アサルトリリィ~円環の赫星~   作:ですティニー

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前回のあらすじ:ツインバスターカチコミとぁあああああ!何度目かと迎撃戦迎撃戦…と。
欲張ったなら、突き抜けるのみ!

で、散々ゲヘナに厳しくして疑いの目も向けてる通り、このまま終わり良ければなんて甘い話はないわけで。さっさと畳むゾ!なお切り取るタイミング見失ってて、文字数は過去一。


静止した刻の中で─終わりは始まりの唄─

 夕暮れ時、相変わらずな迎撃戦跡地にはなるけど、なんだかんだ御台場組の助けもあって全員が合流したとなれば、ひとまずレギオンの後輩たちは休ませて、私が代表して作戦会議に出ることに。

 

「それで、状況としてはどんなもん?」

 

「エレンスゲもようやく戦力出してくれたし、内側のヒュージも片付けて私らだけじゃなくてコーストガードもフリーになったから、いっそこのまま御台場で仕留めちゃってもいいくらいなんだけど」

 

「あの真島百由さんに何か策がある、とのことですが」

 

 そう楪の返事に続いて椛さんが振ってくるけど、今この場にいるのはセインツとロネスネスから毎度の隊長副隊長二人ずつと、同盟側は私と一葉ちゃん、叶星と高嶺の四人、それとまだまだ余裕そうな天葉と依奈に、相変わらず通信越しな百由という面子。

 

『はいはーい。メガフロートの特性は送ったデータを見てもらうとして、そんな訳だから外からでもノインヴェルトを何発も撃ち込めばその内倒せはするだろうけど、ぶっちゃけそれじゃあ非効率的なのよね』

 

 対空迎撃に強固なバリア、加えて敵が海に陣取ってるってなると当然長距離でのノインヴェルトになるから、外からじゃあ完全に倒すまでに囮を含めていったい何発必要になるやらだ。

 当然、メガフロートがどこかしらを攻撃しようと力を溜めているなんて状態で、そんな悠長にしてられるはずもなく。あの位置じゃあ有効射程も、当然都内どころじゃ済まんしなぁ。

 

「そんな『死ぬまで殴ればいい』なんてのんびりやってる暇はないとして、また乗り込めばいいって?」

 

『まあ端的に言っちゃえばそうなんですけど、この感じだとコアにも十中八九バリアが張られてる訳で、弱点が弱点になってないのよねー』

 

「そうなってしまうと、有効な攻略手段がないように聞こえますが」

 

 とはいえ、そこで終わりならあの百由が我に秘策あり。なんてこの場を仕切ってなどいないんだから、一葉ちゃんの返しなど想定の範囲内どころか、待ってましたまであるレベルだろうけど。

 

『当然、攻略法は用意してあるわよ? まずこのデータを見て。メガフロートは梨璃さんたちからマギを吸ってた通り、燃費は相当に悪いタイプと見たわ。そしてそれを証明するかのように──』

 

「あっ……攻撃の時、毎回バリアを解いてる?」

 

「なるほど、そこが隙という訳ね」

 

 真っ先に気付いた叶星の呟き通り、毎度の『マギリフレクター』の類いだろうバリアの反応が、攻撃の瞬間はヒュージ全体から消えている。

 これが外だけなら、守りの内側から撃って自分で張ったそれを自分で壊すなんて非合理的だとか、そういう理屈が付くだろうけど、『全体』となれば話が変わってくる。

 

「つまり、わたくしたちが外からメガフロートの攻撃を誘発して、コアの守りが空くタイミングを作れと」

 

『そういうこと、話が早くて助かるわ。ガーデンとコーストガードにはもう話を通してあるから、御台場組にはそっちを中心に、連続したノインヴェルト戦術を仕掛けてもらうことになるわ』

 

「そして、仕上げは同盟レギオンが乗り込んで直接……承知しましたわ」

 

 船田姉妹がまとめてくれたけど、結局は私たちが乗り込むの含め、さっきと同じことを余計ド派手にやりましょうだ。

 けど繰り返しだからって対策などされないよう、御台場は全レギオンを投入して、エレンスゲからの援軍──状況的に、動かせるとしたら特務レギオンの『あの子たち(クエレブレ)』も追加なら、陽動どころか下手なヒュージならそのまま余裕で撃破しかねないレベルだ、贅沢にも程がある。

 

「まあ、ウチはそこの3レギオンと同盟結んでる訳じゃないけど、縁って意味なら負けてないかなー?」

 

「ふふ、そうね。千香瑠も、そう思うでしょう?」

 

「……はい!」

 

 ん、御台場組に保護されてたって三人も来てたか。見るからに無茶しましたって包帯だらけの様子から、正直一番休んでて欲しい面子ではあるんだけど、揃ってついてくるって聞かないからなぁ……

 千香瑠に至っては、それすら服の下に隠して誤魔化せるからって、ヘルヴォルの皆には黙ってて欲しいなんて言う始末だし。

 

「そっちはそっちでゴーストって大物倒したんなら、もう休んでていいと思うんだけど? 別に私と他の同盟組、天葉と依奈で乗り込む人数は足りてるんだし」

 

 え、霊奈さんはどこ行ったって? 乗り込んだ地点に戻ったらガンシップの修理は終わったからってLACの方に乗って、そのまま機体と自分の『ステルス』発動して海に消えたよ。

 多分わざわざこっちまで来てたの含め、本命は姉さんにタレコミされてたやつの粛清だとは思うから、どうにも止める気にもならないし。

 

「うーん、身体動かしてた方がまだ気が楽ってのもあるけど、御台場はわたしたちにとっても、ナ?」

 

「はいはい、迎撃戦ね」

 

 実際、梅たちの方へ真っ先に駆け付けたのはそれぞれの部隊の仲間たちなんだから、その恩返しは早い方がいいと言われればその通りだけども。

 

「夢結も、梨璃ちゃんたち見てなくていいの?」

 

「少し眠れば問題ないとは聞きましたし、結梨も行くと言うのですから、わたしは今度もそのお目付け役です」

 

 本音を言うと、(ゲヘナ)が確定で混ざってる御台場のスタッフを手放しで信用したくないから、万一のためにまだ動ける子に残ってて欲しいんだけど、こんな状況で事を起こせば霊奈さんかビットが飛んできて問答無用で蒸発させるだろうし、気にしすぎもよくないか?

