の装備の開発者でもあります」

 

「へー、あの先輩の」

 

 そう聞いた時点で莉芬から霊奈へのイメージは『あの』百由同様の変わった人側に定着するが、恐らく本人を含め誰も否定はしないだろうから、特に訂正の必要はない。

 

「それで、今霊奈様と話しているのは、えっと……」

 

 流石に二水とて全知全能ではないながらに、慕ってくれる後輩の前だからと頑張って説明しようとするが、霊奈の相手な薄桃の長髪にヘッドセットを着けた女性が初見の相手と気付けば、どうにもならなくなる前に助け船を出せる鶴紗が横から入ってくる。

 

「多分、柚子絡みの人」

 

 鶴紗も直接会ったことはないが柚子の、というよりはまだテスト段階なCHARM付きのオペレーターのようなことをしている女性が自分のことをあまり話さない人だ──とは同室なのもあって前に聞いていたから、二水の情報網から抜けていても、さほど不思議ではない。恐らく、自分たち同様あまり他人に話したくない出自なのだろうから、下手に探らないのが礼儀として。

 

「柚子さん?」

 

「わたしのルームメイトで、今日先輩とのマッチングを頼んでたの」

 

 つまりは、前回莉芬が来ていた裏で雪華と話していた内容が今日の件に繋がるのだが、当然彼女がいない場での話なので、莉芬は知るよしもない。

 

「ふーん、でもなんで?」

 

「わたしは、梨璃たちと出会えて、その……世界に色が戻ったというか、えっと」

 

「なんとなく、分かるかも。だから、そのために?」

 

 上手く言語化出来ない様子な鶴紗から引き継ぐように、どこか同じようなモノを梨璃から貰った雨嘉が続ければ、返事はコクリと頷くこと。

 

「それで、今柚子はフリーランスとして忙しくしてるから、依頼って形で話を通せるよう、会社ってバックがある雪華様に」

 

「そこで楓じゃないのは……うん」

 

「まあ、妥当な判断かと」

 

 そういう理由なら、企業令嬢だなんて立場の楓でもいいのではないかと一瞬浮かびはしたが、同じようにダメな理由はもっと早く浮かぶから、神琳の同意が挟まるより前の、口にする途中で雨嘉自身『無いな』と認めるしかない。

 

「あはは。楓さんって、イロモノ枠の中でもとびきりすっごいみたいだからねー」

 

「まあ、アレに並べるのもそうはおるまい」

 

「……いいところもあるのは分かってるけど、今の柚子を任せられるかって聞かれたら、返事に困る」

 

 仮に任せてみて、いざ改めてまじまじと眺めてみたら好みのタイプだった。なんてことになって下心が出たとしても、梨璃へのそれを見ていれば相手を蔑ろにはしないレベルのギリギリなラインを攻めるのは理解しているが、それでもようやくリリィとして復帰出来たばかりなルームメイトに、あんな劇物を投げつけるなんて博打は鶴紗には打てなかった、そういう話。

 そして当の楓自身はどうしたかというと、ルームメイトの検査の付き添い……というより、無理を言ってでも連れていって欲しいと、前日の内に鶴紗の方から結梨に頼んでいたのだから、今は仲良く不在だ。

 

「……でも、ここまでの大事になるのは、ちょっと聞いてなかった」

 

「む、そろそろ始まるみたいじゃな」

 

 ともかく、そうこう話している内にミリアムが反応するように柚子の方はスタート位置に就いた様子で、盾型のCHARMにアタッチメントを取り付けながら、ボーッとビルの屋上に佇んでいた。

 

「おぉー、シールド系でも神琳さんたちのとはまた違ったタイプ!」

 

「柚子さんの『プリドゥエン』はキャメロットキャッスル社の機体らしいので、近いのは辰姫さんの『キャリバーン』でしょうか? また、最新鋭の機体ということもあって色々と珍しい機構があるとか──あ、そうなるとあの人が、元リリィらしい以外の情報が無い同社の……」

 

