エグゼ1の序盤、学校ジャック事件、完!
それではどうぞやで。
ナンバーマンとロックマンの戦いを見て、スラーは失望と怒りを感じていた。
自分の居た時空で、ロックマンはスラーが作り出したアステロイド相手に何度も勝利しているのだ。
その中でも、苦戦したものはとても少ない。片手で数えた方が早いくらいに。
それに、失敗率99%の……。言わば出来レースじみた試練とはいえ、デューオの試練の最終段階まで来た猛者なのだ。弱い訳が無い。
無論、スラーよりも強いかと言われるとそうでも無い。最終段階のパストトンネルに行く前の直前。量産型アステロイドを現実世界にけしかけ、電脳世界でカーネルと戦闘した時があった。
そのカーネルに助太刀したのがロックマン、ブルース、サーチマン。3体のネットナビだ。
カーネルを入れた4体を相手取ったが、スラーは圧勝。背後からの不意打ちも、渾身の一撃も、プログラムアドバンスさえも効かなかった。
……まあサーチマンに関してはムゲンバルカンではなくギガキャノンの方が良かったのでは?判断ミスじゃないの?アレ。とは思うが……。
だが、スラーに挑む気概。こちらの攻撃を受けても立ち上がる精神と耐久力は目を見張るものがあった。そこはスラーも認めてはいたのだ。
ーーーなのになんだ?あの体たらくは。まるでなっちゃいないでは無いか。
あの程度のネットナビにいいようにあしらわれ、オペレーターは諦めかける。ネットナビの方も半ばヤケクソの攻撃もあった。
「……不愉快ですね」
吐き気のする演説プログラム。ロックマンのあのザマ。それらがスラーの苛立ちを加速させる。
『ぎぬぬぬ……』
敗北した日暮は悔しそうに歯ぎしりしている。無理もない。
あの有利な状況で見事な大逆転をされたのだ。ボードゲームならテーブルごとひっくり返してしまうほどの勢いだろう。
『ほら!やっぱり、アンタの考えは間違ってる!』
『く……悔しいでマス!悔しいでマスーーーーーー!!!』
途中までは順調だった。幾らナンバーマンが戦闘用では無いとはいえ、こっちのペースに引き込めれば負けは無かったのだ。
ナンバーマンの割り出した勝利率も99%を叩き出していた。
それに、光熱斗はあんまり成績が良くないのは、学校のデータベースから分かっていた。通知表も散々なものだろうと確信していた。
だからこそ、ナンバーボールの弱点を見抜けないと思っていたし、打開策など閃かないものと思っていた。
『そんなんじゃ、折角のレアチップが可哀想じゃん!』
『……!!』
「熱斗くん、ちょっと言い過ぎだよ」
『だって、そうだぜ!』
「……熱斗くんの言う通りでマス」
その時、日暮は子どもの頃、初めて景品で当てたレアチップの事を思い出していた。
そのチップはレアと言うだけで、使い道はそう無かったものの、やはりレアチップというものはそれだけで嬉しいものだ。
必死にお小遣いを貯め、チップショップに行ったり、クジを回したりした日々の事をまるで昨日のことのように思い出せる。
『これからは、真面目にウイルスバスティングをして、チップを集めるでマス。心を入れ替えるから、その時は熱斗くん達も、是非チップ交換に来てくださいでマス』
『うーん……スラー。今の日暮さん、どう?』
「そうですね……。出会った時に感じた、凄まじい欲望はそう感じません。問題無いでしょう」
スラーは人々の欲望、憎悪、怒りといった、人間のあらゆる負の面に対して鋭い感知能力を持つ。それを利用してアステロイドをばら蒔いていたのだ。
……その中にはOLの愚痴や野菜嫌いの少年の声まで反応してしまうというガバガバっぷりだが、アステロイドを与えた殆どの人間は力に溺れ、欲に溺れ、無惨な末路を辿っていた。その姿を見てニヤニヤと嘲笑っていたスラーは性格がねじ曲がっているとしか言いようがない。
私は言った筈ですよ?どう使おうが自由だと。
『もちろん!いいぜ!俺もバトルチップは大好きだし!』
『ほ……本当でマスか!?』
『ただ……。みんなを困らせたんだから、その償いはしなきゃ。だから、これから先は、みんなの役に立つようなことをしなよ。な?』
この時だけ、教育実習生と生徒の立場が逆転した。
犯罪に手を染めた日暮闇太郎は、自身を打ち負かした小学生の光熱斗の手で、これか先は真っ当に生きていくことだろう。
