食レポって難しく、うまく書けているか不安です。
とりあえずどうぞ
トリコは困惑していた。
今しがた、第8ビオトープに足を踏み入れたばかりで不測の事態に陥っている。
壁の向こう側からトロルコングのドラミングによる威嚇の洗礼を受けてから逆にトロルコングに対してトリコから威嚇を仕掛けた。
ビオトープの分厚い壁を3連釘パンチでトンネルを開通させた先で珍妙な二人組に出会った。
「節乃シェフの下で働いてた時はどんな食材を調理なさってたんですか?」
「そうだなぁ……最初はストライプサーモンやらホワイトアップルとかで簡単な料理を作って……そこからレベルも上がってから特殊調理食材にも手を出してきたな」
「あのババアは恐ろしいぞ? ありゃきっと人の皮を被った山姥だ間違いねえ」
「山姥……ですか?」
「師を妖怪呼ばわりすんな……妖怪じみた実力があるのは確かだけどな。マジで死んだと思った時が何度もあったし」
「節乃シェフは怖いんですか……温厚そうな人に見えますけど……」
人の好さとオーバーアクション、そして節乃の一番弟子に対する尊敬を隠すことない素直な小松に対してゾンゲとライズと既に打ち解け合っている。
小松も当初は訝しんでいたが、持ち前のフレンドリーさから二人と話してみると、意外に人が良かったために警戒を解いて会話に興じることとなった。
特に同じ料理人であるライズとの会話は料理人としての話題を共有できる分、二人の距離が狭まる時間もそうはかからなかった。
ライズもライズで将来的に自分を追い越していくチート級コックの小松から羨望の目で見られ、褒めそやしてくるため質問された内容に対して口が軽くなっている。
この男、控えめに言ってチョーシに乗っている。
その様子を後ろから見ているトリコは依然としてライズとゾンゲのことを見定めようとしていた。
(何か企んでるわけでもねえし、虹の実を横取りしようとしているって感じでもねえ……ヨハネスたちにも確認してもらったから間違いなく例の二人で間違いないんだろうが……なんかなぁ……)
トリコが二人を懸念に思う理由……それはあまりの実力の低さにある。
美食屋として膨大な食材を見つけ、猛獣と戦ってきて培われた勘が告げている。
確かに雑談しながら周りを警戒し、足の運び方や気配の配り方からしても只者でないとは分かっている。
ただ、不思議なことがあるとしたらトリコの嗅覚が二人の実力を測りかねている原因を嗅ぎ取っていた。
(美食屋にしては血の匂いが薄いんだよなぁ。獣臭も全くと言っていい程しねえし)
料理人の方は小松と同じく高級食材……中には滅多に市場に出回らないような希少食材の匂いまで漂わせている辺り、料理人としての技量は本物だろう。
ただ、狩りの面で評価するとしたら、「よく分からない」に尽きた。
もちろん、トリコとてそれだけで実力を決めつけることはしない。
美食屋の本領は食材の発見、調達が主であり、猛獣とやり合うような「強さ」は必ずしも必要とは言えない。
強くなれない美食屋の中にはノッキングを主体にしている者もいるくらいだからトリコとしても問題はないと思っている。
ただ、一龍から認められているとはいえ、実力が一切分からない二人がこれから赴く
もし、二人がダウンした場合、小松と一緒に保護し、一人でトロルコングの群れを相手にしなければという覚悟だけはしておこうと考えていた。
そう考えながらも途中で採取したバナナきゅうりをベーコンの葉で巻いて食べる。
それを見た小松が虹の実とベーコンの葉が合うんじゃないかという意見に味を想像して食欲をそそらせながら少し高いだけの丘を降りていた時だった。
「あ、そこ、罠」
「は? うお!?」
「ゴアアアアアアアアァァァァ!!」
トリコを以てして気づかなかった落とし穴にライズが避けるよう注意するも、時遅くトリコは落とし穴に落下した。
その瞬間、四本の巨大な腕で大岩を持ったゴリラ――トロルコングが飛び出してきた。
大岩を穴に落ちたトリコ目掛けて投げつけ、圧し潰そうとした時だった。
「くらええええええぇぇぇぇ!! ドリアン砲!!」
ゾンゲは掌から気体の塊を出し、トロルコング目掛けて投げつける。
