もう食運なんてコリゴリだあぁぁぁぁ!   作:おむれっつごー

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閑話休題 イタズラの代償

癒しの国ライフ。

傷つき、患った人たちが集まる国ということもあり、世界中から治癒を求める者、医学を学ぶ者たちが集まってくる。

ライフで行われている治療は大きく2種類に分かれる。

 

一つは薬の投与やノッキングといった一般的な治療。

そしてもう一つは医療食材などをふんだんに使った料理を食べる食事療法である。

 

そういうこともあり、このライフには医学書など知識を深める設備はもちろん、食材を調理できる設備も整っている。

ライフの中心部にあるマザーウッド内部の図書館にてライズは医学書を読み漁っていた。

 

(アイスヘルでセンチュリースープを無意識下で飲んでグルメ細胞のレベルは上がったが、いわばあれは不完全な状態だった。それが小松のスープを飲んだ日に完全に目を覚まし、細胞のレベルがさらに上がった)

 

そのことであの日、アルファロにやられそうになった時のことを思い出した。

あの日、意識が無かったもののライズの細胞が持っていた記憶が流れ込んできたのだ。

まるで存在しない記憶が流れ込んだ気分だったが、それでも実際に起きたことなのだから何とも言えない気分になる。

 

ライズの細胞は記憶力に特化しているとだけしか思っていなかった。

しかし、今回の一件でライズの細胞一つ一つに()()()()があることが分かった。

 

本体であるライズが意識を失った時、ブランチの発電能力と前世のマンガから得ていた技のイメージからその時に適した技を生み出した。

過去の経験から最適解を導き出して困難を乗り切るような高い知能がある反面、意思があるようには見えない。

 

もし、意思が宿っていたのならすぐにでもライズの意識が乗っ取られているはずなのだから。

 

そして、その時の記憶を頼りに自分に起きた体の状態を専門的に理解することでより一層イメージ力を上げ、技のクオリティも上がる。

新たに覚えた技を忘れることはせず、今度こそ暴走させずに使いこなすことを目標に今日も知識を蓄える。

 

そうやって今まで生き残ってきたのだから。

 

と、いいように言っているところだが、このライフに来ている目的は他にあった。

 

本を読んでいた時、ふと壁に立てかけられている時計の時間を見て溜息をもらす。

 

「あぁ、もうこんな時間か」

 

長時間勉強して固まった体を伸ばしてほぐす。

本を片付けて図書室を出て自分用に宛がわれた部屋に向かう。

再生術を習っていた時に貸し出されていた自室の棚から調理時の正装を取り出して身だしなみを整える。

 

そのままその足でマザーウッド内部上階へと進み、辿り着いた先はとある一室に設けられたキッチンだった。

テンポよく包丁で食材を切る音に始まり、食材を茹でたり焼き上げる音が響き渡る。

 

聞けば食欲が増してくる音と共に食材が調理によって豊かになる風味や香辛料の匂いで徐々に空間が旨味で満たされていく。

次々と調理を終えた料理が皿に盛られてキッチンを埋め尽くしていく。

 

そして、それらの料理全てから湯気と一緒にオーロラが立ち込めていた。

 

「ま、こんなもんだろ」

 

ある程度作ったと満足してキッチンに所せましと置いた料理に向けてクローシュを一斉に()()()全ての料理に正確にかぶせる。

 

全ての料理に向けて自身の手をかざす。

 

「“(ディッシュ)”」

 

その瞬間、数十にも及ぶ料理が同じ一つの巨大な皿の上にのっかった。

そのまま器用に運んでいく。

 

(前のセンチュリースープを飲んで細胞が進化したからか、より一層イメージ力を具現化できるようになってきたな)

 

実際、ライズはいくつかの調理器具を具現化させて様々な場面で使うことができるが、それは果てしないイメージトレーニングをしないと会得できなかった。

しかし、今では常日頃から調理器具を使って熟知しているものならその場で、即興で使うことができるようになってきたのだ。

 

しかし、本人としては単純に身体能力が上がって更に器用になったため調理技量も上がったことに喜んでいたりする。

 

