ジュエルミートがすごく美味くて細胞が進化したライズです。
いやー、光った光った。
光り終えるまで自分の家に帰れなくなったためにIGOの宿泊施設に泊まってしまった。
だが、サニーと交流を持ち、美食會から守り切ったジュエルミートを末端価格よりも安く仕入れることができたので、衝動買いしてしまった。
一部はデイビーのご飯となり、残りは色々と料理の研究用に使わせてもらう。
味見役はもちろんゾンゲである。
基本的になんでもうまく食べるため、反応を見ながらよさそうな調理法を探っている感じだ。
デイビーも味見役に加えながらジュエルミートの調理法を模索する日々が続いた。
毎日が順調……と聞かれればそうでもない。
最近では困ったことが起きた。
最近は新技を開発しようとして色々と試してたら、偶に出るようになったんだよね。
グルメ〇パイザーが
ふざけんなよマジで。
奴をこの目で見てしまって以来、記憶がよみがえって強烈に記憶に残るようになったのだから。
ていうか、夢にすら出てきつつある。
それに、前回のスター戦で地味に役に立ってしまったからイメージしやすくなってしまった。
ちなみに、技としては拳状態で相手を握り、その中で粉々にした物を吹き付けるという仕様である。
ちょっとしたマスターハンドみたいなことができそうなため、地味に使えるから余計に腹立たしい。
行く行くはアカシアみたいなイメージで修正できたらなと思って矯正中である。
せめて最終回までには。
そんな中、俺は料理以外で個人的な依頼も同時にこなしているため、四六時中料理に集中しているわけではない。
俺はその能力上、できることが多すぎるため、多方面からの依頼を受けている。
基本的に食材はゾンゲと取りに行くのだが、金は料理以外の分野で稼いでいる。
料理人が何してるんだと言われるかもしれないが、こうでもしないと店の経営をさせられそうなのだ。
前世も含めて接客が面倒ということと、比較的好きなことができる現状が気に入っている。
周りから頼られている現状だからこそ節ばあからの追及も避けられているので、依頼を断るという選択肢はない。
そして、近く、食欲不振のテリーの飯を作るというトリコの依頼の後に、また別の依頼をこなすことになっているため、その準備を進めるのだった。
今日は昔から偶に訪れている懐かしの場所にやって来た。
ネルグ街である。
ある意味俺たちの原点であるネルグ街との関わりは長く続いており、もはや住民にすら顔が広く知れ渡っているほどだ。
それほどまでに通い詰めているのは、主にここを統治しているリュウさんによって。
普段はゾンゲも一緒なのだが、なぜか奴は珍しくトリコに呼ばれて食材の捕獲に行ったらしい。
もう原作よりも仲いいなあいつら。
「よう、待ってたぜ」
「「「遠路はるばる、ご苦労様です! ライズさん!」」」
考え事をしていると、いつの間にか俺の前にまで出迎えてくれたのは成長して原作と同じ面構えのマッチと、その舎弟である組員たちが頭を下げてくる。
それに対してはもう慣れたことなので手を挙げて応じる。
「いつも悪いな。オレたちがそっちに行ければいいんだが、子供たちがまだ小さいから長距離はちときつくてよ」
「分かってる。そういうのも含めて依頼に入ってるからな……今、この街に必要なのは未来への投資だからな」
「そう言ってもらえると助かる。積もる話もあるだろうが、子供たちがお前に会いたくてウズウズしてる。荷物は預かるから早く顔を見せてやってくれ」
「じゃあこれ頼む。デリケートな食材だから扱いには注意してくれ」
「相変わらずだな。今日はどんな食材持ってきやがった?」
「昼食のお楽しみだ」
そう言って巨大なリュックを預け、俺はとある場所へ向かった。