投げられた気体の塊にトロルコングは一瞬だけ意識をトリコから逸らした瞬間、それは爆ぜた。
爆ぜた瞬間に広がる強烈な悪臭がトロルコングの鼻を通り、頭の中で電気ショックを食らったように響いた。
「ゴエ!? ギャイン!」
あまりの悪臭さに頭上に振りかぶっていた大岩を離し、自分の頭に落とす。
予期せぬ痛みに情けない声を出したトロルコングは地面に背中から激突すると、しばらくは悪臭に悶え苦しんだ後でその場から逃げるように姿を消していった。
「え? 一体何が……って臭っ!」
突然の出来事に思考が止まっていた小松が時間差で復活するも、すぐに漂ってきた悪臭に顔にしわを寄せてしかめる。
辺りに悪臭が漂ってきた辺りで落とし穴に嵌ったトリコが這い出てきた。
「すまねえ。おかげで助かったよ。ありがとな……くっさ!」
「もっとオレ様に感謝してもいいんだぞ! なんなら神と呼べ」
ゾンゲの上から発言よりも辺りに漂ってきた悪臭で思ったより甚大なダメージを受けるトリコ。
そろそろ辺り一面が悪臭で覆い尽くされると思われたその時だった。
「うーん。ナイス悪臭。80点」
「んだよ! そこは100、いや、200点でいいだろ!」
片手でサムズアップし、もう片方で作った巨大スプーンで空気をかき混ぜ、小規模の竜巻を引き起こす。
渦を巻いた気流に悪臭が乗り、地上に降りていた悪臭は上空に巻きあげられ、やがて霧散した。
ライズとゾンゲは互いにサムズアップしている辺り、既に慣れたものだろう。
無茶苦茶ながらも余裕でトロルコングを追い返した手腕を見せつけられたトリコは鼻を抑えながらも、さっきまで抱えていた不安が杞憂であったことを悟った。
「はは……どうやら、オレの考えすぎだったみてえだな」
トリコは己の傲慢さを恥じ、反省した。
どんなにお調子者な奴でも危険地帯に入れば一端の美食屋であり、狩人なのだ。
それを忘れ、自分が皆を護るなど、二人の覚悟を踏みにじる行為に等しい。
先ほどの失態をフォローしてもらってようやく思い出した。
この二人はあの
それからというもの、トロルコングの群れを搔い潜り、虹の実を捕獲する依頼は結果から言えば成功した。
というのも、トロルコングがトリコの威嚇にビビって近寄れなかったのだ。
トロルコングの性質上、最初に対峙した下っ端が奇襲に成功した場合、一番強いトリコにゲロを吐いていたであろう。
しかし、それを阻止されたため、下っ端の匂いが付くこともなくトリコの威嚇が最初から遺憾なく発揮された結果は大きい。
トロルコングとて食い扶持のために虹の実を奪われることは阻止したかったのだが、自身の命を天秤に乗せて考えるまでもなく戦闘を徹底的に避けた。
野生の常は奪い、奪われの繰り返しなのだ。
かといって無暗に生態系を乱すことを嫌がるトリコの計らいによって虹の実は報酬分のみ貰い、残りはトロルコングのために置いて行った。
順調すぎるくらいに早く仕事を終えたことでトリコ、トロルコング相手に荒事もなく依頼を達成して虹の実を拝めた小松もガララワニ捕獲の時以上に上機嫌だった。
「せっかく持ってきたノッキングガンも無駄になっちまったな」
「いいじゃないですか。何事もなくボクたちが無事に虹の実を持ち帰れるのであればそれで」
「張り合いがねえってのもあるが、こうして順調に仕事を終えた後の飯はまた格別だしな。この虹の実も少し食っちまおうか?」
「ダメですよ!? ガララワニもそうやって全部食べたからウーメン局長にすごく怒られたんですから! ボクだけが!」
「ま、確かにこんな所で食おうものなら猛獣共が集まっちまうしな。こうして猛獣に襲われねえのも虹の実の強力な匂いを消してるからだな」
「ありがとうございます。ゾンゲさんには感謝です」
「おうよ。もっと感謝してもいいんだぜ?」
現在、トリコとゾンゲが虹の実を抱えて持って帰っているのだが、不思議と猛獣が襲ってこない。
トロルコングに襲われると分かっても虹の実を狙う猛獣が絶えないほどに芳醇な香りを漂わせる虹の実を持って歩いても襲われない理由はゾンゲが使った技にあった。
グルメ細胞が未熟だったころは食べた物の匂いを体の中で保存し、それを体臭として吐き出す程度であった。