 また分からない領域の話に行っちゃったなー、と梨璃は置いてきぼりになるが、それよりも気になるのは……

 

「ところで、あの衣装は?」

 

「? 百合ヶ丘なんだから黒なんじゃないの?」

 

 他のガーデンに通う莉芬としては百合ヶ丘=黒ずくめ、なイメージらしいが、それにしたって制服もシャツを初め所々に白をアクセントにしているのだから、柚子の着ているロングコートのような服装程、徹底した黒一色とはなっていないとは実際に百合ヶ丘に通っている面々の感想。

 

「あはは、百合ヶ丘がモノクロ系と言われればそうですが、柚子さんのは〈マーセナリースタイル〉──所謂仕事着ってやつですね」

 

「「仕事着?」」

 

 二水が左右から重なっての疑問に返すよう、例えるならばレギオン隊服と同列の戦闘服だと追加で説明されれば「なるほどー」と梨璃や莉芬も頷くが、当然柚子はどこかのレギオンに所属している訳ではないが故に、違った言い回しになってしまう。

 

「あれが『黒き山猫』──〈ブラックリュンクス〉いざ見てみるといかにも仕事人。って感じよねー」

 

「え、糸で吊るあの?」

 

「いやいや、普通に刀でバッサリじゃなかった?」

 

「? 拳でゴキリでしょー」

 

 その『仕事着』の名前は前の方でやいのやいのと騒ぐ中等部生三人が、妙に前時代的な趣味に寄りながら図らずも説明してくれていると、開始の合図だろう笛の音と共に訓練場が光のドームに覆われる。

 

「なんかまた出てきた!」

 

「えっと、二水ちゃん、これも?」

 

「はい! 例によって烏丸の関連企業が開発した技術で、訓練用の中からは通さず、外からは自由に出入り出来るタイプのシールド機構ですねー。今回はこれのテストも主目的のひとつだとか」

 

 続けてそんな説明を聞けば『捕獲したヒュージの逃亡対策に使われそう』や『むしろ捕獲する時、設置場所に誘い込むとか?』、『いっそ訓練で脱落した子を……いや、それならわざわざこんなめんどい仕様の使わずに普通のでいいか』などと中等部生たちが他の用途を思い思いに話しているが、まだ相手となる雪華の方が見えないとなると、話題が逸れるのも仕方ないことか。

 

「さて、今度はどんなことをやらかすつもりなのかのう」

 

「あの先輩ならいきなり凄いことになりそうだけど、どっからくるかなー?」

 

 などとミリアムや莉芬がキョロキョロと見渡していると、何かに気付いた柚子がCHARMを構える先に、ビルの間を走る水飛沫が見えた。

 

「うっわー、なんかアニメかなんかであんなのなかったっけ?」

 

「水上を……?」

 

「こないだLACでやってたらしいからって、またミーハーな……」

 

「あはは。キャバリアに乗ってても、やってることはほとんど普段の雪華様って感じでしたから」

 

 とはいえ実際は靴裏に何かしらの防御壁を張っての、アメンボや何かのような浮き方にシールドやビットのスラスターを合わせた動きなのだろうが、烏丸時代の隊服を纏い、マントの上にライザーのシールドを連結させた状態のものを背負った上からX字を描くようにブレイザーのシールドとストライカービットとを携えた雪華の装備は、アーマーの方も肩に付ける部位が増えていたりと、梨璃たちがこれまで見てきた中でも一番の重武装となっていた。

 

◆◆◆

 

「あ、モニター点いた……っていっきなり派手だなー」

 

 どうやら映像の投影も可能らしいシールドの表面に、テストを開始した二人の様子が映し出されるが、互いにシールドに装着したガトリング掃射での弾幕戦と、莉芬のぼやきが見学組の総意になる。

 戦力比としては柚子の方が大型故に口径は上で、雪華の方が右側のシールドに毎度の二連装で手数は上となるが、総合すればお互いに撃ち合いを抜けた分は盾で弾ける程度なら、互角でいいのだろう。

 

「でもさー、ガトリング程度の豆鉄砲じゃシールドの耐久以前だよねー」

 

