「なにこれ……?」
官庁街から秋原町に戻った時に見た光景は、酷いものだった。公園の水が、RPGの毒沼のような色になっていたのだ。歩くとダメージ受けそう。
喉の乾きを我慢出来ずに倒れる人の数々。あちこちで鳴り止まない、救急車のサイレン。
この光景を見て尚我慢できなかったのか、汚れた水を飲もうとする男がいた。止めようとしたが、さすがに大人と子供では力の差が激しい。直ぐに振りほどかれ、水を飲んでしまったようだった。
「パパ、ガスバーナーみたいなナビにやった技、威力が高すぎたんじゃないの?」
『そんな事はありません。周囲に被害が出ないよう、パワーは抑えてあります。それに、プラグアウトする時に確認した時、給水プログラムは稼働した様子はありませんでした』
「じゃあ、なんでこんなことになってるんだ?」
『ファイアマンが起動させた様子は無かったし……』
一体誰が?ファイアマンはスラーが早々に排除しようとした結果、直ぐにプラグアウト。
ロックマンにファイアショットを転送しようとした光熱斗は、まり子先生に止められて未遂に終わっている。
このメンバーの中で1番疑いのあるスラーがやった技の余波で動いた様子もない。
ピリリリリリリ!!
突如、レイチェルのPETから通信が入った。
何事かと思い、通信を開いてみると、水道局で会った派手な女性が映っていた。
『はぁい。さっきぶりねぇ、坊や?』
「水道局で見回りしてたおねーさん!?街中の水が汚れちゃってて大変なことになってるんだよ!早く何とかしないと……!!」
『ごめんねぇ、坊や。それやったのワ、タ、シ♡』
ウォーターサーバーにプラグインする前、帰るように注意していた女性の、まさかのカミングアウト。
伊集院炎山と違い、第一印象は好印象だった。きちんと諭すように注意してくれたし、レイチェル自身は褒められた。ちゃんと質問に答えてくれたし、何よりスラー以外は「この人は職員だ」と思っていたのだ。
確かに、制服や作業着では無かったが、退社する前の最後の見回りと言われると別におかしくはない。職場で着替えるのは珍しいことでは無いからだ。
『坊や達が戦っていたヒノケンの言っていたとおりにやったらもう大成功!デンサンシティはこの騒動で大混乱しているし、私も任務を果たせたし一石二鳥ってね。ま、そういうわけだから、それじゃあね〜』
ブツ!ツー、ツー、ツー
『……レイチェル。ディメンショナルチップをお願いしますね?』
「ダメだよパパ!ここはクリームランドじゃないんだよ!こんな所でキラキラチップなんて使ったら、もっと街が混乱しちゃう!」
絶対零度の笑みで、スラーはディメンショナルチップの使用を要請した。
スラーの実体化は、クリームランドでは見慣れているものだ。
何せ、レイチェルを育てる為に9年も実体化していたのだから。
ディメンショナルチップの影響で、元のガラケーのようなPETは損傷した。幸い、バトルチップの機能を修復する事で現実世界でも使えたのだが、スラーの入るPETが必要だった。
その為にクリームランド復興に協力し、その見返りに国で発言力の高い王女の支援を得た。
こうして、スラー専用のワンオフPETが出来上がった為、電脳世界に戻ることが出来た。それが出来たのはレイチェルが飛行機に乗る数日前の話だ。ちなみに、スラーがネットナビである事はプライド王女が何とか誤魔化してくれた。
だが、ここは日本だ。クリームランドでは無い。外で実体化なんてしたら、それこそ大混乱の元だ。それに、ワールドスリーもいる。もし捕まりでもしたら、あっという間に研究対象だ。オフィシャルに見つかっても同じようなものだろう。
「レイチェル!もう一度水道局に行くぞ!!」
「え?」
「このまま引き下がれるかって!まり子先生はみんなに注意をお願い!」
熱斗の方は炎山から連絡が来たようだ。
幸い、「お前たちのせいだ!」案件にはならなかったものの、邪魔者扱いは相変わらずだったようだった。
「行くよ、スラー!事件を解決して“お前返事”だよ!」
『正しくは“汚名返上”です。そうですね。今は目の前の事に集中します』
「うん!お願い!」
2人は急いで官庁街へと向かう為、メトロへ再び直行。
キップを取ろうとした直後、2人のPETからメールが来た。
2人はメールを見て、驚いたような表情で互いを見る。
少し前、誘拐されていた隣のクラスの生徒の名前が“氷川”というらしい。更に、この誘拐にはワールドスリーが関わっているとの事だ。
