評価9嬉しみが深い!ありがとうやで!
プライド「ふぅ……これでこの仕事は終わりですね。ナイトマン。これからの予定は?」
ナイトマン「本日の国務は終了しました。この後の予定は、姫が出演する映画の撮影となって……姫!!」
プライド「ナイトマン!身構えなさい!」
ザザー
スラー「私はスラー。貴方に力を授け……」
プライド「スラー!!いつもいつもそれやめなさいって言ってるでしょ!!」
こうしてナイトソードは渡りましたとさ。
水道局のある官庁街へ行くと、抗議している大人達でいっぱいだった。
無理もない。今朝から一切水が出てこないのだから。
中には川の水を飲もうとした人もいたが、職員らしき男に止められていた。それほど事態は深刻な状態ということだろう。
『なんだか大変なことになってるね……』
水というのは人間が生きる中で最も重要な物だ。特に脱水症状からなる熱中症は比較的なりやすく、その上死の危険も隣り合わせなのだから。
それに、人間が水を取らなくてもいい時間の上限は、最長で3日だ。
つまり、この事態を最長で3日以内に解決しなければ、街はとんでもないことになってしまう。
「まり子先生の言ってた事は本当みたいだな。自動販売機が全部売り切れてる」
水道局内の自動販売機の有様を見て、熱斗は言った。
自動販売機に表示されているのは、全て売り切れの文字だ。ジュースも、コーヒーも、お茶も、水も全て。
無論、それだけではなかった。よく見てみると、中をこじ開けようとした痕跡があったり、爆発の跡があったり。中には表示がバグっているものもある。お金を使って買い占めたという様子では無かったのだ。
「水道をストップさせて、飲み物もみんな盗んで……一体何が目的なんだろうね」
『少なくとも、ここ1ヶ月発生したような単発の犯罪……ではなさそうですね』
施設内に鳴り響く抗議の声をBGMに、ロビーを進んでいく。
受付には人だかりができており、担当の人も困ったような顔をしている。
ここに来た人は皆、水が飲めなくて困っている人達だ。だからこそ、無下にはできないのだろう。
ふと、エレベーターが隣にある受付の方に、場違いであろう少年がいるのが見えた。
赤いジャケットを羽織っている、卵の殻のような白髪が特徴の少年だ。
その少年の姿にスラーは反応した。
「……以上の理由から、この水道局の施設。特に、ネットワークの調査が必要だと判断しました」
「オフィシャルネットバトラーの方ですね。承知しました。念の為、IDカードを見せて頂けますか?」
「どうぞ」
抗議しに来ている訳ではなく、淡々と業務を報告するように受付の人に告げている。
受付の人も身分を確認したのか、エレベーターとIDカードの説明を行い、少年もお礼を言ってエレベーターへ向かうために後ろを向いた。
「……!?なんでガキ共がこんな場所にいるんだ?」
「ムッカ!ガキだと!?そういうお前だって、俺たちとそんなに歳変わんないだろ!」
白髪の少年の言葉に熱斗は噛み付いた。
自分達とそんなに変わらない歳なのに、何故ガキと呼ばれないといけないんだ!
文句を言う熱斗をよそに、冷静な少年は「ふむ」と納得した表情になった。
「いや。よく見ればお前達は、多くのワールドスリー構成員の逮捕に貢献した一般人のようだな」
『ええ。そういう事です。最年少オフィシャルネットバトラー、伊集院炎山』
「スラー。この人、有名人なの?」
『ええ。ネットバトルを主な手段として犯人の逮捕や犯罪の検挙に貢献するオフィシャルネットバトラー。彼は僅か9歳で超難関の試験を突破。ネットバトルの腕も、犯人の検挙率もトップクラス。故に、世間からの渾名が《最年少天才オフィシャルネットバトラー》。それがこの少年、伊集院炎山です』
「ふん。そこまで知っているのなら話は早い」
スラーは自分の居た時空と、この時空の差異を調べる為、元いた世界の知識を元に情報収集しているのだ。
その違いの最たる例が、クリームランドの情勢なのだろう。今でこそ、スラーが子育ての為にクリームランドの復興に貢献したが、その前は捨て子がいるような貧しさだった。
だが、スラーの居た時空はトップクラスの防衛力によって裕福な国だ。あのアメロッパと並ぶ軍事国のシャーロにさえ、王女の顔が利くと言えばその差が分かるだろう。
炎山もその例に漏れない。元の時空では、IPCの副社長でネットセイバーだ。だが、この時空ではIPCの御曹司ではあるが、副社長では無い。
また、この時空では現時点でオフィシャルだが、元の時空では今は副社長の役職だ。ネットセイバーへの着任は先の話だった。
「この件はオフィシャルの管轄だ。幾らお前達に実績があろうと、一般人であるお前達の出る幕は無い。俺の邪魔をしないで貰おうか。行くぞ、ブルース」
『はい。炎山様』
さっさと帰れ。と言った後、エレベーターへ向かう炎山を見て、「感じ悪いな!」という第一印象が決まった。
初対面で。しかも自分達と同じ歳であろう少年に邪魔者扱いされて怒らない者はいないだろう。
『でも、羨ましいところはあるよね。いつでもどこでも好きな時にネットバトルが出来るってさ。オフィシャルネットバトラーって、ネット犯罪に対抗するために国から認められたネットバトラーでしょ?有名にもなれるし、いい事づくめじゃない?』