目的地の開けた広場には既に何人かの子供たちが集まっていた。
屋根もない屋外で6~18の小学生から高校生になっているはずの子供たちが簡易的な黒板の前でパイプ椅子と長テーブルに座って待っている。
そして、これももう慣れたことなので臆することなく子供たちの前に出てくる。
俺の姿を見て騒めく皆をなだめ、黒板の前に立つ。
「起立、礼、おはようございます!」
「「「おはようございます!」」」
「じゃあ今日もちゃっちゃと授業なんか終わらせて飯食うぞおおぉ!」
「「「いえええええぇぇぇ!」」」
「いや、ちゃんと授業してくださいよ。ライズ先生……」
生徒の一人の突っ込みから分かるだろうが、今日の俺はただの料理人じゃない。
料理人兼、教師なのだ。
そもそもの話、なんでこうなったかは話せば長くなる。
簡単に言えば、知識豊富な俺の能力を見込んで子供たちに勉強を教えてやってほしいとのことだ。
前々から初心を忘れないために炊き出し等で訪れていたが、何を思ったかリュウさんが追加報酬を払う代わりに、子供たちに勉強を教えてやってほしいとのことだった。
曰く、これからの世の中、腕っぷしだけで生きていくには限界があるため、彼らには勉強が必要とのことだった。
言いたいことは分かるが、教師をやったこともなかったことと、その時は次郎さんや節ばあの修業も行っていたので判断に悩み、師匠たちに相談した。
その結果、やった方がいいとのことだった。
というのも、俺のグルメ細胞は高い思考力を持ち、物事を理解する学習能力が強みである。
そして、本体である俺が教師役を通じて子供たちに勉強を教えることで理解力や学習能力を上げることで、グルメ細胞にも反映されるとのことだった。
グルメ細胞の成長のために行ったボランティアも気づけば3年目である。
「それじゃ、今日は国語勉強するから渡した教科書開けー」
「先生ー! 国語なんてやっても役に立たないと思いまーす!」
「国語は人の気持ちを理解しようとするコミュニケーション能力の発達や物事を論理的に考える思考能力、他人や自分の理解といった感性や情緒の基盤になる崇高な授業だ。というわけで口答えした奴、今日の飯抜きな」
「処罰がひどすぎるよ!?」
こんな感じで軽口叩き合うくらいはいい関係を結べている。
会った当初は、俺と子供たちも互いに気まずい雰囲気の中で最低限のコミュニケーションだけで済ませてたのもいい思い出だ。
そこからは地道に飯作って食わせたり、街を襲ってきた猛獣をマッチ達と仕留めた後に市中見世物の刑にした後で、その猛獣の解体&調理ショーをしたりと色々やって来た。
その甲斐あって今ではお互いに遠慮のない間柄となっている。
だが、この授業のメインは勉強ではなく、給食の方だ。
基本的にこいつらは給食が楽しみで勉強を頑張っている。
いつか言った「いい点とったら美味いもの食わせてやる」と飯で釣ったのが今では教育方針として根付いている。
平均点が高ければ高いほどいいもの食わせてやると言っているため、生徒たちのやる気がすごい。
昼までは普通に国語、算数、社会や理科など一般教養を教えている内にいつの間にか昼になっている。
「ねーねー先生! すごい食材を持ってきたって聞いたけどほんとー!?」
そして、生徒たちの情報網は馬鹿にできない。
昼の給食の時間になったと同時に俺の周りに生徒が集まる。
「まあな、今日のは自分で言うのもあれだが、すんごいもの持ってきたぞ!」
まだかと楽しみにする子供たちの期待に応えるように周りからグルメヤクザが出てきた。
子供たちの青空学校を護るために配置されていたヤクザたちと共にマッチも多くの舎弟を連れてやってきた。
「よう、真面目に勉強してたかお前ら」