「いや、ガトリング程度ってわたしらがあの勢いで両側から撃たれたら、普通に蜂の巣じゃ……」

 

 そこで自前のスパナをクルクルと回している、工廠科志望なのだろう頭にバンダナを巻いた中等部生徒の、ルームメイトな連れを引かせる程の物騒な呟きが聞こえたのか定かではないが、オーバーヒートしたガトリングをパージし、浮き輪のような何かに乗せて水面に浮かべた雪華は、続けて右肩のアーマーに乗せる形でストライカービットの砲口を柚子へと向けていた。

 

「お、きたきた対艦装備! こういうド派手なのでなくっちゃ!」

 

「そんなので撃たれたら普通じゃなくても人は死ぬからね!?」

 

「てか、あの先輩も何考えてそんなの持ち込んでるの……?」

 

 しかし中等部生の喧騒とは裏腹に、梨璃たち高等部組や莉芬といった雪華の滅茶苦茶を直に体験している面々は、テストとはいえその相手が務まると選ばれた柚子もそっち側だろうなと、揃って彼女の昔馴染みな鶴紗の方を見ればコクリと頷かれたのが答えなら、特に心配はない──感覚が麻痺していると言われれば、その通りだとして。

 

「マイクロウェーブはないのが残念だけど、いっけぇぇぇっ!」

 

「どういうテンション?」

 

「ていうか蓮乗院先輩普通に弾いてるし!?」

 

 とはいえ、柚子も流石に『ヘリオスフィア』単独で対応する程甘くは見ていないようで、ロングレンジバスターキャノンによる砲撃に対してはプリドゥエンの装甲を展開し、CHARMとレアスキルを連動させての全力防御。

 

「……『貴様らには水底が似合いだ』?」

 

「『AMSから、光が逆流する…!』」

 

「急に最期まで飛んだね?」

 

 その様子が以前結梨が再現したような身体をすっぽり覆う形で、緑色をした粒子のようなバリアが球状に展開されるなんてものだから、中等部生たちが何かの台詞で騒ぎ出すが、その元ネタが伝わったのは他の見学組では二水くらいだろう。

 

「どういう意味なんだろう……?」

 

「うーん、()()()()レベルってところでしょうか」

 

 故に梨璃が首を傾げているなら、オタクとして一般の相手へは少し弁えた言い回しを送ることに。後輩たちのように身内で騒ぐのはともかく、伝わらないボケなど虚しいだけなのだから。

 ……もっともそう思う二水の返事も、若干別の趣味に寄せてはいたが。

 

 話をテスト側の映像に戻せば、柚子が弾いたことでシールドに逸れた分の砲撃が数ヶ所に拡散し、その部分は向こう側の空が見えなくなる程発光はしたものの、特にダメージはなく耐久性は問題なさそうに見えた。

 

「おお、戦術換装」

 

「単にアタッチメント外したり取り替えてるだけでしょ……」

 

 内訳としては柚子はガトリングをパージし、プリドゥエンの基本装備な長短二本の銃身を展開、雪華は肩アーマーの下部を開け、取り出したマルチランチャーを空いた右のシールド裏へ──ここまでは段取り通りなようで、お互いに同タイミングで装備の切り替えをしている。

 

◆◆◆

 

 装備を整えて第二ラウンド──なんてノリでもないし、そもそもテストにしてはこっちの装備がやり過ぎでは? 

 なんてなるくらいだけど、柚子ちゃんのオペレーター(?)みたいな人には『うちのリリィ相手にはそれくらいで構わん』とは言われたし、霊奈さんにも『計算上リミッター解除しなきゃブチ抜いたりはしないはずですよー』って……ん、つまり最大出力ならこのシールド抜けるの、ストライカー? いやまあ実戦でもないのに、そこまでするつもりもないけどさぁ。

 

「それにしても、なんでこうなったんだか」

 