しかし、今では普段の呼吸から吸っている空気の匂いをも吸収し、それを辺りに漂わせることができる。
そうすることで自分はもちろん、他者や匂いの強い食材の匂いを上書きさせて背景に溶け込ませている。
グルメ細胞が進化し、精密な体臭のコントロールが可能にしたカモフラージュ用の技である。
虹の実も例に漏れず芳醇な香りを背景の自然臭で消しているため無用な襲撃に遭うことなく、さらに言えば自然の匂いによって背景に溶け込み、気配を意図的に殺せているのだ。
ここまで背景に溶け込めているなら、きっと自分の鼻でも探しだすのに時間をかけてしまうだろう……そう思ってゾンゲに対する評価を上げていた。
内心で感心していると、ゾンゲの技で思い出したようにライズが帰り道とは別の方向を指さした。
なんだ? そう思っていると彼の口から魅力的な提案を持ちかけられた。
「実はな、一仕事終えた後は腹減るだろうと思って……飯作ってたんだけど、食ってみるか?」
「マジか!? オレたちも食っていいのか!?」
「ト、トリコさん! 流石にお二人の食事の邪魔するわけには……!」
まさかの食事にトリコが沸き立つも、小松がそれは悪いと宥める。
だが、本音を言えば小松もライズの料理に興味津々だった。
噂の節乃の一番弟子が作った料理……もし本当なら十つ星レストラン並の高級料理とも言える代物だ。
小松の給料が簡単に吹っ飛ぶほどの値が付けられそうな料理を食べさせてもらえるのだ、一端の料理人として食べたくないわけがない。
そんな葛藤を打ち砕いたのは快活に笑うライズとゾンゲだった。
「ここで知り合ったのもなにかの縁、大食漢向けに作らせてもらったよ。トリコに味を見てもらうってんで気合入れてな。小松シェフがいたのは予定外だが、五つ星レストラン料理長にも味を見てもらえるなら、箔がつくってものさ」
「食ってひれ伏すがいい! オレ様の料理人の実力を思い知りやがれ!」
特にライズの言い回しは小松の逃げ道を塞ぐような言い回しとなっており、小松はその瞬間に目を輝かせた。
「ほ、本当ですか~!? それじゃあお言葉に甘えさせていただきます~!」
「ライズもああ言ってんだ。しっかりとアドバイスしてやんな。小松」
「いえいえいえいえいえいえ! 恐れ多いですって!」
ライズとゾンゲに付いて行きながら分かりやすく浮かれるが、途中でトリコは思った。
(ここで料理してるってんなら、オレの鼻で分かると思うんだがなぁ……)
鼻が鋭いと自負しているトリコがビオトープ内で調理している料理の匂いを捉えられないハズがない……
何故だと思っていると、すぐにその疑問が解けた。
「で、でかあああぁぁぁ!」
「うお!?」
小松の絶叫が辺りに木霊し、トリコが驚愕するのも無理はない。
少し開けた空間の中央に火にかけられた巨大な鍋が湯気を吹いているのだから。
しかし、鍋の近くで匂いが感じられない。
まるで自然と同化しているかのような光景にトリコは合点がいった。
「なるほど、ゾンゲの匂い消しか。匂いを操るその力……応用力もありそうだな」
「ふん! オレ様の力はこんなもんじゃねえ。まだまだオレ様には真の力が眠って「よし、いい頃合いだし、早く食おう」ってライズてめえ! オレ様に被せんな!」
ゾンゲの長くなりそうな自画自賛をぶった切り、鍋にはしごをかけて蓋を開ける。
その時、中から漏れ出した湯気がほんの少し、トリコの嗅覚を刺激したその時だった。
目の前に輝きを放つ大量の食材のイメージがトリコの脳内に直接叩きつけられた。
「!? この匂いは最初に会った時の……っ!」
ようやく、トリコの疑問が全て溶けた瞬間だった。
最初にライズに出会った瞬間、食欲をそそる様なイメージを幻視した。
それは、ライズに染み付いたビオトープ内で行っていた調理に使った食材の匂いだったのだ。
しかも、変化はそれだけじゃなかった。
「うお!?」
「トリコさん!?」
匂いを嗅いだ瞬間、トリコの口から無意識に涎があふれ出る。
同時に腹の中が一気に空になったかのように腹の音が鳴り響いた。
(に、匂いを嗅いだ瞬間に涎と腹の虫……遅れて多幸感が溢れ出やがった! さっきまで匂いすら感じてなかったから匂いの不意打ちに完全にやられた!)