「ちゃんとやった!」
「算数できた!」
「国語もやった!」
「先生が早弁してた!」
「そうか、頑張ったなお前ら。ライズは後で話があるから逃げんじゃねえぞ」
誰かが俺の早弁をチクりやがった。
マッチは子供にやさし気な笑みを浮かべながら、器用に俺を逃がさないという気迫をぶつけてくる。
ちくせう。
流石に教壇で早弁はやりすぎたか、そう反省する傍らで子供たちの人気をかっさらったマッチは舎弟に目配せをする。
舎弟たちは頷き、巨大な鍋を数十人運んできた。
一気に数百人分の食事が作れそうなほど巨大で重厚な鍋から漂ってくる香りに全員が喉が鳴るのを感じた。
香りは上々……問題は味だ。
香りに釣られてか、ネルグの住民全てがいつの間にか集まっていた。
いつもの光景のため、気にせず続ける。
「今日はすごいぞ~! ジュエルミートを三日三晩煮込んで作ったビーフシチュー、じゃなくてジュエルシチューだ!」
「「「「うおおおおおぉぉぉ!」」」」
今回はジュエルミートの派生品であるシチューである。
味見がてらにお玉で皿に盛った瞬間、赤いシチューの輝きが子供やヤクザたちの顔を照らした。
あまりに幻想的な光景に目を見開くも、シチューから発せられる光に直視できない。
その場の全員が幻想的な見た目と空腹な彼らにとって殺人的な食欲を誘う香りは抗い難い誘惑であろう。
早めに味見を済まそうとして一舐めする。
瞬間、幾日も煮込んで味がしみ込んだジュエルミートの旨味はもちろん、ブイヨンに使った野菜とルビーワインとネオトマトの旨味とゴールドニンジンなどの野菜もゴロゴロとした具としてよく味がしみ込んでいる。
シチューのソースとよく溶け合ったジュエルミートの肉汁が俺の体の中で赤く光り輝く。
そして、付け合わせで持ってきたパンに少量のバターを付けて食べる。
シチューよりは味が劣るが、いい感じにシチューの後味を消してくれて舌休めとして最適だ。
これなら味に飽きることなくいつでも食べられそうだ。
うん、文句なしに美味い!
「味は問題なし……それじゃあ皆、皿によそって席に着け。マッチ達も配膳頼む」
「分かってる。お前ら、手分けして料理を皆に配ってやれ」
「「「おう!」」」
マッチの号令と共に強面のヤクザたちが一斉に動いて巨大な鍋にはしごをかけ、お玉ですくって皿によそったシチューをバケツリレーのように運んで住民たちに配った。
食べるのは席に着いてから、というルールを守りながら今か今かと急いで席に着いた子供やその他住人から食べていく。
「うめえ!」
「こんなおいしい物を食べられるなんて……」
「すごーい! きれー!」
「体が光った~!」
食っていった順から至る所で驚嘆の声が響いてくる。
その中で不満の声が聞こえないことに胸の中で息を吐く。
大部分の住民に料理が行き届いたところで配膳を手伝ってくれていたマッチとグルメヤクザに皿を渡していく。
「とりあえず、お疲れさん。これ食って精つけとけ」
「「「ありがとうございます!! ライズの兄貴!」」」
「俺がいつ兄貴になったよ!?」
「いいじゃねえか。呼ばせるくらい」
マッチはくっくと俺の隣に腰かけて笑いながらシチューを頬張ると、目を見開いた。
「すげえ……シチューの中に溶けているトロトロ肉と具の中にゴロっと転がりながらもスプーンの腹だけで崩れるホロホロのブロック肉が口の中で解けやがる……これが最高級のジュエルミートか」
「伊達に苦労して手に入れたわけじゃねえ。最上位の肉をシチューに落とし込むのはかなり骨が折れたがな」
「たしかにな。ジュエルミートの存在感は確かにすげえが、具となる甘みの強い野菜や香り豊かなシチュー……そして、あえて味をリセットさせるような甘みの強いパンだけでいくらでも食えそうだ。冗談抜きにうめえ」