 

 そういう意味じゃ一番残したくないのは最大のワケありな結梨ちゃんになるんだから、一緒に来てくれるなら残りの子たちの方に目を光らせとくのは、こっちの面々に任せるしかない。

 

「ま、こないだの話もあるし、御台場の方も気をつけてとしか言えないか」

 

「一応、医療チームは政府の要請で他所から出してくれたとは聞いたから、そういう意味での心配は大丈夫なんじゃない?」

 

 遠回しの意味を察してくれた楪に言われたことも、頭では分かってはいるんだけど、連中がホームだからとしゃしゃり出て来たら、どこまで防げるかってところもあるからね。

 

「ならばこちらも、念のため下級生を近くに配置しておきますわ」

 

「悪いね。いくら心配でも、火力的に私だけは外れる訳にいかないからさ」

 

 とはいえ純まで気を利かせてくれるんなら、いい加減後輩たちに甘えたっていいんだろう。それも、私の繋いだ縁ってもんだ。

 

◆◆◆

 

「ほい。なんか入れとかないと保たんよ?」

 

 やることは決まったならと、会議を終えて作戦開始までは自由行動となる訳だけど、こっち側の迎撃戦組が揃って黄昏れるように海を眺めているようなら、それを遠目に見ている残りの面々にはゼリー飲料をポイと投げ渡しておく。

 

「あっ……ありがとうございます」

 

「正直この人数なら、後は上級生に任せといてって言いたいとこだけど」

 

「いえ、今回の作戦はエレンスゲが責任を持つ以上、トップレギオンの我々が欠ける訳にはいきませんので」

 

 ま、一葉ちゃんの言い分もまた道理だ。結果として臨時指令部の面々が色々と責任を押し付けられた形でも、その負担を減らすには成果で応えるのが一番だろう。

 

「てか、センパイこそ大丈夫なんです? あんだけの重装備に、またあのヒュージの上で」

 

「うん? なんか関係ある、そこの要素」

 

 そこで恋花に心配されて、よく分からんって返しをすれば、細かい説明は瑤の方から。

 

「メガフロートの上だと、少し普段よりマギの減りが早く感じた……多分、触手程じゃないけど、あのヒュージの体全体に、似たようなマギを集める特性があるんだと思う」

 

 なるほど。とはいえ私は相手のヒュージがデカければデカい程、近ければ近い程、マギの消耗って面では不思議と無縁なタイプだからなぁ。

 

 ──流石にいい加減、それが不明な最後のサブスキルによる恩恵なんだろうとは分かるけど、そういうタイプってなると未発見の新種だった場合を除いて、ほぼ『カリスマ』一択になるもんだから、いつまでも分類不明扱いな理由も自然と読めてしまう。

 ……にしては、他の子にマギを渡せそうな感覚は一切ないから、効果に関してはサブらしく相応に狭まってるんだろうけど。

 

「ま、そういう心配なら大丈夫かな。私は特に違和感なかったし」

 

 で、そんな話せない理由が分かったってことを話しても仕方なし、下手に巻き込みたくもないから結果だけを告げておくと、迎撃戦組からアールヴヘイムの二人が離れてくる。

 

「ん? まだ作戦開始までは時間あると思うけど」

 

「あー、百由からプレゼントです。ほら、神庭の二人も着てるそれを」

 

「そういえば、この衣装って元は迎撃戦、というよりその前提な交流会の参加者用だったのよね?」

 

 天葉に指差された叶星は自分のそれのマント部分を触ってるけど、最初から持ってきてたんなら見学行く前に天葉たちにも着せてたろうし、事態が大きくなったからって予備を取り寄せた感じかね?

 

「だね。予定になかったんだったら、サイズ合わなくても泣かないでよ?」

 

「ご心配なく。樟美の美味しいご飯食べた分は、しっかり動いて消費してますから!」

 

「その辺りの管理もリリィの嗜み、でしょう?」

 

 軽い冗談にも自信満々で胸を叩いて返してくれるなら、確かに大丈夫そうとして、何故か依奈の言い種に流れ弾が起きる。

 

「いわれてるよれんかー」

 

「い、今はその話はいいでしょーが!」

 

「……?」

 

 恋花が藍ちゃんに何を冷やかされてるのかと結梨ちゃんが首を傾げていれば、横までぴょんと動いた藍ちゃんが「あのねー」とこしょこしょ耳打ちして、それを聞き終えた結梨ちゃんはというと、恋花と向き合うと何処か嗜めるような言い方に。

 

「恋花、夜遅くに食べ過ぎると『美容に悪い』って怒られるぞ?」

 

「だーっ! わーってますってばそんなことぉ!」

 

「ふぁすなー」

 

 結局藍ちゃんがさらっと真相言っちゃってるけど、ファスナー……スカートの?

 

「わか藍……もとい分からん」

 

「あーら、どうやら間に合ったようですわねぇ」

 

 そこで聞こえた声に振り向けば、オッドアイの変態さんを先頭にした、ロネスネスとセインツの一年組が中心な面々。

 ……あれ、思ったより人数多いけど、純が言い出したからって、後で楪が張り合ったか?

