なんか某国の皇子様×プライド王女が頭から離れんかった。
「コイツで終わりだな」
高火力とはいえ、たった一撃で肩で息をしているほどのダメージを受けてしまったロールに向けてファイアマンは炎のエネルギーを貯める。
自分はワールドスリーだ。世界をあっと言わせる超メジャーな犯罪組織。そんな彼がロールに向けているのは見下しでも嘲笑でもない、称賛の視線だ。
「この俺に予想もつかない方法でダメージを負わせたんだ!お前の名前は覚えといてやるぜ!トドメだ!」
両腕から勢いよく炎が発射された。
炎の大波は華奢な少女ナビに直撃。全身が業火に包まれ、全て炭になっているだろう。
ーーー惜しいやつだったな。
敗因は、トドメを刺したと思い込んで気を抜いたことにある。
もし、あそこで安堵しなければ、もっと心躍る戦いができていただろう。その持ち前のスピードとカウンターをもってすれば、A級団員だって相手にできる可能性はあった。ロックマンに次ぐ新たなライバルとなっていたかもしれない。
勇敢な戦士を黙祷するように数秒目を閉じ、その場から離れようとする。
後はナイトマンとかいう奴をカラードマンと一緒に叩くだけだ。
「……!!」
気配を感じたファイアマンが跳躍。
「ナニモンだ!テメェ!」
跳躍したタイミングで、先程居た地点にはビームが着弾したのを確認した。
乱入者か?いや、この場にいるものはナイトマン、ロール、カラードマンのみのはずだ。他のナビはいなかった。
戦っている最中も援軍が来たという様子は無かった。
ーーーそういえばバス、止まってないか?
戦った当初は高速道路級のスピードだったはずだ。それがいつの間にか、動いている気配がない。
「……テメェは……!!」
煙が晴れると、そこにはピンクの少女ナビを抱えている、見覚えのある青い少年ナビの姿を確認した。ロックマンだ。
レンジの電脳で戦いの時、自分を打ち負かしたネットナビだ。恐らく、バスを止めたのもアイツだろう。
レンジの電脳で打ち負かした時から、ずっと秋原町での事件の行方を見ていたのだ。
ナンバーマン戦の時も、ストーンマン戦の時も。下っ端達との戦いの時も。水道局での顔見せの時も。着実に強くなっている姿を見て、脅威と感じつつも内心はワクワクしていた。
「……はっ!真打ち登場って奴か!よくもまぁ、こんな所までノコノコと!ご苦労なこったな!」
ロックマンが現れた以上、ロールとかいう少女ナビの事などどうでもいい。ファイアマンにあるのはロックマンへの執着だけだ。
ーーーそうだ!お前こそ、ワールドスリーに入ってまで探し求めていた、俺のライバルだ!
ロールのプラグアウトを確認し、ロックマンがこちらへ身体を向ける。
それに闘志が反応したのか、身体中から炎が湧き出るような錯覚を覚えた。頭部から、両手から勢いよく炎が垂れ流される。
「行くぜ!ファイアアームゥ!!」
ーーーー
降りてきたプライド王女から水を飲ませてもらったレイチェルを見届け、一安心したように息を吐く。
「全く……この子はいつも……」
スラーとプライド王女とナイトマンは、そんなレイチェルの様子を見て、とある日の事を思い出していた。
特撮番組、ネットセイバーが軌道に乗る前のことだ。
かつてのプライド王女は兎に角必死だった。国の情勢を何とかしようと、若いながらも身を削りながら公務に勤しんでいた。その中には外交もあった。
相手国はこちらを衰退した邪魔な小国位にしか思っていない。だから見下している様子を隠すことなく、高圧的な態度をずっと取り続けていた。そんな国ばかりだ。
時にはそんなことをしない国もあったが、それでも断られた事も何度もあった。人材も無い。資源もない。技術力は数代前の代物。無い無い尽くしのクリームランドに置いて、持ちつ持たれつの関係……所謂WinーWinの関係は到底取れなかった。
もう消せるかどうかも怪しいクマをギリギリで隠しながら会談に臨んだ時。相手の高圧的な態度に思わず小さな悲鳴を上げてしまった時だった。