そして、水道局のリーダーが氷川。という事は……。
「ねえ、パパ。コレって……」
『ええ。水道局の責任者の息子を誘拐。それをダシに、脅迫をして水道のネットワークをバグらせた……というシナリオが成り立ちますね』
「やいとの奴!こういう事は早く言えよな!」
『2人とも!誘拐された隣のクラスの子を探し出せば、氷川さんもこんな事やめてくれるかも!』
「ヨシ!それだ!」
『では、私とレイチェルが先に水道局へ向かいます。光熱斗とロックマンは、誘拐された子をお願い出来ますか?』
「任せろ!行くぞ、ロックマン!」
『うん!レイチェルちゃんも頑張って!』
これで、目的はハッキリした。誘拐された氷川くんを救い出し、この騒動を終わらせる。
熱斗は来た道を戻り、秋原町中を探索。レイチェルはメトロを使って水道局へと足を運んだ。
ーーーーー
「プラグイン!スラー、トランスミッション!!」
再び水道局へ足を運び、エレベーターを降りてプラグイン。
エレベーターを使う際、ディメンショナルチップを使う事でスラーを実体化。受付で操作を行い、エレベーターを動かした。
あの派手な女性が潜入していた名残か、監視カメラが仕事をしていなかったというのも大きかった。
「パパ!大急ぎで解決するから、突撃形態に変形!攻略をスキップするよ!」
『了解です。私達を敵に回した事を後悔させてさしあげましょう』
スラーは身体を変形させ、球体のエネルギーに身を包む。
そして、物凄い速さで水道局の電脳の奥へと向かった。
ーーーーーー
スラーがたどり着くと、ブルースと防寒着を着た子どもようなナビが戦闘していた。
子どもナビはアイスキューブを出したり、口から吹雪を出したりしているが、ブルース相手には効果が無いようだ。
子どもナビは劣勢……というより、敗北確定だろう。
ここまで耐えているのは、子どもナビの耐久力の高さか、はたまたブルースが手加減しているのか。
レイチェルは子どもナビの救助を指示し、スラーはそれに応える為、両者の間に割って入った。
「またなんか来たです!?」
「またお前か、スラー。邪魔をするなと言った筈だが?」
子どもナビは驚き、ブルースは呆れたような表情で見ているようだ。邪魔者を見る目かもしれない。
それもそのはず。ブルースは今、この事件の重要参考人を捕まえようとしているところだ。抵抗された為、このような手段を取っているが、誤ってデリートしないよう手加減はしている。
スラーは子どもナビを庇うように、片腕を伸ばした。
「そういう訳にはいきません。私もロックマンも、この騒動を解決する為に動いているだけですので」
『ふん。ならば、あちこちで発生している汚水はなんだ?あれのおかげで街中の人々が病院送りだ』
『アレは、ワールドスリーの女の人のせいだよ!あの人が汚水を流しちゃったんだ!』
「それに、このナビのオペレーターは、息子を人質に脅迫されているようです。今、ロックマンのオペレーターが必死に探しています。それまで待っていただけませんか?」
スラーが呼び止めるが、ブルースは沈黙。対して、炎山は口を震わせていた。
オフィシャルは、ネット犯罪から一般人を守るのが主な仕事だ。炎山はその事に誇りを強く持っている。
犯罪者には容赦はしない。それが炎山の流儀だ。下手に情が湧いてしまえば、苦しむのは何も知らない一般人だ。
スラーもロックマンも、こちらの任務の邪魔をしようとしている。
到底、炎山には許せることではなかった。
『ふん。プログラムの癖に世迷言を……!一時の感情に流されている間に、どれだけ多くの人が苦しむと思っている?現実から目を背けているのか?』
『違うよ!ボクもスラーも、熱斗くんとロックマンも、1番いい方法を探しているだけだよ!』
『現実を知らない一般人が……!!』
「邪魔するやつはデリートすると言ったはずだ。幾らお前が一般人だろうが、実績があろうが……。邪魔をするならば……斬る!」
ブルースが剣を構え、戦闘態勢に移行。
スラーも同じく、プラグソードを出して対応した。
戦闘は避けられないようだ。
『ブルース、邪魔者を斬れ!』
「ハッ!炎山様!」
『スラー、お願い!』
「勿論です、レイチェル。オペレート、お願いしますね」
スラーとブルースのソード同士による鍔迫り合いをゴングに、水道局で強者同士のバトルが始まった。
・汚名返上
よく「汚名挽回」と間違われる言葉だが、実はどっちが正しいか分からない結構ややこしすぎる日本語の1つ。結局、どっちが正解なの?