 

「おや、さっきは色々とありがとね」

 

「そちらも、元気そうね」

 

 ついでに、お目付け役なのか見覚えのあるポニーテール、ロネスネス唯一の三年な雪も回してくれてるから、それだけ本気と受け取っていいとして。

 

「雪華様も、雪様とはお知り合いで?」

 

「前のレギオン時代、何度か東京には来てたからね。当時のテンプルレギオンだったルド女の同学年といい、わりとすれ違ったりは」

 

 その理由までは置いといて、高嶺からの質問への答えは半々って感じだけど、前にりーさんのことを言ったりしたのも、その辺りの縁。別に名前の漢字が一文字被ってるからなんて、冗談みたいな理由でなく。

 

「で、まあ大体は聞いてる感じ?」

 

「ええ。思えば昔から都合の良すぎるタイミングでの襲撃など数えきれない程あったのだから、気付けるタイミングはいくらでも……」

 

 結局は裏から政府に隠蔽され続けた結果だから、烏丸の介入による暴露があったからこそ、初めて怪しめるようになったとも言える。けど、それで済まされない過去の後悔は、外野な私がとやかく言うことでもないか。

 

「……あれ、ところで一人違うレギオンの子いない?」

 

 ロネスネスの面々はさっき見た通りとして、セインツもこないだ生徒会室で見掛けたような子がほとんどで、初見な子の片方、桃色の髪をした子も隊服の感じから所属が同じだとは分かる……けどもう一人、薄い紫髪の子は片側だけのマントからリサナウトを生やすように携えていて、周りと比較しても露出の多い隊服に、あのベルト──

 

「──『ヴァルキュリアスカート』ってことは」

 

「ああ、コーストガードの(はなぶさ)ね。よく訓練を抜け出して、うちの後輩たちのお茶会に混ざっているそうよ」

 

「おん、また自由な子ねぇ」

 

 ちなみにその装備の正式名称がやたらと長いのはともかく、効果としては『ブレイブ』とカリスマを足して割った、回数式の補給装置みたいなもんって認識でよかったはず。

 御台場が開発元ってくらいは私も聞いたことはあるから、そこの防衛担当が使うのなら納得として。

 

「はぁ~…………」

 

 で、セインツの初見な子に視線を戻すと、着替えを受け取りに駆けていく天葉を目で追いながら手を合わせて、最早拝んでいるってレベルなんだから……なんか見覚えあるな?

 なんてそっちを眺めていると、こないだの桂ちゃんだったかが寄ってきて頭を下げてくる。

 

「すみません、(すなお)は時折ああなるタイプなので」

 

「いや、ああいう子も結構いるからね。もう慣れてるよ」

 

「……高嶺ちゃん」

 

「その通りだと思うわ」

 

 ……まあ、多くは語るまい。

 

◆◆◆

 

『もうじき作戦開始時間だ。各員、再度内容の確認を』

 

 あくまでも挨拶回りに過ぎなかったようで、御台場組もそれぞれの配置に散って行けば、エレンスゲからの広域通信。

 

「となると、もう乗り込んどいた方がいいかね」

 

「だナ」

 

「お待たせ!」

 

 ちょうど天葉たちも着替え終えたみたいだし、特に反対意見もなくガンシップに搭乗すれば、ベルトを締めた辺りで再度の通信。

 

『こちらエレンスゲ増援部隊、配置完了しました』

 

「あれ、この声……?」

 

 まあ、斜め向かいの席で恋花も想像した通りの序列2位さんだろうけど、こんな宣言になってることから、出せるだけの面子を引き連れて来たとか、こっち同様に寄せ集め状態なんだろうなとは、なんとなく察せられる。

 

『ロネスネス、及びヘルメッ……とぉ』

 

『おーいほーたーるー? だーれが安全確認ヨシ! だってー?』

 

「アハハ、なーにやってんだか」

 

 梅が反応したってことは、多分さっき助けてくれたって迎撃戦仲間が噛んだのを楪になじられていると、純のため息が。

 

『はぁ……まったく、張り切っているからと任せたらこれですわ』

 

『いや、ちょっ……ゆっき、雪様~!』

 

『今日で蛍が、ロネスネスを辞めます』

 

 あ、これはボケてるな。と一発で分かるくらい、平坦な調子で雪にリストラを告げられれば、蛍もそうと分かったようでガヤガヤ騒いでいるけど──

 

『改めまして、ヘオロットセインツ準備完了です』

 

『あっ』

 

『ロネスネス、大体完了ですわ』

 

『あーっ!』

 

『早く配置に戻りなさぁい』

 

 結局隊長たちに報告を言い直された以上、お遊びの役目など終わりだと、切り替えた雪にバッサリされてお終いという。

 

「チェック完了、いつでも飛べますよ!」

 

「んじゃ、私が代表して……『突入部隊、準備完了です』」

 

 そして操縦士さんたち──当然エレンスゲの人がメインパイロットになるから、百合ヶ丘の人はその補助に回ってる訳で、そっちから問題なしと言われたなら、年長者として報告は私がやっておこう。

 

『よし、準備は整った。諸君、それでは──『オペレーション・カリュブディス』を開始する』

 

『『了解!』』

 

 由来は……ギリシア神話の海の怪物ね、大喰らいってとこもかかってると見た。

 

「何してるんだ?」

 

「wikiってる」

 

◆◆◆

 

 さて、再度メガフロートに乗り込むのは、ガンシップが本調子な上にさっきよりも苛烈な陽動組の攻撃のお陰で、比較的あっさりと済んだ。とはいえもう日が暮れてしまった以上、タイムリミットもそこまでなさそうとなれば、急ぐ必要が──

 

「今度はこれ、借りますね」

 

「んっ……ちょっと依奈?」

 

 なんてガンシップの後部ハッチから降りながら考えていると、貸していたというか拾われていたグングニル・カービンを投げ返してきながら、代わりにサブアーム越しで背中のアーマーに引っ掛けていたウィザードビットの片方を、依奈に引ったくられた訳だけど、その意図は、振り返りながら。

 

「あたしたちはまだまだ余裕あるんで、先頭は頂きますって話」

 

「ま、そう言うんなら任せるけど」

 

 実際、乗り込んだメンバーは百合ヶ丘六人にエレンスゲ五人、神庭二人の合計十三人で、人数的には途中で「ここは任せて先に行け!」を何度もやれそうなくらいだからこそ、天下のアールヴヘイムのメンバーを取っ捕まえて、露払いなんて贅沢の限りも尽くせる訳で。

 ……なんて分析を今更にしていると、後ろから梅に話を振られる。

 

「にしても『円環の御手』持ちって、やっぱこういうの共通したクセなのか?」

 

「クセって……まあ、総じて手癖は悪いか、うん」

 

 その代表格な汐里ちゃんは勢いよく壊すどころかしょっちゅう投げ飛ばすくらいだし、お師匠サマな幸恵もフリップのキレが物凄いときた。んで私はとなると、汐里ちゃんから借りた以前にも、ヒュージに奪われてたCHARMでアンリミごっこする始末だし、そうだと言われれば全く否定は出来ない。

