もう食運なんてコリゴリだあぁぁぁぁ!   作:おむれっつごー

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フグ鯨 前編

 〇月〇日

 

 虹の実捕獲依頼を通じてトリコたちと友好関係を結ぶ計画は大成功だった。

 あの後、トリコから友好の証なのか今後の狩りでいい食材が手に入ったら可能な限り融通してくれることになった。

 そうでなくても今後、狩りで手を借りたいときにも連絡してくれることを約束してくれた。

 

 つまり、今回の目玉であるトリコたちと友好関係を作り、最終回まで生き残るための足掛かりとする目的は成功となった。

 やったぜ。

 

 さらに言えば、個人的に小松さんと連絡先を交換し、互いに連絡し合える仲になれたのは素直に嬉しかった。

 

 きっかけはトリコ本編であった虹の実の実食なのだが、まさか俺とゾンゲが呼ばれるとは思っていなかった。

 トリコも賛同してたらしく、虹の実捕獲の功績は俺たちの功績が大きいらしい。

 楽させてもらった礼ということでお呼ばれしたのだ。

 

 小松さんからはカレーのお礼ということでその日は来賓として扱われた。

 こういう風に食べる側に徹するのも久しぶりで、とても楽しかった。

 蟹ブタのローストに羽衣レタスを巻いたものは美味かった。

 原作で食べたいと思っていた食事だったから念願叶って感無量だった。

 

 自分で作ったのと原作のままで出されたのを食べるのでは感動が違うのだ。

 

 そんな感動もそっちのけでゾンゲとトリコはバクバク食っていたのを見ると高級レストランじゃなくて食べ放題バイキングに迷い込んだ錯覚に陥るのだから不思議だ。

 やっぱり料理人と美食屋では食事の楽しみ方が違うのだと感じた。

 

 そして肝心の虹の実だが、簡潔に言ってとてもおいしかった。

 

 まるでプリンみたいな見た目で油断したが、流石と言うべきものだった。

 トリコの言う通り、七色に変わる味はそこらの食材とは一線を画すものだった。

 甘味、酸味、風味全ての七変化に感動し、トリコがフルコースに入れるのも無理はないと思った。

 

 レストラン従業員含めて全員で乾杯した場面に居合わせることができたのはいい思い出だ。

 その後調子に乗って虹の実をバクバク食ったゾンゲが高い糖度と栄養価に鼻血出して体調崩した時に俺たちはお開きとした。

 

 そういうこともあり、小松さんと仲良くなれたことで、暇さえあれば飲みに行き、料理談議に花を咲かせることもある。

 料理人としても有意義な結果に結びついた虹の実編は一生忘れられない思い出となるだろう。

 

 今回の結果を、今後の原作を生きていくために無駄にしてはならない。

 

 俺がいなくてもトリコたちは成長するが、原作がどう変わっていくか分からない。

 

 変に俺が介入するとトリコたちの成長を妨げる結果にもなりかねないかもしれない。

 かといって原作通りを遵守しすぎると流れがおかしくなりそうでもある。

 この世界はもはやフィクションじゃない、現実なのだ。

 

 胡坐かいてると取り返しにつかないことになるのは、ここで生きてきた経験論から分かっている。

 とりあえず、しばらくはトリコたちへのアドバイスやサポートに徹しつつ、この世の食材を堪能していこう。

 これでも経験や技術に関してはトリコよりも先に行っている自覚はある。

 

 食材もそうだが、重要人物に引き合わせた食運の成せる業はこうも強大なのか。

 

 近況報告もここまで。

 次の食材は、これも楽しみにしていたフグ鯨だ!

 

 これも俺にとっては特別な食材となるものだ。

 フグ鯨……10年に1度の産卵の際に捕獲できる食材だ。

 

 そのため、俺が実際に目にしたのは10年前の次郎の荷物持ちのときに行ったっきりである。

 当時は料理人としての腕も、洞窟の砂浜に潜るだけの実力もなかった。

 結局、次郎に洞窟の攻略やフグ鯨の捕獲、毒抜きも全て任せた。

 

 フグ鯨の毒袋を破裂しないようノッキングって何言ってんだこのジジイって言ったゾンゲの言葉にはこの時だけ深くうなずいて同意した。

 

