もう食運なんてコリゴリだあぁぁぁぁ!   作:おむれっつごー

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到着、デザートラビリンス

街で吹っ飛ばされるお茶目を披露しながら砂鍋を堪能し尽くし、ついでに砂鍋の素も全種類買い込んでからゼブラと共にトリコたちが向かったとされる砂漠の街へと向かった。

いくらトリコ達でも徒歩で砂漠の横断はきついため、レンタルラクダを借りに行く手はずとなっていた。

 

その他にもグルメピラミッドを目指すにあたって必要な物を道中で買い足しつつ、トリコがいるであろう砂漠の街へとたどり着いた。

街の様子は原作でもそうだったが、この世界のニュースで見たように紛争が起こっていた場所だからかほとんど廃墟と化している。

 

「こんなボロいところでちゃんとしたラクダなんて借りるつもりかぁ?」

「街で聞いてもラクダのレンタルをしてるのってここだけらしいからな。まあ、多分なんとかなんだろ」

「なんでそんなことが分かる?」

「こういうときの勘と運は相当なものだと自覚してるからさ」

 

ゼブラが俺の返答に何も返さない辺り、ちゃんと目的のものがここにあるのだと聴覚で分かっているからなのだろう。

住民には申し訳ないが、この街では特に見る物はなさそうなのでゼブラの後に付いて行くと、トリコたちの様子を視界にとらえた。

 

「こらぁトリコ! てめえら、オレ達を置いてくんじゃねーよ!!」

 

老婆と会話しているトリコへゼブラが声をかける。

どんな会話をしているかなど、ゼブラは分かっているようだが、基本的にそういう人間社会に関わることなんてどうでもいいと思っているゼブラに遠慮の文字はない。

 

ゼブラのこの反応を見て次に起こることをすぐに分かった俺はサッとゼブラから遠ざかる。

 

「あの方が、まさかゼブラ様……!?」

 

老婆の驚きの声が響いた瞬間、ボロボロの廃屋に隠れていた住民たちが一斉に出てきて一瞬でゼブラを取り囲んだ。

対するゼブラは敵意のない対応に困惑するばかりで手を挙げる様子はない。

 

今ここに、ゼブラ教が誕生するのをこの目で確認した!

とりあえず拝め拝め!

 

「何だてめえら鬱陶しい!! ていうか坊主、テメーはなに拝んでんだオラァ!」

「いやぁ、何となく」

 

世間ではゼブラ出所で世界恐慌並みの混乱が起こっているのに、紛争地域では戦争を無くした英雄扱いなのだ。

世間に対する影響度はトリコと引けを取らない。

それに、公表されてないが、美食屋としての貢献度も高いのとGODの復活と四獣の人間界進攻のことを考えた一龍会長の采配がなければ絶対に出所なんてさせられなかっただろう。

 

そんなことを思っていると、地響きと共に地面が揺れる。

 

「ん」

「おっ」

 

その時、この砂漠に放たれたというヤマタノサソリが寂れた街へ一直線に向かってくるのを確認した。

これまでに町や砂漠の資源、生態系を蹂躙してきた危険生物の姿にゼブラを称えていた住民たちは恐怖に染まる。

 

「うわああぁぁぁ!」

「生物兵器だああぁぁぁ!」

 

一目散に逃げていく住民に目もくれずにゼブラはヤマタノサソリをただ見つめている。

内心、チョーシにのってるとか思っているんだろう。

 

「一応言っておくけど、あのサソリの尻尾は毒抜きすると絶品なんだよね」

「ふん」

 

ふっふっふ、こういう感じで言い訳をこっちで用意してやれば、色々と理由付けて助けてやるんだろ?

この見事なフォローに感謝してこれからの旅のフォローは誠心誠意こめてしっかりと痛でぇっ!?

 

「何で今殴った!?」

「そのニヤけ面、チョーシのったこと考えてたんだろうが」

 

俺の頭から拳を放すと、逃げていた女の子が転び、ヤマタノサソリが毒針を突いてきた。

 

「きゃあああぁぁぁぁぁ!!」

 

悲鳴が砂漠に響き、次の瞬間には小さな命を無慈悲に刈り取る。

それが今までの紛争状態において当然のことだった。

 

弱肉強食

 

ヤマタノサソリはこの瞬間、自分がこの人間たちの命を掌握した頂点に立っていると感じていた。

それが数年続いたのだから、過去にトリコと対峙した数百年生きるガララワニのように命の危険もなく、今日も思うままに狩りをして過ごすのだと錯覚した。

 

