もう食運なんてコリゴリだあぁぁぁぁ!   作:おむれっつごー

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オゾン草①

現在、IGO専用飛行機に乗って移動中のライズです。

いやー、センチュリースープを作ったら少しくらい落ち着くと思っていた時期があったけど、そんなことはなかったっす。

 

世間ではセンチュリースープブームが興奮冷めやまぬ状態であり、今でも世界中から注文が殺到している。

それはまだ分かるんだが、問題はセンチュリースープではなく俺のことだ。

 

結果から言うと、俺の存在が世間にバレて名が知れ渡ってしまった。

そのため、連日マスコミに追われたりと鬱陶しい日々が続いて辟易していた。

適当に撒いて逃げ続けていたらマスコミも飽きてきたのか当初よりもマシになった方である。

 

しかし、極光出汁という実績のせいで俺の一挙一動がSNSに上げられたり深読みされるというようにプライバシーが消えつつある。

 

今はセンチュリースープが今一番のブームとなっているが、それに次いで極光出汁が今の世間を沸かせている。

現在、IGO主導の下で極光出汁を売り出しているのだが、これが大ヒットして既に5年先まで予約されるくらいに人気が出てしまった。

 

何せ、本物には及ばないけれどセンチュリースープの味わいや風味を手軽に楽しめ、他の料理を彩ってくれるオーロラの調味料としてべらぼうに人気絶頂を迎えている。

 

ランキング上位の料理人はもちろん、大衆向けの料理にもほどよく合う使用用途の広さが多くのニーズに応える形となり、買い手も尽きることがない。

そのおかげで開発と製造を担うライズの元に毎月最低でも数億も預金が勝手に増えていくのだ。

 

前世が一般市民だったライズも突如として入ってきた莫大な収入に畏怖を通り越してもはや他人事である。

最近では普通預金の限度額を大きく超えて限度額無し、セキュリティー万全のVIP専用口座への案内やブラックカードをIGOから支給されるなど、もうてんやわんやである。

 

そんなことがあっても腐ることなく(決して現実逃避ではない)料理の研究やスラムの子供への教育支援、IGOでの研究開発などほとぼりが冷めるまでひたすら自分のできることに熱中してきた。

 

そんな日々でもトリコやゾンゲと共に食欲の赴くまま食材を捕獲したり、大自然の中で美味いものを食べることが最大の至福としていた。

 

昔は危険なことせずに安全地帯からぬくぬくと食事を楽しみたいと思っていたのだが、年月は人を容易に変えてしまうようだ。

つまり、一皮むけたのは小松だけではなかったというわけだ。

 

そんな一皮むけた俺であるが、今はゾンゲと一緒に次なる食材を求めている所である。

 

「うおおぉぉ! 気合入れろライズー! オレ様が、オレ達が先に上に辿り着くんだー!」

「張り切るのはいいけど、そんなにトばしてヘバんないでくれよー? 俺と違って体力ないんだし、ていうか競っても仕方なくね?」

「勝負に勝って、一足先に食う飯が美味いんだろうが!」

「それでトリコの分がなかったらどうすんの?」

「え? 優しいオレ様が分けるに決まってんだろ? 独り占めなんてそんな器の小さいことする訳ねえだろ」

 

うーんマトモ。

まあ、トリコ相手に勝てるかもしれないけど、個人的には実力のあるトリコと一緒にいた方がいいと思っている。

 

まあ、あんまりストーリーに影響ないし、最近は構ってやれてなかったからレクリエーションと思って付き合ってやろう。

 

と、まあそんな感じで俺とゾンゲは二人でスカイプラントを登っている。

そして、はるか下にいるであろうトリコたちと競い合っている(と思っているのはゾンゲだけ)。

 

何でこうなったか、事の発端となった数日前のことを思い返す。

 

 

 

 

 

数日前

グルメタワー上層273F「焼き肉へるスィ~」

 

トリコに奢ると呼ばれてほんの少しの焼肉とテーブルを埋め尽くすフレッシュな野菜に舌鼓を打っていた。

 

「オレ様は肉が好きなんだが、この野菜もまあまあじゃねえか。流石と言っておこう」

「だろ?  たかが野菜、されど野菜だ。他の料理を彩る脇役という印象が強いが、こうして主役張れるポテンシャルがあるんだぜ」

 

