尚当作のスラーは弱体化しています。それでもエグゼ3のフォルテGSからプロト戦前のフォルテになったくらいなので相当強いです。
スラーの能力は多岐に渡る。
どんな高性能のコンピュータを瞬時にジャック出来る。
ナビを実体化出来る“ディメンショナルチップ”の制作。
強化改造ナビである“アステロイド”の創造。
現実の空間に干渉し、コンピュータ抜きでも干渉可能。
とんだ性能である。対抗できるのは地球上に居ないのではなかろうか。
最新鋭とか、超高性能とか霞むレベルである。なんなんだこのナビ……
(とは言ったものの、何度試しても干渉出来ない……。1部の機能が使えないと言っても良さそうですが……チップがあるのは幸いでしたね)
冷静に状況を判断する。原因は絶対ここに来る過程で起こったことだろう。
デリート1歩手前の状態で、パストトンネルの穴に吸い込まれる。それしか考えられない。
『ん?』
自身の身体が浮遊しているような錯覚を感じた。落下する事はないようだが。
おかしい。自分がいるPETは、タオルが敷かれているダンボールの上のはずだ。
「〜?」
赤子がPETを持ち、こちらをじっと見ている。
『な……なんなんですか……?』 「お〜?」
画面にペタペタと手を触れ、ボタンを人差し指で押していく赤子。
「〜♪」
気を良くしたのか、中にいるスラーの反応が面白かったのか。太鼓を叩くように。新しいおもちゃを手に入れた子供のようにはしゃいでいる。
この様子にはスラーも慌てている。
スラーがこれまで相手にした人間は、欲深い者が大半だ。中には光熱斗達のような見どころのある人間も居たが、スラーにとっては誤差レベルでしかない。
そんなスラーだからこそ、赤子のような純粋無垢な存在は初めてだった。欲望も悪意も憎悪にも縁が無い、キラキラと輝いているような存在を。
そんな赤子には流石のスラーもたじたじである。
そんな赤子の視線には、PETの近くにある虹色に輝くチップが映る。
『や……やめなさい!』
ナビを現実世界に実体化できる、“ディメンショナルチップ”。その貴重な1枚を持ち上げ、PETに当ててくる。
まるで無理やりパズルのパーツを嵌めるように。
『離しなさい!それはオモチャでは無いのですよ!』
“ディメンショナルチップ”の数は少ない。かつてはアステロイドと同様に大量に作成出来た。だが機能が失われている今、在庫は増えることは無いのだ。
そんな貴重品が赤子のオモチャにされている。
PETの至る所に嵌め込むようにガチャガチャしており、その姿にスラーは慌てている。
何度かガチャガチャやった後、赤子はPETの側面に何かをはめ込むような穴を発見する。
形合わせパズルで形に合致している穴を発見したかのような表情だ。
「あ〜♪」 『そうです!そこです!そこに嵌めなさい!』
見つけた穴にチップを入れ込んだ。その間にチップを逆にはめこもうとしたり、やはりガチャガチャしたりと色々あったが、ヨシ。
赤子の持っているPETからバチバチと電流が走る。その隣に大人1人分が入れる程の大きさの球体が浮かび上がり……
「……」
PETの中にいたナビがダンボールの前に立つ。
紺色ロングヘアのようなヘルメットに、女性寄りの中性的な顔立ち。
濃い緑色の全身タイツ。その胸部から上は白い和服を着ているようなデザインが施されている。
閉じていた目をゆっくりと開く。どうやらチップは壊れていないようだった。
(……やはり、パワーが大分落ちいている……。1部の機能が使えないという時点で察していましたが……)
「〜キャッキャッ!」
「あなたは、面白い人間ですね」
目の前ではしゃいでいる赤子を見てニヤリと笑みを浮かべる。
デューオは選んだ人間を監視者にして星を観察、調査する。が、直接スラーに命じられることは無い。
“人間は欲深い悪の生き物”だと認識しているが、赤子のようなキラキラした心の持ち主を見るのは初めてだ。
スラーは思う。自分の手で育てれば、悪には程遠い完璧な人間が出来るのでは?と。
言わば目の前にいる人間は真っ白の画用紙だ。そこに自分が望む絵をイメージ通りに描ければ……。
「今から私があなたの“親”です。この私に育てられた貴方がどのように成長するのか……楽しみですね」
そんな打算的な思考をしつつ残虐な笑みを浮かべ、PETを持ってはしゃいでいる赤子を担いでスラーは去った。
次回、スラーの子育て奮闘記(仮)