当時2歳のレイチェルが、プライド王女の膝程の大きさもない小さな身体で守るように立っていたのだ。
丁度スラーが駆けつけ大事にはならなかったが、その時の気分は情けない気持ちでいっぱいだった。
自分よりも遥かに小さな子どもに守られる。大の大人が。王女がだ。あまりの悔しさと情けなさに涙し、慰められた時もまた傷を抉られたかのようだった。
特撮番組、ネットセイバー第3作目。その主演になってみないかという誘い。その時にスラーから提示された。
いつもは小姑の如く嫌味を言うような嫌な奴が、いきなりこんな提案をしてきた。最初はどういう事だ?とは思った。たかが衰退した小国の王女に何を求めているんだと。
ーーー貴女は、レイチェル自身が盾になってまで守ろうとした存在です。理由等、その程度で充分でしょう。
その時に渡された台本。プライド王女の役は、ラスボス戦の前座。亡国の皇子だった。
スラーのポケットマネーをギリギリまで使い込んだ大作。大きな宣伝文句と共に打ち立てられた第3作目は世界的大ヒットを叩きだし、プライド王女も役を演じてから大きく成長した。
最初こそ「ラスボス戦の前座が私ってどういうことなの?」と若干の不満があったが、いざ演じると感情移入しまくった。役を演じきった時、貴重な財産を得たと胸を張って言える。
そのきっかけは自分を守ろうと身体を張った我が子……小さな騎士によるものが大きい。あの時の無力な王女を、小さな身体で守ろうと奮起した姿。あの姿が無ければ、道を踏み外していただろう。最も、外したら外したでスラーが気絶させて止めてくるだろうが。
そんな事を思い出しながらスラーと3人で話す。無論、そんな小さな出来事など覚えていないレイチェルは頭にハテナマークだ。
3人共通の話題で盛り上がってずるい!と、子供らしく頬を膨らませていた。
「ムギィィィィィッ!!よくもこのボクにあんな攻撃をしてくれたなぁァァァァァっ!!」
『ぴっ!?パパ!あのナビ、やられてないよ!それどころかかなり怒ってるみたいだよ!』
「中々タフなようですね。しぶとさだけは1人前……ということでしょう」
スラーが放った、華のような巨大手裏剣を食らっても尚生存している道化師ナビの姿。
もし人間であったならば、頭の血が噴水のように出ている事だろう。血管も浮かんでいる事だろう。そんなボロボロで堪忍袋の緒が切れた表情だ。面構えが違う。
「もう怒ったもんね!ガス供給プログラムに待機させている、分身達を暴れさせてやる!そうすればお前達は終わりだ!」
『え!?嘘でしょ!?』
聞いていた話と違うじゃないか。
時限爆弾が爆発する前にバスを止め、黒幕を倒す。コレが勝利条件だったはずだ。
だが、目の前のナビはあろう事か爆弾を爆発させるようなことを言った。これはまずい。
向こうではロックマンとファイアマンが戦っているから加勢は望めない。ベータソードを使って追い詰めているようだが、倒してから駆けつけるまでの時間が無い。
『大丈夫よ、レイチェル。見なさい』
「アーハハハハハ!!……はぁ……?」
突如、カラードマンが大笑いから驚愕の表情へと変化した。コロコロ表情が変わるナビのようだ。
「お前が言っていた分身というのはコレの事か?」
『生憎だが、ガス供給プログラムに居たウイルス共は、分身とやらも含めて全てデリートした。向こうも……どうやら終わりのようだな』
『あっ!水道局の時の、感じ悪いオフィシャルネットバトラーだ!』
『伊集院炎山だ。そんな呼び方をするな』
ブルースが手に掴んだ分身を放り投げ、一閃。両断されて消滅した。
その様子を見てわなわなと震えている。今まで絶対的な盾だった人質を取られたからだ。
ファイアマンはロックマンとの戦いの末、ベータソードでログアウト。この場には自分1人。敵はブルース、ロックマン、ナイトマン、スラーの4体。
ーーーどう考えても詰みです。本当にありがとうございました。
「ふ……ふん!こうなったらプログラムアドバンス2連撃で仕留めるだけだ!」
