貞々☨夢想   作:カツヲ武士

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原作主人公がいないのでこういう形での登場となりました。


3話。新たなる人材

私が陳留郡の太守となって早一年。

 

つまり司馬朗がここ陳留に来てから約一年ということね。

 

この一年はとても早く感じたわ。

 

出会いは最悪と言えるような状況だったけど、最終的に司馬防から許しを得たおかげで私たちは事なきを得た。

 

そこで次に頭を悩ませたのが、彼女の息子である司馬朗の使い道だった。

 

一間七尺(約2メートル)を超える筋骨隆々の大男である司馬朗だが、男である以上武将として使うという選択肢は無い。

 

そもそも武官は足りていたしね。

 

だからこそ私は彼を文官として扱うことにした。

 

洛陽にいたときは司郎中として尚書右丞であった司馬防の補佐をしていたと聞いていたので、適材適所と言える配置だったと思っている。

 

尤も、彼のほうはそう思わなかったみたいだけどね。

 

配属を伝えた時に見せた苦虫を噛んだような顔は忘れられないわ。

 

とはいえ、彼の場合は巷によくいる『女の風下に立ちたくない』なんていう我儘ではない。

自分も武官として働けるという自負があってのこと。

 

それは決して驕りではない。

実際、ただの兵卒では彼に勝てないのは明白なのだから。

 

人材が足りていなければ私だって武官として採用したかもしれない。

 

でも私たちの陣営にはすでに春蘭(夏候惇)秋蘭(夏侯淵)華侖(曹仁)柳琳(曹純)栄華(曹洪)といった武人が揃っていた。

 

その反面、秋蘭や栄華に文官の仕事をさせるくらい文官が不足していたわ。

だからこそ彼には文官になってもらったの。

 

勿論ただの文官ではない。内政官の筆頭よ。

 

名門司馬家の長男にして、司郎中。

つまり我が陣営に於いて私を除けば唯一官位を持つ彼を一介の文官にすることなど出来る筈もないからね。

 

秋蘭や栄華には反対されたけど、今ではあの時の判断が間違っていなかったと確信している。

 

栄華だって彼が行った規格統一によって作成された書簡を前にして「これは革新です!」なんて大喜びしていたもの。

 

秋蘭も書類仕事が効率化されたおかげで助かったっていっているし、私だってそう。

 

彼らのおかげで睡眠時間(意味深)が長くとれるようになったんだから、彼と彼が連れて来た文官たちには感謝しかないわ。

 

ただ、彼にとってはあまりにも簡単すぎた仕事を回してしまったことに関しては後悔していないわけでもない。

 

それはそうよね。洛陽での政を経験していた者が、陳留一郡の政でどうにかなるはずがないもの。

 

間違いなく役不足。そういう意味では彼に対する侮辱だったかもしれないわ。

 

でも、今の私には今以上の仕事をさせてあげることができない。

 

もう少し所領が広がればその分仕事も増やしてあげられると思うんだけど、暫くは退屈な仕事に専念してもらうしかないわね。

 

まさかこんな意味で自分の力不足を痛感することになるなんて思ってもいなかったけど、これも嬉しい悲鳴というやつかしら。

 

……嘘よ。嬉しくなんてないわ。

 

だって、また「こんなつまらん仕事を持って来たのか?」という目を向けられるのだから。

 

「はぁ」

 

彼がああいう態度を取ることを赦したのは私だし、なにより彼にはそれが許されるだけの能力と実績がある。

 

でもね、一年経っても一向に言動を改める様子がないのはどうなの?

……もう少しこう、手加減と言うか、歩み寄りというのを見せて欲しいのよね。

 

特に春蘭とはもう少し仲良くして欲しいわ。

 

いえ、半ば意地になって彼を認めようとしない春蘭が悪いのはわかっているのだけれども。

 

「はぁ」

 

春蘭の方から歩み寄るように命令するべきかしら。

 

でも、不満を抑えこんで表面上仲良くなっても意味が無いのよね。

それくらいなら今のままの方がましだと思うし。

 

でも武官筆頭と内政官の筆頭の間に不和があるのは頂けないわ。

 

どうしようかと頭を悩ませていたのだけど、救いの手は思わぬところから差し出されることとなった。

 

「徐校尉ですって? えぇ。よろこんで迎え入れるわ! 給金も支払いましょう。なんなら私の直属の配下になって欲しいくらいなんだけど、どうかしら?」

 

この私が洛陽で校尉(上級武官)をしていた人間を雇える機会を逃すわけないでしょうが!

 

 

―――

 

 

チン留、否、陳留に来て一年が経った。

 

この一年は試練の連続だった。

 

なんなんだこの陣営は。

 

夕飯後のおかずどころか、朝から盛りだくさんではないか。

 

曹操はもとより、曹仁も曹純も曹洪も全員ミニスカのハミチチってなんだよ。

曹仁に至っては普通に脱ぐし。

 

前も後ろも横も駄目とか、何を考えているんだ。

 

えぇい。曹家の子女は変態か。

 

もう額に集中するしかないではないか。

 

これならぷるるんスリットチャイナ姉妹の方がまだマシだ。

 

すまん。嘘だ。あの姉妹も駄目だ。

なまじ大人っぽいから刺激が強い。

あとあの片乳露出衣装は反則じゃないか?

