展開が強引なところあるかも。
熱斗のパパのライセンスカードを使い、降りた先の廊下には、職員達がてんやわんやしていた。
上で抗議を受けて対応に追われているのが受付なら、下で膨大な作業に追われているのが職員だ。今も原因究明の為に水道のあらゆるシステムをチェックしている。
エレベーターの近くにいたちょっと太り気味の職員は、今日は子供が来る日だなぁ。とちょっと呑気そうだった。
「ここの自動販売機も飲み物が無いみたいだね」
『おそらくは、今働いている職員が水分補給に使ったものなのでしょう』
施設内の自動販売機も、やはりというべきか何も無かった。
さすがにここは、壊された形跡も無く、表示がバグってる様子も無いようだ。関係者以外は入れないというのが大きいのだろう。
「ウォーターサーバーを見つけたけどダメだった。ボタンを押してもうんともすんとも言わない」
『困ったね。職員さん達が倒れでもしたら、事態はもっと悪化するよ』
ウォーターサーバーは水道の水をキンキンに冷やすという性質がある。 だが、水が出る仕組みは水道と同じ原理だ。故に、水道が動かないこの状況では、ウォーターサーバーも動かないのも無理はない。
水道の大本であるこの施設も全く機能していない。自動販売機の飲み物も全てダメだ。この場所も、安全では無い。
その事を目の当たりにし、熱斗とレイチェルはゴクリと息を飲んだ。
「と……とりあえず、このまま奥に行ってみようぜ。なにか分かるかもしれないしさ」
廊下で考えていても埒があかない。
幸いにも追い出される心配はないようだ。現に職員の技術者らしき男が奥にある施設について説明してくれたからだ。
2人はこの先にある、水道の管理システムのあるフロアに入る為、扉を開けた。
「すっげー……」
「すっごい大きい!広い!王宮のメインシステムがある部屋位あるんじゃないかな?」
入っただけで圧倒される巨大なサーバーとモニター。それを操作するであろう精密機械の数々。
その大きさと広さに熱斗は圧倒され、レイチェルは子どものようにはしゃいでいる。
コントロールパネルには、優秀そうな科学者が真面目そうな顔をしてモニターとにらめっこしている様子を確認できた。物凄く忙しそうだ。
「君達。騒ぐのなら出ていってくれないかな?こっちは真剣なんだよ」
作業をしている研究員はこちらに振り向くと、興奮している2人を厳しく注意した。
最も、はしゃいでいるのはレイチェルだけであり、熱斗はとばっちりなのだが。おかげで表情が複雑そうだ。
『私のオペレーターが申し訳ありません。実は水道の件でお話を伺いたいのですが……』
「なるほど。それでここまで来たと。関係者以外入れないこの場所に来たということは君達はオフィシャルなんだろうけど、騒ぐのなら追い出すからね」
『はい。ゴメンなさい』
スラーとロックマンがフォローを入れる事で、追い出されることだけは免れた。熱斗はジト目でレイチェルを見つめている。
レイチェルは慌てて頭を下げ、研究員は「詳しい事はリーダーの氷川さんに聞いてください」と告げ、作業に戻った。
早速2人は先頭にいる、青いスーツを着ている渋い男性に声をかけた。モニターとキーボードを交互に見ながら悩んでいるようだ。
「あの!秋原町の水道が全部ストップしているんです!」
「……ああ、うんうん」
『もう知ってるみたいだね』
『物事の最前線にいる人達です。当然でしょう』
「ポンプの給水プログラムにちょっとしたバグが発見されたんだ。今、それを全力で取り除いているところだよ」
水道は主に4つの配管を使用して水を送っている。
導水管。河川や地下水等の様々な水をどんどん浄水場へと送る物。
送水管。浄水場で綺麗にされた水を配水場まで送る物。
配水管。貯めている水を給水場へと送る物。
そして、給水管。配水管から更に細かく分けられ、それが各家庭や施設に水が行き渡る物。
水道局の施設ではそれがプログラムによって管理され、安全な水を提供している。
その中の1つである給水プログラムさえ復旧させれば、水の供給は再開されるらしい。
「ワールドスリーの犯罪絡みならとても私達だけで解決出来る案件では無いが……。わざわざ来てもらってすまなかったね」
「いえ。それならいいんです。こっちこそ忙しい中、すみませんでした」
これで給水問題ももうすぐ解決だ。後でまり子先生に言っておこう。
頭を下げ、失礼のないようにこの場を去ろう。原因はわかった事だし、
「そうだ。折角だから、施設を見学していくといい。話はつけておくよ」
「え?いいの?ヤッター!!」
「でも、騒ぐのはダメだぞ。仕事をしている人に迷惑がかかるからな」
「はーい」
やはりと言うべきか、レイチェルは氷川にも注意を受けた。コレにはスラーも苦笑い。
2人は満足するまで施設内を見学し、お礼を言ってエレベーターに向かった。
ーーーーーー