己こそが最強

 

己こそが頂点

 

己に空腹など存在しない

 

 

この砂漠で過ごすうちに体の芯にまで染み渡った驕り、昂りは

 

 

「下等生物がチョーシにのっちゃあいけねーぜ」

 

 

より強い危険生物(ゼブラ)によって文字通り、切り刻まれた。

 

多くの生命を蹂躙してきた尻尾、強靭なはさみが己の視界と共にバラバラにされたことを理解する前に、この砂漠で頂点を気取っていた生物の命は砂嵐の中へ静かに溶けていくのだった。

 

 

 

 

 

おぉヤマタノサソリよ、死んでしまうとは情けない。

俺でもボイスカッターで死ぬことはないというのに。

 

ボイスカッターでヤマタノサソリを切り刻んでロリっ子を助けて決め台詞を決めたゼブラは現在、小松と改めて会話をしていた。

小松も最初にゼブラに抱いていた疑念を払拭させたのか、最初の時よりもゼブラ相手に堂々としている。

 

小松としてはゼブラがロリっ子を助けたことがポイントが高かったようである。

その気持ちはよくわかる。

原作で初めて見た時は完璧なまでのツンデレ具合にダークヒーローを思い浮かべたほどだったから。

 

「おい坊主、テメーもこっち来い」

 

ゼブラがバラバラにしたヤマタノサソリの残骸を集めていた時、一通りの会話が終わったであろうゼブラが手招きする。

今のタイミングなら報酬として小松の身柄を要求しているはずなのだから、俺は関係ないのでは?

そう思いつつも呼ばれたので近づくと、ゼブラが話を続けた。

 

「よし、役者も揃ったところで今回の報酬の話だ」

「え?」

 

まあ、この場面でならその話になるだろうな。

ここでゼブラは小松の料理をいつでも作る様に条件を付けるが、小松もゼブラに条件を付けるなど対等な立場にのっとって条件を付け合ううちに小松の物怖じしない振る舞いを気に入ってコンビになるよう迫る名シーンだ。

 

さしずめ、俺は成り行きを見守る証人って意味で呼ばれたのかな?

 

そう思って他人事のようにその場に居座ることなく、すぐにこの場を離れるべきだったと思ったのは、この後のゼブラのちょっとした一言だった。

 

「小僧、坊主……今回のオレの報酬はお前たちの料理だ」

 

……お前、()()

 

「お前らはオレが望むとき望む料理をどんな時でも必ず作ってこしらえる」

「……分かりました。それでメロウコーラが手に入るなら……でも、ボクからも条件があります!」

「ねえ、ちょっと? この依頼って小松にだけだよね? さっきの『お前たち』ってのは何かの間違いだよね?」

 

いや、待って。

ちょっと待ってほしい。

 

傍で小松とゼブラが原作通りのやり取りをしているが、今はそれどころではない。

ゼブラが言った『お前たち』っていうたった一つのワードが頭の中でエコーの様に反響していた。

 

いや、でも待てよ。

今ならまだ料理をいつでも作れっていうだけだから、料理をいつでも作って食わせればいいだけだから。

なんならコンビ志望は小松だけな可能性もあるから!

 

ライズは小松やゼブラから離れた場所で冷や汗をだらだら流しながら自分にそう言い聞かせる。

しかし、それと同時に恐れていた。

こういう嫌な予感を感じるときに限って嫌な予想は当たるものだと。

 

「あ、なんか忙しそうなんで、俺は失礼しまブェ!」

「テメーは何勝手に逃げようとしてんだ」

 

そろっとトリコたちの元へ向かおうとしたけどゼブラの音壁に阻まれ、捕まった。

頭をがっしりと掴まれて小松の元へドナドナされたところでゼブラは小松と俺の顔を一通り流し見して口端をニィっと釣り上げた。

 

「テメーら、本当にトリコとゾンビに適応できてんのか?」

「え?」

「ゾンゲです」

 

愛称かわざとか分からない相棒の名前イジリに突っ込むも、今の心境はそれどころではない。

 

ちょっと待ってこれはやばい。

今のレベルじゃあ流石に音速も振り切れないから逃げようにも逃げられない。

この状況をどうにか変えられないかと高速で頭を働かせるが、それよりも先にゼブラが口を開いた。

 

「今回の報酬はお前ら二人がオレのコンビ……いや、トリオになることだ」

 

ま、ま、巻き込まれたあああぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「えぇ!? それは……!」

「ふふ……お前らはオレに完全に適応している。間違いなく、最強になるぜぇ」

 

