なんか腕前が下がってる気がする……(´・ω・`)
メットール。それは小学校の授業でよく使われるような1番弱いウイルスだ。
工場のヘルメットを被っている黒い丸い一頭身の身体に、楕円形の足。ボタン電池のような短い手に持っているのは、鉱山等で使用されるツルハシだ。
コンピュータウイルスなのだが、その愛らしい見た目でそこそこのファンを習得している。
教材にも、マスコットにも使えるという万能なウイルスだ。ちなみに、ワールドスリー産のメットールEXは一般人だと結構厳しいらしい。
『ヨシ、レイチェルくん。今からアステロイドプログラムの説明をするぞ』
解禁された新たな機能に、レイチェルは心を躍らせる。今にもぴょんぴょんと跳ねそうな勢いだ。
特にこのアステロイドプログラムは、友達のパパと協力して修復した物だ。当事者である以上、興奮するのはなんら不思議ではない。
『まず、アステロイドプログラムを発動するにはナビチップを1枚コストにしなければならないんだ』
『コスト?捨てちゃうってこと?』
『そうだ。レイチェル君が持ってるナビチップは……』
「ナイトマン、ロール、アイスマン、ガッツマンですね」
レイチェルはチップケースから全てのナビチップを手に取った。
ガッツマン、アイスマンはV1。ロールはV2まで。ナイトマンはSPまでコンプリートしている為、計9枚のナビチップを器用に片手に持っている。
『選ぶのは1枚で良いのですよ……』
『あ、そうだったっけ』
予想出来ていたのか、プライド王女は呆れの声だ。これにはナイトマンも苦笑い。レイチェルは「たはは〜」と頭を掻きながらナイトマンを選び、残りはケースに戻した。
『よし。ナビチップを選んだな。その次は、アステロイドコマンドを選ぶんだ』
『うん。コレだね!』
「行きますよ。サモン・アステロイド!」
ナイトマンのチップを送信し、五芒星のマークが書かれてあるコマンドを押した。
すると、スラーの身体にナビチップから生まれるエネルギーが流れ込む。なんなら神々しい光に包まれているようにも見えた。御使いかな?
そのエネルギーを溜め込み、前方へと両手を翳して放出する。
前方に放たれたエネルギーは徐々に人型へと変化していき、それは正確にナイトマンの形となった。
召喚されたナイトマンはスラーを見てコクリと頷くと、鉄球を豪快に振り回してメットール達を殲滅した。
「ふむ。どうやら稼働に問題は無いようですね」
本来、ナビチップというものはチップの中にある再現データでしかない。
つまり一定の行動しか取れず、攻撃を終えたら立ち去るように消えていくのだ。
例えば、ガッツマンはガッツハンマーでの広範囲ショックウェーブ。
アイスマンなら広範囲のブリザード。
ロールならロールウィップで攻撃した後にリカバリー。
ナイトマンなら、天井に鉄球を当てて瓦礫を降らせるように。あくまでも決められた行動しか出来ないのが特徴だ。
そんなナビチップだが、サモン・アステロイドはナビチップの中にあるネットナビそのものを召喚出来る。
ナビチップと違い、決められたプログラムでは動かず自分で考え、役目を終えても消えることはしない。文字通り、自律型ネットナビを召喚出来るシステムだ。
ヒールナビが使用するウイルス召喚が近い位置にあるだろうか。
『もう1回行くよ!ナビチップ、アイスマン!スロットイン!』
再びアステロイドプログラムを使用し、次はアイスマンを召喚する。
アイスマンは人懐っこい笑みを浮かべた後、追加されたメットールに向かってフリーズボムを投下。カチンコチンに凍らせた後、アイスキューブを蹴って粉々にしていた。エグい。
『よし。テストは終了だ。スラー、アステロイドを戻してくれ』
「わかりました」
スラーは手を翳し、形作っている2体のアステロイドを吸収する。
『コレがアステロイドプログラムだ。上手く使えばかなりの戦力アップになる』
「ククク……コレで、全盛期の私に1歩近づきましたね」
『やったね、パパ!コレでフォルテってナビもイチコロだよ!』
『あー……喜んでいるところ悪いんだが、アステロイドプログラムは無制限に使えるわけじゃない。幾つか制限があるんだ』
「ファッ!?」
思わぬ発言に思わずスラーは大声を挙げた。
以前は無制限に召喚出来ていた。素体は必要だが、逆に言えば素体さえあれば、量産型を現実世界にけしかけたように大量展開が出来たのだから。
大声を挙げたスラーに、プライド王女ははしたないと注意し、光祐一朗は説明を続ける。
『まず1つ目。レギュラーチップをコストには出来ない』
レギュラーチップとアステロイドプログラムは全く別のデータ領域で保存されている。その為、レギュラープログラムとアステロイドプログラムが上手く噛み合わずにエラーを起こしてしまうのだ。
『2つ目。アステロイドはその戦闘に最大2体までしか同時召喚出来ない』
つまり、スラー含めて最大で3体までしかフィールドに立つことができない。
アステロイドは思ったよりも容量を食らうのだ。発電所の電脳にあるサイバー電池のようなものである。
アステロイドがデリートされたら再度召喚は可能だが、それはスラーにエネルギーが還元しているからだ。無理に召喚すると、そのアステロイドはメットールクラスの弱いナビが召喚されてしまう。
『3つ目。1度召喚したナビはその戦闘中、もう1度出すことは出来ない』
例えば、その戦闘中にナイトマンを2体出すことは出来ないということだ。
それはデリートされても同じだ。ウイルス召喚と違い、ネットナビの再召喚は不可能なのである。
「つまり、これらの制限を踏まえた上で使いこなせばいいわけですね」
全盛期とは程遠いが、アステロイド召喚が出来るようになって嬉しさを隠しきれず、スラーは思わず笑みを浮かべてしまう。
流石にアステロイドをばら撒く事はもうしないが、これがあるだけで手数がうんと違う。
撤退用の時間稼ぎにも足止めにも最適なシロモノ。コレで人手不足も解消である。
ピリリリリリ!!
