もう食運なんてコリゴリだあぁぁぁぁ!   作:おむれっつごー

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皆さんお待たせして申し訳ありませんでした。

最後の投稿から昨日まで資格試験に集中していました。
そしてようやく、昨日終わったので再開するに至りました。

まだ今回の試験が受かったわけでもなく、また、数か月後に別の資格試験も控えていますが、今回の反省を踏まえてコツコツ勉強しつつ、再開していきたいと思います。

長らく離れたので、どういう感じで書いていたかと忘れてしまいましたが、それでも見てもらえると嬉しいです。


女性記者来襲

小松さんのスープづくりが始まってからすでに数カ月が経過した。

基本は原作の様に仕事の合間を縫ってスープを模索する日々が続いているのだが、そこに俺のサポートも入っているため、原作よりはスムーズに進められているだろう。

 

これであれば、もしかしたら半年以内にもスープづくりが終わるのではなかろうか、とも思う今日この頃。

それというのも、小松の成長が異常に早すぎて俺もびっくりしている。

俺でも食材の声を聞くのに何年もかかったのに、小松はそれをほんの数か月で会得しかけているのだから。

 

幾万、幾億にも及ぶ料理の経験と長い年月を積み重ね、その果てに辿り着いて初めて食材の声に触れることができるという上位に位置する料理人たちの常識を真正面から破壊するかのような所業は自分が料理人となった今だからこそ異常だと理解できる。

 

マンガ越しでは決して味わうことのできない驚愕と感動を覚えながら、秘かに小松の成長を見るのが最近の楽しみになりつつある。

 

ちなみに余談であるが、この数カ月で濃密な時間(決して変な意味ではない)を過ごすうちに互いの呼び方がより気安くなっていった。

俺は小松と敬称を抜き、小松も俺の呼び方は変わらずとも原作の四天王みたいに距離が近い雰囲気になった。

 

そして、偶にトリコたちの近況を鉄平から聞いてみると、案の定というかトリコの細胞が驚異的な回復を見せ、トリコも危機に瀕している。

 

そこまでは予定調和なのだが、ゾンゲも割と食材調達に駆り出されまくって既にグロッキー状態なんだとか。

何とか休ませてやりたいところだが、どうにもゾンゲの食運が幸か不幸か存分に発揮しているらしく、持ってくる食材がどれもこれも当たりの部類に入るため、トリコのカロリー供給の40%も占めるため、鉄平とサニーを抑えて堂々の第一位とのことだ。

 

おかげで何度も危うい場面はあれど、割と安定しているのだという。

それに、ゾンゲだけでは食材調達時の実力も足りないからデイビーも一緒に働いてバテているらしい。

 

全てが終わったら本気でねぎらった方がいいかもしれない。

もしかしたら自分よりも苦労してないか、そう思っていると焦燥に駆られた声が耳に届いた。

 

「14番テーブルに『白毛シンデレラ牛のソテー』入りました!」

「38番テーブル『ミルクホタテのポワレ』です!」

「106番『キャラメルエビのカルパッチョ~黒糖キャビアを添えて~』お願いします!」

 

慌しい厨房とは裏腹にライズはため息を漏らす。

少しくらい浸らせてくれてもいいのに、と思いながらも体は既に動いている。

 

「ソテーはボクがやります! すいませんが、ライズさんは「『ミルクホタテのポワレ』『キャラメルエビのカルパッチョ~黒糖キャビアを添えて~』の具材の仕込み終わり!」……って早いですね!?」

「ソースはこんな感じでよい?」

「え? あ、ちょっと失礼します……うん、完璧です!」

「よし、そこの君、これ運んじゃって」

「は、はい!」

 

注文を受け取った傍から、あらかじめ用意していた食材を瞬く間に調理して味付けもしていく。

その間にソースや盛り合わせも作るスピードは小松を以てしても追いつくことはできず、完全に助けてもらっている形となっている。

 

我がコック長が完全にサポートに徹せざる得ないほどのライズの圧倒的な腕前は忙しくも働きまわるスタッフや料理人たちを驚かせている。

 

(あの人、作るの早すぎないか!?)