 ちゃんと事前の打ち合わせがあるだけ、思い立ったらで突発的な亜羅椰ちゃんみたいなタイプよりはマシだけど、元々鶴紗ちゃんに頼まれていたのは模擬戦か何か程度で、ここまで大事になったのは大人側の都合だとは、開始前に霊奈さんがぼやくように言ってはいたけど、向こうのオペ子さんは嫌味のひとつもなくノリノリで柚子ちゃんを送り出すんだから、何かトラブルにも慣れてる感じがする。

 

「……っと」

 

 とはいえ、現実として色々と巻き込んだテストになってしまっている以上、物思いに耽るのもここまで。アタッチメントを外し本来の装備で柚子ちゃんはこっちを狙っているのだから、ジグザグに水上を滑って躱しつつ、次の手を撃たなければならない。

 

「なら、今度はこっちだ!」

 

 連結させながら変形も終えたバスターライフルを一発、照射でなく単発で放って同時にソードビットの連結も解除、放った光弾の周囲を駆けるように飛ばしつつ、左右の斜め上を向けてアンカーを伸ばす。

 

◆◆◆

 

「どれどれー、次は何を……ってCHARM飛ばした!?」

 

 映像を眺めている下級生側は莉芬の反射的な呟きへ、ミリアムが細かいところの解説を。

 

「いや、確かに今ならシールド単独でも飛ばせはするが、ありゃアンカーを本体ごと引っ掛けとるな」

 

 つまりは、陽動のためソードライフルのシューティングモード時に展開する鍔のような部分に、片手のアンカーガンを引っ掛け、その状態でシールドに戻しておいたものを反対に飛ばしながら、雪華自身は窓の割れた部分から廃ビルの中へ飛び込み、対する柚子の方は直前の射撃を避けた後に迫るソードビットへの対処もあり、追いきれなかった形になる。

 

「うわぁ、あの人から目離さないといけないとか絶対後が怖いんですけど」

 

「あはは……シールドの耐久テストという名目だからって、CHARMの出力も訓練用になってないですからね」

 

「……ごめん、多分柚子の方も録でもないセッティングなんて慣れてるから、こうなってるところはあると思う」

 

 ラボ時代は当然として、恐らくフリーランスでの活動でも不測の事態に慣れすぎたばかりに、見ている側の心臓にも悪い状況になっているのだろうが、こうなると二人の匙加減に任せるしかないと、今更な後悔を鶴紗が抱えている中、柚子の周りを牽制するように飛び回っていたソードビットが近くの建物に突き刺さっていたシールドへ戻ったと同時、向かい側の建物の外壁を貫いて砲撃が迫る。

 

「ほらやっぱりー!」

 

 今度はストライカービットを両手で構えての一撃は、ソードビットが離れた時点で来ると予測していた柚子がバリアを張りつつ横に避け──

 

「「あっ」」

 

 ──はしたものの、対峙している二人と見学の面々が揃って気の抜けた音を零した理由として、その先にあった手すりに柚子が手をついた途端、劣化し脆くなっていたのかあまりにも軽い音を立てて根本から折れ、勢いのまま屋上から放り出されたからになる。

 

◆◆◆

 

「いや、流石に水没はアウトでしょ!?」

 

 ならまずこんなもんで砲撃するなって? 私だって知ってたら初めから「こんなとこにするな」と言えたんだろうけど、場所自体は開始前にようやく知らされたんだから仕方ない。

 で、責任の所在はともかく、幸いにしてブレイザーは私より近いんだからと落ちてる柚子ちゃんの方に飛ばして……

 

「あ、撃たれた」

 

 別に今更その程度で壊れるでもないけど、普通に追撃と思われたな? 私ってそんな情け容赦無用に見えるのか……あるいは、今日は予定の合った真とカラオケ行ってるとかな梅みたく上に乗ったことがないから、そういう発想に至れなかったのか。

 どちらにせよ、撃った反動であっち側のビルに寄ったならと、いつぞや私がシャルルマーニュでやったように左手で壁をガリガリとして減速をかけ……防御結界あるからって躊躇いないなぁ。

 

「……普通あそこまでやる?」

 