「熱斗くん。サーバーを再起動して、学校のネットワークを元に戻そう!」
『OK!』
「そうはさせネェダ!!」
ロックマンがサーバーに近づいたその時、爆弾が2つ飛んできた。
あまりにも突然の出来事に呆然としてしまうロックマンだが、2つの投擲物が爆弾を明後日の方向へ飛ばした。
「チッ……。なんなんですか?ロックマン。その情けない姿は」
爆弾からロックマンの身を守ったのは、ワイヤーを飛ばしたスラーだ。
スラーは不機嫌な様子を隠すこと無く、ロックマンに向けて侮蔑を込めて言い放つ。
その姿に、さしものロックマンも礼を言いながら苦笑いするだけだった。
『ボンバーマン!何するでマスか!?』
「それはコッチのセリフダ!日暮闇太郎!!オ前は誇り高きワールドスリーを裏切ると言うんダな?」
『そ……その通りでマス!アッシは心を入れ替えて、皆の為になる事をすると熱斗くん達に誓ったんでマス!!』
『日暮さん……』
ボンバーマンにとって、日暮とナンバーマンは弱虫の存在だ。
確かに、演算能力や知識の高さは認めてはいるものの、それを活かす事が出来ない。バトルも団員の中では下から数えた方が早い。
元々、日暮は団員の中でも下っ端中の下っ端だ。ぶっちゃけヒノケンの方が立場が上なのである。
「ワイリー様は、お前でも出来そうナ任務を与えてくださったのダ!その心使いを捨てると言うのダナ?」
『しつこいでマス!アッシはもうワールドスリーでは無いでマス!とっとと帰ってくれでマス!!』
「チッ……!!そこまで言い切るのであれば好きにするがいいダ。だが、ワールドスリーは失敗には寛容でも、裏切りには容赦しねぇ。せいぜい首を洗ってガクガク震えて待ってるんダナ」
「やめろボンバーマン!今すぐ演説プログラムを止めるんだ!」
日暮の突然の裏切りにキレたボンバーマン。遠回しでの処刑宣言を告げた後、ボロボロの姿で尚立ち上がるロックマンに対し、ニヤリと笑った。
「おい。ロックマンとか言ったダナ?俺たちワールドスリーに入らねぇか?」
「ふざけるな!誰がお前たちなんかの仲間になるか!!」
「そう言うな。かくいうワールドスリーも、優秀なメンバーを必要としている。特にお前のような即戦力になりそうなやつは大歓迎ダ。今なら、B級団員待遇で入れるよう、ワイリー様に取り入ることも吝かでもないダ」
『しつこいぞ!』
「ふん。まあいいダ。そこの白いの。お前はどうダ?」
「……は?」
ロックマンを勧誘できないと悟ると、今度はスラーを勧誘し始めた。
内心ブチギレているスラーに気づかず、ボンバーマンは得意気に話しかける。
「お前も、俺が直々に用意したウイルス達をいとも簡単に倒したダナ。それも無傷で。短時間でダ。ロックマンには断られたが、お前はどうダ?」
なるほど。あまりにも場違いなカブタンク2や3。ハンディース2や3も、全てこのボンバーマンが用意したのか。
そこにワールドスリーが強化したEX個体まで混じっていた。ベテランでも厳しいであろうウイルスをだ。
『……やるよ、パパ』
オペレーターの力強い声がスラーの耳に届いた。
9年間、ずっと一緒に居たのだ。なんなら、スラーの自身の手で育てて居たのだ。
たったこれだけのやり取り。それだけで事足りる。
スラーはボンバーマンに向けて手を翳し……
思いっきりワイヤーを放った。
「グワッ!?」
あまりにも突然の不意打ち。あまりにも素早い弾速。
至近距離で狙撃銃を放たれたか如く、素早く放たれたワイヤーはボンバーマンが気づく暇も無く、そのまま横腹を抉ったのだ。
「コレが私とレイチェルの答えです。さあ、デリートされるか今すぐこの場から無様に逃げるか。好きな方を選びなさい」
ボンバーマンを見下している事を隠す事もせずに言い放つ。
自分や我が子を悪党として勧誘する。キレる理由はそれだけで充分だ。
「ぐぞぉぉぉぉぉっ!!コッチが下手に出てりゃあ好き放題言いやがったダナ!!お前ら2体纏めてデリートダァァァァァーー!!」
無論、ぶちギレたのはボンバーマンも同様だ。
勧誘を断られ、不意打ちを受け、あまつさえこっちを見下したのだから。
こっちは天下のワールドスリーだ。あんなナビ風情に舐められて溜まるか!!