 

◆◆◆

 

「この火力なら……そこっ!」

 

 結果長物二刀流、というより二挺持ちのようになった依奈だけど、天葉と二人突入してしばらく経つと、器用にも一旦ウィザードビットを上に放り投げた隙に、懐から取り出した弾丸──私がマルチランチャーで使うような特注品だろうそれらを前方にズラリと並べるよう放って、落ちてきたウィザードとアステリオンで続け様に撃ち抜けば、マギを纏ったそれらがコアへの道を塞ぐ触手を一掃する。

 

「おぉ、すっご」

 

「やはり記録映像と実際に見るのとでは、迫力も段違いですね……!」

 

 ヘルヴォルの面々が驚いてはいるけど、正直衣装を白く替えたからって、依奈がこんな戦い方するのなんてあんまり見たこと……いや、投げた弾丸をビット代わりと見立てれば、専用機や第4世代CHARMの経験とも言えるか?

 

「このまま一気に、主導権握るよ!」

 

「了解、先制砲撃ね!」

 

 とはいえ敵も本丸というのはデータ通りのようで、続々と触手のおかわりを差し向けてはくるけど、天葉のグラムと貸したウィザードの同時砲撃で、十分な道は切り開かれる。

 

「よし、進路クリア! 突入開始!」

 

「周りの触手も、可能な限り倒しながら行きましょう!」

 

 そこで号令を掛けてみれば、叶星が補足しつつ即座に実践してくれるのだから、こりゃまた至れり尽くせりでやりやすいね。

 

◆◆◆

 

─ゼノンパラドキサ─

─縮地─

 

「はぁっ!」

「おりゃっ!」

 

 天葉と依奈が道を作ってくれたのなら、それを広げるのは自分たちの役割だと、高速戦闘スキルを持つ高嶺と梅の二人が切り込むが、道を塞ぐヒュージの触手を蹴散らした合間に、ふと高嶺の方から話を切り出す。

 

「ふふ、私たちも案外気が合うかもしれないわね」

 

「うん? そりゃあレアスキル同士が似てるんだから、傾向とかはそうなんだろーけど」

 

「そうね。『お姫様』のためならなんでもしてしまうところなんて、本当にそっくりでしょう?」

 

 しかし、梅がすっとぼけようとしているのなんてお見通しと言わんばかりに、話題を逸らそうとしても回り込まれて逃げ切れない。

 

「……なるほど、経験談か」

 

「ええ、経験談です」

 

 戦闘中なのだからこれ以上深くは語るまいと、そこで話は終わり「高嶺ちゃん!」と呼ぶ叶星の側へ、彼女の騎士(ナイト)たる高嶺も向かえば、彼女に指摘された結果『自分が一番じゃなくても構わない』だなんて言い訳をしながらも、結局どこまでも自分は“お姫様”を第一に行動してしまっている事実を再確認して、少しの間梅の足は止まる。

 

「……梅? なんかフクザツな匂い」

 

「うん、まあ簡単なことじゃないゾ。色々とナ」

 

 複雑──結局自分の中でさえ言い訳が先に来て、素直に想いを告げるだなんてことが出来ていないし、その資格がないなんて考えることすらあったのだ。

 だから梅は寄って来た結梨の頭を撫でながら、この子のように素直にはなれそうにもないなと、本人からは見えない角度で自嘲の混ざった笑みを零す。

 

◆◆◆

 

 一度流れを掴めば、質も量も問題ない面子なのだからトントン拍子に触手の大群を切り裂いて進み、いざコアのある広場のようなエリアにたどり着いたものの、案の定というか張られている光の壁により直接その姿を拝めてはいない。となれば──

 

「こちら突入部隊、メガフロートのコア前に到着、想定通りバリアにより敵コアを目視出来ず」

 

『了解。これよりノインヴェルト戦術での波状攻撃を仕掛ける、それまで待機されたし』

 

 報告に司令部のオペレーターさん辺りからそう返事が来れば、しばらくして別の広域通信が。

 

『こちらコーストガード、ノインヴェルト第1射、行きます!』

 

 恐らく隊長さんだろう子の宣言の後、ヒュージの身体が揺れたのが攻撃のための備えというのは分かるから、こちらもタイミングを合わせて攻撃しなければいけないと、一葉ちゃんの方を見れば無言で頷いてくれて、ノインヴェルトが迎撃されたが故の外からの強風に煽られながらも、CHARMに特殊弾を装填しているのなら問題ないか。

 

「突入部隊、ノインヴェルト戦術待機中です! 外の様子は?」

 

『一発目は迎撃されたけど、まだバリアの反応が消えてないのよね……多分チャージした分を吐き出すまで、ってところ!』

 

 百由の考察は、逆に言えばこっちのタイムリミットも延びたって言えなくもないけど、本格的に攻撃を開始するのも後回しだから、その分耐える時間も増える訳で。

 

「「えーいっ!」」

 

「ちょ、ちょっと二人とも!?」

 

 しかし、近場の触手を片付けたからとそのままの勢いでコアを覆い隠す光の壁に、並んでCHARMを叩きつけている結梨ちゃんと藍ちゃんはもう堪えきれなさそうな様子で、一葉ちゃんも慌てている。

 

「うーん、やっぱ二人にはこういうの向いてない感じだなぁ」

 

「ま、早く帰りたいってのは同意ですけどね」

 

 そう言う恋花も額に冷や汗を浮かべていることから、大分負担は掛かってるらしいけど、こっちの自覚症状は──特になし。やっぱり相殺されてるか、回復速度が上回ってるかってとこか。

 なんて自己分析をしていると、依奈が隣にやってくる。

 

「その間、後ろはこっちでなんとかします」

 

「了解。ならもう片方も使う?」

 

「いえ、火力はもう十分なんで、またカービンを!」

 

 そう言って、依奈がウィザードビットを投げ渡して来るならこっちも要求通りの物を投げ返し、前後に別れたところで、再度の振動──今度はさっきより強い!

