や、前にコラボのモブでふわとろ大尉とか海賊パン屋とかいたし…Ⅵが流行ってたとも二川言ってたしで?
この話はしないといけないよなぁと、アニメ編を大分弄った以上、その後の情勢も当然原作と乖離しまくってますよって部分。
世界は少しずつ変わろうとしている…それでも変わろうとしない者には、相応の末路を与えてやればいいって話。それとオリキャラ組の身辺整理も兼ねて。
翌日、約束の日だからと朝早くから私服姿で学院を出て少し離れた市街地の、路地に入った先にある喫茶店へ向かえば、そこには『貸し切り中』の張り紙と窓越しの店内に覚えのある人影が。
看板を見るに本来は営業時間外っぽいけど、この様子ならならいいんだろうとドアを開けて入れば、奥の方のテーブルで先日と変わらずスーツ姿な先客の対面に座って、まず確認を。
「とりあえず最初に聞かせてもらうけど……これ、姉さんでしょ?」
「ああ、そりゃあな?」
鞄から出した朝刊を指差しながら確認するのは、既に国の防衛絡みを一手に引き受けることとなった
『かつて政府の愚行で未来を弄ばれた強化リリィの少女たちが、まだ世のため人のため武器を取ろうとしてくれている』
──なんて何も知らない市民からの同情を誘おうとしているのが見え見えな、安っぽい賛辞の言葉で迎えられているけど、そのトップに置かれたところで姉さんが、私と──私たちと同じように
「何する気なのよ、こんなわざわざ分かる人には一発で分かる程度の仮装なんかしちゃって」
その部隊の隊員たちは、違法実験の被害者故のプライバシー保護と、任務遂行のためのサポートを兼ねているとかな、いかにもそれっぽい理由で着けている仮面で顔の上半分こそ隠していても、衣装のベースが
「いいだろ? 政府直属の特殊部隊だなんて、アニメみたいでさ」
当然こんなバレバレな物を出してきた以上、姉さんも誤魔化しすら挟まず、自慢するように肯定した後、手を顎に当てて考えている。
「で、どっから話したもんかねぇ……とりあえず霊奈のやつから、俺たちの当面の目的ってのは聞いてるよな?」
──ゲヘナこそが世界の敵であり、世を乱す悪意そのもの
そういう事実をどうやっても誤魔化せない程に、世の中の認識を進める……そのための手段にしては、実験のことを公表させるのはともかく、あくまで日本政府の責任だとしている今の状況はあんまりにも『らしくない』し……とりあえず質問に質問で返された分には、不機嫌そのもので首肯だけを返しておく。
「ならまずゲヘナを敵だとまでは行かなくても、鬱陶しい存在と認識してるやつらってなると、誰になる?」
「そりゃあ……一般的なCHARMメーカー、特に主流になれてない中小企業なんかになると、ゲヘナがマギ絡みの研究の大部分を独占してるって現状は、面白くないんじゃない?」
元々がどういう設立目的だろうと、手段の方が目的になって積極的にヒュージを造り、自発的に世界を混乱させているなんて存在意義の矛盾している今に至っても、未練がましく独占研究の権利だけは手放さないだなんて、事実を知ってる側から見れば厚かましいにも程がある。
だから直接手は出せずとも「誰かの手に掛かってとっととくたばってくれないかなー」なんて目の上のたんこぶのように思っている企業は、数えるのが嫌になるくらいはいて当然だろう。
「まあ、そういうことだな。だからまず働き掛ける先は企業になる、ゲヘナが潰れて得をする連中、崩壊後のゴタゴタに紛れて色々掠め取りたい火事場泥棒……あるいはゲヘナの下請けだって、偉そうな上のやつらを蹴落としての下克上を狙ってるのは、探ってみりゃあゴマンといるもんだからな」
「ああ、つまり理由はどうあれ、とりあえず『ゲヘナが死ねばよし』なんてヤツらに、それを叶えられる舞台を用意してやるって?」
悪意には相応の敵意を以て応える。ゲヘナに対しては常に「自業自得だ」と吐き捨ててる、姉さんらしいやり口だけど……
「……それ、統制取れるの? 絶対単なる寄せ集め以下になるでしょ」
「むしろそれでいいんだよ。寄せ集めどもにはしばらくの間は資金や物資面での支援と、たまの運び屋以上の役目は期待しちゃいねぇからな。父さんも初めから連中に『表立って動いてくれ』なんて頼んじゃいない」