 つまり、何が言いたいかと言うと、今回のフグ鯨の捕獲と調理は俺の修行の成果を問われているといっても過言じゃねえ。

 ゾンゲは既にニュースが出回ってから行く気満々のため、止める理由はない。

 

 何もできずに見てるだけだったあのころとは違うってことを見せてやる。

 

 

 

 〇月〇日

 

 そんな訳でやってきたフグ鯨捕獲の日。

 ゾンゲと一緒に洞窟の砂浜に向かう列車の中で英気を養っている。

 

 狩りの前には必ずと言っていい程ゾンゲには飯を食わせる。

 

 料理人として美食屋のコンディションを整えることも目的なのだが、ゾンゲに至っては事情が違う。

 こいつは体内に直近で食べた食材の匂いを蓄え、それを体外へ放出することができる。

 そのため、こういう準備期間中には色んな物を食べさせて置きたい。

 

 たかが臭い、と侮ることなかれ。

 

 悪臭は生物にストレスを与え、戦意を失わせる点で有効な手だといえる。

 人間はともかく、野生の本能が強い猛獣に対しては悪臭によって食欲を失わせ、エサではない有害物質だと錯覚させることができる。

 

 この世界は食欲に支配されている傾向があるため、自分たちへの興味……食欲を失わせることが最大の危機回避となるのだ。

 ただ、猛獣は避けられても災害や自然現象など物理的な危険に関しては俺の役目となっている。

 

 こうして見ると、やっぱり俺たちバランス悪いな。

 いくら食運があるからって危険な目に遭わない訳じゃないため、どうしても戦闘要員も一人くらいは連れて行きたいと思ってしまう。

 

 基本的には自分たちで何とかしようと心掛けているが、どうしても手が欲しい時は助けてもらおう。

 幸いにも今回はトリコとココも一緒に来ていることは原作から分かっている。

 

 トリコとは友好関係を築けているし、ココとも友好を結んでいこう。

 

 最終的には四天王全員と関係を結びたいが、サニーとゼブラのような癖の強い二人とどうやって付き合っていけるか不安になってくる。

 

 あの濃い面子の中でヒロインやってきた小松の魅力チートは流石の一言だ。

 

 話を戻そう。

 今現在、列車の中で英気を養っていた所だが、そこで予定調和と言うべき出会いがあった。

 

 ノッキングマスター次郎(師匠)とゾンゲがばったり出会ってしまった。

 だから静かに待ってろと言ったのに……

 

 師匠に見つかったゾンゲが全身ガチガチになって固まってしまった。

 それも仕方ない。

 

 師匠からノッキングに関する知識を叩きこまれた(物理)俺たちは一生死ねるだけのノッキングを受けてきたのだから。

 しかも、俺たちに食運があると分かるや否や、酔った勢いで本気で命()りにきた(本人曰く、手加減した)こともあったから対面するとメチャ怖い。

 普段が好々爺な分、興が乗って暴獣の時のテンションになりかけた時は全力の土下座と命乞いで難を逃れたこともあった。

 

 あぁ、次郎の暴獣モードを引き出すとはゾンゲも成長したな。

 原作のお前と違って、今のお前が一番強い、お前がナンバーワンだ。

 

 だから目線でこっちに助けを求めるな。

 師匠にバレ……ヤバいこっちに気付いて目いっぱい深呼吸始めた早く逃げ――

 

 (ここで日記は一時途切れる)

 

 

 

 

 小松はピンチに陥っていた。

 

 今回のトリコの旅でフグ鯨を求め、それを捌ける美食屋である美食四天王のココと合流して洞窟の砂浜へ入った。

 巨大ヤスデやサソリゴキブリを退けた。

 

 ココの衝撃的な体質や過去の一端を聞き、それでもココを元気づけるような優しさをもって接する内にココとも信頼関係を築いていった。

 小松自身、ライズさんとゾンゲさんがいてくれたらもっと楽しくなるのに、とさえ思っていた。

 

 トリコとココという強力な味方に囲まれ、困難を突破していくうちに忘れていたのだ。

 

 

 この洞窟を抜ける確率が0.1%だということの意味を

 

 

 「ぎゃあああぁぁぁ!」

 

 現在、小松の状況は絶望的だと言えた。

 

 トリコとココが伝説の魔獣と称されるデビル大蛇と接触した際、見知らぬ髭面の美食屋に攫われた。

 男はデビル大蛇をトリコとココに押し付け、残りの猛獣を小松を生贄にしてやり過ごす算段でいた。

 