 

『エレンスゲ増援部隊、ノインヴェルト第2射命中。ただしバリアに阻まれたと思われ、目標への目立ったダメージはありません』

 

 つまりは、迎撃されなかった分が当たってバリア越しに揺れたってことね。

 

『やはり一発ではダメか……残りも急いでくれ!』

 

『了解! ヘオロットセインツ、第3射発射! 純、囮は貰ったから、そっちは外すなよ?』

 

『誰に言っているんですの? ロネスネス、第4射頂きますわ!』

 

 相変わらずの売り言葉に買い言葉、けれど楪も純もお互いに慣れた物だから聞く分には妙に心地いい言い合いの後、外からの風と内の振動とで、最初の二発と展開は同じ……けど、ヒュージの方はそうでもないようで、辺りの体表から光の跡が消え、コアの前の障壁も不安定になったように見える。

 

「夢結、これって!」

 

「ええ、エネルギー切れのようね」

 

 そうなればこっちも本番だと周りの面々が騒ぎ出すけど、コアが直接見えるようになった段階でウィザードビットを両肩越しに前に向けて、同時発射。

 

「命中。よし、ちゃんと消えてるね」

 

 とはいえそれでコアも防衛モードに入ったのか、自身の周囲に生やした触手の先に攻撃用の某─なんて言えばいいんだろうか、やっぱりビットなのかなぁ、傾向的に─を浮かべて、反撃の構え。

 

「この距離のバスターキャノン、今度は防げないでしょ?」

 

 しかし、時間が掛かったということはその分後ろ側も片付いていたようで、天葉が最後尾から砲撃を放てば、何かをする前に敵の攻撃端末は全滅、今度こそ守りは空いた。なら──

 

「一葉ちゃん!」

 

「はい! 『突入部隊、ノインヴェルト戦術開始致します!』」

 

◆◆◆

 

─縮地─

 

「そりゃぁあああっ!」

 

 一葉の通信での宣言の後、がら空きになったコアへ一番乗りだと梅が最高速で突入すれば、彼女が連撃を叩き込んだ後コアを蹴って離脱したのと入れ替わりに、流れは分かっていると次いで二人、夢結と依奈が切り込む。

 

「はぁっ!」

「それっ!」

 

 ブリューナクによる重い一撃と、円環の御手による二刀流の乱撃は確かな手応えこそあるが、それでもコアの強度の前には致命傷足り得ないと見れば、後方より追い付いた天葉が数発射撃を送り、振り向いたところへ彼女が目配せをすれば、二人も後退していく。

 

「す、すごい……!」

 

「おぉ、今度は初代アールヴヘイム組の連携ね。これまた言い様のない圧が……」

 

「れんかー、いまはこっちだよ」

 

 今度は梅と夢結も加わったのもあり、流石は伝説のレギオンのメンバーだと瑤と恋花が関心しているが、藍がモンドラゴン越しにマギスフィアを抱えてやってくれば、流石に気分を切り替えて恋花がブルンツヴィークで受け取る。

 

「いや、ごめんて。はい瑤」

 

「分かってる。高嶺さん、次はお願い」

 

 順番的には、千香瑠へ渡して先にヘルヴォル内を終えてもよかったが、なんとなくそんな雰囲気ではなかったと、こちらはこちらで幕張の縁がある、グラン・エプレの二人の方へ瑤はマギスフィアを飛ばす。

 

「なるほど、こういう流れみたいね。叶星?」

 

「うん! なら次は……雪華様!」

 

「あいよ。結梨ちゃん、次は天葉でお願い!」

 

 ここまで来れば言葉は不要だと、残りの五人がお揃いな衣装の──つまりは全員が迎撃戦参加者になるよう雪華も自身のシルトへマギスフィアを投げ渡すが、そのタイミングで先程のノインヴェルトによるそれらとはまた違う揺れに、受け取る側の結梨は少しバランスを崩す。

 

「うわわっ!?」

 

「おおっ、と?」

 

 それが収まると同時、百由からの通信と周辺の光の跡の復活に、事態が変わってきたようだとは、突入部隊の面々にも分かる。

 

『不味いわね……メガフロートが本格的な攻撃体勢に入ってる。こっちの攻撃にもお構い無しなつもりよ!』

 

「本命を諦めて、もう手当たり次第だって? なろっ、生意気な!」

 

 チャージはあくまで御台場の護りを抜くためのものだとしたのなら、妥協すれば今からでも都内や隣県のある程度の範囲は狙えると……

 そんな状況も、諸々の事情を知る雪華としては裏で糸を引くやつら(ゲヘナ)が「全て壊れてしまえ」と自棄を起こしただけの、いい加減見飽きてきたワンパターン戦法かよと舌打ちのひとつもしたくなるが、追い討ちをかけるように残っていた配下の触手を全て回してきた、という勢いで足元から現れるそれらに、今は意識を割く。

 

「雑魚はこっちで面倒見る! 早くフィニッシュまで!」

 

「う、うん!」

 

「あんまり良くない流れね……一葉!」

 

 能力的には問題なくとも、この中で一番リリィ歴が浅く技術や経験の方がまだ足りていない結梨の動きが覚束ないと見て、叶星が呼び掛ければ一葉の反応も早い。

 

「はい! 全力で参ります!」

 

─レジスタ─

 

 敵の戦力も底が見え出したここが切り所だと、完全にタイミングを合わせて叶星と一葉がレアスキルを全開にすれば、強まる補助やよりはっきりと見えるパスコースの誘導線に、結梨の動きから迷いはなくなる。

 

「じゃあわたしも……やってみる!」

 

 そして、触手に囲まれていた状態も雪華がビームソードを展開したウィザードビットを投げ飛ばし、一角を切り裂いてくれたからと抜け出せば、二人の動きを見様見真似でなぞりながら、結梨もグングニルの刃先で地を差す。

 

「えっ、これって……?」

 

 自分たち以外の保有者がいるでもないのに、『レジスタ』の感覚が強まったことに叶星が疑問符を浮かべれば、その答えは投げたビットが戻ってくるのをキャッチする雪華から。

 

「あー……見ての通り、としか言えないかなぁ」

 

「で、ですがこの間の無人島では、結梨さんは『ヘリオスフィア』を使っていたはずでは……もしやサブスキルと〈エンハンスメント〉の組み合わせを……?」

 