 それで終わるだけならまだしも、銃口を斜め下に向け降りる先に何発か撃ち込んだ榴弾の爆発で元の屋上まで吹き飛ばされて戻るのは、流石に無茶が過ぎないかと思うけど、ヘリオスフィアでしっかりガードはしてるのがなんとも。

 

「そりゃあ、こういうのが当たり前になってるとか鶴紗ちゃんも不安で仕方ないんだろうけども」

 

 多分工廠科からCHARMを回収する時、同室だからと二人分まとめてなこともあったろうし、その時ついでにコアから抜いた柚子ちゃんの戦闘記録なり映像なりを見たなら、心配になるのも分かる話だけど、そんな感傷もお構い無しに銃口はこっちへ向いているのだから、やれやれというか。

 

◆◆◆

 

 柚子が屋上へ危なっかしく戻るのを確認してから、ここからは邪魔だと言わんばかりにストライカーを横に放った雪華は左右に回したライザーのシールドからソードガンを抜刀、背部に呼び戻したブレイザーのシールドからはソードビットを再度射出しながら、自身のいる建物から柚子のいる屋上までの間に、無数の足場を展開しながらランダムに跳び継いで行くいつもの戦法へ。

 

「「出た、〈円環の赫星〉!」」

 

 中等部の生徒たちがにわかに騒ぎ出す通り、お得意の擬似空戦機動に今は彼女の意を受けたソードビットが刃に紅い燐光を乗せ飛び交うのだから、確かに派手で観客受けはいいのだろう。

 

「なんか人気っぽいのは分かるんだけど、なんでだろ?」

 

 何度か話した程度でも莉芬とて雪華が悪い人ではない、とは分かるもののシルトにまで伝染しつつある戦場でのめちゃくちゃさを見ていると、どうしてもそっちのイメージが強くなるというところで、客観的な人気の具合がイマイチ掴めていない。

 

「やはりデュエル世代唯一の『円環の御手』覚醒者であることと、百合ヶ丘内で冬佳様や依奈様に次ぐ最新式な第4世代CHARMのユーザーであるというのもあって、同好の士を初め眺める分には一定の人気はありますねー」

 

「要素要素を切り取ればー、って感じ?」

 

 その『同好』がどこの部分かは分からずとも、直接関わる側にならないなら映画的な感覚というのなら莉芬にも分かるような気がしていると、横から深い溜め息が。

 

「……まあ、当然それだけ激しくCHARMを扱うということは、わしらのようなアーセナルとしては年中頭痛の種なのじゃが」

 

 結局そこに帰結するミリアムのぼやきを聞けば、現在中等部な彼女らは高等部という括りで見れば雪華の卒業後に進学という立場故に、他人事と騒げているのだろう。なんて答えになるのだが。

 

「あ、あはは……」

 

「あー、そりゃあねぇ」

 

 だから莉芬からの認識は変わらず、「凄いけど変な人」な雪華の映像へ視線を戻せば、なんか連鎖的な爆発に包まれていた。

 

「……拡散弾?」

 

 恐らくは柚子が放ったのだろう攻撃は某狩猟ゲームで見るような光景を引き起こしているが、今更雪華がその程度でなんとかなるようなら訓練とはいえノインヴェルトを食らった時に跡形もなく消し飛んでいるだろうから、心配自体は微塵もない。

 

 ともあれ、改めて状況を纏めればまず出現した足場へ攻撃していた柚子だが、雪華のそれは元より防御のための物を小分けにしている形な上、ある程度動かせるよう『聖域転換』をも合わせていることもあって強度が非常に高く、なら壊すより本体を狙った方が早いと切り替えた形に。

 

『っと、これくらいはやってもらわないとねぇ!』

 

 当然その程度で雪華が止まるはずもなく、爆煙をマントで払いながら、サブアーム越しに外套(クローク)のようにライザーのシールドを前面に構え、その横からソードガンを連射しながらソードビットで柚子へ包囲を掛ける。

 

「……あれ?」

 

「ねぇ、もしかしてあの動き……」

 

「…………」

 