応急修復が終わったカラードマンは、再度青と赤の石像を召喚し、炎と水の柱で攻撃し始めた。
まだ策はある。広範囲高威力のプログラムアドバンスを連続で叩き込むという策が。
『ナイトマン!バトルチップ、ソード!スロットイン!』
「……」
ナイトマンの片腕がソードに変形した。鋭い切っ先をカラードマンに向けるも、当の本人はケラケラと笑うだけだ。
「たかがソードで何が出来るって言うのさ!」
『バトルチップ、ワイドソード!スロットイン!』
ナイトマンのもう片方の腕が、幅の広い剣へと変形した。
「まさか、ベータソードというわけ?手数が増えたくらいでどうってこと無いんだよ!」
まあ、ちょっとの抵抗くらい楽しんでやるか。そう思いながら、フレイムクロスを完成させた。
『バトルチップ、ロングソード!スロットイン!』
「はぁぁぁぁっ……!!」
刃の長いソードをスロットイン。溢れ出るエネルギーがナイトマンを包んでいる。
そのエネルギーは、ナイトマンが掲げた両手へと集まり、巨大な剣のエネルギーを作り出した。
『ベータソード……じゃない……?』
「あの時、スラーが使っていたプログラムアドバンス?でも、チップが違う……」
ファイアマンとの戦いを終え、駆けつけたロックマンと熱斗が驚いたような表情でナイトマンを見ている。
あの時……スラーはアステロイドと言っていたか。ネットナビとの集団戦の時、使用していたプログラムアドバンスだ。
だが、それはソード、ワイドブレード、ロングブレードだったハズ。ベータソードの材料ではない。
どういう事だ?と思っているところに、炎山が口を開いた。
『ふん。バトルの腕はまあまあでも、知識はそこまで無いと見えるな』
『なんだと!?』
「まあ、聞け。お前達の活躍はオフィシャルの耳に届いている。多少なりとも認められているお前たちへのプレゼント……とでも思っておけばいい」
やっぱ感じ悪いやつだな!と熱斗が思っていても気になるのか、炎山の説明はちゃっかり聞いていた。
プログラムアドバンスは強力な必殺技のようなものだ。3つ以上の特定のチップを正しい順番で転送して発生するもの。というのは熱斗も知っている。
通常のバトルチップから強力な必殺技へと変形するのだ。それには莫大なエネルギーが発生する。
だが、その巨大なエネルギーをそう簡単に制御できるはずがない。それ故に、プログラムアドバンスの存在はそれほど有名では無い。せいぜいが「何か起こりそうになったけどよく分からなかった」程度だろう。
だが、何事にも多少の例外は存在する。エネルギーが四散せず、何かしらの形で残った、不完全なプログラムアドバンスだ。ベータソードやゼータスプレッドが該当するものだろう。
このふたつは例えるならば緑のトマトだ。確かにプログラムアドバンスだ。四散せずに発動もできる。だが完全ではない。不完全なプログラムアドバンスを、一般人はプログラムアドバンスだと思っている。
恐らく、光熱斗とロックマンは勘と無意識に1部のプログラムアドバンスを制御しているのだろう。そうでなければ使えるはずもない。と炎山は認識している。
『ベータソードよ!その真の姿を!』
今ナイトマンが発動しているのはベータソードの完成版。ドリームソードだ。
天高くそびえ立つような剣のエネルギー。あれ程の膨大なエネルギーを制御して放つ一撃。それを使いこなすことができたのなら……。
「ドリーム……ソード……」
『すげぇ……』
2人にまた目標ができた。プログラムアドバンスを使いこなすというものを。
「ベータソードじゃない……?なんだよ……なんだよそれぇ!!」
そんな熱斗達とは裏腹に、焦りに焦っているのが丸わかりのカラードマンは苦し紛れにフレイムクロスを放った。
ソード、ワイドソード、ロングソードで発動するのはベータソードの筈だ。手数が増えるだけの、欠陥プログラムアドバンスの筈だ。
なのにあの巨大なエネルギーソードはなんだ?なんなんだ?一体?