驚愕する俺に構わずどんどん話を進める様子に俺は放心したい気持ちを無理矢理動かして二人に割って入る。

 

「今、俺、コンビいる、お前、コンビ、なれない!」

「ライズさん、あまりの驚き様に会話が原始的に……!」

「てか、既にコンビがいる人を横から掻っ攫う真似は基本的にルール違反というか、普通はやらないからね!? 礼儀というか、マナーというか!」

「知るかよ、んなもん。オレがしてーって言ってんだろ」

「言ってみただけだよコノヤロウ!」

 

俺は今にしてようやく、自分が置かれている危機的状況に気付いた。

気付いた時には時既に遅し、自分が最も悍ましい状況に巻き込まれたことに冷や汗と悪寒が噴出して止まらない。

 

このトリコ世界で四天王のヒロイン枠にはまることは、これから起こるであろう苦難に巻き込まれることを意味する*1

例に挙げると、美食會への誘拐とかグルメ界で心臓をパーンされるとか、ネオとの最終決戦だとか。

 

あれ、そういえば美食會からの誘拐未遂は既に起こっているし、なんなら小松よりも先に目を付けられてたし。

危惧したことが既に起こりつつあったというか、既に起こっていたことに

 

 

もしかして、俺はとっくに詰んでいたのか?

 

 

「……カヒュッ」

「ライズさん!?」

「おい坊主!!」

 

認めたくなかった事実……危険からできるだけ遠ざかるという目標が既に継続困難だということに気付かされた俺は小松とゼブラの前で酸欠を引き起こし、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

ということがあってから既に数日が過ぎた。

俺達はグルメピラミッドを目指してラクダに乗って移動していた。

 

ゼブラからロックオンされて原作の魔の手が足どころか既に全身包んで沼に引きずり込んでいると自覚してあまりのショックに気絶した俺は、そのまま貯水ラクダの上に乗せられていた。

俺はゾンゲと一緒のラクダに乗せられていた。

 

トリコ曰く、メロウコーラの熟成が迫っているから、そのまま連れてきたとのことだ。

仮にも気絶した人を過酷な砂漠の旅に黙って同行させるのはいかがなものかと。

 

そう思っていたが、全員曰く「ライズは頑丈だから連れて行っても大丈夫」という共通の認識があったから連れてこられたのだ。

その謎の信頼はどこから出てくるのか……

 

ということがあったが、基本的に赤い砂漠の「砂漠の迷宮(デザートラビリンス)」への道のりはさほど辛くはなかった。

途中に出てくる猛獣は基本的にゼブラの『ウィークポイントボイス』で追い払えるし砂嵐も事前に察知できるから危機的状況にも備えることができる。

 

「ゾンゲが分泌した熱を遮断できる清涼剤のような体液を塗りたくったおかげで、ここまでは快適なんだよな~」

「貯水ラクダでも貯水量には限りがあるからな。水分補給を減らせるのであれば減らすに越したことはねえよ」

「全身がベタつくのが気に入らねえがな」

「ゾンゲさんがいなかったらボクはどうなっていたことか……」

「そうだろうそうだろう。偉大なるオレ様に感謝してもいいんだぜ?」

 

そして、ゾンゲが全員分に暑さと乾燥に耐性がある体液を分泌して全員に塗りたくることで日中の暑さから熱を遮断し、砂埃から肌を守りつつ保湿している。

また、夜になると氷点下にまで下がるほどの気温差による体力低下も防ぐおかげで、砂漠を歩き始めてから数日が経った今でも誰一人として体調を崩すことなく順調である。

 

本当ならデザートラビリンスに着くまでの旅も普通に過酷なはずなのに、ゼブラとゾンゲというサポートキャラ二人という欲張りセットのおかげかもしれない。

 

「あ、蛇口のサボテンだなんて可愛いですね! 水も出ているし、汲んでいきましょうよ」

「……(スッ)」

「レドも水筒ありがとう。ラクダにも飲ませてあげよう!」

「待て小松。周りをよく見てみな」

「え、うわぁ!? 猛獣の骨がこんなに!?」

「ふん、不用心な小僧とガキだ」

 

レドは基本的に無口だけど、この旅では主にアシスタントとか荷物持ちを担当していた。

ただ、子供だからか小松と同じで知識がまだ足りなかったりと何回か自然の罠にかかる場面もあった。

ここは今後の教育次第かな。

 

