もう食運なんてコリゴリだあぁぁぁぁ!   作:おむれっつごー

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年末に間に合わせる予定が休み最終日ギリギリになってしまうた……

正月はまったりとしていて遅れてしまいましたが、今年もよろしくお願いします。


ハニープリズン入所

ヘビーホールで包丁を研いでもらい、新調して気持ちを新たにしてから数カ月が経った。

あれからというもの、細胞が進化して新技を開発したり、溜まっていた研究・開発の仕事を片付けたり、ネルグで教職と給食を作ったり、鉄平の手伝いで再生をしたり、料理の研究をしたりとやることだらけだった。

 

まだまだやることがあったが、これ以上は多すぎるため割愛とする。

というか、文面にすると仕事量がえぐすぎて吐き気してきた。

しかし、最近では細胞の進化が加速度的に進んだおかげか、わずかな睡眠だけで体力が全快するくらいに基礎代謝が上がり、総カロリー数もトリコたちと出会った時と比べて莫大に増えた。

 

具体的に言えば、心身共に疲労のピークでぶっ倒れても数時間の睡眠で体力も体調も全快になり、それから食事も休憩もなくても数週間は働いても問題ないくらいの体力もついた。

そして何より、どんなに積み重なった仕事も一日あれば片付けられるほどに頭の回転も早くなったのだ。

 

そういうこともあり、仕事とは別に趣味の家庭菜園や料理の開発にも力が入るようになり、より一層俺の生活の密度が上がったが、それが思わぬ事態を引き起こした。

ゾンビの様に休むことなく働いた俺の姿がコンプライアンスというか、職場環境的によろしくないと思われたのか、IGO内で私室を作られるだけに飽き足らず、書類とかの基本的な仕事は代筆してもらい、時間の制約に縛られることなく研究に没頭できるようになった。

 

また、俺の趣味も実益を兼ねていると判断されたようで、趣味のためにIGOの研究室とは別に自分専用の最新技術の粋を集めた個人用研究施設も任されるようになった。

『最先端技術開発研究所』の所長に任命されたのだ。

ちなみに、現在の職員数は代理を含めて俺とヨハネスさんの二人だけである。

 

俺の仕事に付いて行ける*1のは彼だけだったのだ。

 

こうして、俺の生活は基本的な管理業から解放されて自分のやりたいことと自由な研究、そして新しい技術の取得や新たな食材の探索なども充実する流れとなった。

 

そんな風に生活が潤う傍で、俺は大きなビッグイベントを迎えることとなった。

 

 

 

 

世がグルメ時代に明け暮れ、湧いて出るような美味な食材を追い求める熱狂的な時代と言える。

 

しかし、ほとんどの人が分かっていても、目を背けている事実がある。

光あるところに影がある、輝かしいグルメ時代の光が強ければ闇もまた強くなる。

 

人々を旨味で笑顔にする食材と違い、食べた者を中毒にする麻薬食材や用法容量を守らなければ死に至らしめる違法食材なるものも存在する。

また、食材だけでなくルビークラブの様に食材としての価値以外にも希少な猛獣は高値が付くため、密猟も大きな社会問題となっている。

 

それを犯した者が収監される場所であり、今回の舞台であるハニープリズンの中を俺とゾンゲは興味深く見渡しながら案内されていた。

 

「うわー、ここまで陰鬱さ漂う雰囲気なんて絶対に自然界じゃ見られないよな」

「美味そうなものもねえし、さっさと帰りてえなぁ」

 

と言いつつも辺りをキョロキョロ見回している様子から何気にエンジョイしていることが窺える。

 

その様子に案内役として先頭を歩いていた男が相槌を打つ。

ハニープリズン副所長オーバンその人である。

 

「ライズ殿とゾンゲ殿はここは初めてですかな?」

「あんまり縁がないというか、できればあんまり来ない方が良いとこだしね」

「ごもっともですな」

 