「爆弾シュートォ!!」
ボンバーマンは肩に装備されている爆弾を蹴り飛ばす。
当たればサイコロボム等比にならない程の高火力。それは華奢な見た目をした白いナビへと迫り……
「ふん!」
思いっきり蹴り飛ばされた。
「ぎゃああああっ!!」
スラーに投げたはずの爆弾は何故か自分の前に蹴り返され、そのまま爆発した。
「滑稽ですねぇ。それでも天下のワールドスリーのナビなのですか?」
悪どい笑みを浮かべ、ボンバーマンを嘲笑する。
火力が自慢なのであろうが、当てられなければ宝の持ち腐れだ。
ボンバーマンの爆弾は確かに強力だが、爆発までに時間がかかりすぎるのだ。
流石にヒートショット等の炎チップがあれば別だが、そうでなければただの置物同然。何の役にも立たないのである。
「ま……まだまだダ!!喰らえ!!」
『バトルチップ、ヒートショット!スロットイン!』
負けじとボンバーマンも再び爆弾を蹴り飛ばす。
それと同時にスラーの手に火炎放射器が握られ、引き金を引いた。
「ぐぎゃあああぁっ!?」
蹴り飛ばす直前の爆弾に当たり、着火。ボンバーマンは自分の爆弾によって自爆。ダメージを受けた。
ボンバーマン自慢の火力は、サーバーへのリンクを破壊できる程の代物だ。パワーだけなら現ワールドスリー1だろう。
だが、固有武装は導火線の着いた爆弾のみ。それ故に炎属性とは決定的に相性が悪い。
爆弾はミニボムやスモールボムのように着弾後直ぐに爆発はしない。火には敏感。それがボンバーマンの弱点だ。
自慢の火力を自分自身に返される。屈辱とダメージの両方がボンバーマンに突き刺さっていく。
「ぐ……お……」
「消えなさい。跡形もなく。“ガイア・ブレイカー”!!」
スラーは光弾を出す要領で、右手にパワーを溜める。
光が徐々に集まっていき、スラーの右手は眩い光に包まれてーーー
思いっきり、それをボンバーマンに振り下ろした。
「ぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!!!」
ボンバーマンの身体はスラーの渾身の一撃に耐えきれず、爆発四散。そのままデリートされた。
ボンバーマンが居た場所は、スラーが放ったパワーの凄まじさを表したような大きなクレーターが出来上がっていた。
「さ、レイチェル。サーバーを元に戻しますよ」
その時のスラーの表情は、とてもスッキリした様子で、優しい笑みをオペレーターに向けていたという。
ーーー
パチッ!ウィィィィン……!!
パチッ!ウィィィィィィン……!!!
今回の事件関係者が職員室のサーバー前に集まっていた。
まり子先生。日暮闇太郎。光熱斗。大山デカオ。桜井メイル。綾小路やいと。そしてレイチェル。
「どうだ!?メイル?」
「……うん。大丈夫!演説プログラム、終わったよ!」
「やったわね!2人とも!」
「お……おめぇら……ちょっとはやるじゃねえか」
「『ちょっと』じゃなくて『かなり』でしょ!」
「ま……まあな……」
「いいよ!どっちだって!ロックマン!おつかれ!」
「スラーも、お疲れ様」
『いいえ。この程度、なんてことはありませんよ』
『熱斗くん!まだ疲れちゃダメだよ!2時間目の授業、英語の授業だよ!』
「え!?英語かよ〜!サーバー、治すんじゃなかったー!」
何気なく、自然に出る会話。コレが友達というものなのだろうか。
そう思ったレイチェルは可愛らしく笑ってしまう。
留学生の秋原小初日は波乱の日だったが、ここにいれば楽しい日々が過ごせる。友達もいっぱい作れるだろう。
そう思うだけで、とてもワクワクしたのだった。
とりあえず、今日の出来事をママに報告しよう。友達が出来た事を。友達と一緒に駆け回ったことを。
ちなみに、その報告を聞いてプライド王女がめちゃくちゃ心配し、すごい勢いで通話してきたのは言うまでもない。
・ロックマンが苦戦したアステロイド
ヤマトマン位しか思い浮かばない。強いて言うならダークロックマンとクロスフュージョンテスラ&愉快な仲間達の集団戦かな?
・ガイアブレイカー
スラー版ジャスティスフィスト。ネーミングが思いっきりフォルテを意識している。敗北した相手を引き摺っているのだろう。本作オリジナル技です。