頭より先に身体が反応する。
そう思わせるほどに完成度の高い料理にトリコは一気に高まった食欲に耐えながらその時を待つ。
「へへ……、これは楽しみだ」
「涎を垂らして、行儀が悪いですよ」
「お前もだろ」
同様に小松も既に香り立つ匂いに釣られて空腹になり、涎を垂らしている。
二人は既に鍋の中の料理の正体を分かっている。
食欲をそそらせるスパイスと数多の具材を煮込んだブイヨンの濃厚な香り。
一般家庭から富裕層に至るまで人気の料理
「さあ、虹の実捕獲と俺たちとの出会いを記念して皆で食おうじゃないか! 今日の献立はカレーだ!!」
「「「おおおおぉぉぉ!!」」」
トリコ、小松、ゾンゲはカレーの実食に心を躍らせる。
オレはその時を今か今かと待ち望んでいた。
手渡された皿の上に純白のご飯の芳醇な香りに今にも食べたい衝動に襲われるが、理性でそれを我慢する。
「すごい! このご飯、極楽米ですよ!?」
「あぁ、普通のご飯と違って味わい深い高級米だ。これだけでも十分旨そうだ」
「まだ食べちゃダメですよ!?」
「分かってるっての」
小松はオレを何だと思ってるんだ。
そこのとこ問い詰めてやろうかと思うが、ここでライズが鍋に立てかけた脚立の上からオレたちに叫ぶ。
「皿を出して動くなよ? そうら!」
気合と共にお玉で掬い上げていたカレーを器用にオレたちの皿のご飯目掛けて飛ばした。
寸分の狂いもなくご飯の上にカレーがかかった。
待ちに待った瞬間だ!
「う、美味そーー!」
「茶色のルーに溶けている脂がまるで金色みたいに光ってる……こんな奇麗なカレー初めて見ました~!」
「ぐはははは! 仕事後のカレーは美味そうだな!」
「お代わりは自分でしろよ。とりあえず50人分は作ったけど、初めて食わすくらいならこれくらいでいいだろ」
すぐ近くに福神漬けとらっきょの入った別容器も添えられ、ライズもオレ達と同じように胡坐をかいてカレーライスに向けて手を合わせる。
「それじゃあ、今日の出会いと虹の実捕獲成功を祝って、いただきます!」
「「「いただきます!」」」
不要な言葉を省き、全員が一斉にカレーをスプーンですくって口に入れる。
その瞬間、芳醇かつ濃厚な香りの爆弾が弾けた様にカレーの香りが鼻を突き抜けた。
依頼で疲れた体をスパイスが元気づけているみたいに疲れが取れていく。
スパイスの辛みと苦味、塩味が極楽米の甘味と喧嘩せず、複雑で丁寧、濃厚な旨味となっている。
具として入っているジャガイモとニンジンなどの野菜にカレーの味が染み込んでいるが、野菜本来の甘味や風味を残している。
ホロホロと解ける野菜たちの旨味を堪能し、巨大な肉の塊を食べると、肉の脂がスッと解けた。
霜降り肉のような柔らかさと豚肉の脂のような甘味がカレーとよく馴染んで、食欲を駆り立てる。
溶けて腹の中に流れ込むように肉を飲み込んだ時、あることに気付いた。
「この肉、ガララワニか!?」
「さっすが。一応それはゾンゲのフルコースの一品だから使わせてもらった。子供ワニの肉の柔らかさは絶品だろう?」
「オレ様は通だからな。選りすぐりの逸品だ!」
「と言ってるけど、ホントはこいつ、大人ワニを狩れなかったから子供を狙っただけなんだぜ」
「余計なこと言ってんじゃねえよ!」
ライズとゾンゲの漫才も交えた楽しい時間を絶品カレーを食べながら堪能する。
「この福神漬け、バナナきゅうりでできてるんですね」
「このらっきょうの甘酢漬けも絶品だ、ウズラッキョウがいい味出してる」
特別に高級な食材ではなく、一般でも売買されているような平凡な食材の旨味を最大限に引き出しつつ、カレーの味に慣れた舌をリセットする脇役に徹する漬物も美味い!
