貞々☨夢想   作:カツヲ武士

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12話。止まない痛み

ちん〇痛いねん。

 

結局文若を処罰したり放逐したりすれば、事実はどうあれ『曹操が荀彧に試されたことを怒って処罰した』という風評が立つということで、文若が大っぴらに処罰されることはなかった。

 

夜に何やら叫び声が聞こえたらしいが、それは知らん。

 

さらに陣営として彼女が持つ能力や人脈を欲していることは事実であった為、曹操は彼女を自陣営へ取り込むことを決定した。

 

もちろん扱いは軍師ではなく、政務官としてである。

 

これにより曹操陣営の中での役割分担が決まった。

 

軍権を預かる夏侯惇が太尉。

行政全般を預かる文若が司徒。

土地の開発や財政系列を預かる俺が司空と言った感じだ。

 

もちろん現時点ではそこまで厳密に役割が分けているわけではないので、何かあったらそれぞれで融通するくらいの柔軟性は有している。

 

ただし、夏侯惇と文若の仲が極めて悪いため、うまく回すためには工夫が必要だろうと思われる。

 

ちなみに今まで面識がなかったはずの夏侯惇と文若の仲が悪いのは、もちろん文若のせいである。

 

具体的には、今回の件で夏侯淵の評価が落ちたことが原因だ。

 

まず、今回の件に於いて夏侯淵は『相手が悪かった』ということでお咎めなしとなっている。

 

主犯である文若を罰していないのに、その被害者である夏侯淵を罰するのは筋が通らない。

 

よってこの判決は妥当といえば妥当と言えるだろう。

 

しかしながら、夏侯淵からすれば曹操からの信頼を損ねたことや、能力に疑問を持たれた時点で十分すぎる罰だったようで、随分と気落ちしていた。

 

そうして凹んだ妹を慰める過程で事のあらましを知った夏侯惇が文若を敵と認定したのだ。

 

気持ちはわかる。俺だって肉親に似たようなことをされたら不快に思うだろうからな。

 

まして直情的な夏侯惇のこと。

彼女は敵と認定した文若に対する敵意を隠そうともしなくなったのだ。

 

曹操としては頭が痛い問題だろう。

 

この件における最大の問題は、夏侯惇が一介の武官ではなく武官の筆頭であることだ。

 

そのせいで軍部に所属している曹仁や曹純も文若とは距離を置くことになってしまったのである。

 

このままでは夏侯惇率いる武官たちと、これから文若が連れてくるであろう文官たちの間で衝突が起こるのは必定。

 

と言うか、今でさえバチバチに火花が散っている。

 

存在するだけで内部に不和をばら撒くとは、なんとも恐ろしい女である。

 

そんな恐ろしい女が起こした騒動から二日後のこと。

 

俺は馬上の人となって遠征軍に帯同していた。

 

なんでやねん。

 

俺は留守居役じゃなかったのか?

 

せっかく曹操たちがいない間に他の県を見回って色々と調査しようとしていたのに。

 

まぁ俺とて『いくら政務官として受け入れるとはいえ、文官の筆頭が戦場を知らないのは困るわ。だから彼女には実戦を学ばせる必要があると思うのよ』という曹操の意見は尤もだと思う。

 

その上で『でも今のままだと春蘭とかに殺されちゃうと思わない?』という懸念も、まぁわかる。

 

実際夏侯惇は「隙あらば殺してやる」ってのを隠さない程に嫌っているからな。

 

だが『だから貴方には桂花と春蘭たちの間を取り持ってもらいたいのよ』というのがわからん。

 

確かに武官と文官のトップの仲が悪いのは困るだろう。

 

君主である曹操が言えば矛を収めるだろうが、水面下で争うのは眼に見えている。

 

故に緩衝材が必要なのはわかるのだ。

 

だからと言ってそこに俺を使うのはどうだろう?

 

そういうのは一門であり武官と文官を兼任している曹洪にやらせるべきではなかろうか。

 

いや、さしもの曹洪も曹操に対する献策と嘯いてあんなことを恥ずかしげもなく語れるような女が相手では無理があるかもしれないが。

 

いや、今思い返してもあれはない。

いくらなんでもない。

あまりにアレすぎて曹操も『それが、策?』と呆然としたくらいだからな。

 

そう。あのあと、曹操から「せっかくだから聞かせてもらおうかしら。荀家の神童が謳う献策とやらを」と告げられた文若が嬉々として口にしたのは、三つの理由とやらであった。

 

その一。

【曹操であれば自分が行った小細工に気付くことができる。だから問題は発生しない】

 

愕然としたね。

 

そうはならんやろと言いたかったのを必死で我慢した。

 

普通ならアウト寄りのアウトだが、名家からの試験として考えればまぁ納得できなくはない。

 

かなりギリギリだが。

 

ただ所詮この時代は法よりも支配者の感情が優先される時代なので、曹操が納得すればそれでいいのだ。

 

そして曹操は苦虫を噛んだような顔をしながらも、文若に次を促した。

 

この時点で文若の意見は認められたというわけだ。

 

そして告げられたその二の理由だが。

 

その前に実はこの文若さん。

小細工が曹操にばれた場合は物資を積み直すのではなく、予定の半分の物資のままで遠征を完遂させる自信があったらしい。

 

その根拠が第二の理由。

【物資が少なければその分輜重隊の負担が減り行軍速度がはやくなる】であった。

 

なんだその謎理論は。

 

さすがにこれには「そうはならんやろ」と突っ込ませてもらったぞ。

 

減らせば早くなる? 

ならば増やせば遅くなるのか?

二刀流なら倍になるのか? 

