実は帯状疱疹にかかり、ずっと療養していました。
最近は仕事が忙しかったのと気温の上昇下降に体力を奪われたことによって発症したのでは、と思っています。
まだかからない年だと思っていたけど、最近は20から30代の人もかかるとのことなので、皆さんもご用心しましょう!
皮膚が赤くなったと思ったらすぐにでも皮膚科へ!
処置が早ければ早いほど地獄の苦しみは最小限にまで抑えられるので、皆さんも体調には気を付けてください!
今年も残り少ないですが、頑張りたいと思います!
今回はこの作中一番の主人公にとっての鬱回になります。
閲覧注意です。
ライズたちがヘビーロッジに到着する前の時間にさかのぼる。
ライズと同じくトリコたちもグルメタウンで時間を潰し、本来の目的である節乃の裏メニューであるセンチュリースープを食べに来た。
小松も連れだって数年待ちの予約の末に味わった極上の味に感動した。
しかし、小松がセンチュリースープの味に何かを感じたのだろう、疑問を口にすると節乃はスープに足りない何かを感じた小松と複雑な風味から具材を当てたトリコに可能性を見出した。
そのため、現段階で節乃と関係者である”二人”しか入れない節乃の厨房に二人を入れ、センチュリースープを見せた。
自然界に沸く極上のスープの味を再現するのに必要な何かを、もしかしたら作り上げるかもしれないと感じた節乃はセンチュリースープ捕獲のために美食屋を募っている資産家の誘いに乗り、スープを捕獲しろと二人に託した。
実際のスープを飲むべく教えられた場所へ向かおうとする二人に節乃は最後に言いたいことがあると言って呼び止める。
「実はの……小松くんのことはライズから話を聞いとって知ってたんじゃ」
「え!? そうだったんですか!?」
「最初はそんな様子なかったけどな?」
「うっふっふ、あの手のかかる弟子があそこまで一人の料理人に入れ込んでるのは初めてでのう……気になって試させてもらったんじゃ。すまんかったの」
「いえいえいえいえいえいえ! そんな、ボクは気にしてませんので頭をお上げください!」
まさか、美食人間国宝に一料理人である自分のことを覚えてもらっていたことも驚きだが、それ以上に頭を下げられることの方が小松にとって大事だった。
料理界の神ともいえる人物に頭を下げられるなど恐れ多いなどというレベルではない。
必死に頭を上げてもらおうと必死な小松に対してトリコは快活に笑っていた。
「それで、節ばあ的にはどうだったんだよ?」
「うっふっふ……将来が楽しみ、と言っておこうかの。現にあ奴もそこら中に小松くんのことを吹聴してるから既に色んな料理人に名が知れ渡っとるかもしれんのう」
「えええぇぇぇ!? なんでそんなことに!?」
「若いころに腕利き料理人の味を盗む修業で色んな店に通い詰めたりしたから人脈は広いんじゃよ。それに、酒に弱いから口が滑っとるんじゃろうな。ユダちゃんとかも聞いたことあるって言ってたじょ」
「ぎょえええぇぇぇぇ! 何してるんですかライズさん!」
節乃からのまさかの真実に小松も絶叫する。
自分のあずかり知らぬところで自分を売り込まれ、料理界の重鎮ともいえる人物にまで知られているともなれば嬉しいやら恐れ多いやらで感情がブレブレになっている。
そんな気も知らずにトリコは小松を茶化す。
「もうすっかり有名人じゃねえか。こりゃ、本当にスープを完成させないと格好つかねえな」
「他人事だと思って笑わないでくださいよ!」
「いいじゃねえか。それはつまり、ライズがそこまでお前のことを買ってくれてるってことだろ?」
「それはそうですけど……っ!」
ヤケになってトリコに強く反論しつつ、ここまでの事態に追い込んだライズに密やかに心の中で文句をぶつける。
同時にそこまで自分のことを買ってくれていることに光栄に思っていると、節乃が穏やかな笑みを浮かべていた。
「迷惑をかけるが、これからも仲良くしてやっておくれ。なんなら料理の腕で負かせて泣かしてやるくらいが丁度いいかもしれんのう」
「いえいえ! 恐れ多いですよ! ライズさんの料理はボクにとってもいい刺激ですし、まだまだ習うこともたくさんあって……ボクのことを凄いっていうけど、ライズさんのほうが凄いと思います……」