『汝、今此処に滅せよ……!!』
「ぬぅん!!」
そんな焦り全開で放ったプログラムアドバンスと、渾身の力を以って放ったプログラムアドバンスが勝負になるわけが無い。
十文字に放たれた高火力の炎を、剣の風圧だけで消し飛ばした。
「う……うわあああああああ!!」
剣のエネルギーの激流に飲み込まれ、カラードマンはデリートされた。
信号機パニック事件の黒幕をデリートし、バスと信号を4人は正常に戻す。
メイルは吊り橋効果で熱斗を異性として意識し、初々しい感じに。レイチェルはプライド王女の無事に涙し、プライド王女はそんな息子を抱きしめた。
その後、メイル達はここに来た用事を思い出し、プライド王女が折角だからと4人で行動。炎山はこの事件の後始末と調査の為に町を探索。
こうして、信号機事件は幕を閉じた。
ーーーー
「申し訳ございません」
とある一室。会議所とも研究室とも取れる部屋に、色綾まどいは開口一番、謝罪の言葉を口にした。
目の前にいる老人は「貴様など所詮この程度じゃ!」と大激怒。取り尽くしまもない。
その隣にいる細身の男性は「遊んでいるからこんな事になる」と苦言を呈し、まどいは反論することができなかった。
「エー!エー、エー、エー、エー、エレキ伯爵よ!」
「はい!ワイリー様!」
「次はお前が行け!もうまどろっこしい作戦はヤメじゃ!この国の中心を狙い、一気に全ての機能をマヒさせるのじゃ!内容は……むー!任せる!よいな!」
「はい!かしこまりました!しかし、あのロックマンとスラーとかいうやつは、いかが致しましょうか」
エレキと呼ばれた緑のスーツにケーブルを巻き、ピカピカ光っている金髪の男がワイリーに質問する。
ロックマンとスラー。いずれもワールドスリーの作戦を台無しにしてきたナビだ。幾人ものメンバーがこの2人に敗れている。ヒノケンやまどいだってそうだ。
特にスラーはヤバい。ボンバーマンを一撃で粉砕し、パワーアップしたファイアマンもフレイムオーラが無ければ危なかった。しかも、フレイムオーラを貫通してデリートするほどのパワーを持っているらしい。
「問題ありません。ロックマンだけなら貴方だけでもなんとかなるでしょうが、ワイリー様はスラー対策にとある助っ人をお呼びしたそうです」
「あー、あやつならあの忌々しいナビをデリートすることも出来よう!エレキよ!スラーとかいうやつはあやつに任せ、貴様は任務を全うすれば良いのじゃ!邪魔するやつはデリートせよ!よいな!」
「かしこまりました!ワイリー様!」
こうして会議は終わり、エレキ伯爵は作戦のための準備を始める。
最後の究極プログラム、エレキデータを手に入れる為に。
・昔のプライド王女(妄想)
会談相手「……!!」(テーブルパァン!)
プライド王女「ひっ……!」
・デリートされたカラードマン
バックアップデータから復活している。
・ネットセイバー第3作目
まぁ、スラーとデューオは数多の惑星を観察しているということでよろしくお願いします。
・色綾まどい
ゲーム版、アニメ版に登場する化粧が濃い女性。漫画版には出演ならず。
ゲーム版ではエグゼ1に登場。水道局で顔見せ。信号機パニックで本格的に関わるようになる。
バスを止めるために信号機を正常に戻す熱斗に対し、イタ電をかけまくったのが原因かカラードマンの状況を把握しきれていなかった。
1でワールドスリーが壊滅(仮)した後も逮捕されずに生き延びたようだ。
アニメ版でも初期はワールドスリーとして敵対する自称23歳。中盤から中立、後に味方の立場になる準レギュラー枠。
N1グランプリ編でメイルとの対戦前、メイルに対して「30点」と評価し、やいとに対しては「デコデコ怪獣デコギラス」とボロクソに発言している。これには2人はキレていい。というかキレている。
そして対戦中、一方的に遊び嬲っているのが災いし、日光がやいとのおでこに反射して目がくらみ、その隙をつかれてやられている。ウサギとカメの話を読ませてあげたい。
ヒノケンとのコンビを組んだ敗者復活戦でも同様の油断が原因でやられている。しかもヒノケンと連携プレーもできず、寧ろ仲間割れする始末。何やってんだコイツら……。その時のドSロールは必見。
後にワールドスリーメンバー4人でカレー屋を開いてからは中立に。1度ゴスペルに加入し、舞踏会水責め抹殺作戦に参加。ドン引きしたまどいはなんと熱斗を助けるという行動を取り、協力してマグネットマンを倒した。ここでまどいがいなかったら詰んでいたと断言できるだろう。尚、この回限定でスーツメガネ姿というレアなまどいを拝むことが出来る。
2期ではデカオの師匠その2になり、3期ではミスコンに参加。終盤の日食の回ではワールドスリー全員集合し、ディメンショナルコンバーターを使用可能にし、熱斗を援護した。
5期では限定ブランドバッグを買いに来た一般客とてほんの少しだけ登場している。女友達もいることから、今の生活を存分に満喫している事だろう。