熱斗がワールドスリーのアドレスを見つけてから2日後。遂に光祐一朗からメールが来た。
どうやら、ワールドスリーの本拠地は、S県北部の山奥にあるようだ。 そこは道路整備も出来ていないほどの環境で、車や空での交通は不可能らしく、鉄道も無いためメトロでも不可能との事だ。かといって、徒歩だと時間がかかりすぎる。
「しかし、現にワールドスリーがこの町に来ている以上、何かしらの手段がある筈……」
リビングにて、狩人風の衣装に身を包んだプライド王女は、指を顎に当てて考え込む。
たとえ本拠地を割り出せたとしても、今度は交通面の問題がある。
徒歩で行くと仮定して、物凄く時間がかかる。その間に迎撃体勢に移行したら苦戦は必須。逃げられればまた振り出しに戻ってしまう。
しかも、相手は既に全ての究極プログラムを所有している。状況は最悪になると考えた方がいいだろう。
ザ……ザザー……
そんな時だ。テレビにノイズが走った。
視聴していたニュース番組から一転。暗い一室の真ん中に立っている老人の姿が映し出された。
『世界中の人間達よ。我らがワールドスリーのネットワーク支配計画は……最終段階を迎えた……!!』
ドクロの杖をカンカンと激しく床に叩きつけながら、目つきの悪い老人……Dr.ワイリーが宣言した。
『我がワールドスリーは、間もなくハッキング用のロケットを打ち上げる!!全ての国の人工衛星をハッキングし、ワシが生み出した最強にして究極のウイルス……ドリームウイルスを送り込む!!』
『グオオオオオーーッ!!』
究極プログラムによって生み出された最強にして究極のウイルス。その名をドリームウイルスというらしい。
その最強最悪のウイルスを、軍事国家であるシャーロ国の軍事衛星に送り込み、世界中にばらまくというのだ。
『最初のターゲットである、世界でトップクラスの軍事力を持つシャーロ国。そこの軍事衛星のハッキングが完了次第……我々が望んだ終末戦争が始まるのじゃーーっ!』
「ワールドスリー……。もう動き始めましたか」
椅子に座り、優雅に紅茶を飲みながらスラーが呟いた。
奪われた4つの究極プログラム。それによって生み出されたドリームウイルスはまさに脅威だ。スラーの居た時空のドリームウイルスとは天と地程の差があるだろう。
「レイチェル。ワールドスリーが犯行声明を出した以上、時間がありません。40秒で支度しなさい」
「ふぁーい……」
2階から降り、欠伸をしながら目を擦っているレイチェルに、スラーが急かす。
夜遅くまでネットバトルの練習をしていた弊害だろうか。いつもより起きるのが遅かった。
ネットバトルプログラムを使い、気が済むまで訓練に励んだ。時にはナイトマンをオペレートして。スラーもナイトマンも寝静まった時は、スラー型ノーマルナビで練習プログラムに登録しているネットナビとのバトルに熱中したものである。
「……あの子はほんと、しょうがないですね」
そのおかげで寝不足そのものだ。コレにはスラーも呆れている。
確かに、ワールドスリーの本拠地へと殴り込みに行くのだから、相応のオペレート能力が求められるだろう。
故に鍛える事は悪いことでは無い。寧ろいい事だ。戦いとは、準備で勝敗の大半が決まると言われているのだから。
かといって、オーバーワークは逆効果だ。睡眠不足の元であり、疲労が溜まる一方である。身体にも悪いし、集中力も激減と、兎に角デメリットしかない。
そんなレイチェルの様子にいてもたってもいられず、スラーは着付けを手伝ってやる。というか全部やった。
服を着せ、振袖を通させ、スカートを履かせ、ヘアメイクをした後にヘッドドレスを被せた。コレにはレイチェルも嬉しそうだ。幸せそうに目を細め、スラーに寄りかかっている。
「……起きなさい!」
「むぐーっ!?」
いつもなら膝枕でもしてやるところだが、今回はそうも言っていられない。
2度寝しようとしているレイチェルの両頬を引っ張って無理やり起こした。
「む〜……!!酷いよパパ〜……!!」
「貴方が寝坊助なのが悪いのです。さっさと支度しなさい。ヒグレヤに向かいますよ」
引っ張られた痛みで頬を摩るレイチェルに、スラーがさも当然のように言った。何しろ、時間が無いのだから。
あんなものが人工衛星に放たれ、増殖でもされたらそれこそインターネットは終わってしまう。ワールドスリーの支配が始まってしまう。
故に、 一刻も早くワールドスリーの本拠地へと向かわなければならない。
その為には、かつて秋原小ジャック事件の主犯格だった男の元へ。今は足を洗い、自分なりに償いをしている元ワールドスリー団員がいた。
名を日暮闇太郎。熱斗とレイチェルが事件を解決した時、熱斗の説得で悪事を二度としない事を誓い、今はチップショップを経営している男だ。