「確かに、あいつもいい腕を持っているのに、やけに小松を特別に見てる節があるよな。調理技術もそこらの料理人いや、なんならランキング上位の料理人にも匹敵すると言ってもいいくらいなのに。もう少し自信もっていいと思うんだが」
トリコの疑問に小松も同意する中、節乃がため息を一つ、後悔を吐露するように呟いた。
「あ奴は昔からあんな感じじゃ。奴が小さいころからわしゃが稽古と修業、料理のいろはを叩き込んできたが、一緒に競い合える仲間……ライバルが誰もおらず、張り合うことを知らずに今日まできたんじゃ」
節乃の言葉にトリコと小松はライズの境遇に初めて触れ、気の毒に思ってしまった。
美食屋と料理人、二人の修業内容は違えども共に競い合える仲間のありがたみをしっかり理解している。
トリコは四天王、小松は仕込み時代の見習い三人組。
目標を掲げ、誓い合い、助け合ったからこそ今の自分がある。
人の成長に競争というものは何にも勝る。
しかし、ライズにはそんな仲間がいなかった。
ゾンゲという友はいたけれど、料理を競い合う訳がない。
言ってしまえば孤独だったとも言っていい。
小松に対してたまに抱く羨望に似た感情をよく話している小松は感じていたが、過去に触れることでその理由が分かった気がした。
「不肖の弟子ではあるが、これからもよろしくしてやってほしいじょ」
「はい……!」
「うっふっふ。そろそろ行くがええ……食運を祈っとるじょ」
「あぁ、節ばあこそスープ美味かった! 今度はこっちが本当のスープを飲ませてやる!」
トリコたちからのお礼を受け取り、スープに思いを馳せて楽しそうにする二人の姿が長い付き合いとなる二人のコンビと重なる。
二人の雰囲気がよく知るコンビに似ているのだろう。
そして、ライズのことが頭によぎる。
節乃から見て、ライズのポテンシャルは計り知れないものがある。
グルメ細胞の特性と食材の声を聞く才能、そして食運を備えていることは料理人にとって最も羨む能力を持っている。
特に彼の食材の声を聞く能力は他の料理人と比べても常軌を逸している。
実のところ、センチュリースープを飲ませ、それが未完成だと言われたのは今日までで二人目だった。
最初にゾンゲとライズにスープを飲ませたのは節乃なりの激励と修業の一環だった。
ゾンゲは予想通り美味いと言いながら嬉々として食べる姿に頬を緩ませていると、その後の彼から出てきた言葉に表情を一変させた。
『この完成度で未完成かよ……』
隣のゾンゲには聞かれないほどのか細い声ではあったが、驚異的な聴力で聞き取った内容に節乃は一瞬だけ呼吸を忘れた。
弟子から侮られたというわけではない、むしろ彼が見えている先に興味を抱いたのだ。
いつからか、ライズには未来が見えているのではないかと思う時が何度もあった。
妙に勘がいいときや、一部食材についても教えたこともないのに妙に詳しかったり。
食材の声を聞いたと片付けるには不可解な点が多すぎる。
これも彼の稀有な才能の一つ……言うなれば未来予知。
もしや、食材が望む未来を聞き取っているのかもしれん。
本人がどこまで自覚しているか分からんが。
だとすれば、それは食材の声を聞くどころではない……その上位互換ともいえる。
その才能を存分に発揮したとき、何が起こるのか。
その行く末を見たくなった。
「うっふっふ……これであ奴が自分の腕を自覚してくれればいいのじゃが」
弟子の才能を羨むなど、らしくないと思いつつその表情は慈愛に満ちていた。
時は戻り、ヘビーロッジに戻る。
センチュリースープ捕獲依頼の集合場所に集結するグルメヤクザやグルメナイト、その他素性を隠した猛者たちが食欲のまま盛大に食事していた時、カリスマ美食屋のトリコ(リーゼント)の登場に騒然となった。
そして、美食屋の注目を集めるトリコは視線に気にすることなく久しぶりに会うマスターへと挨拶しにカウンターへ赴いた時、見覚えのある二人の背中が見えた。
「あー!? お前ら来てたのか!」
「ん?」
「あー! トリコ!」
「ライズさん、ゾンゲさんも!」
トリコと小松は二人の存在に気付いて隣の席に座る。
「ここんとこ最近仕事が被るよな! まあ、お前らとならこっちも合わせやすいからいいけどよ!」
「そうですね! お二人と一緒なら心強いです! トリコさんだけだと色々大変ですから……」
「大変ってなんだよ!」