実際にゲヘナと戦い、潰すのは烏丸の手の者がやって、協力者には裏からの援助だけか、最低限邪魔をしなければそれでいい──なーんて、どうにも旨い話が過ぎるようだけど、しばらくってことは、その内そいつらも表に引きずり出す予定はあるのかどうか。
……正直、戦力が拮抗した辺りで寄せ集めとゲヘナをぶつけて、片方が倒れたところに「お疲れさん」ともう片方を始末する漁夫の利くらいは、姉さんたちなら平然とやりそうではあるけど。
「で、そんな風に動いて、ゲヘナの方は大丈夫なの? 流石に全員が全員、研究に夢中で外から何されても気にしないアホだけでもないでしょ」
「当面は問題ないさ。反ゲヘナの連中がちょうどいい隠れ蓑になってくれるし、相手は個人じゃなくて、企業だからな」
ああ、やっぱり百合ヶ丘とか御台場とか、そこら辺の反ゲヘナの有名所を
正直ゲヘナと敵対していると公言しているくせに、その『敵』への警戒も対策も甘々過ぎるのを内外から散々見て来てるから、自業自得だとしか言えないけど。流石にここまで行き当たりばったりが過ぎる、迂闊で残念な行動が多いゲヘナ相手で、常に後手後手のされるがままっていうのは、ねぇ?
で、後者については、一人一人が何かをしてどうこうできるラインなんてとっくに過ぎていると、姉さんは店員さんの運んできたパンケーキをナイフで切り分けながら……いや、いつの間に頼んだのそれ? 普通に私が来る前か、わざわざ開店前から貸し切ってるんだし。
「そういう大きな単位で動くやつらは、利益ってもんを何より重視する。日本でこれ以上望むソレを上げられないってなったなら、最低限替えの利かない人員だけを引き上げて、残りの言うことを聞かねぇバカどもはトカゲの尻尾切りとして差し出しちまえば、それで体面としては『現場の独断による暴走です』で済まされちまうのさ」
「……なーんか納得いかないなぁ」
聞いてる途中から私がいかにも不満でーすと頬杖を付きながら返せば、「組織を動かす人間ってのは、そういう考え方じゃないといけないもんだからな」と肩を竦められる。
「そして、そいつらも捨て駒となったのが分かれば、後はこっちに着くか無駄に玉砕するかの二択だ。どうなろうと向こうの戦力は確実に削れる」
なんてパンケーキを口に運びながら一旦区切ると、気軽に「勿論、絶対に本心からこっちに付かないようなヤツだったり、裏切りがクセになってるようなアホは真っ先に間引くがな」と付け加え、大きめの一切れを更に半分にしてもう一口。
「ここまで言えば、わざわざ面倒なやり方をしてる理由も分かるだろ? 何せ今動かせるのは俺と直接の部下たちだけ、他から戦力を引き出せるのは、確実に勝てると連中に思わせられる状況まで進められて、ようやくだ」
そこまで言い切るとパンケーキの残りも口に放り込みながら、不本意だが仕方ないだろと言った様子で告げられる。
「……うっわ、姉さんらしからぬ現実的なやり口」
「あのなぁ、もう俺だって会社ひとつ預かってる立場なんだから、現実くらい見ないでどーすんだよ。最終的に裁くのは俺たち個人じゃなくて、やつらの作った怨み辛みです。って形にしといた方が、変に角も立たないしな」
まあ、それはそうではある。結局ゲヘナがいくら日本でやらかそうが、企業としての規模は世界レベルなのだから未だに不祥事の火消しにてんやわんやな高々一島国の政府なんぞとは、支える土台の大きさからして桁違いだ。
例え日本のラボを丸ごと放棄したところで、その分空いたリソースを使って他の国で好き勝手するだけ……ならばゲヘナを世界の敵に、つまりは世界そのものが連中の敵に回るという構図にして、初めて勝負になる。
「じゃあ、それまではどうやるのさ?」
「まずこないだのアホどものおかげで、勝手にズタズタになった日本政府は完全にこっちで押さえられた。ゲヘナの方も大分空きが出て、国内はほぼ父さんの管轄下で動きは大体筒抜けだ。後は他の国でも段々こっち側の活動範囲を広げていって、損得勘定で寝返ったヤツとか抜きでも向こうの勢力を上回った時に、連中のやり方に倣って『国連を通して』全てを世界に公表してやる。それでようやく、他の連中にもゲヘナを潰す戦力を出せって言える大義名分も手に入るからな」
なんかさらっとおじさま絡みの情報が更新されてるけど、これも粛清の嵐で上の立場が勝手に空いたから、とかだろうか?
