なので、苦し紛れですが投稿です。
「うわああああぁぁぁぁ!!」
「ぎゃああああああぁぁぁぁ!!」
「……!!」
デザートラビリンスの蜃気楼と流砂に飲み込まれた小松とゾンゲ、レドは並んで流砂に流されていた。
どこへ続くとも分からないウォータースライダーを滑るように流されていく。
その間に流砂に呑まれた獲物を食らう砂中の猛獣たちが流されていく獲物を追いかける。
しかし、その獲物から匂ってくる刺激臭に怯んで追うのを断念していた。
「ぎゃああああぁぁ!! 落ち着けええぇぇ! これはきっとショートカットイベントだああぁぁ! 初見の滑り台アクションはタイムアタックよりもノーダメノーミスで完走することを目指すんだああぁぁぁ!」
「いやあ、言ってる意味が分からないんですけど!?」
「タイムアタックは常設イベントならいつでもリトライできるから安心しろおおぉぉ!」
「だから何の話ですか!? ゾンゲさんが落ち着いてくださいよ!」
「……ッ!!」
ゾンゲがパニックに陥って刺激臭を所かまわず放っているおかげで襲ってくる猛獣の数は劇的に減っているが、それでも飢えた猛獣を全て追い払えている訳じゃない。
三人の危機は未だに去ることはない。
一方、蜃気楼の中から襲い掛かってくる猛獣をトリコが追い払った所でゼブラが砂中に流された小松たちを捕捉していた。
「おいおい、ヤベエな……三人揃ってどんどん離れてやがる。しかも砂中の獣に追われてるぜ」
「何だと!? 何とかならねえのかゼブラ!!」
「うるせーな。慌てなくても差し迫った危険はねーよ。ゾンゲがパニクってくせぇ汗垂れ流してるからか襲ってくる獣は割と少ねえ」
「割と、てことは完全に追い払えてるわけじゃねえってことか。なら、早く追って合流しねえとな」
「流砂を追っても渦で入り乱れてるから合流できる確証はねえ。デザートラビリンスを突っ切るぜ」
三人は頷き合い、陸路から進む。
美食屋を招き入れ、惑わしてきたデザートラビリンスへと足を踏み入れる。
ゾンゲたちを追う道中は過酷を極めた。
自然が作り出す迷宮の中で一つしか存在しない正解の道を進みながら体感温度90度以上の灼熱に耐えなければならない。
そんな過酷な環境ではあるが、蜃気楼という自然現象が作り出すデザートラビリンスの造形は見事という外なかった。
螺旋階段
幾何学的構造物
シャンデリア
その全てが人や獣を惑わす罠であり、アイスヘルで見たオーロラのように美意識を惹きつける芸術性を纏っている。
過酷な環境に耐えながらも辺りを見回し、改めて偉大な自然が作り出す狂気的な芸術を堪能しているとゼブラが口を開いた。
「周りに気を取られるんじゃねえ。警戒を怠るとテメーもすぐに呑まれるぞ」
「あ、ごめん。なんだか、アイスヘルのオーロラみてえな、神秘性って言うの? そういうの感じちゃって」
「そう感じるのも分かるけど、その蠱惑的な神秘性も自然の作り出した天然の罠っていうのを忘れるなよ」
「分かってるって」
三人は普段の雑談の様に喋りながら歩みと警戒を緩めない。
「オーロラで思い出した。なんだかオーロラの出る美味いスープ作ったらしいじゃねえか」
「知ってたの? 刑務所の中でも外の情報って入ってくるもんなんだな」
「いや、
「あぁ、やっぱ来てたのか」
「スープを作ったのは小松ね」
「お前だってその後に極光出汁って美味い出汁作っただろ」
「ほう……なら、コーラが手に入ったらオーロラでも何でもいいから美味いモンたらふく食わせろ」
「それくらいは別にいいけど……」
トリコはゼブラとの会話に修業時代を想起させる。
どんなに苦しいときでも弱音を吐かずに強がっていた性格は変わらねぇ、と。
今ではそこにもう一人の新しい友人が加わったことは些細なことである。