「まあ、そう言われるのも無理はねえ。オレ様の活躍なら当然のことだ」
「調子乗りすぎ……ほとんどトリコの裏方だろうが」
トリコは意外な人物の登場に驚きながらも、節乃関連だと納得したのか特に追及することなく親し気に話しかける。
対する銀髪の青年と原始人のような風貌の男は対等な関係というように会話に興じている。
「あの二人、全く見ねえ面だが、トリコの知り合いか?」
「分からん……だが、対等な関係にも見えるが、何者だ?」
そんな二人とは対照的に周りの美食屋たちは戦慄していた。
美食屋のカリスマであるトリコと対等に話すなど大事件に他ならない。
同じ四天王ならいざ知らず、全く無名のライズたちが対等どころか親し気に、更に聞けば一緒に仕事をしているかのように話しているのだ。
気にならないわけがない。
そして、それはモリ爺とて同じことだった。
「二人と知り合いか? トリコ」
「おぉ、マスター! 久しぶりだな!」
「まあな、ほら、エナミルビールでも飲みな!」
勢いよく差し出されたビールを見過ごすわけがなく、大ジョッキに注がれたビールを一気に飲み干した。
「おかわり!」
「速ええよ!」
テンポのいい会話をモリ爺と楽しんでいると、お代わりのビールを渡されながらモリ爺から尋ねられた。
「にしても水くせえなトリコ、こんな面白え奴らがいたんなら紹介してくれよ!」
「お、そんなこと言うってことは、気に入ったな?」
「あぁ、最近は歯ごたえのある奴もなかなかいねえと思ってた時に、この二人が来てびっくりしたよ! この二人は何者なんだ?」
「あぁ、あの原始人っぽいのが美食屋のゾンゲで銀髪の細いのが料理人のライズだ。二人そろっていい腕してるぜ」
いつの間にか小松と三人で話し込んでいるゾンゲとライズを見て紹介すると、モリ爺は意外そうに眼を見開いた。
「お前がそこまで絶賛するなんて、俺の見る目は間違いじゃなかったってことか。にしても今回のような旅で料理人が来るのは意外だったな」
「そうでもねえぞ、なんたってライズの師匠はとんでもねえからな」
「ほう? 有名なのか?」
「有名なんてものじゃねえ……あいつは……」
「?……っ!? おい、ちょっ待てっ……!」
この時、トリコたちとライズたちは油断していた。
トリコはこれから食すであろう極上のスープに思いを馳せながら懐かしの場所で信頼できるモリ爺相手に口が軽くなっており――
小松とライズはトリコの会話を邪魔しないようにと気を遣って離れて酒を飲んでお喋りしていたが故に反応が遅れ――
ゾンゲは酔っぱらっており――
トリコたちの会話に耳を傾けていた他の美食屋たちのことなど頭から離れていたことで――
ライズの長年の秘密を悪意なき悪意によって白日の下に晒された。
「節ばあの一番弟子だからな」
その瞬間、騒がしかったバーの音が一斉に消えた。
ある者はビールを呷っていた手を止め、またある者は大食いの手を止めていた。
その名はとある有名な人物の愛称として一部の人が使っているあだ名のようなものだ。
人違い、そう思うも、トリコの口から出た名から考えるとどうしても、とある偉大な料理人に行きついてしまう。
一部を除き、大多数は頭を抱える銀髪の青年を信じられないものを見るような目で見て。
残りの少数派はドンマイ、と言わんばかりに両手を合わせて合掌していた。
「……節ばあって、あの、美食人間国宝の……節乃シェフのことか?」
「おう! それで間違いねえ!」
モリ爺でさえも驚愕を隠せず、途切れ途切れの会話になってしまう衝撃だが、トリコはそれをあっさりと認めた。
その傍らでライズは長年隠していた事実をバラされるという裏切りに会ったことで思考を停止させ、トリコの口をふさぐことが敵わなかった。
「ん?…………あっ」
ようやくトリコが周りを見て静かになっているのに気づき、一瞬だけ怪訝な表情を見せるもすぐに自分のやらかしに気付いた。
「悪い、これ、秘密だったんだわ。聞かなかったことにしてくれ」
まるで世間話のような流れで自分の言葉を撤回させるような言葉に、ようやく周りは理解した。
さっきのトリコの発言は真実だったと
『ええええええええええぇぇぇぇぇ!?』
この瞬間、ヘビーロッジのすぐそこにまで来ていたグルメSPと依頼主のカーネル・モッコイは酒場からの絶叫に体をビクッと震わせた。