ライズなりの冗談も正しく受け取る辺り、性格の良さが垣間見える。

人の外見と中身は必ずしも一致するとは限らないのだ。

しかし、悲しいことに人間の第一印象は見た目だとライズも分かっているのだ。

あぁ、無情。

 

「おい、あのでっけえ門はなんだ?」

「あれはハニープリズンのフルコースの執行場ですよ」

 

世の無慈悲な現実を噛みしめる中、ゾンゲが進んでいる方向に『Menu』と書かれた巨大な門を見つけ、オーバンが丁寧に返す。

 

「刑務所のフルコースとは興味出てきたぜ。オレ様にも食わせろ」

「心惹かれているところ申し訳ないのですが、あれは食べる方ではなく、『刑』のフルコースなのですよ」

「……けい?」

「まー、簡単に言うとだな……」

「刑の執行……それをフルコースに例えただけですよ」

 

首を傾げるゾンゲにオーバンから引き継ぐ形で説明する。

 

「刑ってことは、ここは牢屋ってことか!?」

「はい。このフロアそのものが牢屋であり、『刑』というフルコースを味わう食卓でもあるんです」

 

そう言ってオーバンに付いて入った部屋に広がっていたのは正しく、地獄だった。

 

味覚を奪われた者

好きな味を失った者

麻薬食材に身も心も穢された者

 

グルメ時代という光の影に落ちた闇がそこにはあった。

 

「な、なんだこりゃあ……」

「ここは味覚を奪われた者たちのいる前菜フロアです。このように、上層は食えるだけマシですが、下層へ行くにつれて死ぬほど不味い食事を食わされたり、食事や水を抜いていき、最後はその身を切られたり焼かれたりして死季の森へと捨てられ確実な死を迎えます――これが「グルメ刑務所」ハニープリズンです」

 

慣れた口調で淡々と話すオーバンにゾンゲは滅多にかかない冷や汗をかいた。

前菜の時点で響いてくる断末魔を再度確認し、振り払うようにそのフロアから出ていく。

 

しばらく歩いていると、心なしか降りていくたびに重くなっていく空気を感じ取ってかゾンゲがオーバンに聞こえないように耳打ちしてきた。

 

「なあ、早いとこ用事済まして帰ろうぜ。気味が悪くなってきちまったよ」

「元からそのつもりだから心配すんな」

 

今まで表情に出さなかったが、俺だってこんなところに居たくないのは最初からそうである。

仕事でなければこんな所には絶対に来ないのだ。

 

オーバンにその気持ちが伝わってしまったのか、その後は特に何の紹介もなく寄り道することもなく目的の場所まで着いた。

巨大な門を構える所長室――今回、俺達にとある依頼を出したラブ所長のいる所である。

 

「デケえええぇぇぇぇ! メルクみてえな巨人なのかよおおぉぉぉ!」

「入りますよ。所長」

 

騒ぐゾンゲを気にすることなくオーバンが扉を開いて入ると、椅子に座る小さな人影が俺達を待ち構えていた。

 

「あちしをあんなの(初代メルク)と一緒にすんじゃないわよ」

「……へ?」

 

どこからどう見ても子供にしか見えないほど小さいハチの恰好をしたラブ所長その人である。

 

 

 

「あなたたちがライズちゃんにゾンゲちゃんね。会長からは話は聞いてるわ」

「ここの所長がガキってふざけてんのか!」

「子供じゃないわよ失礼ね! でも、そっちは驚かないのね。大抵は似たような反応されるんだけど」

 

ゾンゲが騒ぐのも無理ないと思うほどに子供じみていると内心思っている。

しかし、ライズはあらかじめ原作で知っていたため特に驚かなかったが、その反応が新鮮だったのかラブ所長が話を振ってきた。

 

「いや、大抵の0職員とは顔合わせしてて、何となく印象とか聞いてたし……」

「あらそう。つまんないわね……と言っても、あちしも顔合わせは今回が初めてだから似たようなものね」

「たしかに、色々と後継者問題で色んな技能を無理矢理叩き込まれたから大抵の0職員は知ってるんですけどねー……待ってください、再生屋と食義だけでも手一杯なのに鍋作りとか整体とか手品とか降霊術とか暗殺術とか武術とか天文学とか外科医療とか仙術とか1年でマスターするとか絶対に無理……あぁ学ぶことはトテモスバラシイ――」

「あらやだ。急に眼が死んだわ」

「戻って来いライズううううぅぅ!」

 

は! しまった、未だに師匠たちに詰め寄られて知識を叩き込まれた(文字通りの意味で死にかけながら)時の記憶がフラッシュバックして我を見失っていた!