 しかし、慌てるでもなく柚子が銃口を足元に向ければ、見学サイドもいい加減嫌な予感の精度も上がってしまう訳で、梨璃と莉芬に見詰められた鶴紗が気まずそうに視線を逸らしたのが答えなのだろう。

 

「うっわぁ」

 

 そして予想通りと言うべきか、柚子が今度は自分の足元に榴弾を撃ち、バリアを張りながら横っ飛びに離れた瞬間に追加の射撃で起爆と、ソードビットを吹き飛ばすだけにしてはやり過ぎな真似をしながら横のビルの屋上まで吹き飛ぶという、「こんなの後輩に見せちゃっていいの?」とその後輩の一人な莉芬が思うような有り様になっている。

 

◆◆◆

 

「えぇ……」

 

 ビットを回収したブレイザーのシールドを手に、柚子に爆破された後の屋上に降り立つ雪華も、莉芬以上にドン引きという様子だが、まだテストの終了は告げられていないし、そもそも『自分の担当』が終わっていないとなれば、左手でソードライフルを引き抜き、軽く振るってみる。

 

(感じは変わってない……けどなぁ)

 

 どうにも伝えられた改造内容にも半信半疑なまま、しかし試さないことには終わりそうもないぞと、サッと指揮でも執るように剣先を動かし、再度足場を展開するしかない。

 

◆◆◆

 

 柚子からの迎撃の中、こちらもマルチランチャーから榴弾を返しながら雪華が空を駆ける、見る分には派手な攻防が繰り広げられているとなれば、中等部生の反応はヒートアップするばかりで、バンダナの少女はスパナを握りしめながら感激していた。

 

「くぅー! この多数のCHARMやマギの足場を使って縦横無尽に戦場を支配する感じ、まさしく〈ラスト・ドミナント〉って感じよね!」

 

「それ、ヒュージのタイプのひとつな『ドミネーター』と意味被るから没になった異名じゃなかったっけ?」

 

「そもそも何がラストなんだろう……?」

 

 そんな中、相変わらず雪華には色々と本人も把握しきれていない呼び名がある。とは二水もいくつか聞き慣れない物を聞いたことはあったが、確かにこの異名は『元ネタ』が分かるだけにボツになるのも理解してしまうと、微妙そうな反応にもなってしまう。

 

「うーん……」

 

「二水ちゃん?」

 

「ああ、いえ。戦闘後の『後は頼んだぞ』ってイメージならまだ分かるんですけど、雪華様だと多分そのまま普通に生還しちゃうし緊張感ないなぁって」

 

「「???」」

 

 そして思考が逸れていたせいで、二水の様子が変わったと心配してきた梨璃への返しが頭に浮かんだ内容をそのまま出力するなんて形になってしまい、正気に戻った時には隣の莉芬と二人で不思議そうに首を傾げている。なんて光景に気付くと、「やらかした」と青い顔に。

 

「まあ、あの作品のあのルートの話なのは分かったが……」

 

「ということは、近頃工廠科で流行っているというゲームのことでしょうか?」

 

「うむ。一番新しいのが流行ったついでに、それより古いシリーズも元からのファンの手によって徐々に広まっておってのう、時々対戦会も開かれておる程じゃ」

 

 とはいえ純粋に腕前を競う物だけでなく、明らかに別作品の(なにがし)を再現しましたーな代物を御披露目する目的な物もある辺り、間口の広い作品だと関心しているのは、あまりそういった物をやらなさそうな神琳や、その隣でとっくの昔に頭の中が疑問符だらけになっているだろう雨嘉に話しても仕方ないことだと、ミリアムも黙って観戦に戻るのだが、中等部組の熱気は不思議な方向へ。

 

「……てか、どことは言わないけど蓮乗院先輩揺れすぎじゃない?」

 

「まさか、つけてな……」

 

「あれ、どっちの先輩が上だっ

 

◆◆◆

 

 などと外野が賑やかになろうとやることは変わらず、使わない分の足場を壁にした雪華はその手前で跳躍し、シールドの天井ギリギリからソードライフルの狙いを定め、今回テストすべき最後の『システム』を起動する。