トリコがそう思っている横で全く別のことを考えていたのはライズだった。
(前世の頃は猛暑に弱くて苦労したけど、食没と呼吸法とグルメ細胞の環境適応を駆使すればそれほどでもないな)
既にトリコ達よりも先に食没を習得していたライズは持ち込んでいた水と食料を全て食べて備えていた。
ラクダに乗る前に食没をしようものならラクダがライズを乗せられていなかったため、ラクダから降りてトリコが戦っている最中に補給は済ませていたため、ここから先の旅は二人と比べてカロリー管理は非常に楽だった。
しかし、ライズにとって備えすぎるということはない。
もう既に後方で安全に暮らすという希望は潰えた*1以上、危険を少しでも遠ざける選択肢を増やさなければならない。
つまり、やることはいつもと同じである。
(グルメピラミッドでのキーポイントはジジの料理手帳と二体目のニトロ……手帳は小松が回収してくれるからいいけど、問題はニトロのカカの方か)
グルメピラミッドには二体(もしかしたら他にもいるかもしれない)のニトロが乾眠しているらしいが、その片割れがブルーニトロの奴隷から脱して一龍会長に保護された銀のシェフ、カカ。
カカはピラミッドを脱出した後、経緯は分からないけどグルメ界のエリア7に向かい、ブルーニトロに殺される。
原作においてはペアの捕獲の際にブルーニトロがなりすました場面もあったが、小松にペアの捕獲法を教えたりアナザの時は調理チームと一緒にアカシアのフルコースの捕獲に貢献した重要人物だ。
そんな重要人物をブルーニトロに殺される前に何とか接触してグルメ界に行くのをとどまらせれば味方も増えるのではないか。
カカが死なないようにするために接触する、今回のグルメピラミッドへの旅に参加したもう一つの目的でもある。
しかし、これについてはできればラッキー、としか思っていない。
というのも、俺が下手に動いて万が一にも乾眠から目覚めたばかりのカカとトリコたちが出会って戦いにでもなれば大惨事だ。
それに、今回の旅に同行しているトリコとゼブラが俺を単独行動させるとは思えない。
この二人を撒くことはできるけど、不穏な動きをして不審に思われたり、最悪仲違いしようものなら目も当てられない。
だから、カカとの接触はその時の食運に任せるしかない。
幸いにもこのイベントは原作的には食霊だろうが生きている状態であろうが大きな変化はないと思われるので、できるならやる、程度の心づもりでいいと思っている。
今回のやることを頭の中で整理していると、俺達の進む先に砂中から頭に花をつけた巨大な魚が現れた。
サンドフラワーフィッシュである。
「トリコ、ぜってー捕まえろ」
「言わずもがな!」
エコーロケーションによる反響マップを最大にまで広げているゼブラに代わってトリコが仕留める。
流石にこの暑さでは二人も割と危なかったらしい。
特に強くなかったということで難なく撃退した後はバラして肉と血を一つ残らずに食べる。
この魚もちゃんと調理すれば美味いのだが、砂漠のど真ん中の酷暑の状況じゃマトモな調理はできないのでそのまま食べる。
血も全て飲み干して全身に浸透させるイメージで細胞を進化させながら酷暑の環境を克服していく。
そうして進んでいる内に体が焼ける感覚も水分が失われていく感覚も感じる様になった。
「ようやく、この砂漠もオレに適応してきたな」
「そうかい。ライズはどうだ」
「俺もこの環境に割と早く適応できたな。やっぱ厨房で火を扱ってるからかな?」
「お前。オレ達よりも暑さの影響受けてねーよな。汗の臭いからして普段の時と変わってなさそうだし」
「てめーのしている変な音の呼吸も何か関係してんのか? おもしれーもん使ってんな」
「暫定的には波紋の呼吸法って呼んでるけど、割と使えるから使ってんのよね。何なら教えっか? ゼブラは肺活量大きいからすぐに覚えるかも」
