もう食運なんてコリゴリだあぁぁぁぁ!   作:おむれっつごー

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後書きに余談としてゾンゲの現在のフルコースを載せてみました。
作中でトリコのフルコースを書きましたが、そのついでに原作とは少し違うゾンゲフルコースメニューですが、何を入れるかはまだ完全に決まっていません。




太古の味~センチュリースープ~

ホテルグルメは開店以来、今日まで客を満足させるようなサービスを提供し続けて長い歴史を刻んできた。

そんなホテルの歴史に残るであろう転機を迎えることとなった。

 

原作のように小松がセンチュリースープを作ったことが世間に知れ渡ったからだ。

この半年間、ずっと近くで見てきたが、小松の潜在能力の凄まじさを日々見せつけられる毎日だった。

 

俺もそれなりに料理の腕はあると自負しているが、小松が半年で至る成長は俺が3年もかけて積み上げた経験値に匹敵する。

まだ本人は自覚はないが、既に食材の声を聞くに至っている。

 

世間に名を馳せる一流料理人であれば食義と食材の声を聞く能力がどうしても必須となるのだが、25歳で食材の声を聞ける小松はやっぱり天才であるというのは明白だった。

それを言うと、大竹や仲梅も相当な腕前であることは明白なのだ。

 

最終回以降、三人のランキングがどうなったのか気になるところだ。

ていうか三人だけでなく他の面子がどうなったのか全然掘り下げられてないから謎すぎる。

ここで生きていければ分かるだろうか?

 

いや、今はそんなことよりもマスコミに囲まれている小松の成長を心から祝おう。

 

congratulation、congratulation

 

「そんなとこで何しとるんじゃ」

 

人知れず拍手しているといつの間にかすぐ近くに来ていた節ばあがこっちを見上げていた。

相変わらずのステルス婆さんっぷりに戦慄するも、今だけはこの喜びに浸かっていたい。

 

必死にマスコミ対応している小松を見て胸を張る。

 

「小松は俺が育てた」

「何言ってるんじゃ。お前はセンチュリースープを作る過程で買い込んだ食材でレシピ開発して遊んでただけじゃろ」

「遊んでねえし? ちゃんと修業してたし?」

「まあ、サポートはちゃんとやってたらしいから良しとするかの」

 

良しとしなかったらどうするつもりだったのか、聞きたいが聞けないことも世の中たくさんあるのだ。

節ばあの不穏な一言を全力で無視していると、マスコミのざわつきが大きくなった。

 

何事かとマスコミのカメラが向く先を追って見ると、そこにはG7のパッチ氏が多くのSPを連れて現れた。

あ、やべ来た。

 

「何しとるんじゃ? あたしゃを盾にするとは偉くなったもんじゃの」

「いや~、パッチ氏とは昔ちょっと……」

「そういうのはええから堂々としとれ」

 

そう言われて首根っこ摘ままれて元の場所へ戻された。

ちくしょう、あの人相変わらず耳も行動も速え……このまま気付かれないよう気配消しとこ。

 

パッチ氏に直接何かされたわけでもしたわけでもないが、色々と事情があって面と向かって会いづらい。

強いて言うなら、俺が悪いのだけれど。

 

そう思っていると、原作の様にパッチ氏の後にトリコたちご一行が到着した。

やっぱりというか、トリコの腕も無事に生えている。

一緒に来ているマッチ達グルメヤクザと滝丸、鉄平もちゃんと原作通りに来ている。

 

お、ちゃんとゾンゲまで揃っている。

原作では食い逃げでしょっぴかれてスープを食えずにいたのだが、今日という日をちゃんと迎えられて感無量だ。

 

「ゾンゲは俺が育てた」

「だから何を言っとるんじゃ」

「いやだって、ゾンゲがちゃんと犯罪を犯さずにこの日まで捕まらずにいれたことは誇るべきだ。ちゃんと人間社会で生きていける、これほど嬉しいことはない」

「とりあえず相当失礼なことを言うとることだけは分かった。バカな事言ってないであたしゃ等も行くじょ」

 

首根っこを掴まれて連行されるパート2

 

この人も俺に対して相当失礼なことを思っていることだけはこの扱いからよくわかる。

とりあえず、こんな状態になったら逆らえないので抵抗もせずドナドナされていく。

 