 とはいえ、サブスキルを数秒間レアスキルにまでその性能を引き上げる、ブーステッドスキルの一種を一葉から例に上げられても、どこまでも根拠のない、曖昧なことしか言えないのだが。

 

「いやまあ、検査結果としては分類問わずリリィとしてのスキルの類いは一切なしってことになってるんだけど、私個人の見解を言わせて貰うんなら、結梨ちゃんがリリィとして得た全ての“繋がり”、それがあの子の力に『なってくれてる』んじゃないかなって」

 

「なるほど……」

 

「ふふっ、そういう縁も素敵じゃないかしら?」

 

 多分、シュッツエンゲルとしての贔屓目がかなり入ってるとは思うけど──などと雪華は言い訳のように付け足してはいるが、聞いた側としてはそう言われてみれば、元よりマギという曖昧な存在を扱うのがリリィなのだから、全てが曖昧なまま力を振るうリリィがいても何も不思議ではない。と一定の理解は得られたようだ。

 

「天葉ー、行くよ!」

 

「よしきた! 依奈、上げてくよ!」

 

─ヘリオスフィア─

 

「分かってるわよソラ!」

 

 これ以上の邪魔は許さないと、パスコースを左右から形作るように天葉のヘリオスフィアが護っているのなら、整えられたコースを駆けることなど〈プランセス〉にとって造作もなく、マギを込め終わる時点で千香瑠の側へたどり着いた。

 

「ふふっ……」

 

「隊長?」

 

「いえ、意外と悪くないじゃない? 『千香瑠のレギオン』と、こうして一緒に戦うっていうのも」

 

 別に勧誘を諦めた訳ではない。ただ仲間を認めてくれただけ……それでも、今でも尊敬する戦友がそう言ってくれるのなら、疲れも痛みも、もう負担にならない。

 

「はい……ヘルヴォルは私の、私たちの自慢のレギオンですから!」

 

「なら、それをちゃんと証明してみせなさい!」

 

 試すように言いながら、口の端は確かに上がっていて笑みを隠せていない依奈から千香瑠がマギスフィアを受け取れば、ようやく残り三人……しかし、そこでコアの方に異変が。

 

「っ、バリアが!」

 

「ヤバ、時間切れ!?」

 

 一葉と依奈の声に全員がコアの方を向くと、再度コアの前に展開される光の壁。参加する人数の多さが仇となったのか、フィニッシュが近付き驚異と認識したのか、攻撃よりもバリアの再展開の方が早くなってしまったようだ。

 

「────っ」

 

 バリアを張るタイプのヒュージには、夢結自身録な思い出がない。二度遭遇したあのギガント級には、一度目にシュッツエンゲルである美鈴を奪われ、再度会った時にはそのことを引き金に『ルナティックトランサー』が暴発しそうにもなった。

 そして今回も、このヒュージの配下なのだろう、ゴーストを倒すために自分は──

 

「まだっ!」

 

 そんな不安を抱えている暇はないと、一喝と共にグラムを展開させバスターキャノンを放つ天葉。彼女もまた、以前あのギガント級を相手にこの機体を砕く羽目になっており、その雪辱を晴らそうと気合いが違う。

 

「──ああ。そういうの、最高にあたし好みだね!」

 

 であればと、応えるように全ソードをシールドに直結し、ウィザードビットも連結させたツインバスターの姿で構えた、再度のフルバーストの体勢で並ぶのは雪華だ。

 

「とはいえ、これでも火力足りるか……?」

 

 それでも彼女のどこか冷静な部分が、ノリと勢いだけでは無理かと計算して呟けば、乗ってくれる仲間は案外といるもので。

 

「はいはい、そういう時は!」

 

「ん……やりますか!」

 

「恋花、わたしも……!」

 

「《フェイズトランセンデンス》!」

「《約束の領域》!」

 

 恋花が右肩の、瑤が左肩のアーマーの上にCHARMを置くのをそれぞれ確認し、恋花のレアスキルの発動に合わせ雪華のサブスキルが集結するメンバーを繋ぎ──それでこの瞬間だけは、パワー不足という不安はなくなる。

 

「「いっっっけえええっ!!」」

 

 四人の叫びを乗せ放たれた砲撃は混じり合って一筋の閃光と化し、命中時の爆風で一瞬視界が埋まるが……それの直撃ですら、外に張られる物より格段に堅いと予測されていた通りに、ヒュージのバリアを破るには至らなかった。

 しかし命中箇所にヒビが見えることから確実にダメージは通ったと、四人の横を駆けて飛び込むのは結梨。

 

「雪華!」

 

「オーライ! 『約束の領域』対象変更、持ってけ私の──《円環の御手(サークリットブレス)》ッ!!」

 

 彼女が空いた手を後ろに伸ばしながらのたった一声、それでシルトの求める物を察した雪華が分離させたブレイザーのソードライフルを投げながら籠めるのは、彼女自身の想いを繋ぐ力(レアスキル)

 その途中周囲の触手を切り裂きながら集うソードビットと合体し、結梨が受け取る段階でバスターソードになったそれと彼女専用のグングニル、二機分の光刃がバリアのヒビ割れた箇所へ揃って、真っ向から突き刺さる。

 

「てやぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 数秒の拮抗の後、まず正規の装備ではないグングニルのレーザーブレードが限界を迎え消えてしまうが、結梨はオーバーヒートしたグングニルを背中に背負ってバスターソードのグリップを両手で掴むと、捻るように押し込みつつバスターライフルへ移行、そしてバリアのヒビが更に広がったタイミングで、引き金を引いたのに合わせ、雪華も例の『機構』へ起動を命じれば、刀身の根本からビットの刃へと緑の光が広がり、ヒュージのバリアを侵食していき──

 

「くぅぅぅ……わぁっ!?」

 

 至近距離からの砲撃の反動で、一年生にしても小柄な結梨も同時に吹き飛ばされるが、雪華に受け止められ前を見ると、切り裂かれた隙間からの砲撃を受けたからか、もうコアもバリアを維持する余裕を無くしているようで、それを確かめると彼女は無言で拳を上に突き上げていた。

 

「これでもう再展開は間に合わないでしょ! 回せ回せ!」

 

「はい! 行きます……梅さん!」

 