『熱斗くん。レイチェルちゃん。この騒動、なにか変じゃない?』
「変って、何が?」
エレベーターを出ると、ロックマンが真剣な表情で言った。
もし、氷川が言ったことが本当なのであれば、わざわざオフィシャルが来る理由がわからない。
それも、天才ネットバトラーと呼ばれている、トップクラスの人物がだ。
それに加え、飲み物が全て買い占められてたり、盗まれていたり。誰かが意図的にやったとしか思えない事件だ。1ヶ月度々発生していた、ワールドスリーの下っ端が起こした事件とは比べ物にならない程の物だろう。
「それじゃあさ、まり子先生を呼んで、みんながいなくなった時にネットワークを調べようよ」
『私たちで調査をするならば、先生は呼んでおいた方がいいでしょうね。子供だけでは怪しまれる可能性もありますし』
「よし、その話乗った!」
『問題は、何処に隠れるかだけど……』
土曜日ならば、職員も早く帰るはずだ。夜遅く……なんて事にはならないだろう。
隠れる場所を心配したロックマンだが、熱斗は迷うこと無く科学省へと直行。エレベーターを使い、熱斗のパパの研究室に向かった。
その際にまり子先生に連絡を入れるのを忘れない。
「パパはどうせ……だしな」
『……だね。しばらく隠れてる?』
「さんせー!」
こうして2人は時間が過ぎるのを待つために、その場をウロウロしたり、寛いだりした。
「……ひ……暇だ……!!」
そんな時間の過ごし方に我慢ならなかったのはレイチェルだ。
普段の今頃は家でディメンショナルチップを使い、スラーと遊んだりプログラムを組んだりする時間だ。
「ひーーまーーー!なんにもしないで待っているなんてむりーーー!!」
『ちょっとレイチェル!落ち着きなさい!』
「だってパパ〜。後1時間もあるんだよ〜!!」
確かに、作業をしている時や楽しい時は一瞬で時間が経過する。だが、苦しい時やなんにもしていないのを意識している時は時間が経つのが遅く感じる。その時は本当に苦痛だ。
『あー……科学省のホームページにウイルスバスティングの練習プログラムがあるけど、それ使う?』
「え?ほんと?やるやるー!」
複雑そうな表情をしたロックマンが、助け舟を出した。
以前、レイチェルはスラーをオペレートが出来るレベルでは無いと本人から聞いていた。
ならば、この時間を有意義に使うべきだと思った。少しでもオペレートテクを上げてもらい、スラーの力を1パーセントでも多く発揮出来る機会になればいいと。
「プラグイン!スラー、トランスミッション!!」
科学省のホームページに、白のナビ、スラーが入った。
「アレですね」
スラーは目線の先にある、カプセル状の物へと足を運んだ。
『コレは熱斗くんのパパが開発したものなんだ。ナビのレベルに合わせたウイルスと戦えるプログラムだよ。これで、今の自分がどのくらい強いのかが分かるんだ』
『ふむふむ。よし、スラー!早速、オペレートの練習だよ!GOGO!』
「ハイハイ。全く……しょうがないですね」
手馴れた様子でプログラムを作動。カプセルはスラーをセンサーで読み取り……
ピピッ……ガー……
「ん?」
カプセルは激しい音を出し、次々とスラーのレベルにあったと判断したウイルスを展開する。
「……え?」
『ちょっとロックマン!この練習プログラム、ウイルスが出てくるんだよね!?』
『そ……そのはずなんだけど……』
否、出てきたのはウイルスではない。ネットナビだった。
扇風機を人型にしたようなナビや、鎧武者のようなナビ。他にも色んな種類のネットナビが、スラーの前に展開されている。
「なるほど。コレが、私のレベルに合うであろうウイルスですか。私をスキャンして判断した結果がアステロイドとは……まさかまさかですね」
この状況を見て、スラーは好戦的な笑みを浮かべた。
我が子の退屈を凌げる上、濃厚なオペレート練習が出来るのだから。
この程度、今の自分でも問題なくぶちのめせる為、なんの問題もない。
「行きますよ。レイチェル、オペレートしなさい」
『うん、パパ!こうなったらとことんやるよ!バトルオペレーション、セット!』
「イン!さぁて、蹂躙しますよ!」
両手にプラグソードを展開し、アステロイド軍団に斬りかかった。
・オフィシャルと間違えた研究員A
「今日はオフィシャルが来るぞ。アレ?あんなところに見慣れない子供がいるな。見た感じ、ナビもすごいカスタマイズされてるし。コレが噂の天才オフィシャルネットバトラーか!」って感じで勘違いしてくれた。膨大な作業量に追われているのも拍車をかけている。
・アステロイド召喚プログラム
スラーをスキャンした結果、あまりの容量の大きさにパンクして出てきたもの。本来は練習用ウイルスバスティングプログラム。
格下とはいえ、改造ネットナビを相手にするから二重の意味でスラーはニヤついている。絶好の経験値スポット。尚レイチェルは内心バクバク。