 

「コード『α』、ロード……にしてもあの人、相っ変わらず作りかけの名前は適当というか効率第一だよねぇ」

 

 実際、システムを起動したはずなのに放ったレーザーは柚子のバリアに弾かれるばかりで、確かに事前に受けた説明の通り、まだ射撃には効力を乗せられないようだとなれば、雪華は勢いで逆立ちのような姿勢になったまま、演習場を覆うシールドを蹴り加速する中、振り抜く流れでソードモードに切り替えたソードライフルとブレイザー本体のシールドを構え、見上げてくる柚子へ突貫する。

 

「……っ」

 

 当然そんな状況になれば思うように迎撃も取れず、プリドゥエンを構えながらヘリオスフィアを展開する柚子だが、次の瞬間盾越しに衝撃が伝われば、少し目を細めることに。

 

◆◆◆

 

「え、今ヘリオスフィア張ってたよね?」

 

「それに、ソードの色が……?」

 

 恐らくそのカラクリなのだろうソードライフルの刃を染める緑のオーラが、柚子のヘリオスフィアによる護りを一刀のもと引き裂いたのだとは中等部組が騒いでいるおかげもあり、梨璃たちにも容易に想像はつく。

 

「……また烏丸の?」

 

「うーん、こっちも情報は特に入って……ああいえ、烏丸絡みならもしかして、この間見た彩文さんのCHARMのような……?」

 

「それって、雪華様のイトコの子だっけ?」

 

 加えてその出所など限られるからと鶴紗に訪ねられて、二水がたどり着くのはいくつかのプロジェクトの成果が混ざった代物だろう、先日見た彩文の改造ティルフィングに組み込まれていたシステム。

 

◆◆◆

 

 そして、ある意味での『本命』の効力をテント下のモニターで見ていた企業組の話題も、渦中のシステムについてに。

 

「なるほど、プリドゥエンの補助を受けた柚子のヘリオスフィアをチーズも同然にか。これで仮想敵を思えば、まだ試作段階とは恐れ入る」

 

「どうも。ですけど、まだピースがまるで足りてないと言いますか、線を引けてもその後が繋がらない……なので、本当にまだまだですよ」

 

 事実、ヘリオスフィアのバリアはソードライフルの刃こそ無抵抗に通しはしても、その通り道以外は防御能力を一切損なってない──と解析結果でも出ているのだから、まだα版でしかないシステムの完成度はその程度だと、髪を掻きながら霊奈の答える相手は、先程と同じく柚子付きだというオペレーター。

 

「どこの企業も漠然としたイメージだけで形にも出来なかった物をまとめたプロジェクトだ、その歳で舵取りをしているだけでも十分だと思うがな」

 

「それでも、満足には程遠い代物ですからまだまだデータは取ら……おっと」

 

 そこで演習場の様子を映すモニターが閃光に包まれたと、下手人は誰でしょうねと視線を向ければ、答えは腕を組み何処か誇らしげに。

 

「当然だ、私のリリィが制作者すら不満タラタラの未完成品にやられっぱなしなものか」

 

「……その言い回し、現役時代と変わらずですね、(かすみ)さん」

 

「ふっ、今でも現役続行中なお前たちには負けるさ」

 

◆◆◆

 

「マギ爆発!?」

 

「いや、直前に蓮乗院先輩のCHARMが開いてたし、バリアを攻撃に転用した……?」

 

「ねぇ、それってアサルトア──」

 

◆◆◆

 

「やぁっ」

 

 で、そんないきなりの大爆発をかまされてたまらずこっちもフィールド最大な全力防御を取りつつ屋上に着地すれば、もはや剣を抜く暇もないとCHARMの銃口でそのまま突きとかいう、気の抜けた掛け声同様のコメントに困る追撃が来る訳なんだけど……まあ、時間的にもう終わりだし、雑にシールドでパリィして終わりなんてオチはウケが悪いか。

 

『しゅーりょー』

 