(調理に時間がかかる食材も普通に捌いて、店の味を1日で覚えて再現するって、どんな味覚持ってんだよ!?)

(ちょっと待って……これ、料理を運ぶよりも料理を作るスピードが早い……!)

 

オーダーをもらったその直後に料理もできるため、スタッフも休む暇がない。

それはライズや小松も同じはずだが、二人はホールと同じように手を休めてはいないにも関わらず勢いが留まることはない。

 

客の注文が止まってもすぐに調理が困難な食材の処理に入るという神業に調理スタッフが追い付けていない。

やれることは帰ってきた皿を洗ったり、調理された食材を盛り付けるくらいだった。

 

突如、非常勤として厨房に入ってきた料理人が実は節乃の弟子だと世界中で急に噂として挙がり、出回っている顔写真とよく似ているのも従業員が最も気になるところだが、今のところ聞ける余裕がないほど忙しい。

 

ホテルグルメがいつになく忙しいのも噂の中に、その弟子がホテルグルメにいるという噂が原因だった。

 

噂の真実を知るのは一部の人間と、節乃から直接交渉されてびっくりした支配人だけである。

 

わずか数日、節乃に弟子がおり、ホテルグルメに入り浸っているという噂だけでホテルグルメへの関心が高まり、一時的とはいえグルメタウンの人口が5%減ったとも言われてる。

その影響か、グルメタウンで運営している飲食店や雑貨店などの株価も変動し、世界的な経済変調が起こっている。

 

そして、それは世界の大きなうねりの序章でしかないことを思い知るのはまた後の話。

 

「ようやく、やる気になったか」

 

『ダマラスカレー』オーナーのダマラスカイ13世も。

 

「いずれこうなるとは思っていたが、思いのほか粘ったな」

 

『オイルキング』のわぶとらも。

 

「食材に呼ばれたかあるいは……何にしてもこれからは1mmどころではない、変革が起こるかもしれんの」

 

『膳王』オーナーのユダも。

 

「あれ、ライズ先輩が!」

「うっふっふ。これも食運のなせる業じゃの」

 

後輩である……ののも。

誰よりも厳しく、その実力を買っていた節乃も。

 

「なんやあいつ、ついに観念してデビューしおったな!! ってことはクッキングフェスで白黒はっきりつけられるってことやないか!」

「でも、彼って今年からデビューでしょ? 今年中に100位以内に入るのは無理だと思うーよ」

「アホかマッピー! こいつがそんな常識に収まるかい! 必ず、必ずあいつは這い上がってくるで!」

 

過去に因縁を持ち、いつかに行った料理対決の再戦を誓う妖食界の料理人も。

 

「お、こいつが一龍の言う例の料理人か。面白い奴が憑いてるようだし、ブルーグリルに呼んでやろうかな」

 

グルメ界の海底都市を治める最恐生物も。

 

「こいつが、例のライズという料理人か」

「はい。いずれ、美食會に引き入れて見せましょう。ボス」

 

スタージュンも。

美食會を牛耳る首魁も

 

そして、ライズのことを知らないであろうグルメ界に君臨する猛者や八匹の王も揃って人間界に意識を向けていたという。

 

 

 

 

 

人知れず、世界の中心となった遊び惚ける暇人(ライズ)はそんなこともつゆ知らず*1客足も落ち着いて一息入れていた。

 

厨房から離れた控室でコーヒーを口に含んで一息ついていると、同じく一休みに入っていた小松が深く息を吐きながら頭を下げる。

 

「こんなに手伝っていただいてありがとうございます! なんだかいつもよりスムーズに調理に専念できたと思います!」

「それはよかった。そうでなかったら節ばあに殺される」

 

滝のような汗をぬぐう小松に対してライズは汗一つかかないあたり、その体力は底が知れない。

 