用意されたキンキンに冷えた水でのどを潤すとカレーの味がリセットされ、再びカレーに没頭できる。
いつまで食べても飽きないその味にオレは無意識にその気持ちを言葉にした。
「うまっ」
今日と言う日に、ライズとゾンゲとの出会いに感謝した万感の思いのこもった一言が漏れてしまった。
それに小松が反応した。
「美味しいです~! いくらでも食べられてしまいそうですよ!」
「これでもダマラスカレーの味を盗みつつ、自己流にアレンジしたものなんだけど、小松シェフからの評価で報われた気がするよ」
「いえいえいえいえいえいえ! ボクなんかが評価なんて恐れ多いですよ!……でも、このスパイス、もしかして、スパイシーから取ったんですか?」
「お!? それに気づくとは流石。まさかこうすぐに気づかれるなんて」
「ほ、本当に使ったんですか!? ウチのレストランでも入荷されるか分からない、超高級食材じゃないですか!?」
「スパイシー……大量のスパイスと塩が水に溶けてできた海か! 高級調味料じゃねえか!?」
「美食屋を雇う余裕ないから現地調達でな」
簡単に言うが、並大抵な腕で採取できる調味料じゃねえ。
スパイシーの海水を煮込み、水分を飛ばすことでスパイスと塩を確保できるが、その後が問題だ。
スパイスが空気に触れてから数分以内にスパイスと塩を一粒単位で仕分けしないと匂いが変化して雑味を多く含んでしまう。
そうなったスパイスはお世辞にも食えたものじゃない。
しかも、採取したスパイスには更にコリアンダー、バニラ、ガラムマサラ、シナモンと言ったように数多の種類のスパイスが混ざり合っている。
採取したスパイスも種類別に1粒単位で仕分けしないと、互いの匂いが混ざり合い、変な匂いになってしまう。
1粒ずつ完全に仕分けして初めて本領を発揮するスパイスをここまで惜しむことなく豪快に使うとは……料理人としてのスキルの高さにようやくオレは理解した。
ライズは間違いなく、セツ婆の弟子だと。
「セツ婆の弟子ならこれくらいお手の物ってか。すげえな」
「サイン頼めばくれますかね?」
「見る目あるじゃねえか小僧。なんならセットでオレ様のサインも付けてやる。どうだ嬉しいだろ?」
「あはは……あ、ありがとうございます……」
「全力の愛想笑いありがとう。それなら小松シェフのサインもくれよ。将来、大物になる気がする」
「いやいやいや、ボクなんてそんな大したものじゃないですよ!? サインなんてそんな……」
「はは、期待されてるじゃねえか小松! こりゃ負けてらんねえぞ?」
「煽らないでくださいよトリコさん!」
「オレ様の料理人が世界一なんだよ! お前には負けねえからな!」
「ゾンゲさんも乗らないで!?」
みんなで囲んで飯を楽しく食べる。
それによってできた縁に感謝しながら、用意してくれたカレーを平らげる。
やがて、カレーもご飯も漬物も、全てが空になるまで宴会は続いた。
何度もお代わりして食べても最後までオレの腹と心を満たしてくれた料理とライズとゾンゲという縁に感謝を込めて
「ごちそうさまでした」
手を合わせて締めくくり、虹の実捕獲の一件は幕を下ろした。
ウズラッキヨウ……アニオリ食材。ウズラの卵でできたラッキョウらしい
スパイシー……作者オリジナル食材。スパイスと海のシーをかけたもの