 雪華に急かされるまでもなく、マギスフィアは気を取り直した千香瑠のゲイボルグから、梅の進行方向へ向けて飛ぶ。

 

「うおぉぉぉっ!」

 

 それを遮らんと迫る生き残りの触手を『縮地』の速度で蹴散らすと、滑りながら後ろを振り向いた梅は、タンキエムで受け止めるマギスフィアに、全ての力と想いを込める。

 

「行け夢結! お前は一人じゃない、いままでもこれからも、わたしたちが一人になんてさせてやらない、ずっと支えててやるからナ! だから今は……前だけを見て、突き進め!」

 

「梅……ええ!」

 

(想い……気持ち……わたしは自分のことで精一杯で、きっと何も分かっていなかった……)

 

 そしてその全てが、今になって一気に分かるはずもない。そこまで器用に生きていたのなら、夢結を取り巻く環境は、もっと違う形になっていただろうから。

 

(お姉様……梅……梨璃……)

 

「『孤高のリリィ』なんてウソ……わたしはずっと、リリィになってからずっと……きっと優しさに包まれていた!」

 

 だから迷うことはない、掲げたブリューナクに受け取ったそれを、ただ敵のコアにぶつけるのみ。それで、この戦いは終わり──

 

「ちょっ、恋花倒れるにしてもこっちじゃないでしょ!?」

 

「や、そんだけ装備あるんだしJK一人分は誤差っしょ?」

 

「……この間、体重計乗って悲鳴上げてたのに」

 

 ──ただ、どうにも締まらない空気なのは自分のせいでは決してないと、夢結も爆発を背にどこか諦めたようにため息をひとつ。

 

◆◆◆

 

「お姉様!」

 

「梨璃……もう平気なの?」

 

 さて、コアを破壊したからとダッシュでガンシップに戻れば、全体の制御を失いバラバラに倒壊しながら東京湾へ沈むメガフロートを眺めながらの帰還になった訳だけど、台場に戻れば、残してた面々も目が覚めていたようで、真っ先に駆けて来た梨璃ちゃんが夢結の腕の中へ。

 

「あたくしたちの見ていた限り、不審な輩はテントに近寄らなかったはずですわぁ」

 

「悪いね、そっちに身内を疑わせることしちゃって」

 

 そして、今度も御台場の一年組が報告のためにやってきてくれてたけど、燈ちゃんだっけは労いの言葉に鼻を鳴らして、「何が身内だ」とでも言いたそうな不満げな空気だから、大体の目星は付いていそうな感じ。

 

「一応、姉さんたちが利用して情報吸い出す最中らしいから、直接始末する。とかは控えといてね」

 

「……そこまではやりませんわぁ。向こうにもガーデン内での立場がある以上、こちらが悪者にさせられますもの」

 

「でも、カチコミするかどうかってなると、燈は断然やる派だよねー」

 

「なっちゃん、聞こえるって……」

 

 ……まあ、いつぞやの酔っぱらってた薺ちゃんも、こんな気難しそうな子相手に気安くそういうことを言えるんだから、セインツとロネスネスも一年同士はそれなりに距離が近いようで。

 

◆◆◆

 

 で、百合ヶ丘のガンシップが撃墜された以上、帰りはエレンスゲのをまた借りることになる訳だけど、祝勝会をやるからってヘルヴォルの皆(エレンスゲのリリィ)も乗せての帰還に、思ったより反発はなかった。

 ……まあ、そのことを伝えてくれた祀さんの感じや、廊下での他の生徒の反応を見るに、『依奈がレギオンごとたらしこんだ』とでも思われてそうなのが、なんともだけど。

 

「はー、生きてる……生きてるっていいなぁ!」

 

「今日は随分とハードだったからねぇ」

 

 そうしていざパーティー開始となれば、二水ちゃんは生きて帰れたことや料理が美味しいのやパーティーの雰囲気やらが合わさって、テンションがおかしくなってるし。

 

「実際、今回ほとんど被害が出なかったのは『奇跡』じゃとかなんとか」

 

「……どうせ、仮に出てたとしても今までならゲヘナにだけ都合よく隠蔽されてたんだろうけど」

 

 あの後、霊奈さんからは『ミッションコンプリートです』とだけ書かれたメールが送られて来たから、鶴紗ちゃんの懸念も今回は不要だろう。

 

「雪華?」

 

「いや、因果ってのはいつまでも誤魔化せないな。ってだけよ」

 

 なんかそこら辺から料理をかき集めましたって、ドカ盛り状態のお皿を持ってる結梨ちゃんの頭を撫でながら、『たらしこんだ』はずのレギオンごと依奈の姿が見えないとなれば、()()()の決着を付けている最中かと、懐にしまった物に意識を向ける。

 

◆◆◆

 

「えっ……? えっ……?」

 

「あら、なんのショーでしょうか」

 

 二度見して宇宙になってる雨嘉ちゃんと、そんな彼女の様子の方を楽しんでそうな神琳ちゃんが何を見ているのか……の答えは、エレンスゲの訓練室でのある口約束。

 

「あー、そういや勝負自体は有耶無耶だっけか」

 

 つまるところ、スパゲッティ──それも絶対色々大惨事になるだろうトマト系のソースなやつを皿に盛って、覚悟を決めた顔でいる一葉ちゃん。

 

「いやまあ、倒す直前くらいにゴーストの件があったから、正直ノーカンでいいとは思うんだけど」

 

「ほら! あの時見てた雪華様もこう言ってんだし、ノーカウント! ノーカウントでしょ?」

 

 いっそ対戦相手だった百由に判断を仰げれば、恋花もここまで必死にならずに済んだんだろうけど、残念ながらデータ取りやらなにやらで百由は神庭に帰る叶星たちについてったから、この場にはいない。

 

「いいえ! 口約束だろうと約束は約束、それを守れないリーダーにはどんな真実だってありはしません! 例えソースが散って制服が真っ赤になろうと、これが私の誓いです!」

 

「もう勢いだけで何言ってんのか自分でも分かってないな!? ったく、瑤からもなんか言ったげてよ」

 

「…………」

 

 そこで頼られれば、流石に瑤もボケを返したりはせず、腕を組んで真剣に悩んではいるようだけど──

 

「わたしは、ちょっと見てみたい」

 

「火に油を注ぐなぁ~!」

 

 なお、結局は藍ちゃんがよりによってイカスミのやつで真似しようとして、教育に悪いということでお流れになった模様。そもそも食べ物で遊ぶでない? それはそう。

 

◆◆◆

 

 宴もたけなわ、目玉といえば目玉なダンスの時間が近付いてきたけど、楓さんは無事梨璃ちゃんのパートナーの座をゲットしたようで、連れ立ってこっちに歩いてくる。

 

「おや、おめでとうでいいのかな?」

 

「ふふ。今宵の夢結様のお隣は、梨璃さんにだって譲るべきでないお方がいらっしゃるでしょう?」

 

「……?」

 

 いや、この言い方が伝わらんってなるとそれはそれでどうなんだってなるけど、多分強引に捕まったから、まだ梨璃ちゃんも状況が分かってないだけか……?