「レイチェル、オート電話ですよ」
アステロイドプログラムの稼働実験を終え、プラグアウトしようとしたその時、オート電話がかかってきた。
『はいはーい。コチラレイチェルだよ〜』
『レイチェル!今大丈夫か?パパいる?』
相手は光熱斗。数多くのワールドスリーの事件を解決に導いた小学生だ。そんな熱斗が血相を変えて電話してきた。
「どうしたんですか?そんな慌てた様子で。ロックマンがデリートされましたか?」
『縁起でもないこと言わないでよ!』
そんなスラーの言葉に怒ったのはロックマンだ。
流石にデリート扱いは冗談でも言ってはいけない言葉だ。しかも悪びれること無く、「アイツならやるだろうな」みたいな自然な感じで言い放ったのだ。怒って当然だろう。
レイチェルは何とか熱斗達を宥め、本題に入るように促した。それでも、「やっぱりスラーは炎山並に嫌な奴じゃね?」という印象が熱斗達に強まった瞬間である。目指すは打倒スラーだ。
『レイチェルくん。メールで詳細を送るね』
レイチェルのPETに、ロックマンからのメールが添付された。
『えーっと……ワールドスリー……のアドレス?』
『熱斗!お前、コレどうしたんだ!?』
光祐一朗が慌てた様子で熱斗に聞いた。
オフィシャルの人海戦術でも、エースの伊集院炎山でも突き止めることが出来なかったワールドスリーのサーバー。そこのアドレスをゲットしたのだから。
聞けば、ワールドスリーが占拠しているウラインターネットの奥地にあったらしい。
ワールドスリーの本拠地に続く道もあり、そこを守っていたマジックマンというナビを倒した。そこまでは良かったが、最後の抵抗と言わんばかりにサーバーに続くリンクを破壊したのだ。
ワールドスリーの唯一の手がかりが、あと一歩の所で粉微塵に砕け散る。「しくじっちゃって」と言った熱斗の声が少し震えていたのを、レイチェル以外は見逃さなかった。
『でも、このアドレスがあれば、ワールドスリーの本拠地を割り出せるかもしれませんわね』
『そんなこと出来るの!?』
レイチェルと熱斗はその言葉に驚いた。
サーバーへのリンクは破壊され、手がかりはこのアドレスのみ。そんな状況で、本拠地を割り出すことは軽いものだと光祐一郎はさらっと言ってのけた。
『この情報は炎山くんにも教えることになるが、構わないな?』
『うん。でもパパ!結果が分かったら、俺達にワールドスリーの本拠地を教えて欲しいんだ!』
熱斗が父親に懇願するように言った。レイチェルも、口には出ていないがその目が何を言いたいのかを物語っている。
確かに、アドレスをゲットしたのは熱斗だ。実力はオフィシャルのベテラン並だろうし、レイチェルとスラーも同様だろう。
聞けば、リンクとアドレスを守っていたマジックマンはワールドスリーの最高幹部と名乗ったらしい。それを倒せたのは確かにすごいと言わざるを得ない。
『……ダメだ』
その情報を聞いても、光祐一郎はキッパリと否定の意志を示した。プライド王女も同意するように頷いている。
それでも自分の意志を強く持ち、ワールドスリーを倒す為にお願いする2人の姿を、スラーは電脳世界から見ていた。
・アステロイドプログラム
エグゼ4のロールやヒールナビが使うウイルス召喚的な奴。ゲームで考えると敵として使ってきたら鬱陶しいことこの上ない。
・レギュラーチップ
要するにソウルユニゾンと同じ感じの縛り。ちなみにレイチェルのレギュラーはロイヤルレッキングボール。コレで初手に来るから好きな時に発動できるぞ!
・アドレスゲット
おつかいを終え、奥地に行ったらマジックマンが待ち構えていた。
少し苦戦はするものの倒す事には成功するが、不敵な笑みを浮かべて自爆。サーバーのリンクを破壊した。エグゼはお使いゲー。
スラー「あの〜、スラーですけど〜。プラグアウトはまーだ時間かかりそうですかね〜?」