 だが、男にとっての誤算は洞窟に潜むデビル大蛇が一匹だけではなかったということだ。

 男はなりふり構わずに小松を放り投げてデビル大蛇のそばを通り抜けようとしたが、あえなく失敗してデビル大蛇の腹の中へ消えていった。

 

 取り残された小松の脅威はデビル大蛇だけでなく、他の猛獣たちからも狙われていた。

 周りを囲まれた小松に残された道はただ一つ、列車内でトリコに渡されたクラッカーだった。

 

 トリコたちとはぐれた時ように渡された大音響爆弾を一心不乱にバッグから取り出して引っ張っても起動しない。

 

 まるで金属でできているかのような見た目と強力な力が必要となるクラッカーにはただならぬ脅威を感じる。

 残された唯一の武器を必死に引っ張ってもクラッカーが鳴る気配がない。

 

 そうしている間に猛獣は小松との距離を詰め、完全にエサだと断定された瞬間に襲い掛かる。

 小松ももうダメかと必死にクラッカーのひもを引っ張っていた時。

 

 静かに声が聞こえた。

 

 「スプーンハンマー!」

 「ゾンゲスマッシュ!」

 

 巨大なスプーンが小松を囲んでいた猛獣を薙ぎ払い、巨大な斧がデビル大蛇の頭に直撃する。

 猛獣は吹き飛ばされ、デビル大蛇は血走った目で斧が飛んできた先を見据える。

 

 その視線の方向に小松も目を向け、涙を流す。

 

 聞き覚えのある頼もしい声に小松の絶望は希望へと変わった。

 

「ライズさーん! ゾンゲさーん!」

 

 崖の上に立つ二人の姿に小松は歓喜のままに叫ぶ。

 

 「小松さん、無事か!?」

 「小僧! まだ生きてるよな!?」

 「生きてます! ボクはどうしたらいいでしょうか!?」

 

 よかった、これで助かった。

 トロルコングも難なく退けた心強い二人の問いかけに答えながら、自分は何をすればいいかと問いかける。

 

 そんな問いに二人は息を合わせ、洞窟中に響く力強い声で返した。

 

 

 

 「俺はさっきのスプーンで猛獣相手に戦闘を行ったからもう体力がほとんど残ってない! 今も足が震えて生まれたての小鹿みたいになってる!」

 「オレはさっきの攻撃が現状出せる最大威力だ! さっきのでデビル大蛇を倒せなかったのが致命的だ! もう打つ手がねえ!」

 「……えっと?」

 

 小松は本気で困惑する。

 さっきから二人が弱音を吐いているように聞こえる。

 力強く、頼もしそうに言ってることが、話の内容と合っていないため、小松の頭がバグりかける。

 そして、ひしひしと湧いてくる嫌な予感が現実になる瞬間を迎えた。

 

 「あの、つまりどういう……?」

 「つまり、何が言いたいかと言うと」

 

 

 

 

 

 「「助けてくださいお願いします」」

 「嘘ですよね!?」

 

 小松、最大のピンチを迎える。

 

 助けに来たのは、戦闘行為をしてアレルギー発症した料理人と最大技が効かなくて打つ手を失った美食屋のみ。

役立たず二人と合流した小松たちは怒れるデビル大蛇を相手に生き残れるだろうか。

 

 心の中で小松は密かに辞世の句を詠み上げた。

 




次郎……久々の弟子たちとの再会にテンション上がって飲みに誘う。飲み明かした後に酔いつぶれた弟子に気を遣って一人でフグ鯨の捕獲に行った。今回のイレギュラーを引き起こした全ての元凶

ライズ……次郎に捕まってしこたま飲まされた後にトリコたちの後を追うように洞窟へ侵入。小松の死亡イベント間近と言うこともあって慌てて猛獣相手にスプーンで薙ぎ払ったが、攻撃したとグルメ細胞に判定されてアレルギー発動し、体力7割減。割と本気で焦っている。

ゾンゲ……次郎に捕まった弟子二人目。過去に次郎の攻撃をグルメラック(無自覚)で回避してから次郎からの評価爆上がりし、実力上位人の遊び相手にされつつある。
デビル大蛇に渾身の物理技を仕掛けたが、ダメージ無しで焦り中。こうなったら相棒の指揮に任せる他ない。
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