そんな風に順調に、比較的まったりとしながら旅を続けていき、ようやく目的地にたどり着いた。

 

「見えたぞ!」

 

トリコの言葉と共に全員が一斉に目を凝らすと、今までの砂漠とは一変して赤い砂漠が地平線一杯に広がっていた。

 

「本当に赤い砂漠だ!?」

「砂に含まれる鉄分が酸化して赤く見えているんだ」

「だけじゃなくて、猛獣どもの血が染み込んでやがんだ。どうやら、ここからが本番みてーだぜ」

「どんな環境だろうと、このゾンゲ様の敵じゃねーぜ!」

 

見た目は赤くなっただけの砂漠、トリコたちが言うようにあれも一種の自然現象、弱肉強食の作り出す景観の一つだと言えるのは確かだ。

 

しかし、ライズだけが赤い砂漠に自然現象だとかでは言い表せない、異様な雰囲気を感じ取っていた。

 

「ラクダはこれ以上耐えられなさそうだから、ここらで逃がそう」

「……そうだな。過酷な環境下で猛獣が跋扈するデザートラビリンスをラクダで攻略できるわけねえ」

 

原作では暑さでバテて流砂に呑まれたラクダたちは全部逃がす。

失わなくていい命は失わないに限る。

 

荷物を全て下ろして通った道を引き返していくラクダたちを見送って赤い砂漠に一歩踏み入れた瞬間、洗礼を受けた。

 

「ぐああ……あぁぁぁ!」

 

今までの砂漠がオアシスだったと思わせるほどの異次元的な暑さに体中の水分が抜けていく。

その証拠に砂漠の長旅で重宝していたゾンゲの清涼剤型の体液が一瞬で干からびた。

 

グルメ界の熱帯地域に匹敵する暑さを経験したトリコはすぐに指示を出す。

 

「ゾンゲ! 体液を今までの倍以上出してくれ! 小松は水分ほきゅ……小松!? どこだ!?」

 

自分の隣に付けてすぐに守れるようにしていた小松が音もなく姿を消したことにトリコは焦りを募らせる。

その様子を嘲笑うようにトリコたちの周辺で多くの流砂が起こり始めた。

 

「やべえ、ゾンゲとレドも消えちまった。多分、この流砂だ」

「流砂だけじゃなくて、これも原因だ」

 

すると、トリコたちの進む方向の先で複雑に織りなす迷宮が出来上がっていた。

 

「こ、これは一体……」

「蜃気楼だ。温度差や空気中の不純物による光の屈折・反射が作り出す幻影だが、ここのは通常の砂漠よりも群を抜いてる」

「これが小僧たちを誘い込んだんだ。探すから、あいつらはお前が何とかしろ。トリコ」

「おう」

 

自然が作り出した自然の迷宮と迷宮の前に屈強な猛獣たちがトリコ、ゼブラ、ライズの前に立ちはだかる。

メロウコーラ捕獲の旅はここから佳境に入った。

*1
今更である




ライズ:生存本能が高い性質上、敵意や殺意に敏感になった代わりに無害な好意や親愛などの生の感情を前もって察知することができず、小松とヒロインレースをする羽目になったクソボケの悲しきモンスター。透き通る世界観で青春を送る某アプリゲーの便利屋68の社長の顔をコピペした醜態をさらした。データキャラなのに好感度調整をミスるうっかりさはどうしようもない。データキャラなんか止めちまえ! 現在トリコと共にデザートラビリンスの攻略組になった。

ゾンゲ:目立った活躍は今のところないが、地味な所で生存率を高めるための永続バフをかけるサポーターとして成長中。自分の相棒がメロウコーラ捕獲をかたに身売りさせられたことに気付いていない。デザートラビリンスで流砂に呑まれて流されてグルメピラミッド直行組になった。

トリコ:ゾンゲと同じく自分の相棒がメロウコーラ捕獲をかたに身売りさせられたことに気付いていない。割とゾンゲの力をアテにしている。デザートラビリンスの攻略組になった。

ゼブラ:原作と違って小松の他にももう一人料理人を囲もうと二股実行中。原作を通しても複数の料理人を手元に置こうとした三虎の先駆け的存在に昇進を果たした。現在、デザートラビリンスの攻略組になった。

レド:ニトロの中で精神年齢が幼いためか身の回りの様子に興味津々となり、若干注意散漫となっている。ライズの命令がない限りはアシスタントに徹するが、ライズがいない時は自主的に行動する。現在は流砂に呑まれてグルメピラミッド直行組になった。
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