で、やり口の方は前にも一発逆転なんて今更無理とは言ってたにしても、なんともまあ気長なことで。とはいえ、既に結梨ちゃんの一件が一切の語弊なく明かされてる以上、国連内部の『掃除』も多少は進んではいるんだろうけど。
「無難っていうか、それしか手がないからやってまーす感、凄いね」
「……結局、最後は力押ししかないんだよ。だから今はまだ、そこら辺のラボをチマチマ狩って、書類上は『やらかした現場の粛清』だってことにしといて時期を待つだけさ」
今更どちらが正しいかなぞ議論するような状況でもなし、お互いがお互いのことを認めないのなら後は直接対決、『力こそが全てだ』とするしかないと言われたら、それはそう。
いくら文明が進もうと、いくら科学が発展しようと、ヒトが戦うための力を捨てられないのは、所詮はその程度の理屈がまかり通るのが現実なんてモノだから。グダグダ偉そうに理屈を捏ねてるヤツらも、結局最後は物理的に『敵』を排除しようとするのだから、人間ってものの本質はいくら世代を重ねようが、世界規模の戦争を何度も起こしていた頃から何も変わっていない……いや、ある意味では今こそがヒュージを扱う者たちとそれ以外との、『第三次大戦』の真っ最中なのかもしれないけど。
「お待たせしました」
そんなタイミングで私にはメロンクリームソーダが出されると、姉さんの方を見れば腕を組んでドヤってるから……まあこっちの分も頼んでくれてたのだろうとして、少し飲んだ後アイスをストローでつついて沈めながら、話を続ける。
「で、ラボを潰してくったって、具体的には?」
「ん? そうだな、雪華ならどこからどう攻める?」
どこをどう。なんて言われても姉さんたちからハブられた以上、もう私に細かい情報なんて分かる訳がないんだから、地理的でなくどういう感じのか、って意味として──
「周りと関係の悪いところ?」
「半分正解だ。そういうやつらを起点に付近のラボに喧嘩を売らせて、起きた抗争の後始末をこっちで請け負うのさ」
曰く、表と裏の立場を使ったおじさまがラボ単位で対立するように誘導し、複数のラボに近くのラボがなくなれば自分たちに都合がいいと思い込ませ、我慢しきれず争い出したところを姉さんたちがまとめて始末するというのが、今の主なやり口だとか。
「……で、全員ボロボロになったのを横から接収してった結果が、新聞の執行部隊──〈エンフォーサーズ〉だって?」
新聞では〈正義を執行する使者〉だなんて、もうちょい心に響く言葉選びがあったでしょな、あんまりにも薄っぺらい感じで称えられていたけど。
勝った方が自分たちに都合のいいソレを掲げるだけな、ただのルール無用な殴り合いで、一体何を正義を呼ぶのかねぇ?