調理技術を戦闘力に変える料理人だからこそ、ライズはさらにまたやれることが増えたのだ。

そして、ここで給仕している理由がライズの目的につながるのだ。

 

やがて、目的の部屋についたのでノックした後、入る。

 

入ってすぐ目に入る血塗れの部屋の中には横たわるサニーの姿があった。

 

「あー、今日もこっぴどくやられてんね」

「るせっ、あっちが先に音を上げたから負けてねえし」

「最初の頃と比べて大分余裕出てきたなぁ……どうなってんだよその体力」

お前()に言われたくねえし」

 

何故かサニーを置いて出てこない与作を探していると、サニーが気だるそうに起きて胡坐をかく。

 

「与作は特訓の後すぐどっか行ったよ。何やら血相変えて慌ててたしな」

「どんな理由であれセンチュリースープの件を弟子任せにしてたから、それについてかな」

「あぁ、なるほど……あの与作でも節乃は怖いのか。とんでもなく強い(つえ)ってのも本当かもな」

 

間違いなく俺たちが束になっても敵いません。

まあ、ボコられることはなくても、与作としてはこれ以上機嫌を損ねない方がいいと判断したのだろう。

まったくもって同感です。

 

まあいないものは仕方ない。

 

とりあえず持ってきた料理を切り株のテーブルに並べていると、サニーは傷だらけの体をやせ我慢で起こしてテーブルに座る。

それを確認してゆっくりクローシュを取ると部屋いっぱいにオーロラが広がり、部屋を彩った。

 

(つく)しい! このまま、ずっと眺めていたい……っ!」

 

極光出汁をふんだんに使った料理に涙を浮かべて感激するサニーにため息が漏れる。

 

「もうこれで一週間は見てるのに、よく飽きないね」

「何を馬鹿なことを。真に(つく)しいものは色褪せることなく感動を与えてくれるもんだ」

 

何を馬鹿な、と言いたげなサニーに少しイラっとするも、今更かと出掛かった言葉を飲み込む。

俺以上に形にこだわるサニーだからこそ、未だに正装を要求してくるのだ。

 

「だからこそ惜しいな。今日で最後だなんてよ……もう少し延長できないか?」

「いや~、そうは言っても、小松と長くいてから久々に血が騒いだっつーか、ちょっとやってみたいことがあるから、最初の約束通りにしたいんだけど」

「言ってみただけだ。最初の約束反故にするなんて醜い真似はしねえよ」

 

そう言いながら用意された食事を口に運ぶと怪我してるとは思えないほど穏やかな表情を浮かべる。

 

「なんてデリシャス。普通(つー)の野菜炒めでもここまで上品な味わいにするなんて、っぱいいな極光出汁(これ)

「それ食えるならセンチュリースープもいけるんじゃないの?」

「いーや、絶対(ぜってー)イヤだ! どんなに美味くて(つく)しくても、顔がキショくなるのだけは許されねえし!」

「世界中でスープを待つ人を敵に回す発言は控えろー」

 

何かを思い出したかのようにサニーは憤慨し、こっちを睨んでくる。

それを無視するが、視線が緩むことはない。

 

そもそもの話、なんで一週間もサニーの給仕をしていたかというと、俺が何も教えずにセンチュリースープを飲ませたことに始まる。

 

原作でもにやけ面になるのを嫌ってスープを飲まなかった。

大体、どんな顔になるのか想像がつくのだが、どうしても思ってしまったのだ。

 

 

 

「絶対にしそうにない顔って見たくなるよね?」

「お()マジでふざけんなよ?(怒)」

 

 

と、まあいたずら心故に何も知らないサニーに食べさせて、例の顔になったところを写真に撮ったら触覚に雁字搦めにされて捕まってしまった。

逃げ足には自信があったのだが、やっぱ四天王には勝てなかったよ。

 

そんな訳で許してもらうために一週間、修業後の食事を提供するということでライフに残っていたのだ。

ゾンゲを含めた他のメンバーは既に各々、帰る場所へ帰っている。

 