最後に別れてから半年ぶりの再会も何だか間抜けな感じとなった。

 

「話には聞いてたけど、本当に腕は治ったんだなトリコ」

「おうライズ! お前も相変わらずだな」

「この姿が相変わらずって思われてんの、俺?」

 

ちっさい婆さんに首根っこ掴まれて引きずられる姿に何の反応もされずに相変わらずとは、普段からどう思われてんだ俺は。

 

でもまあ、こういう所はちゃんと原作通りにいってほっとしたのは確かである。

トリコが療養中、何らかの異変で死んでしまうのではないかと懸念したこともあったが、そうならなくてよかった。

 

それどころか、小松もトリコも半年でノルマクリアって、原作よりも早くないか?

そう思って何気なしに探ってみたら、その原因は俺たちにあったことが判明。

 

「この半年ずっといいもの食いまくってたからだな! また食いて~!」

「クスリバチのローヤルゼリーに千年も人知れず熟成する千年梅、古代の時代から地面の中で糖度を貯め続けた化石のカセキウイ……生きている内に出会えるかどうかも分からねえ食材を半年の内に大量に持って来るとか、ゾンゲの食運どうなってんだ?」

「それはな、オレ様が神だからだよ」

 

俺がいない時でもゾンゲの食運はフルスロットルだったらしい。

というか、列挙する食材は滅多に市場に出てこないような食材ばっかりで、それを食ったトリコを不謹慎にも羨ましいとさえ思った。

 

原作の流れと大違いの活躍に戦慄すら覚えた。

 

余談ではあるが、ゾンゲが変なことしでかさないかサニーに頼んで監視し、逐一俺に連絡してもらっていた。

トリコはもちろん、鉄平と与作にも仕事に専念してもらうためにサニーに手伝いを頼んでいたのだ。

 

その代価として()()()()()を作ってもらうよう頼まれているのだが、それはまた別の話。

 

「そんな話よりも、 もっと大事なことがあるだろ!?」

 

と、お互いに積もる話もあるだろうが、スープが出来上がっている以上、俺たちのやることは既に決まっている。

 

「では皆さん! 最上階のレストランへどうぞ!」

 

待ちに待った、センチュリースープの実食だ!!

 

 

 

 

「そうか、彼がついに復帰したのか……今度こそ彼の料理を味わいたいものだ」

 

トリコ達と並んでレストラン奥へと遠ざかるライズの背中を見てパッチが静かに呟いた言葉は誰の耳にも届くことはなかった。

 

 

 

 

本日に限り貸し切りとなった静寂が立ち込めるレストランの中央の円卓に10人の人影が腰かけている。

今日に至ってはゾンゲも正装で臨み、本日の主役を目の前につばを飲み込む。

 

正確に言えばゾンゲだけでなく他のメンバーもそうだった。

一人ずつ配膳されたクローシュの中に太古の味があるという感動を胸の中で抑えていた。

 

かくいう、俺もその一人である。

 

クローシュに隠されているスープを求めて数えきれない人たちが手を伸ばし、散っていった。

この世の中、そんな食材探せばいくらでも見つかるだろうが、少なくとも多くの者の人生を変えてきた魔性のスープを前に冷静さを保つなど無理な話だ。

 

マンガ越しでは伝わらない、スープに誘惑されているかのように体が魂ごと引き寄せられている感覚すらある。

 

皆と視点が異なる分、スープに対する思いの違いはあれど、実に体は正直である。

“早く食わせろ”と俺の中の何かが叫んだ気がした。

 

そんなことを思っていると、ついに待ちに待った瞬間がやって来た。

 

「それでは皆様、センチュリースープ……どうぞお召し上がりください」

 

小松の音頭とともにクローシュを取ると、神秘的な光景がレストランの情景を塗りつぶした。

スープの蒸発で発せられるオーロラが天井を埋め尽くし、満天の星空の下にいることを連想させる。

 

「おおおおぉぉ! すげえ!」

「オーロラが出たぁ!」

「これが本物の、センチュリースープ!」

 

あまりの幻想的な光景に誰もが目を奪われ、歓喜する。

誰も口にしないだけでセンチュリースープを味だけでなく、五感全てで堪能し始めている。

 

(鼻を優しく突き抜けるような繊細でいてしっかりと数百もブレンドした食材の香りだけで食欲を刺激させられる! これを味わっちまったらどうなっちまうんだ!?)