「まあな、強化リリィだって畑から取れるワケじゃねぇんだ。連中に使い潰されるくらいなら、逆に俺たちの手で連中を潰さないか? って聞けば、結構な数が頷いてくれたよ」
頷かなかった場合は、聞かない方がいいかな、うん。存在を知られた以上は……ってやつ。流石に被害者相手だから、事が終わるまで保護観察下にって感じだろうけど。
「それに、俺らの間では世間ウケだけのダサい名前なんかじゃない、ちゃんとした呼び名もあるしな」
「さいですか……」
どうせ○○レイヴン(ズ)とかそんなとこでしょな身内読みはともかく、キメ顔でそんなことを付け足しながら、姉さんは案の定出てきたチョコパフェ食ってるし。
「で、今更あたしにそういう話するなんて、あの夜の感じといい一体どういう風の吹き回しよ?」
「……これは、
それは、そうだろうね。やり口の過激さから、姉さんたちの行動原理はただ相手を許せないという純粋な敵意からだ……なんて、在学中から一切隠そうともしていないのだから。
「だから、あたしはこれ以上そっちに関わるなって?」
「……言って済むようなら、最初からそう言ってる。ガーデンの庇護なんぞゲヘナに対しては何の役にも立たねーのなんて、お前には今更言うまでもないだろ」
まあね、先輩たちも後輩たちも、例え衣食住には困らなかろうと、ゲヘナ相手には決してしっかりとなんて守られてはいなかったし。とはいえ、今更姉さんのやったことへの報復にゲヘナがわざわざ私を狙うのも、そんな余裕ないだろって感じではあるけど──
「──ああいや、もうとっくに動いてるってこと? 短絡的で後先どころか目の前の現実すら見ようともしてない、自分にだけ都合のいい机上の空論しか頭にないバカどもが」
「大分話が飛んだな……まあ正解なんだけどよ。お前ら、今度エレンスゲ経由で御台場に行くんだろ? あの辺りはどっちも
そこまでで一端言葉を切ると、パフェを一口頬張ってから心底うんざりした様子で続きが告げられる。
「こっちとしても、分かりやすくやらかした後に他への見せしめとして処刑するのはともかく、疑わしきは即罰せよじゃあ、ギリギリ不満の声が大きくなっちまう」
それが個人を相手にしてられない、ってところにもかかってると。あくまで組織を相手とする以上、こっちも組織としての動きしか出来ない……まあ、面倒だろうね。
「錦の旗を掲げている以上……いや、だからこそ相応の振る舞いをしないと、途端にそれすら嘘臭くなる。悪を裁くのにそれ以上の悪行を重ねてたら、世間のアホどもにはどっちが本当の悪者かなんて、分からなくなっちまうからな」
『相手が悪いんです!』とか言いながらその相手よりよっぽどアウトなことをしてる輩なんて、古今東西掃いて捨てる程いるだろうけど、それを公的機関の所属って立場でやってたら、たかが一企業に荒らされ放題のこんな治安じゃあ、暴動発生からの物理的な内閣総辞職も待ったなしになる訳で。
──そこで何故か変に斜めってる妙な構造のビルが、ドヒャアとカッ飛んで来たロボに柱を叩き折られて倒壊するイメージが浮かんだのは、なんか悪い粒子でも逆流したとして。
「バレない範囲には悪どいことしてるくせに、変なとこだけ真面目になっちゃってさぁ」
「〈バレなきゃ犯罪じゃない〉ってのはお互い様だ。だからこそ向こうの罪を暴くなら、見てくれだけでも清廉潔白に、だろ?」
──なんて格好付けながら締められるけど、仮に誰から探られようと問題ないように立ち回っているから、烏丸がこうもあっさりと政府中枢に食い込むことが出来た訳で。
詳しくは教えてもらってないけど、姉さんたちが襲われてから大体十年かそこらだろうとして、その間に政府内の勢力も大分おじさまの『同志』にされていそうだし。
「それに、企業同士の殴り合いにまで行けば、連中だって他に手を出してる余裕もなくなるだろ」
「ま、下手しなくても今度は自分たちが殺される番だってなったなら、実験だなんだと呑気にやってる暇はなくなるだろうけども」