「何だよゼブラだけズリーな。オレにも教えてくれよ」
「別にいいけど、見返りでオレをより一層護ってくれ」
「それはゾンゲに言ってやれよ」
「ふん、坊主一匹護るなんざヨユ-だな。という訳で、テメーは別に覚えなくてもいいぞトリコ」
「んだとコラ。テメーよりも早く覚えてやる」
「ふざけんな。こいつも言ってたようにオレの方が向いてるって言ってんだろ」
トリコとゼブラもこの環境を克服できたのか雑談も最初の様にどこか我慢した雰囲気は消えて自然な会話となっていた。
もちろん、呼吸のことは二人に教えるつもりだ。
そうすれば俺の生存率の向上にも繋がってくるからな。
そんな感じで会話も交えながら先へ進んでいくと、ゼブラが立ち止まる。
「どうした? ゼブラ」
「……小僧とゾンゲの運、相当なものだな。見失わねえように追っかけてたら
「まさか!?」
「おぉ……デッカ」
ゼブラの言葉にトリコは弾かれたように砂丘を登ってゼブラと同じ方向に目を向けて、驚嘆の声を上げた。
俺も砂丘に登って確認すると、同じく驚嘆した。
砂漠のど真ん中に位置する世界の謎、グルメピラミッドの壮大な景観が佇んでいた。
近くに寄って見ると、より一層壮大だった。
可動域一杯に見上げるとてっぺんが霞むほどだ。
前世のスカイツリーと同じくらいはあるんじゃないだろうか。
「すげえ! なんてでかさだ!」
「それでもこれはピラミッドのほんの一部、氷山の一角だ」
「氷山の一角!?」
反響マップでピラミッドの状況を把握したからこそ、この建造物の異様さを理解したようだ。
このピラミッドのように見える建造物は巨大な城の屋根の部分でしかない。
大部分は砂の中に埋まっている。
「そういえば、この辺りだけじゃなくて砂漠全体の砂の積載量が年々増えてるって聞いたことがあったけど、その砂のかさが今日までずっと増え続けているのだとしたら……」
一度だけ原作で言及されてないということで調べてみたこともあったけど、グルメピラミッドという危険な場所で大規模な調査もできるわけもなかったらしくてほとんど謎のままだったらしい。
しかし、原作を知っているからこそ、ブルーニトロが作らせたものだと思っている。
俺の中に一つの仮説があった。
もしかすると、この城は手帳を護るためだけに建てられたのかもしれない。
カカがここにいたのも、その手帳を探して来た。
しかし、何らかのトラブルで乾眠を余儀なくされたのではないか、と。
前世から記憶を受け継ぐ身としては、こういう考察もなかなか楽しかったりする。
トリコって回収されてない伏線とか色々あるし。
そんなことを考えていると、ゼブラの声に思考を中断する。
「んなことよりも小僧だ。あのトカゲとゾンゲは別にいいが、オレの吠え弾にもビビらねえバカがいたら小僧の方がヤベエ」
ゼブラが真っ先にピラミッドの中に入ろうとする姿にトリコは珍しいものを見たように目をわずかに見開く。
「……どうした、いつになく協力的じゃねーか」
その後、掠れかかった声で返す。
「くっく……あいつも今回の旅の報酬だからな……死なれちゃ困る……ケホ……」
「ピョッ!?」
「何だライズ? 変な声出して」
「い、いやぁ~……何でも」
いっそ狂気的な笑みと言える形相と『あいつ
本当はすぐにでも忘れてほしい所だけど、どうすることもできないので諦めることにした。
あぁ、無情。
ゼブラに続いてピラミッドに入ると視界一杯に複雑な通路が複雑に入り乱れていた。
「ここは入り口じゃなくて頂上だ。だから、ここは砂に埋もれている下へ向かうのが正解……」
「ゼブラ?」
ゼブラの声がどんどん掠れていく様子から、そろそろ限界が近づいていると分かる。
さて、ここからは料理人である俺が少し働こうか。