 私? 百由の代わりにミリアムちゃんとだよ。シルトはどうしたって言われても、結梨ちゃんは先に藍ちゃん捕まえてたってさ。やっぱり後輩は仲良くなるのが早い。

 

◆◆◆

 

「そぉい!」

 

「ぬわーっ!?」

「うわわっ!?」

 

 さて、いざ音楽が流れ出してダンスが始まったというのに、何故ミリアムちゃんをターンついでにわざと大きく振り回して、近くにいた梅にぶつけているのかというと。

 

「そこでヘタれるなよ」

 

「いやいや、なんだいきなり!?」

 

「そこで、ヘタれるなよ」

 

 仲間? そんな括りでレギオンの繋がりがあろうとなかろうとずっと側にいるものかよと、夢結と躍りながら何かを話していたのだろう答えが聞こえては、人には色々言っておいて自分はこれかよと、文句しかないのだから梅に詰め寄る。

 

「はい、やり直し」

 

「えっ? いや、だって……」

 

「そう、わたしは大切じゃなかったのね……」

 

 私の乱入に乗ってくれたのか素の反応なのか、夢結は微妙に判断が付かないノリなもんだから、梅も顔を真っ赤にしながら、覚悟を決めたように告げる。

 

「夢結は、わたしの……わたしの、大切な人だからナ。あれぐらいの無茶、いくらだってしてもいいゾ」

 

「……ええ、ありがとう」

 

 ……まあ、その無茶の内容については、今日のところは不問にしておいてあげよう。

 正直、そっちにまで気を回してる余裕は、あんまりないし。

 

「巻き込んじゃって悪いねミリアムちゃん、パートナー代わるっていうんならお好きに」

 

「いいや、言いたいことは分かったから気にしないぞい。それにしても、よもや雪華様が他人のそういうことを気にするとはのう?」

 

 やかましい、これからもっと酷い方に進むんだから、これくらいは軽いもんでしょ。

 

 ──なんて本音を言えたなら、少しは気も晴れたんだろうけど、百合ヶ丘に戻ってから、依奈が夢結から聞いたって話は冗談で広められたもんじゃないから、浮かびはした言葉も奥まで飲み込んでおく。

 

◆◆◆

 

「お疲れ様。はい差し入れ」

 

「ありがとうございます、ほら千香瑠も」

 

 ダンスも終わり、各々まばらに散っている中で、()()()()壁際の椅子に並んで座っている依奈と千香瑠を見付けたから、自分で淹れてきたホットミルクのカップを渡す。

 

「あ、はい」

 

「で、二人で踊ったの?」

 

 答えなんて分かった上での、ジャブ代わりな茶化した言い方には、それぞれ一口飲んでから。

 

「まさか。あたしはソラとで」

 

「私は、一葉ちゃんとでした」

 

 つまり、表向きの決着はフラれて終了となったようだけど、生憎とそれだけで終わりなら、今こうなってはいない。

 

「それにしても、今日は色々と大変だったよねぇ」

 

「はい。でも、良かったです、全員……無事で……」

 

 だから、安心したようにゆっくりと千香瑠の目蓋が閉じられれば、横に倒れるその身体を受け止めた()()()から、そっと耳打ちが。

 

(それにしても、雪華様がこんな即効性の睡眠薬を持ってたなんて驚きました)

 

(……ま、私らやそれより上の世代は、下の子たちより無茶しがちだったからね、『こういうの』使ってでも止めなきゃいけない時ってのは、存外多かったのよ)

 

 ──これも事実ではある、だからこそ姉さんが備えとして持っていたのを知っていたし、だからあの時も、廊下の角でうずくまって明らかに様子がおかしかった『あいつ』のために、新しいのを一箱用立てて貰った。

 そしてすぐに、必要な機会自体が()()()失われたもんだから、ほとんど手付かずの薬だけが私の手元に残って、理由を黙ってた以上今更返すつもりにもなれず、姉さんの卒業後も荷物の中に埋もれていた、それだけの話。

 

「ごめんなさい、千香瑠は寝ちゃったみたいだからちょっと横にさせてくるわね」

 

 だから外向きの理由を周りに告げて、眠った千香瑠を抱えながら彼女が手に持ったままだったカップをこっちに渡してくる依奈を見送れば、今日はどこまでも共犯者な私はそのままラウンジを去るその背中に、周りの皆のような微笑ましさは全く感じられないから、誤魔化しついでだと残っていたホットミルクを、反対側から一口飲んでみる。

 

「……甘いなぁ」

 

 いくらカモフラージュにしたって、ここまで砂糖を入れる必要なんてなかったけど、『こんなもの』がまた必要になってしまったなんて苦い思いまでは、全然流してくれそうもない。

 

 ──そもそも、これに入れたものは睡眠薬なんて生易しいものでなく、元は対ヒュージ用の麻酔から発展した、()()()()()()()()()()で、急に前触れなく情緒の乱れが起きるなんて、強化リリィの症状としてよく見られるものだからと懐かしいのを引っ張り出したら、これだ。

 極めて強力な代わりに、体内のヒュージ細胞に反応して初めて効力が出る。なんて役割のはっきりとした代物だから、この状況になってしまった時点で、答えはもうひとつしかない……ホント、毎度毎度嫌になるね、この世界ってモノは。

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