にしたって自分たちのため、と言うわりに「関係ないから関わるな」って相手に対してもそんな言い分なんだから、情の捨てれない人だなと、呆れたような安心したような感じになる。
だからまだ、姉さんたちは致命的なラインは越えないと信じられる、ゲヘナが100悪いとしたなら、70辺りで留まってくれるような。
「で、そういえばだけど、これも姉さんたちの仕業でしょ?」
話が一段落したなら、他にも確認したいことがあったと今朝の記事と入れ換えにテーブルの上に置くのは、前に母さんが病室に置いていった新聞と、この前御台場で貰った資料。見せるのは、どちらもロネスネスが撃破したというギガント級の部分。
この間当事者からもおかしいって証言は得たんだ、あのタイミングで仕込みの余裕があるのなんて、全てを見下ろせる立場にいた烏丸サイドだけだろう。
「ああ、案内を担当したやつには『余計なとこは触るな』ってちゃんと説明させてたはずなんだけどなぁ。やつら、全てが失敗に終わったと知った途端自棄を起こしやがった」
「つまり、首謀者どもが仕返しでもしようってそこのヒュージを解き放とうとして、そのまま潰されたって?」
ゲヘナが実験と称した『ただの殺し』に使っているように、指向性を制御されたケイブから現れたのなら、そのヒュージの出現場所はエリアディフェンスの応用で絞れるはずだ。
あとはその場所をビルの上、ないし中に被せれば当然中身ごと『ぐちゃり』……ということで。別に今更同情してやる義理もないけどさ、こちとら20割の被害者だし。
「どの道その程度の小物だってんなら、あそこで死なせてやった方がまだ救いだろ?」
「ま、どこかの特務レギオンにカチコミ食らって
おじさまがああまで容易く政府を裏から牛耳れたのなら、当然逃げ出した連中──政府内部の主だった親ゲヘナ派のやつらから、使える情報はとっくに根刮ぎ頂いた後だったろうし、その後に残った主語を大きくすることや他人の足を引っ張ることだけが得意な人間など、最早仲間にする必要もないのだからこうして静かに退場してもらったと。
「で、話は戻るけど御台場が反ゲヘナのわりにハリボテだってのは百合ヶ丘共々今更としても、誰がやらかすって?」
「そこまで明かす程向こうもバカじゃ……というより名前を出されても分からないような小物ばっかりなんだろーが、まず情報の出所な『プロフェッサー』自体が信用ならんからなぁ」
そりゃあこんな有り様なら、内部の邪魔なやつらを消そうと反ゲヘナ勢力を利用しようって輩も出るだろうけど、当然そんな目論見が見えてる以上全幅の信頼を得られるはずもなく、お互いに利用するだけなのを分かって笑顔の仮面を着けたまま、ハサミとハサミで握手するような冷えきった関係が精々なんだろう。
「そいつが御台場の元締め?」
「いいや、表の立場があるってだけで、別にそこまでではねーよ。だからこそ、裏の顔しかないやつらより情報だけは持ってるんだが……ま、結局敵の敵止まりで、絶対に仲間にはならないな。アレも所詮はゲヘナだ、俺たちのことなんざただのモルモットとしか思っちゃいねぇ」
別に敵の敵がまた違う方向の敵である。という話は一切の矛盾なく成立するのだから、同じ敵がいる内は利用してやるが、その後はどうなるかお互いに分からんぞと。
「じゃあ最後にもひとつ、あたしのはともかくうちの従姉妹にまで霊奈さんの魔改造CHARM渡ってんの、いったいどういうことよ?」
昨日もあのままストライカー回収してって「もう次は用意してありますよー」だなんて言われたし、ブレイザーの新型システムといい色々動いてはいるんだろうけども。
「ん? あー、霊奈ってなると例のオーダーシステムのモニターか。選考は任せるっつったけど、あいつまたそんなとこから……」
つまり姉さんは候補者リストか何かの中身は知ってても、誰を選んだかの結果までは知らされてなかったと……サプライズ目当てかなぁ、あの人の性格的に。