 

隙を突くという意味では間違っていないけどやりかたってもんがあるだろう。

 

しかも予想通り曹操とアレな関係だったし。

 

想像するだけで凄く捗る……わけがない。

普通に顔合わせ辛いわ。

 

唯一の救いは仕事が簡単なことと、連中は基本的に武官だから普段は顔を合わせなくて済むことだろうか。

 

仕事が簡単といったが、もちろん、俺の地頭が良くなったわけではない。

 

時間があるときに兵法書やら何やらを読み込んでいるものの、結局幼い妹にも及ばぬ未熟者だ。

 

ただ、これでも超人のはしくれなので気を使った脳の活性化はしている。

 

これにより書類の処理速度を上げているのだ。

 

しかも俺に上がって来る仕事はあくまで経理や都市開発の経過などに関する書類しかない。

 

軍師というわけではないから当然だな。

 

そしてこの作業に必要なのは根気であり、ひらめきは不要。

 

そんな単純作業であればこそ、俺程度の人間であっても粛々と仕事をこなすことができるのである。

 

仕事量自体も少ないしな。

 

うん。ここと比べると洛陽は本当に酷かった。

 

書簡と竹簡で物理的に潰れるところだっただけでなく、役人どもの中抜きが酷かった。

 

必要な分だけ用意したはずの資財が蔵の中にさえなかったと知った時は、思わず担当していた連中を殴り殺してしまったからな。

 

その節は母に多大な迷惑をかけたものだ。

 

尤も、その母も心の底から笑顔を浮かべて「よくやった」と言ってくれたから良かったのだが。

 

ここ陳留ではそんなことがないというだけでかなりマシだ。

 

あっても内政官筆頭という立場がある以上、いくらでも粛清できるというのがいい。

 

いざというときに我慢する必要がないというだけでストレスは減るからな。

 

そんなこんなで、偶に現れる曹操や曹洪らとの接触で息子が棒立ちになるのを我慢すること以外では極めて気楽な職場であるここで働くことに不満などあろうはずもなく。

 

そろそろ長期の休みを貰って陳留以外の都市を見て風俗事情の観察を行おうかと思っていたときのこと。

 

俺にとって癒しとなる人物がここ陳留へと足を運んできてくれた。

 

「お久しぶりです司馬朗様」

 

「あぁ、よく来てくれたな徐晃」

 

「はい」

 

「今後はこっちにいるのか?」

 

「はい。そう言われています」

 

「そうかそうか。これからよろしく頼む」

 

「お任せください」

 

ぼーっと会話をしているように見えるが、その実しっかりと内容を把握している少女。

彼女の名は徐公明。

 

小柄で見た目同様子供っぽいところはあるものの、れっきとした超人である。

 

司馬家の被官であり、今までは校尉として洛陽周辺の治安維持活動にあたっていたのだが、最近司隷以外の地域の治安が著しく悪化してきたことを部下から報告された母と妹が心配してくれたらしく、こうして俺がいる陳留に派遣されることになったのだという。

 

いやぁ助かる。

 

なにが助かるって、彼女から女のフェロモンを感じないのが助かる。

 

他と比べても露出はアレだが水着だと思えば問題ないし、なにより胸部の装甲が、な。

 

この人畜無害さは、今は亡きヴァリエール殿下を思い出す。

ぽんぽんペイン様とは仲良くやれていただろうか。

 

「……凄く失礼なことを考えていませんか?」

 

「気のせいだろう」

 

事実だし。むしろ褒めているし。

 

「まぁ、いいです。それで、曹操殿へもご挨拶をしたほうがいいですか?」

 

「そうだな。間接的にとはいえ上司になるのだから挨拶は必要だろう」

 

徐晃の上司はあくまで俺、もしくは司馬家であって、曹操ではない。

 

しかし武官として働く場合、その給料は陳留の予算、つまり曹操の懐から出ることになる。

 

この辺はなんとも面倒なところなのだが、徐晃の武力が陳留の治安維持に使われるのだから給料は陳留の予算で支払うべきという発想だ。

 

利益を得たら対価を払えということだな。

 

当然徐晃が武官としてではなく俺の護衛として働くのであれば、その分の給金は俺か司馬家が支払うことになる。

 

俺としては俺の護衛に専念して欲しいところなのでこのままでもいいのだが、徐晃の立場で考えた場合、俺の護衛に専念するというのはそれはそれで窮屈だろうし、なにより曹操が徐晃ほどの人材を俺の護衛に専念させるなんて贅沢な使い方をするとは思えない。

 

そう思って徐晃を連れて挨拶に行った際、挨拶を受けた曹操の反応は劇的なものであった。

 

「徐校尉ですって? えぇ。よろこんで迎え入れるわ! 給金も支払いましょう。なんなら私の直属の配下になって欲しいくらいなんだけど、どうかしら?」

 

「それは無理」

「それは駄目だ」

 

武官として採用することを即決するのはまだしも、極々自然に人の癒しを奪おうとするとは、なんてやつだ。

 

 

 




このお話の曹操は、郡太守への昇進の打診を受けた時に司馬防へ人材の派遣をお願いした感じです。

閲覧ありがとうございます。
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