「ふっふっふ。これはトリコとサニー、そして一流レストランのシェフのお墨付きだ。美味くて当然」
「トリコとサニー……美食四天王か……」
トリコたちの名前を出した瞬間に顔中に付けられた傷を撫でる。
ここのマッチは結局、ゼブラと戦って原作のように一瞬で夥しいほどの傷を付けられたらしい。
どうしてそうなったかという経緯も明かされなかったため、俺には止めようがなかった。
気が付いたらすでにそうなっていたのだから。
「あ~、会ってみたけど、癖の強いってだけでゼブラほど滅茶苦茶じゃなかったし。トリコも優しかったから大丈夫だ」
「そうかよ。同じ四天王でもだいぶ違うようだな」
あまり引きずってないようで、特に変な雰囲気になることもなく話は終わった。
昼食の後、残りの授業を消化した俺はいつもグルメヤクザの事務所……来賓用のいわばVIPルームに泊まるようにしている。
ネルグでの仕事は基本的に夕方に終わるため、そこから帰るとなると日が変わってしまうからだ。
流石に仕事だけやらせてさようならでは筋が通らないとリュウさんとマッチ、その他組員からの提案によりいい場所で過ごさせてもらっている。
そんな一流ホテルと見間違うような部屋のテーブルで俺はマッチと一対一で酒を煽っていた。
「くはー! 体が熱くなるみてえに強いな。ガラナウナギの焼酎漬けだったか?」
「あぁ、IGOのマンサム所長から物々交換でフグ鯨の乾燥毒袋をクリアルコールで漬けて作ったフグ鯨の毒酒と、ヒレ酒をな」
「……お前、暗殺とかしようとしてねえよな?」
「おめー誤解すんなよ? 数あるアルコールの中で殺菌、消毒作用の強いクリアルコールによってフグ鯨の毒もちゃんと解毒してるから大丈夫なんだよ。毒料理のタイランもフグ鯨の毒袋使ってるからな……たしかに余計なことしてくれたなこの野郎とは思ったけど*1」
「心当たりあんのかよ……」
「ちなみに、フグ鯨のヒレ酒と毒酒の両方あるけど、毒酒いる?」
「いらねーよ!」
「チャレンジ精神ねえな。ちゃんとゾンゲは飲んでくれたぞ*2」
「そうか、あいつも苦労してるんだな……」
元々、リュウさんに晩酌用で持ってきたのだが、肝心の本人が都合悪く急用でネルグ街から離れてしまっている。
そのため、持ってきた酒もお預けかと思ったが、気を使ってくれたリュウさんは前もってマッチと晩酌させてくれるよう取り計らっていた。
リュウさんの分も残すという条件で偶にマッチ、普段ならゾンゲも交えて酒を飲みながら談笑するのがここでの恒例となっている。
マッチが微妙な顔で見てくるフグ鯨の毒酒をお猪口に注ぎ、それを一口で飲み干す。
喉奥からびりびりと電気が走ったような衝撃が走る。
いくら、クリアルコールや香草、薬膳で解毒したとしてもフグ鯨の強力な毒は完全には消えない。
原作のポイズンポテトみたいに毒を限りなく薄めてから食べてる感じかな。
「ぶっへ~! フグ鯨の旨味と同時にピリピリと痺れる感じがいいアクセントになって、癖になりそうだ! つまみで作ってきたチーズ白菜のキムチとフグ鯨の内臓の塩辛と合うなこれ」
「ヒレ酒の甘みと内臓のクセとしょっぱさが合ってて美味いな」
「濃厚なチーズとさっぱりしたキムチの辛みも癖になるな。これはアタリだ」
いつの間にかヒレ酒を煽っていたマッチはフグ鯨の内臓の塩辛、俺はチーズ白菜のキムチを食べて酒を堪能する。
そして、美味すぎるがゆえに、手は止まらなくなり、気付いた時にはもう遅かった。
「あれ? リュウさんの分は?」
「あ」
酒もツマミも後日、追加で送ることを約束し、その日の夜はお開きとなった。
次回はBBコーンをサクッと終わらせます。