「最初は感動してたくせに」

「見た目が(つく)しかったからだっつの! あんな顔になると知ってたら食ってねーよ!」

「いやー、あの顔はねぇ……ぷふ、忘れたくても、ぷっ……忘れられないというか……」

「頭に触覚ねじ込んで忘れさせてやろうか」

「ごめんなさい」

 

髪がザワザワし始めた辺りから悪寒を感じたため速やかに土下座をして怒りを鎮める。

サニー相手にすごく気やすく接しているが、割と食事に対する意見が一致しているせいか結構な頻度で料理を振舞ったり、いい感じの店に連れて行ったり行かれたりと交流を重ねるうちに割と親密な仲になっているのだ。

 

今の人間関係では6割がたがトリコがきっかけ(無理矢理食事に誘われたりするとき)で構成されている。

こう見えてもココや滝丸とも交流は持っているのだ。

 

こういった縁が意外な形で助けになることをよく知っている。

 

「あと、できればゼブラのみだらな顔も見てみたいと思ってしまっている俺は変だろうか?」

「お()、正気?」

 

後は、前のアルファロ戦という格上とのガチの戦いで感覚が色々とバグったのかもしれない。

これを度胸が付いたというべきかは自分でもよく分かっていない。

 

ただ、どうしてもゼブラやココとかのにやけ面という原作でも見ることができなかった変顔を見てみたいのだ。

 

とりあえず、ゼブラに会うまでには音速の攻撃くらい逃げれるよう成長しなければならない。

自分のすべきことを見定めた丁度その頃、サニーは料理を平らげていた。

 

「そういえばトリコが新しく家建てて新築祝いに誘われたけどサニーは来るんか?」

()は修業があるからパス。ていうか行っても菓子食いつくして終わるだけって感じがするから行っても意味()。ていうか、んなことよりもお()これからどうすんだ? センチュリースープ作って、しばらくやることねえんじゃね?」

 

サニーはそう言うが、俺のやることはもう既に決まっている。

 

「ちょっと、これから旬を迎える食材があってね、それを捕獲しに行ってくる」

「これから旬ね……どこに行くんだ?」

 

お菓子の家はこれは特に本筋に関わることでもない、日常回みたいなものだから息抜きついでにスマイルの建築技術も習うためのコネづくりを目的として行ってくる予定だ。

 

もちろんゾンゲも来るらしい。

 

そして、本題はその後だ。

ここから俺達は大きく原作に関わってしまうことは避けられない。

 

今まではトリコたちになし崩し的に連れまわされたり、俺達のレベル的に問題はなかった。

しかし、センチュリースープで細胞レベルが大きく進化した今、今まで行けずに手をこまねいていた場所にすら行ける可能性が出てきた。

 

もちろん、俺とゾンゲだけでは死ぬ確率は低いだろうが、実力的に苦労する場所でもある。

だが、トリコたちと協力すれば人間界踏破を果たし、まだ見ぬ食材を見つけることも叶うだろう。

 

これから起こる大災害を乗り切るため、ひいては人間界踏破というゾンゲと定めた最初の目標を達成するために本格的に動くのだ。

 

様々な思いを表に出さず、サニーに向き直りながら天井に指を差した。

 

 

「空」

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

「ニヤけるのが嫌でスープ飲みたくないならマスク付けるか触覚で表情筋固定するのはどうよ?」

「……」

「え、マジでやろうとしてる?」

 

スープを飲みたがらないサニーに僅かの悪ふざけが入った提案をしたら本気で検討するサニーに困惑したとかしなかったとか。




今回は閑話休題で次回からベジタブルスカイとなります。
その間のお菓子の家とかはダイジェストでお許しください。

とりあえず長かったセンチュリースープ編はこれで終了となります。

その後の修業編については深く書くものと書かないものが別れますがお許しください。


サニー……少しずつだが、原作の様に間男的な一面が出始めてきた。

ライズ……一龍や次郎、節ばあから受けた手加減されたスパルタ教育や過去に戦ったルバンダなどとは次元が違うアルファロとのマジの戦いに死生観がバグり始めて性格が若干変わり始めてきた。
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