 挙げ句霊奈さんのコールすら覇気に欠けてるけど、爆発の余波が収まれば私と柚子ちゃんが揃って銃口を突き付けてるって光景なら、多少映りもいいでしょうとして。

 

「ま、こんなもんじゃないかな、色々と」

 

 なんて締めながら軽く振ってライフルモードから再度ソードモードに戻したソードライフルを、クルリと回しながら納刀していると、柚子ちゃんの方は不思議そうに首を傾げている。

 

「それ、なんか意味あるんですか?」

 

 ふむ、『それ』とは私の手癖なCHARMフリップのことだろうとして、聞く相手が悪いと生意気だとそのまま壁際に押し込まれてフルコンボだドン! な言い種だけど、流石に彼女の出自を知っていれば、そういう疑問を抱く理由くらい分かる。

 

 ゲヘナでの実験じゃまず生き残るのが第一で、それ以外の趣味だなんだを考える余裕すらなかったろうから、自分を含む誰かに魅せるような動きなんて、本当にただの『無駄』でしかない──ラボ上がり故にそういう部分も残ってしまってるから、遊び心を見せてやれって人選だったのやら?

 

「うーん、対外的な理由なら前に受けたインタビュー記事でも読んでねとして、個人的にはこういう遊び心ってもんがないと、息苦しくて仕方ないからさ」

 

「遊び、心……?」

 

 いやまあ、別に射撃の反動で吹っ飛んでから死体蹴り(物理)しろとまでは言わんけど、多分柚子ちゃんがひたすらにフリーランスとして任務をこなしていく様が、鶴紗ちゃんにはどこか危うく見えたんだろうから、少しは気を抜いても……

 

「あっ」

 

「……?」

 

 ダメだそういう風に話を進めると、柚子ちゃんが亜羅椰ちゃんに遊び相手としてロックオンされてるのがあまりにもノイズ過ぎる。最悪ズルズルとソッチの遊びにはまって『亜羅椰様……』なんて堕ちかねんぞ?

 なんでか梨璃ちゃんがそうなってる様子まで浮かんだし、もうダメだな!

 

「はーいお疲れ様でしたー」

 

「いやホントですよ、なんでこんな大事になってんですか?」

 

 なんて頭を抱えていたら霊奈さんが途中で放り投げてたストライカー背負いながらやってくるから、とりあえず切り替えておこう。うん。

 

「向こうから折角だしと話を広げて来たのもあるんですが……ってあれ、霞さん帰っちゃいました?」

 

「多分いつもの『落とし前』かなぁ」

 

 落とし前。まあ企業サイドであれこれあったとはさっき聞いたけども、『次は襲撃を請け負うさ』とかそういうレベルなの?

 

「まあ、色々と手を広げてるが故のしがらみってやつですよ。巻き込んですみませんでした」

 

「別にあたしはいつものことですけど、柚子ちゃんは?」

 

「? 依頼が説明通りに行く方が珍しいって、あの人に聞きました」

 

 うん、やっぱりそっち系の考えな人か……この世界でソロのフリーランスなんてやる以上、そういう心構えでいた方が良いんだとは思うけども。

 

「雪華様ー、莉芬ちゃんがアイス買って来てくれたんで食べましょー!」

 

「ああ、そういや訓練でそういう約束してたっけか。二人追加でも大丈夫ー?」

 

 あの時はそのまま帰国でお流れになってたけど、わざわざクーラーボックス抱えてまでなんて律儀だことで。なんて聞こえた梨璃ちゃんの声に振り向き手を挙げて返し、こっちの二人を見れば「ゴチになります」な空気なんだから、とりあえず面倒ごとが終わればノーサイドってことで。

 

 ちなみに購買部で買ったにしてはわりとお高いアイスだったから、遠慮なくストロベリーを頂きました、はい。




今回のゲスト

桃井零さんのRTA風小説
安藤鶴紗攻略RTA
https://privatter.net/p/7971446
より大体陸戦ネクストな蓮乗院柚子と、そのオペ子さん(オペ子さん)をそれぞれお借りしました。4 the Answer(あ)
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