 

アイスヘルでトリコたちを狂わせた魔性の香りにライズは畏れに近いナニかを感じ取った。

実は。ライズにとってセンチュリースープを味わうのは初めてなのだ。

 

正確に言えば既にアイスヘルで一滴だけ食べているのだが、その時は意識を失い、瀕死状態だったためちゃんと味わえてすらいない。

そして、小松がスープを作った時もその時はライズだけ味見せず、今日という日まで我慢し続けたのだった。

 

全ては万全の状態でスープを味わうために。

 

スープを掬ったスプーンが妙に重く感じる。

まるで、太古の時代から積み重ねてきた食材たちの膨大な記憶が一匙のスプーンにのっているようにも感じる。

 

しかし、料理人として、この半年間小松の近くでスープが完成する道のりを見届けてきた者として確りと味わわなければならない。

他の皆とは違う心持でスープを口に運ぶ。

 

直後、無意識のままに()()()

あまりに濃厚な味わいに口が肉を食べたかのような錯覚を覚えたからだ。

マンガを見た時は誇大表現だと笑って見ていたが、このスープを味わってしまった今ではトリコの表現を笑えるはずがなかった。

 

(~~っめぇ! 透き通ったスープのブイヨンから情報過多といえるほどの風味や旨味が溢れ出て飽きさせない。透き通ったスープからは想像できないほどの風味や旨味でいつまでも食っていたい衝動に駆られる! これが、無駄な調味料や雰囲気で誤魔化しもしない洗練された太古にして革新的、原点回帰した人間古来の味!)

 

この味が偶然か、それとも緻密な計算によって作り出されたものかは今となっては知るすべはない。

ただ、この味を生み出した先人たちに、そして、この味を現代に蘇らせてくれた小松に惜しみない感謝を心の中で送る。

 

そして、覚悟していたその時がやってくる。

 

(あ、やべ、()())

 

顔の筋肉を全力で力んでも上がってくる口角、下がる目尻を押し返すことができない。

むしろ踏ん張れば踏ん張るほど自分の顔がより一層おかしくなるのを感じて、湧き上がる多幸感に抗うことを止めた。

 

この瞬間、スープを食べた全員の顔が品性もないだらしない顔に崩れた。

 

「わー! みんなみだらな顔にー!」

 

小松以外の全員の表情がデロッデロに溶け切り、互いが互いに変に崩れた顔を見て笑い合った。

 

「ぎゃはははは!」

「変なカオー!」

「そっちこそ!」

「あっひゃっひゃっひゃ!」

 

美味しさのあまりニヤけながら互いに笑い合う光景に最初は戸惑っていた小松も釣られて一緒に笑い合った。

そして、一通り笑った後、トリコが小松の名を呼んだ。

 

「小松! このスープ、オレのフルコースに入れていいか?」

 

その瞬間、この場が騒めいた。

トリコのフルコースの一つが決まるという決定的な瞬間に立ち会ったからだ。

 

そして、それを拒否するものなど

 

「「「賛成だーー!」」」

 

この場にいるはずもなかった。

 

大手を振って祝福を受け、トリコの目標(フルコース)の「スープ」が決まったのだった。

 

トリコフルコースメニュー

■オードブル……BBコーン

■スープ…………センチュリースープ

■魚料理…………

■肉料理…………

■主菜……………

■サラダ…………

■デザート………虹の実

■ドリンク………

 

「ふん、そうでなきゃ張り合いがねえぜ。早くオレ様のステージにまで上がって来いよ」

「ニヤけた面で体中からオーロラ滲み出されながら言っても恰好つかねーよ」

「ていうか、ジュエルミート食った時も全身光ってたっけ。相変わらずエキセントリックな体質だな」

「ぜ、全身が光ってますが、大丈夫なんですか?」

「こいつに限っては基本大丈夫っすよ」

 

にやけ面で全身からオーロラを湧き立たせるゲーミング原始人ことゾンゲはトリコのフルコース決定を祝福しながら相変わらず上からの物言いだが、マッチから鏡見ろと言わんばかりに突っ込まれていた。

その様子にライズはジュエルミートを食べた時を思い出しつつ、心配する滝丸にもすっぱり言い放つ。

 