 

「あちしは一子相伝とかじゃなくて仕事の引継ぎしか伝えることなかったし、その時からすでにオーバンに任せようとしてたからライズちゃんに用事もなかったからねー」

「ラブ所長みたいに後継者くらい早く作ってほしいんですけど。あの人たち人の心がないのは間違いねーっす」

「その技術を余すことなく習得したあんたもあちしから言わせればバケモノよ」

「えぇ……」

 

なんでディスられてんだろ俺?

ラブ所長が気の毒なような同情するような目を向けてきたからではないけど、そろそろ本題に入ろう。

 

「とりあえず、本題に入ってくださいな」

「そうね。会長も絶賛するあんたたちの腕を見込んで、改めて依頼するわね」

 

何か会う人から妙に高い評価をもらうんだけど、会長マジで俺たちのことなんて言ったんだろうか。

 

 

「この前、一匹の猛獣を捕獲して収監したんだけど、今でも暴れまわって手を焼いてるのよ」

 

「普段ならあちしが手懐けるところだけど、相性が悪くて調教できないで困っていたところに会長からあんたたちを紹介されたのよね」

 

「相手は子供だけど、手懐けた猛獣や適当な囚人をぶつけてみたけど手に負えないから、何とかして頂戴」

 

 

 

 

 

所長室よりも下層の処刑場

 

屈強な処刑獣がたむろし、死刑判決を受けた囚人や一時的に隔離されている猛獣が収監されているエリアで男は静かに胡坐をかいている。

 

傷だらけで丸太のような極太の四肢に括りつけられた鎖など意にも介さないその男が、珍しく自宅で寛いでいるかのように聞き耳を立てていた。

 

「おいおい、オヤジの話じゃあ腕っぷしはからっきしじゃなかったのかよ」

 

頬まで裂けた口から洩れる声は若干、弾んでいた。

まるで味気ない日常の中でちょっとした暇つぶしを見つけたかのような心地であることを感じさせた。

 

「ま、うめえ料理前の丁度いい余興ってとこか。せいぜい頑張んな」

 

凶悪な顔をさらに歪めて嗤う男は再び口を閉じる。

これから起こる騒動をお手並み拝見ならぬ、お手並み拝()といった所であろう、そう思いながら神経を集中する。

 

第一級危険生物――ゼブラ

 

本日、機嫌良好也

*1
息切れして死にかけながらも仕事をこなしているだけ




ライズの師匠s:いざというときのために技術後継を考えていたが、才能ある人材がなかなか見つからない(メルクとラブ所長、与作を除いて)中で教えたことを早く覚えて腕も文句なしのライズという存在にガラにもなくはしゃいでしまい、無茶な教育を施したことを反省するが、全てを覚えて免許皆伝を果たしたライズに引いた人たち。その後、別口で後継者を見つけたとのこと

ライズ:なんでも覚えられたためにドン引きされた人。ピエン

ゾンゲ:またしても何も知らないゾンゲ

ゼブラ:肝心な時に役にしか立たない人、誰よりも早く人命救助を行う危険生物の皮を被った聖人、バーサーカーを偽った万能サポートキャラなど属性てんこ盛りな人。会長からライズたちのことを聞いていたが、弱いという話なので興味すら持っていなかったが腕のいい料理人ということでハニープリズンに来たライズに美味い料理を作らせようとしていた矢先、二人が戦うことになったため、もしかしたらと期待している。なお、その期待は早々に裏切られることとなる。
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