「……あん? よく見たらその子、あいつのルームメイトかよ。ったく、霊奈のやつどこからが計算でどこまでが思い付きなんだか」
そこで資料か何かを鞄から取り出したタブレットで確認していた姉さんが、少し気になることを呟くようなら突っつこうか。
「ん? ユウちゃんだっけか、そっちも姉さんたち絡みなん?」
「まあ、成り行きでな。雪華がどこまで事情を聞いてるかは知らねえから大分前提ははしょるが、お得意様のひとつなガーデンが行き倒れてたのを保護したはいいものの、どこに通わせるのがいいかってウチに相談が入って、露骨にゲヘナと敵対してるとこは逆に目立ち過ぎるから、って神庭を勧めた感じだ」
そこら辺は、実際にゲヘナと表立って敵対している百合ヶ丘に通っていたからこそ出る選択よね。
結局なんの後ろ楯もなければ、国の名前を出された瞬間ガーデンの護りなどハリボテ以下になる以上、初めから注目度の低い、敵でも味方でもないところに通わせた方がまだ安全と。
「ま、そりゃあそうよね。なんなら東京なら、最悪烏丸の手が届く範囲だし」
「そういうところもある。元よりウチは神庭にも結構卸してるしな」
そして現状、東京はゲヘナの勢力圏のいくらかを、烏丸が丸ごとかっさらう形になった。政府のやらかしが多発して前倒しになったとはいえ、一応当初の予定からはズレてなさそうなのだから、ユウちゃんに関しては完全に狙い通りなんだろう。
……でも、そうなる前から都内に通わせてるってなると、天涯孤独な背景も合わせて、既に抱き込んでそうな気配はする。時々の検査も、どうせ烏丸の支配下なところだろうし。
「なら、こんなとこかな」
「なんだ、もういいのかよ?」
そりゃあ、ここで『彼女何番よ?』と新聞見せながら聞くのは簡単だけど、今の私は部外者な以上、守秘義務がどうとか言われて更に簡単にかわされるのは見えてるから、一気にメロンソーダを飲み干したら席を立とうか。
「別によくはないけど、さっきので最後って言ったでしょ? それに聞いたところで、答えてくれるような内容でもないし」
とはいえ何かを察したことだけは伝えておけば、姉さんも「あぁ……」と納得してくれるんだから、今はそれでいい。
◆◆◆
で、百合ヶ丘に帰ってみれば正門から見覚えのある顔が出てくるなら、見掛けた以上声は掛けておこう。
「おや、サボりかい?」
「……先輩たちにも梨璃にも、許可はもらってます」
なんて切り出したのも今日は
「なら私から改めて言うことはこれだけかな──気を付けて」
「……先輩の方は、もう終わったんですか?」
「うん。まあ一部は透かされたけど、最低限聞きたいとこは聞けたからね」
そして私用を優先したというのなら私も同じなのだから、思ったより早く終わって訓練の開始には間に合ったとしても、他人にどうこう言える立場でもない。
「……なら、この辺りに何かがあるって、伝えてください」
「ん?」
そこで目の前でスマホを操作しての即着信だと、メールに添付する形で送られてくるのは、どこかしらのマップデータ……位置からして、東京近郊だとは思うけど。
「タレコミねぇ。穏やかじゃないけど、まあ今なら空いてるでしょ」
元より日付を指定してきたのは向こうだ、丸一日とは言わなくても、時間に余裕はあるだろうとして。
「じゃ、いってらっしゃい」
「……いってきます」
◆◆◆
あのまま鶴紗ちゃんを見送り、寮へ戻って訓練用の普段よりシックな制服に着替え直せば、大体ちょうどいい時間だと部屋を出て訓練場へ。
「しっかし、ホント皆勝手に背負いがちだよね」
「雪華様がそれを仰いますか?」
その途中、走り込みを比較的早め(どうせ一位は梅だけど)に終えたからと、クールダウンに早歩きくらいのペースまで落としながらぼやけば、追い付いて来た祀さんから、後輩によく言われるようなことを。
「あたしはもうそういうのは通り過ぎた後だからね。これ以上何か背負ったら、無事パンクするっての」
「だから、そういう立ち回りに?」