カリっと焼いたベーコンの葉を食べるトリコの横で単純に焼いただけの野菜を既に数多くゾンゲは平らげている。

そんなゾンゲに苦笑しながら小松は牛豚鳥の肉をスナックサンチュで包んで食べる。

 

「このパリパリな食感にさわやかな後味が肉の脂をより美味しくして、野菜自体の味もお互いに高め合ってる~」

「この霜降り豆腐も絶品だ~。醤油で食うのもポン酢もよし。鍋に入れてもうんまいなー!」

 

小松と俺も例に漏れず野菜の神髄を堪能している。

ちなみに俺が食ってるのは大トロ大豆を原料として作った霜降り豆腐だ。

ステーキの様にジューシーなのに豆腐のようなさっぱりとした食感で食が進む。

 

その他にもアーモンドキャベツで作られた無限塩キャベツやポークポテトのポテトサラダなど次々出てくる絶品料理を味わっていく。

余談だが、俺は鍋で煮込まれて出汁の旨味を吸ってクタクタになった葉野菜が結構好みである。

 

そんなこんなで小一時間は野菜尽くしコースを堪能した俺たちは心地のいい満腹感を堪能した。

 

かくいう俺はトマ糖で作られたレッドアイ、トリコはワインでシメに入っていた。

 

「いやー、まさか焼き肉屋で野菜をお腹いっぱい食べるとは思ってませんでしたよ」

「ふん、オレ様をここまで満足させた礼に、今日は食いつくさないでやるぜ」

「何と競ってんだオメー……で、本題は?」

 

 

本当ならこの流れで察してはいるが、ここは何が何だか分かっていないという体で聞く。

レッドアイを飲み干してトリコに、今日ここに呼んだ真意を問いただすと、しばし無言でワインを飲みつくす。

 

今日のトリコはほとんど俺たちに接待みたいな感覚でご馳走してきたのだから、たとえ原作を知らなくても何かあると考えるのは当然のことだった。

 

そして、待ってましたと言わんばかりに今日呼んだ真意を話した。

 

やはりというべきか、それはベジタブルスカイ、すなわちオゾン草捕獲へのお誘いだった。

 

何のことだか分かっていない小松と食材に興味を持ったゾンゲにその詳細を話す。

 

曰く、雲の上にある天空の野菜畑の野菜を食べるとベジタリアンになるとか。

また、その野菜畑の中で最も絶品な野菜がオゾン草であり、それをIGO会長に依頼されたのだとか。

 

一連の話を聞いた小松とゾンゲは野菜の魅力を味わった直後ということもあり、これを快諾した。

もちろん、俺もオゾン草や他の野菜に関しても興味しかなかったので、この話を請けようとは思っていた。

 

しかし、ココやサニーではなく、なんで俺たちを誘ったのか気になって聞いてみると、半ば想像してなかった答えが返ってきた。

 

「今回行くところは屈強な猛獣よりも厳しい環境である以上、強さだけじゃあ限界もある。そんな状況でもブレずに対処し、サポートすることができるお前らの力が最も重要なんだ」

「いや、空にも屈強な猛獣はいるんだけど……」

「出くわしてもお前らなら勝手に生き残ることを前提に切り抜けるだろ? そういう点じゃあテリーよりも信頼できるんだよ」

 

あぁ、ウージャングルでトリコを庇った時のことを言ってるのか。

 

まあ大抵の危険ならどうとでもなりそうだし、今回のレベルアップでようやくベジタブルスカイにも行ける水準になったと節ばあからもお墨付きをもらった。

 

まあ何となく理由は分かったので、今回の話に乗ることにした。

こっちは生存力が長けている分、実力はクソ雑魚ナメクジなのでトリコとか実力派の仲間はありがたいのだ。

 

何はともあれ、天空の野菜畑という研究のし甲斐があるところへ行けるのだ。

多少の思惑には乗ってもいいだろう。

上手くやれば自前でベジタブルスカイの野菜を作れる自家製家庭菜園なんてのもできるかもしれない。

 

「で、味わってみねーか? 天高くそびえる野菜の王を」

「行きます! 味わいたいです!」

「そいつを食ってオレ様が新たな王になってやる!」

「俺の相棒もこう言ってるんで」

 