「そう言われれば、そうかもしれないな」
『ですがその分危険もつきものです。特に今では、ワールドスリーのネット犯罪に対応しなくてはいけませんから』
「俺たちだって、ワールドスリー相手に立ち向かってるぜ」
「でもさ、ボク達の場合は前頭宝剣ってやつだから違うんじゃないかな」
『……正しくは正当防衛です。レイチェル』
家庭レンジ連続発火事件も、秋原小ジャック事件も、メトロ落石運行妨害事件も。ワールドスリーの下っ端が起こした多くの事件も熱斗達は解決している。
その上、スラーの監督の元、ネットバトルの腕も数段上がっている。今の熱斗には自信しか無い。
「すみませーん。俺達も水道の調査をしたいんですけどー」
そういう訳で、熱斗は受付の人の元へ向かった。
先程の炎山という歳が変わらない少年が行けたのだ。自分たちも行けるだろう。
「すみません。現在はオフィシャル以外はお通し出来ないことになっています」
「あの、ボクのママはオフィシャルネットバトラーなんだけど、それでもダメ?」
「すみません。その場合は親御さんに来てもらわないとお通し出来ないことになっています」
『受付の人がああ言うならば仕方ありませんね。帰りますか?』
受付から科学省に続く廊下を歩きながら、スラーが言った。
元々、ここへはまり子先生の頼みで来た事だ。炎山の言う通り、自分たちに捜査権は無い。オフィシャルが来た以上、長居は無用だろう。
「いや!俺は調査するぞ!このまま、伊集院炎山とかいうやつにバカにされたまま帰れるかよ!」
『でも熱斗くん。ボク達はオフィシャルじゃないから、あの水道局の施設には入れないよ』
科学省のロビーへたどり着き、歩きながら4人は相談する。
やはりここの自販機も買い占められていたり、盗まれたりしているようだ。飲み物が無い。
どうしようか考えていると、熱斗の目には科学省のエレベーターが目に止まった。
「そうだ!パパに付き添いを頼もう!」
『そうか!パパは科学省の主任だから、水道局への顔が利く筈だよ!』
名案を思いついた!と言わんばかりに受付へ直行。
受付の人も「光さんの息子さんね」とエレベーターを開けてくれた。どうやら顔パスのようだ。クーポン券1枚分のお得感が出そう。
2人はエレベーターに乗り、熱斗のパパの研究室へ直行。
だが、肝心の熱斗のパバはおらず、結局事態は振り出しに戻ってしまった。
「……そうだ。パパ、ちょっと借りるよ」
作業用机のそばに掛けられている白衣から、熱斗は科学省ライセンスを手に取った。
科学省ロビーにいる科学者が言うには、職員のライセンスはエレベーター全てを動かせるとの事だ。
『幾ら御父上のライセンスカードとはいえ、無断拝借はどうかと思いますが……』
「緊急事態だから固いこと言うなって!大丈夫、ちょっと借りるだけだから」
今熱斗にアステロイドを与えるとどうなるだろうか?と、ため息を吐きながらスラーは考えた。
今、熱斗がやっている事は非常にまずい事だ。下手をすれば熱斗のパパの信頼に関わることだ。
スラーの苦言に「大丈夫」と言った熱斗はパパのライセンスカードを使い、熱斗とレイチェルは水道局のエレベーターへと足を運んだ。
・オフィシャル
ゲーム版エグゼのネット警察。ネット犯罪を取り締まる、エリート警察と言えばいいか。
とはいえゲーム内では名ばかりの無能集団のイメージが強い。特に1でのエレキデータの位置情報の横流しや、2でのシャドーマン襲撃の際の陽動作戦担当のヒールナビに返り討ちにされた。5人もいてなんだそのザマは。「オフィシャルは一体何をしているの?」
ただし、マザーコンピュータの電脳での3人のオフィシャルの活躍は見物。人材の精度はピンキリなのだろうか。組織のメンバーが多いとこういう弊害が出るのだろう。
基本、炎山以外は無能と思った方がいい。アニメ版ではネットセイバーの前身。
ちなみに、フリーズマン事件の時にオフィシャルのスパイがゴスペルに潜り込んでるとかいないとか。
・熱斗くんの犯罪その1
ゲーム版では作中1回は犯罪を犯す熱斗くん。記念すべき第1号は、パパのライセンスを無断拝借した事と、その後のやらかし。
・伊集院炎山
ゲーム版エグゼ皆勤賞。他メディアでも熱斗のライバルとしてレギュラー枠を獲得している。
最初は能力はあるが、嫌な奴という印象が強い。熱斗達と交流していくうちに丸くなり、徐々に優しい表情を見せるようになった。所謂ツンデレ枠。
最年少オフィシャルネットバトラーと称されるエリートだが、いつ入ったのか不明な為本作では9歳から加入したことにする。何歳の時に入ったのか調べても出てこんのよ……(´・ω・`)
名前の由来はコンピュータの演算から。苗字を知らなければ炎山が苗字だと勘違いしてしまう人がちらほらいたとかなんとか。
ちなみに、頭の事をからかわれるとどこからともなく電話がかかってくる程の地獄耳。
「光。今、俺の悪口を言わなかったか?」
「ぜ……全然?」
「そうか……」 ブツッ
「な……なんて地獄耳なんだ……」
ピリリリリリリ
「ゲッ!?」