そんな中、鉄平は意外そうにライズに耳打ちしてきた。

 

「にしても、こういう時ゾンゲが衝動的にスープをフルコースに入れるつもりだと思ってたんだが」

「最初はそのつもりっぽかったけど、このスープは小松が全部作ったし、俺は手を貸してただけだから俺達のフルコースに入れるのもおかしいって話したら納得してくれたからかな」

「あぁ、そういう……」

 

鉄平も納得した。

基本的にライズの言うことであれば比較的素直に聞くからそうだとは思っているからだ。

 

余談であるが、その現場に強行突破してきたティナが突撃してくるも、にやけた顔で全力で祝っていた現場に怖気づいて即退散していたのだとか

 

「小松シェフー! ライズー! スープを完成させた今の心境を……ひぃ! 気味の悪い笑い顔の人が集まって騒いでいる……失礼しましたーー!!」

 

その後日分かったことだが、その時ティナはまたしてもグルメ警備員に捕まったのだとか。

 

その後、トリコのフルコースが決まった祝いも兼ねた宴を朝まで続けた後、センチュリースープは『G7』に認められ、ホテルグルメは5つ星から6つ星レストランへとランクアップしたのだった。

 

 




余談

ライズ「ちなみに、小松のスープ作りの過程でできた出汁でシチュー作ってみたけど味見してちょ」

トリコ「何だこりゃ! シチューからオーロラが出てる!」

マッチ「これもセンチュリースープなのかよ?」

ライズ「こっちはセンチュリースープから味を薄めて旨味だけを抽出した出汁、ブイヨンを使ってるから、スープじゃないけど親戚みたいなもの」

滝丸「でも、それならスープをそのまま使えばよかったんじゃないんですか?」

節ばあ「うっふっふ、センチュリースープは既に完成された味を持っているから他の料理に併用しても圧倒的な味のインパクトでスープの味に支配されてしまうんじゃ。味を薄め、旨味と風味をそのままにブイヨンにまで落とし込めることで他の料理にも使えるんじゃ。味と風味と旨みのどれもが微細かつ繊細に加減された至高の一品、腕を上げたのう」

ライズ「スープの様に食べれば思わずにやけるほどの満足感はないけどな。とりあえず安価で手軽なスープを作るための調味料として作ったからこれくらいは必要最低クオリティってわけ」

トリコ・ゾンゲ「「うんめえええええぇぇぇぇぇぇぇぇ……」」

小松「えええぇぇぇぇぇ!? 二人とも何だか溶けてません!?」

鉄平「スープほどじゃないけど、食べると力が入らなくなるほどにトロけるみてえだな。すげえモン作りやがって」

ライズ「安易ではあるけど、常にオーロラを出す万能出汁ってことで『極光出汁』と名付けてみた。トリコもゾンゲもいるから色々作って出来栄えの検証といくか」

トリコ「おう! 検証なら喜んで協力するぜ!」

小松「いいなー! その出汁、ホテルに入荷してもらえないかな」

ゾンゲ「ライズー! もっと作ってくれー!!」

ライズ「今週ずっと光りっぱなしだなコイツ」

マッチ「このままお開きって空気じゃなくなったようだな」

滝丸「これでもグルメ騎士なので、ほどほどにお願いします」

小松がスープを作る過程で失敗したメニューから着想を得て作ったオーロラの出る万能出汁『極光出汁』はその後、同じく『G7』に認められた。

それから極光出汁は一般商品化され、和洋中に問わず利用できる汎用性と見た目の美しさからすぐに爆発的に人気が出たのだとか。


・極光出汁……小松がセンチュリースープを作る過程で集めた食材や失敗したスープのレシピを参考に作り出された万能出汁。鳥ガラ、魚介、貝などの旨味が複雑かつ絶妙に絡み合い、どんな料理にでも使用できる。スープのような圧倒的な味とインパクトはないものの、出汁を一かけすれば、どんな料理でも全身がとろけるみたいに美味くなる。
市場価値では500mlで50000円となる。

・ゾンゲフルコースメニュー
■オードブル……
■スープ…………
■魚料理…………金色イクラとストライプサーモンの親子丼
■肉料理…………仔ガララワニの燻製ロースト
■主菜……………
■サラダ…………アーモンドキャベツのポテトサラダ
■デザート………
■ドリンク………エナジーヘネスィー
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