涼しい顔を保ちながらも夢を膨らます興奮を抑えきれていないライズの姿にトリコは穏やかな表情を浮かべて、ライズや小松たちを誘った発端となった時のことを思い浮かべていた。

 

久しぶりに会長と再会し、手合わせするも完敗した直後に一龍と語らっていた。

 

『おぬし、いい料理人と出会ったな』

『あ?』

『とぼけても無駄じゃ。様子を見ればわかるわい』

 

その後、一龍は小松とコンビを組むようにトリコに勧める。

それこそが美食屋の本懐であり、フルコースを調理できるものがいなければ本当の価値は生まれない、と。

 

長年の経験談からか、その時の少し寂しそうな笑顔にトリコも思う所があった。

自分は小松にどうしてほしいか、そう思うも一龍からの話には続きがあった。

 

『それと、ライズやゾンゲのことじゃが、最初に言った通り面白い奴等じゃったろ?』

『ん、あぁ。今となってはその理由も分かるよ。あいつらと旅に出るとよ、なんだか上手くいくような気さえしちまう』

 

長らくライズたちと付き合ってきたトリコがそう呟いたのを聞いて一龍はふっと優しく笑う。

 

『あ奴等との縁は絶対に大事にするんじゃぞ。お前たちとあ奴等との出会いには必ず大いなる意味がある』

『大いなる意味……つまり、GODとかか?』

『深読みしすぎじゃ。そうじゃなくて、はぁ……まあいつも通りにしてりゃいいってことじゃ』

『分かってるよ』

 

そう返すと、一龍は「なら、いい」とだけ呟いた。

 

 

 

 

ライズたちを誘う数日前のことを不意に思い出し、トリコはライズたちが先に登って行ったであろうスカイプラントの先を見上げていた。

 

「たく、あいつら勝手に先に行きやがって」

「ライズさんは、「しばらく好き勝手させてたら勝手に落ち着く」って言ってましたし、またすぐに合流できるって言ってましたけどね」

「あいつ、仮にも自分の相棒をペット扱いしてねーか?」

 

それとも、コンビになったらこれが普通なのか?

少しコンビを組んだら小松との関係が変わってしまうんじゃないかと疑念が湧いてしまう。

 

そもそも、今回の食材はIGO会長からの直々の依頼であり、小松に重大な告白をするため、そして過酷な環境を克服するための修業でもある。

トリコにとって三重にも重大な意味がある旅ともいえる。

 

そのためか自分でも気負っている自覚はあるものの、いつも通り気楽な様子のライズたちに思うことがあった。

普段なら適度な息抜きになるようなやり取りでも、今だけは少し煩わしいと思ってしまった。

 

なので、あっちが勝手に先行してくれたのは気が楽だった。

幸いにもライズたちなら大抵の困難や強敵相手にもしぶとく生き残るんだろうなぁ、という謎の信頼があったので心配もしていない。

 

「ま、ライズが止めないってことは大丈夫って判断したからなんだろ。こっちはこっちで自分のペースで行こうぜ」

「そうですね」

 

トリコ達は先に先行していったライズたちのことは一旦忘れて登頂を再開するのだった。

 

 

 

 

先を急ぐライズたちと慎重に、確実に登っていくトリコたちは足並みそろえてはいないけれど、どちらも確実にスカイプラントを登って行った。

 

目的地に近づくにつれて環境が厳しくなり、猛獣にも襲われたりする。

そんな過酷な旅ではあるものの、四人はギブアップすることなく歩みを止めない。

特にアイスヘルという極寒の旅を乗り越えた小松の成長は凄まじく、ペースを落としているとはいえ、自分の力でトリコに付いていけていることは大したものである。

 

しかし、小松が自力で登れる限界を超える程に過酷な環境を迎える前にトリコが小松を背負い始めた。

本格的にトリコの修業が始まるという時、先行していたライズたちは既に最大の困難に直面していた。

 

 

 

 

 

 

トリコ達を大きく引き離して先行していたライズたちの歩みは緩むことなく、それどころか軽快ですらあった。

 

途中でエアゴリラの群れや邪悪の豆の木の大群に出くわして乱戦状態になるも、戦いを避けてやり過ごすことが十八番の彼らを止めるには至らなかった。

 