身近にいるワールドスリーの元団員。手がかり位はあるだろうとスラーは推測している。
スラーはレイチェルの目が覚めたことを確認するとPETに戻り、レイチェルはプライド王女と共にヒグレヤへ向かった。
ーーーーーーー
チップショップ、ヒグレヤ。秋原小の近くに建てられているこの店は、下校中の小学生がちょくちょく通うほど人気な店だ。
お小遣いで買えるほどのノーマルチップや、お小遣い3ヶ月分とちょっとの値段である、強くてちょっとレアなチップといった小学生でも買える物。大人の給料でも中々手が出せないほどの高レアチップ等、品揃えが豊富な店だ。
ノーマル、ちょっとレア、かなりレアとしっかりと棚を分けて販売している。しかも、細かくレア度を分けて販売しているため、チップオタクとしての習性がいい方向に働いているようだ。
「レイチェル!……と、プライドさん!?」
「熱斗くん!?」
「考える事は皆同じのようですね」
ヒグレヤの店先で熱斗にばったり会ったレイチェル達。
店長である日暮闇太郎は、ワールドスリーの元団員。秋原小ジャック事件の際、この町に訪れているのだから、本拠地に行く手がかりがあると踏んでのことだ。
特に、熱斗は日暮から聞いた手がかりを元にワールドスリーのアドレス入手に成功している。ならば、今回も。というふうに頼っている。
ほぼ同じタイミングでヒグレヤに入店した熱斗とレイチェルとプライド王女は、目の前の光景に言葉を失った。ヒグレヤのレジの周辺が、泥棒でも入ったかのように荒らされていたのだから。
「あ!熱斗くんとレイチェルちゃん!大変なんだ!大変な事が起きちゃったんだ!」
壁に貼られているナンバーマンのラグマットの前に立っていた少年が、熱斗とレイチェルの元に慌てた様子で駆け寄った。
「大変な事って……あのぐちゃぐちゃと関係があるの!?」
「そうなんだ!ヒグレヤで欲しかったチップを探してたんだけど……ちょっと前に日暮さん、怪しい大人の人達に連れ去られちゃったんだ!」
「連れ去られた……?日暮さんが!?」
「何人かで取り囲まれて、ガバーって!日暮さん、抵抗してたんだけど、そのまま何処かに連れていかれちゃったんだ!」
『それならば、この惨状にも納得ですね。あのチップオタクがチップをあんな風に扱うなど、絶対に有り得ませんから』
レジ前にある駄菓子や、レジの後ろにある予約制のレアチップ。そして、日暮闇太郎自慢のレアチップコレクションが辺りに散らばっているのが、連れ去られる際の抵抗の結果だとすれば合点が行く。
どうやら、一足遅かったようだ。ワールドスリーも、熱斗達と同じ事を考えていたのだろう。
「そういえば、日暮さん。連れていかれる時にこんなものをレジの横に落としてたんだ。なにかの手がかりになるかも!」
「ママ!ワールドスリーのメトロの定期券だって!」
どうしようかと考えている時に、少年がレイチェルに渡したもの。それは、日暮がワールドスリーにいた時に使っていたであろう、定期券だった。
つまり、デンサンシティのどこかにワールドスリー専用のメトロがあるということだろう。もしかしたら通常のメトロのように秋原町に駅があるかもしれない。
「どうやら、期限切れのようですね」
『しかし姫。これはワールドスリーの重要な手がかりです。上手く行けば、メトロを使って本拠地へ赴くことも可能でしょう』
「とにかく、コレがメトロで使えるかどうか、駅員に聞いてみようぜ!」
ワールドスリー専用とはいえ、メトロはメトロだ。ならば、専門家……駅員に聞くのがいちばん早い。
ワールドスリーの最重要の手がかりを手に入れた3人は、秋原町のメトロへと駆け足で行った。
・1でのワイリーの計画
最終章のテレビ放送で、「『次』のターゲットはM国」と言っているため、恐らく全ての人工衛星や軍事衛星が対象と思われる。
そこにドリームウイルスを送り込み、増殖させて各国のインターネットにばらまくつもりなのだろう。
ゲーム版では強さがあんまり分からないが、鷹岬版ドリームウイルスを見る限り、幾らネットポリスのベテランとナビでも一撃で倒されるほどの強さな為、性能面は最低でもロックマンやブルースクラスは必須だろう。というかあれだけの化け物が量産されたらフォルテやセレナード級の強ナビじゃないと対処無理じゃね?『究極』の名は伊達では無いということか。アニメ版?知らない子ですね……。
・スラー型ノーマルナビ
3期終盤のデューオの遺跡で熱斗達が見た過去の映像にのみ登場している。
顔はカッコイイ子供ロボみたいな感じだが、その他の要素がまんまスラーの形。デューオはこのナビを複製し、改造したのだろうか。