 

準備期間が少なくて済むとか、物資が少なくなればそれだけ予算が浮くというならまだわかるが、数を減らしたところで輜重隊が居なくなるわけじゃないんだぞ?

 

行軍速度は変わらんやろがい。

 

そして驚きの三つ目。

 

【自分が指揮をとれば賊程度最短最速で片付けることができるし、事後処理も完璧にできる。だから食糧の量を減らしても問題ない】とのこと。

 

これには夏侯淵さえも「なんでそうなる」とツッコミを入れた。

 

まず自分が軍部からの信用を損ねたことを自覚していない。

 

この時点で軍は彼女の指揮通りに動かないだろう。

 

もちろん曹操が「彼女の指揮に従いなさい」と命じれば話は別だが、さすがに無理があるだろう。

 

それだけではない。

そもそも荀彧は賊が何処にいて、どれだけの戦力があって、どのような人間が率いているのかを理解しているのだろうか?

 

ちなみに曹操もそこまでは理解していない。

それらの情報を収集する時間も計算した上で曹操は物資に余裕を持たせていたのだ。

 

それを全否定する文若さんはちょっとおかしい。

 

また、遊びがないということは不測の事態に対応できないということだ。

 

例えば賊が一か所に纏まっていなかった場合はどうするのか。

具体的には一部の賊が食糧の調達の為に拠点を離れている場合だ。

 

その際、遠征軍が賊の本隊を潰したところで賊は生き残ることになる。

 

通常であればその生き残りを探して討伐するのだが、そのためにはどうしても時間がかかる。

 

だが必要最低限しか物資を用意していない遠征軍に時間的な余裕はない。

 

そうなると向こうの太守に物資を要請するしかなくなるが、向こうの太守は物資を素直に用意するような人間ではない。

 

それどころか曹操のせいで賊が分散してしまったと責めたてて、謝罪を要求してくるかもしれない。

 

曹操の面目は丸つぶれだ。

 

賊が逃走した場合も同様だな。

 

追撃する余裕がない以上、敵を逃がすしかない。

 

つまり討伐任務は失敗である。

 

どうしろというのだ。

 

別のケースもある。

賊が一か所に纏まっていた。

最短で討伐できた。

事後処理も最短で終わらせることができた。

と、全部予定通りに終わったとしよう。

 

……この時点でありえないが、そうなったとしよう。

 

だが、帰還の途中に別の賊を発見したらどうするのだろうか?

 

賊を前にして『食糧がないから放置します』だの『予定にないから放置します』だのと言えるのか?

 

そんなことをしてみろ。

すぐに『曹操が賊を見逃した』もしくは『曹操が賊から逃げた』と言われるぞ。

 

それだけではない。

 

賊を見逃すことで、その場で討伐していれば出なかった犠牲が出ることになる。

 

その場合被害者の恨みは誰に向く?

自分たちを襲った賊? もちろんそうだろう。 

賊を生み出した太守? それも当然だ。

自分たちを見捨てた曹操? これがまずい。

 

本来曹操がその賊に対処する必要はない。

故に放置したところで罪には問われないだろうし、太守に嫌味を言われてもいくらでも言い逃れはできる。

 

だが目の前で見捨てられた民の恨みは消えない。

 

なまじ助けることができるだけの兵力を持っているだけに、見捨てたという事実は重くのしかかることになる。

 

具体的には、曹操の支配領域が拡大したとき。

 

民や兵が自分たちを見捨てた人間を主として認めるかどうかという話だな。

 

それもこれも必要な物資を用意しなかったせいで発生するかもしれない事態である。

 

つまり今回文若が不要と切り捨てた物資とは、そういった不測の事態に対処するためのものなのだ。

 

それを捨てるなんてとんでもない。

 

というかだな。

 

今回の遠征に当たって用意した物資は、曹操が「今回の遠征であればこのくらいは必要だろう」と判断して用意させたんだぞ。

 

そこに何らかの理由があると考えなかったのか?

 

それとも曹操よりも自分の方が大局を見定める眼を持っていると思ったのか?

 

その辺を完全に失念していたのだろう。俺がそう確認したら、文若は顔を真っ青に染めて曹操に謝罪した。

 

見事な五体倒地であった。

 

それを受けて曹操は「荀文若に軍師としての適性なし」と判断し、彼女を政務官として登用することを決めた。

 

それからは先ほど言った通り。

 

曹操は最低限の経験を積ませることが必要と判断して文若を従軍させたし、文若が武官に殺されないよう顔見知りである俺を帯同させたというわけだ。

 

もしかしたらこうして俺を傍に置くことで、男性に慣れさせるというのもあるかもしれない。

 

その辺は勝手にしてくれればいい。

 

暴言くらいなら聞き流してやろう。

 

それはもういいのだ。

 

だがち〇こが痛いのは許せん。

 

ただでさえ馬に乗っているせいで常にプルプル揺れているのを見せつけられているというのに、こいつらミニスカのまま馬に乗るから色々と際どすぎるねん。

 

履いているから安心しろ? できるか。

お前ら、羞恥心はないんか?

 

せめて短パンを履け。

あるのは知っているんだぞ。文若が履いているからな。

 

このまま休憩までこれか? 

 

休憩中に発散できるんか?

 

……無理だな。

 

誰かに見られたら『従軍中に元気になって暴走した変態の烙印』を押されてしまう。

 

だから鎮まってくれ我が息子よ。

 

そして息子を覆う貞操帯よ。

帰ったら休ませてやるから今は耐えてくれ。

 

俺も母上を思い出して頑張るから。

 

「ぬぅ……」

 

あぁ。どうして今日もこんなに〇んこが痛いんだろう。

 

 




オリ展開1。荀家の神童、軍師にならない。

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