・氷川透
エグゼ1とアニメ版に登場する。
エグゼ1では水道局のシナリオで登場する、名有りのモブ。専用グラはなく、カエル顔のモブのグラが流用されている。父親は専用グラなのに……。
実は水道騒動の序盤でヒグレヤの裏には怪しい車が置いてあるが、この時点では調べられるだけ。給水プログラムを直し、メトロででやいとのメールのイベントを通過して初めてフラグがたつ。
助けると、カラードマンがいた所の行き止まりを通れるようになり、水道騒動後半戦がスタートする。
アニメ版ではなんと準レギュラー。顔も優しそうな少年のような感じになっており、事件の立ち位置もなんとお父さんと逆転している。まどいは子供ならば色気で落とせると思ったのだろうか。去り際に投げキッスをしている。
最初は熱斗達と共に事件を解決していたのだが、2期以降は何かとハブられる不憫枠に。特に5期のコピーアイスマン回は悲惨の一言。どうしてこうなった……。
・アイスマン
エグゼ1とアニメ版に登場。漫画版には出演ならず。
ゲーム版ではエグゼ1に登場。今回の水道のプログラムを凍らせてバグらせていた張本人。
ブルースが去ったあともオペレーターの息子、氷川透を心配し、ロックマンの説得に耳を貸さなかった。戦闘の末落ち着きを取り戻し、透の無事を確認。無事和解し、氷を溶かしてバグを取り除いた。最終決戦では水道局の電脳の焼き直しのステージではロックを解除してくれる。続編でもポスターとして登場していたりするため、エグゼ1だけではない。
また、エグゼ6ではアイスマンの二番煎じの事件を起こそうとした調教師がいるらしい。参考にしたのかな?
アニメ版では氷川透のナビとして登場する準レギュラー枠。「〜です!」という語尾が追加され、ドルオタとしての面もあるなどキャラが盛られている模様。アニメ2期からはアクアマンとバブルマンの3人で仲良く行動している描写もあり、実に微笑ましい。ぬいぐるみ欲しいです。
アニメ4期ではゾアノフリーズマンと交流した事で最終局面ではビヨンダードへの通信に貢献した影の功労者。ファインプレーをかました。
が、氷川透と同じくアニメ5期では不憫の一言。2期〜4期で活躍があっただけ彼よりマシか。
・スラー突撃形態
カーネルと戦う際、目にも止まらぬ速さで打ち合いをしていた形態。球体のエネルギーに覆われているため、どんな形かは不明。ジャイロマンの変形のような物だろうか。技項目も体当たりで登録されている模様。
・攻略スキップ
ロックマンと協力という立ち位置の元、ペースに合わせていただけ。スラー単体ならスキップ可能。
・置き去りにされたアイスマン
よくわかんないまま展開が進んで対応しきれていない。オペレーターも同様。置いてけぼりって、辛い。