既に数百人分の料理を作った後とは思えない元気な様子に引きつった顔で向けられる視線も当の本人は気づいてない。

 

「……!!」

「? 何だか騒がしくないですか?」

 

一息ついて静かになった厨房にわずかに響く声に小松が反応する。

僅かに聞こえてくる声からして、客が騒いでいるようだ。

むしろクレーマーと言わんばかりに騒ぎ立てる声に厨房スタッフは縮こまっていた。

 

「な、なにかボク、失敗して怒らせちゃったんでしょうか?」

「あ~……そういう訳じゃないから大丈夫。こいつ、いつもこんなんだから」

「え? この声の人知ってるんですか?」

「よ~~く、知ってるさ。……不本意にもな」

「凄くイヤそう!」

 

心底怠そうにしながら、クソでか溜息を吐いて厨房からレストランへ向かう。

そんなライズを心配して小松も彼の後を追うように付いて行き、問題の場所へ着くと、そこで複数のスタッフに絡む女性の姿があった。

 

「少しだけ! ほんの少しだけインタビューしたら帰るから!」

「そんなこと言われても困ります! 他のお客様の迷惑になりますのでお引き取りください!」

 

ハンディカメラを片手に桃色のスーツの女性が騒ぐ姿に他の客が顔をしかめていた。

小松は暢気に「綺麗な人だ」と素直にコメントする中、ライズの心情はさっきよりも急降下していた。

 

「えっと、あの方は……」

「チッ!」

「舌打ち!?」

 

今まで見たこともないくらいに不機嫌な様子に小松も思わず怯んだ。

予想以上にガラが悪くなったライズに戸惑う中、渦中の中心である女性がこっちに視線を向けて手を振ってきた。

 

「やっと見つけたわよライズ! さあ、これからてんこ盛りでインタビューを受けてもらうわ!」

 

スタッフに抑えられながらどこからか出してきたマイクをこっちに向けてくる。職業は記者だろうか。

距離が空いているとはいえ、このままスタッフを振りほどいて突貫してくるような勢いが見られる。

 

小松はその気迫に少し圧された直後、ライズからブチンと切れたような音を聞いた。

その直後、ライズの姿が掻き消えた瞬間、騒ぐ女性記者の背後に回り込んで反応できていない無防備な体に一本突き出した指を叩き込む。

 

「クペ」

 

奇妙な鳴き声と共にその場に倒れこんだ。

 

急に倒れた女性にスタッフや小松、その場に居合わせた客が何が起こったか分からない様子で固まっている。

ただ、一人、怒りがピークに達したライズを除いて。

 

「三つ、俺には許せないことがある。

 

一つは料理で遊ぶ奴

 

二つは料理を粗末にする奴

 

三つめは食事の席で騒ぐ迷惑な客

 

そういう奴らには基本的に容赦しないって決めてんだ」

 

空気の温度が下がったように空気が重くなる。

声からして怒りが浮き出ていることがはっきりと分かる。

 

ニッコリと口を三日月状に変え、張り付いたような笑顔を浮かべながら女性記者を荷物を運ぶように脇で担いだ。

 

「とりあえず、あっちで話すか?」

「本当に話すだけですか!?」

 

正気に戻った小松はあらん限りの力を尽くし、ライズを制止するのだった。

*1
正しくは現実逃避




ライズの経歴

過去に店を構えたことがあるが、1年で廃業している。
店を構えること自体は節乃とのとある約束のために開業させただけであり、繁盛させることに関しては何も言われなかったので、わざと廃業した。

また、迷惑系動画配信者やクレーマーをノッキングして猛獣の餌にしたり(殺してはない)、猛獣の巣へほうり込んだり(ビビらせただけで殺してない)、猛獣の体とロープで縛りつけて引きずり回したり(基本殺してない)と他の料理人と違って食材や料理への愛情の裏返しの感情を見せたこともあり、店の経営には向いてないと諦めたのも廃業の一因と言える。
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