柱間「世界を征服しようと思う」扉間「え………?」 作:tanaka
木の葉創設期の初期の初期。
未だ他の国に里が作られていない時代。
歴史のターニングポイントとなる話し合いが行われていた。
柱間「世界を征服しようと思う」
扉間「え……?」
兄から重要な話があると聞かされてやって来ただけの扉間はまず自分の耳を疑った。まだ里が出来て間もなく、里内の安定を図るべきこの時に何を言っているのかと?さては、兄じゃの冗談か?最近忙しく国と里との折半に走り回っている弟に心の隙を与えてやろうと言う恐るべき企みか?だとしたら、はた迷惑すぎるぞ兄じゃ
などと、現実逃避ぎみに楽観的なことを考える頭とは裏腹に、扉間の目は直ぐ様周囲の人間の有無を確認していた。此処は木の葉の里に作られた仮設住宅の一つ。白い台形状のテントのようなものだ。そのため防音性は期待できないが、聞き耳たてていたり、大きな声でもなければ外の者には聞こえない。幸い兄じゃの声は──無駄に大きい地声にも関わらず──そこまで大きくなかった。気配を探る限り聞き耳を立ててる者もいない。つまり、今の兄じゃの言葉を聞いたのは現在テントの中にいる俺と兄じゃとうちはマダラだけである。
その事実を確認して、扉間は内心ホッと胸を撫で下ろす。これならばまだ内々のアホな話で終わらせられると。
扉間「心臓の止まるような冗談は止めろ。誰かに聞かれていたらどうするつもりだったのだ」
固く咎めるような声で言う。「冗談だと言ってくれ」と言う願望の入った声でもあった。しかし、返ってきたのは、扉間の期待とは真逆の言葉であった。
柱間「冗談ではない。わしは本気ぞ」
扉間「兄じゃ!」
扉間は安易な発言を繰り返す柱間に避難の言葉を向けようとしたが、柱間の真剣な目を見て、言葉が喉に詰まる。
この顔は兄じゃが時々見せる一族の長としての顔だ。うちはと同盟を結ぶと言った時と同じ顔。いや、それ以上に真剣で揺るぎ無い覚悟の感じる顔だった。
扉間はこの顔をする兄を止められた試しがない。しかし、今回だけはダメだ。この考えだけは認めるわけにはいかない。何としても止めねばならない。
そんな使命感に駆られ、脳内で言い分を組み立てる扉間に、今まで黙って成り行きを静観していたマダラが声を上げた。
マダラ「完全な平和を作るには血を流す覚悟が必要だ」
兄じゃの言葉に驚きを見せるでもなく、淡々とした声で賛意を伝えるマダラに、扉間は全てを悟った。元々その考えはあったが、やはりそうだったかと言う具合に。
扉間「兄じゃに下らん考えを植え付けたのはやはりお前か、マダラ」
マダラ「植え付けたとは心外な。俺は只一つの考えを伝えたにすぎない。俺の考えに同意したのは柱間の意思だ」
扉間「戯れ言を」
視線で人を殺せるのではと思うほど冷たい目で火花を飛ばし合う二人。事実此処に第三者がいれば気絶していたか、失禁するほど震えていただろう。世界歳高レベルの二人の本気の視線は物理的なダメージを感じる程である。
しかし、この場にいるもう一人の男は後に忍の神とまで言われる男。視線に物理的なダメージなど感じるはずもなく、冷や汗一つ流すことなく、軽く手をパンッ!と叩く。たったそれだけ、拍手一つで猛る二人を止めてみせた柱間は、交互に扉間とマダラを見ていった。
柱間「扉間、お前は頭脳においてわしが最も信を寄せる相手だ。マダラ、お前は力においてわしが最も信を置く相手だ。わしと扉間とマダラ、この三人が同じ時代に揃い、今こうして手を取り合える場所にいるのは正に天の計らい。わしら三人ならどんな困難をも叶えられるとわしは確信している。いや、この三人がいる今しかないのだ。だから、わしたちの夢を手伝ってくれ扉間」
柱間はガンっと机にデコがぶつかるほど勢い良く頭を下げる。尊敬してやまない兄のそんな姿に扉間の心も僅かに揺れ動く。そして、冷静な思考でもはや兄じゃを止めるのは無理だと判断した扉間は額にこれでもかと眉を寄せ数秒の沈黙の後、「……分かった」と苦々しげにその一言を絞り出した。
柱間「扉間!」
柱間は感極まった表情で扉間に抱きつこうとする。
扉間「ええい!寄るな!鬱陶しい!」
扉間は素晴らしい反射速度で避けて、蹴り飛ばす。
扉間「一応言っておくがわし兄じゃの考えに賛同したわけではない。今でも止めた方が良いと思っている。だが、どうせ止まらぬなら動くのは早い方がいい。こうしている間にも他の国は有力な忍一族をまとめ強力な里を作ろうとしているのだからな」
柱間は扉間の真っ当な指摘に「それもそうだの」と頷き、マダラは傲慢に賛同した。
マダラ「ふん、俺と柱間の圧倒的な力があれば有象無象が束になったところで何も変わらぬが、流す血は少ない方がいいな。夜月一族には伝がある。当たってみよう」
柱間「わしも他の伝を探ってみるとするか」
扉間「俺は統一後の統治について考えておく」
こうして三者はそれぞれが目的のために行動を始めた。
千手柱間、千手扉間、うちはマダラ
この三人の名は戦国の世を終わらせた立役者として長く長く後世に残ることになる。しかし、未だ彼等の壮大な野心に気付くものはいなかった。
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二代目火影である千手扉間は、広大な版図を中央集権的に支配するために郡県制と呼ばれる制度をまず考え出した。
この案を具体的に説明すると、全国を48の郡に分け、それぞれの郡には長官や副長官、監察官などの官吏を派遣し、中央集権的に支配する政治構造だ。
一方、今まで各国で取られてきた封建制は国王が一族や功臣を諸侯として分封し、その地域の支配を世襲させるという政治体制であり、その基盤は氏族社会の血縁組織を介して支配する体制であった。
この封建制を完全に否定する郡県制は強い反発を生み、安定した統治が不可能だと予想した扉間は、妥協的な案として火影の直轄地には郡県制をしくが、それ以外では封建制をある程度残し、有力者を王に封じ、諸侯の反発の抑制を図った。これが郡国制と呼ばれる制度であり、扉間の施行した全国統一政策の中で最も重要な施策となる。
扉間「聞いておるのか、兄じゃ?ここが一番重要なところだぞ!」
柱間「うーむ、お前の話は難しくて良く分からんぞ」
扉間「良く分からんでは困るんだ!兄じゃは火影なのだぞ!」
柱間「そこが一番分からぬのだ。そもそもわしは火の国の国主に火影となることを認められた身。郡国制を敷くとしてわしらと火の国との関係はどうなるのだ?」
扉間「何も変わらぬ。わしらは火の国に火影であることとその正統性を認めてもらう代わりとして彼等の盾となり矛となり、力の象徴となる。いわば、火影とは全国を統一した火の国の国軍の頂点に立つものの事だ」
柱間「分かったような、分からぬような」
扉間「頼むぞ兄じゃ」
そんな話し合いが行われたのは火の国が統一戦争を起こす半年ほど前。その時には既に統一後の政治体制にまで詳細な検討が扉間の頭では行われていた。
火の国
たった8年と言う短い時間で諸外国を滅ぼし、統一国家を作り上げたその国は、絶妙な中央集権と法治政治を徹底させた結果、500年にも渡る長い時間繁栄を築きあげた。
(完)