『そういう』の意味がどうかなんて、わざわざ聞き返すまでもないというか。今年の私は基本的にややこしい問題に、あくまで後からの協力者としての形でばかり関わろうとしているのなんて、去年までのただひたすら烏丸の任務にのめり込んでいた様子と比較すれば、誰だって気付くだろう。
「姉さんたちって梯子がなくなったのもあるけど、私なりのやり方ってなると今更主役面するには、姉さんの後ろが長すぎてね」
「ふふ、それも零夜様の狙いだったのかもしれませんね」
違いない。今思うと、放っておけば一人寂しく何者にもなれず死んでいただろう私に対して、自分から先を行って蓋になろうとしてたのが姉さんだ。
そんな人のシルトをやっていたんだから、もう一人だけで無謀なことをしようって気分にはなれそうもないし、それがリリィとして間違ってない生き方だろうとも、思ってしまっているから。
「だからまあ、頼られれば応えるくらいが身の程ってやつなんだよ、私にはさ」
「そのくせちょっと油断したらカチコミまっしぐらなんだから、ホント心臓に悪いよナー」
「ええ、本当に」
む、終わってからすら周回遅れ……というよりは面白そうと横から話に混ざってきた感じなんだろうけど、梅はまだそのネタで突っつくか。
「ったく、最近はやれって言われたら程度に控えてるでしょうが」
「それでもこの前、LAC壊しながら突っ込んで来ただろー?」
まあ、それはそうだけども……やめとこ、こうなると私は脛に傷だらけだ。反面教師にしろとしか、誰かに言えた立場じゃないし。
「ところで、なんであたしも?」
そうして話を打ち切っていると、二水ちゃん辺りから借りたのだろうか百合ヶ丘の訓練制服姿な莉芬ちゃんが、昨日の今日でまだこっちにいたからと巻き込まれていたことに、私たちの横まで駆けてきながら今更な疑問を飛ばしてくる。
「上のお姉さんの方から、莉芬さんがこちらにいる間のことはお任せされていますので」
「うっ、姉様のことを持ち出されたら逆らえないなぁ……今回も約束あるからって結構ワガママ言っちゃったし」
つまりは、もうほぼほぼ一柳隊の身内扱いだぞと、そういうことらしい。なんかその内無理を通してでも二水ちゃんのシルト扱いにして、本当に囲いかねないなんて思ってしまうけど、雨嘉ちゃんの急な留学すら想定外過ぎて本国の方がひっくり返りかけたらしいし、その上妹の莉芬ちゃんまで引き抜けば、今度こそ本格的な国際問題に発展しかねない──とはこの後祀さんから聞いた話。
◆◆◆
あれからウォーミングアップを終えて、アスレチック系の訓練場に移ったはいいものの、そこでいつもはしゃいでいたはずの梅の姿がいつの間にか見えないぞと、校内の知り合いにメールを飛ばせば、茜から私服姿の梅が裏門の方にコソコソと向かっていたとの目撃情報が──
「──こないだ買ってたやつか」
「雪華様?」
「いや、梅はまたサボり……というよりお迎えかなぁ」
流石に抜け出した理由くらい分かる。けどそれは過剰な心配というか、そこら辺話してる暇もなかったから仕方ないんだけども。
「お迎え……えっとー、鶴紗さんが東京の同盟レギオンの人たちと遊びに行ってるんでしたっけ?」
「……ん? ああ、遊園地にね」
おっと、それは昨日までの予定で、当日になって何があったのか今日は荒事の用意をしてたはずなのに……いや、これはあくまで莉芬ちゃんには知らせてないだけかと、彼女の頭越しに梨璃ちゃんがペコペコと頭を下げているのを見て察する。
「ま、あいつのことだし我慢できなくなったんでしょ」
「うわぁ、二水先輩から梅様のサボり癖の話は聞いてましたけど、合同訓練でもやるんだ……」
そんな莉芬ちゃんは既に大分祀さんに絞られてるみたいだから、後が怖いぞーと言いたげな反応。とはいえ今回は事情を話せば大丈夫そうかと、祀さんの方を見てみれば……
「………………」
うーん、どっちとも取れる無言の笑顔。ダメだったなら熊さんくらいは捧げてあげよう、ぬいぐるみね?