不安定な足場と狂暴な猛獣たちの猛攻もセンチュリースープでレベルアップした彼らからすれば些事でしかなかった。

 

「臭い強めのガス出して」

「ふん!」

「グルメスパイザーで圧縮圧縮して……超濃密催涙ガス弾をくらえ!」

『『ゴアアアアアアァァァ!』』

 

ゾンゲの屁を具現化したグルメスパイザーで圧縮して高圧ガスにして猛獣たちに噴射、制圧という最恐コンボで撃退していた。

エアゴリラと邪悪な豆の木はもちろん、風に吹かれたガスを吸い込んだドリルバードが遠くで墜落していく姿が見えたのは気のせいではなかった。

 

スカイプラントをうまく攻略できているのはライズたちの方だった。

 

「がっはっは! なんでい、天空の蔓も大したことねーな! このままぶっちぎりで優勝間違いなしだろこれ」

「そうだといいんだけどな。今、この瞬間にも環境が変わってきてるし、数分後には積乱雲ができるぞ。ここらの気温も下がってきたのを見るとダウンバーストが間違いなく来るし、強風と雷、雹も出てくるから注意しとけ」

「は~? まだ晴れてんだろうが」

「それでもこれからそうなるんだよ。グルメ気象予報での知識もそうだけど、レベルアップしてから周囲の温度とか湿度とか空気中酸素濃度やその他の環境の構成要因を感じ取れるようになったから間違いない。ヌルゲーしたいなら相棒の忠告くらい聞いとけ」

 

未だ晴れている上空を見上げるゾンゲの胸をトンと軽く小突く。

 

今回のセンチュリースープでのレベルアップの時、ライズは身体能力と共に五感も成長したために、周囲5km範囲内の環境の細かな変化を感じ取れるようになった。

感じ取れるのは温度や湿度、空気の流れくらいである。

 

しかし、ライズの膨大な知識量と旅をしてきて異常気象に遭遇してきた時の経験則と直感で気流の流れや温度の流れなどを把握することができるようになった。

 

この空間把握能力によって能力範囲内の仲間や敵のコンディションもほんの少しだけなら分かる程度ではあるが、仲間のサポートという点ではライズにうってつけの能力と言えた。

 

「ほーん。まあお前が言うならなるんだろうな」

 

鼻をほじりつつもいずれ来る寒さに耐えるために体から不凍液を分泌する。

なんだかんだ言うが、ライズの言うことだけは無条件で信じているのである。

 

「よっし! こっからが本番だ! ふんどし締めなおせよ!」

「上等だ! オレ様の本領見せてやるぜ!」

 

ライズも呼吸を切り替え、二人とも気合十分

万全の準備を迎えたところで事件は起こった。

 

「うお」

 

急に天気が激変した影響か強風が吹き荒む。

これを容易に予想していたライズはスプーンをスカイプラントにめり込ませて踏ん張る。

 

「あ」

 

しかし、その後ろで気の抜けた声が聞こえた時には既に時遅し。

振り返ると後ろで気合入れていた相棒(ゾンゲ)の体が宙に浮いていた。

 

間の抜けた表情の相棒がエアゴリラたちと共に空に巻き上げられて行くのを見て反射的に思った。

 

ゴリラの群れに原始人放り込むと本当に見分けが付かないもんだぁ。

 

「って言ってる場合じゃねえ!」

 

咄嗟にトングでゾンゲを掴もうとするも、あっという間に有効範囲外に出たゾンゲはどんどん上空に舞い上げられ、その横ではエアゴリラに落雷が飛来した。

 

すぐ隣で一瞬で炭と化したゴリラたちを見てゾンゲはようやく今の状況を正しく理解し、顔を青ざめた。

 

「ぎゃああああああぁぁ! ライズうううううううううううぅぅぅぅぅぅ……っ!」

 

顔の穴という穴から汁を撒き散らしながら、その姿は真っ黒の積乱雲の中へ消えていった。

 

 

「ゾンゲええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ライズの慟哭が標高数万メートルの中で響き渡った。

ゾンゲの運命やいかに!?




その後のライズ

ライズ「まあ、あいつらならなんやかんやで生き残るから大丈夫だろ」

とりあえず、ゾンゲなら原作でもこうなるだろうなと思ってこんな感じにしました。
これが食運! 食運はギャグ補正と同じ力を持つのだ!

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