皆さんも花粉症には気を付けましょう。
今回はオリジナル考察がありますが、ご容赦ください。
遥か昔に建てられたという謎の建造物・グルメピラミッド。
数多の美食屋がグルメピラミッドを目指すも、ほとんどが
複雑怪奇なグルメピラミッドの謎を解き、トリコたちは中心部である下へ歩を進めていた。
「下へ向かうピラミッドとは初めてだ」
「ていうか、ピラミッドじゃなさそうだしね」
ゼブラの後を追う俺とトリコの会話にゼブラは反応しない、というより会話に入れない。
既に喉が限界を迎えようとしているのだ。
螺旋階段を下っていくと暗闇の奥から眼が光る。
出てきたのは全身が白い皮膚に覆われ、髪の毛が白蛇となって蠢いている。
二足歩行の巨体で俺たちを見下ろしてくるゴルゴロプスという猛獣が唸り声をあげて俺たちを食おうと襲い掛かろうとしたその時、俺は包丁で髪の毛の蛇を何匹か切り落とした。
その直後、トリコとゼブラがゴルゴロプスにそのまま噛みつき、生きた状態で肉をむさぼっていく。
今までの食事描写では少なからず調理をしていたのに、この場面の野生さながらの捕食シーンをトリコがやると思っていなかったので、初めてこのシーンを見た時の衝撃は今でも忘れない。
俺も少し肉を一切れ頂戴したところで再び歩を進める。
消費カロリーとエネルギー効率の観点からすると、俺は分け前の2割ほどがちょうどいい。
「ライズ、お前、急に前に出て奴の髪の毛を切り落としてたけど、お前が積極的に前に出るなんて珍しいな」
そう思いながら進んでいくと、トリコがさっきの俺の行動に疑問を持っていたらしい。
トリコからすれば不測の行動を起こされたことへの困惑が大きいという所だ。
今までトリコたち前衛に任せてきたから当然と言えば当然の反応であるが、これにはちゃんと理由がある。
「そりゃあ、今さっきの猛獣の下処理に必要だったからさ」
「下処理? さっきのあれが?」
「まあね、あのまま食らいついてたら味の落ちた肉を食う所だったんだぜ?」
「なるほどな……いや、それは分かったんだが、お前戦闘行為自体が体質が受け付けないんじゃなかったのかよ。普通に包丁で髪切ってたよな?」
今までの俺の戦闘アレルギーのことを言っているのだろう。
確かに今までは明確な敵意や殺意を抱いて戦闘行為に入ろうとすれば途端にカロリーが枯渇するという原因不明のアレルギーが発症していた。
しかし、その問題はこれまでの激闘の経験と細胞のレベルアップによって克服しつつある!
「細胞が進化したおかげでな、敵意や殺意を持ちさえしなければ特に問題なくなったってわけ。さっきみたいな下処理のような純粋な調理目的であれば基本的に戦闘できるようになったのさ。それと、俺よりも細胞の練度が低い相手であればアレルギーも出なくなったんだ……と言っても俺よりも弱い奴なんて大分限られてるからなぁ……」
「よかったじゃねえか。今まではそこんとこ融通利かないところがあったけど、少しはやりやすくなるんじゃねえか?」
「ところがどっこい! 今のところ問題なくぶん殴れるのは捕獲レベル20台レベルと一般人だけなんだよ。試したから間違いない」
「試したって……おま、一般人殴ったのかよ!?」
「悪質な犯罪者だから大丈夫! ゼブラに協力してもらったんだ」
「それハニープリズンの囚人のことだろ!? 囚人はお前らのサンドバッグじゃねえよ!」
確かにあれは我ながらひどかった。
ゼブラが俺のアレルギーのことを訝しんで色々と検証するために死刑囚を拾っては羽交い絞めにしてぶん殴るというイカれたことをし続けた時期があった。
普通にラブ所長から大目玉食らったけど。
そんな会話をしながら始まったばかりのグルメピラミッドの探索を続けていく。
それから探索を再開した直後、ゼブラは原作通りマップを維持できなくなって小松たちを見失った。
とは言ってもゼブラの聴力は健在なため、直前まで開いていたマップを記憶頼りに辿りつつ小松たちの元へ向かっているということだった。
その間にも襲い掛かってくる猛獣たちを捕獲して食いながら体力を回復している。
ここまでは原作と同じだが、唯一違うのは料理人の俺がいることで原作よりエネルギー補給がスムーズにできているということだった。
「しっかし神経使うなここ。ここで出てくる猛獣どもが全て特殊な手順を踏まねえと肉が熟成しねえなんてな」
「めんどくさがって雑に倒さないでくれよ? 俺が指示出すから」
「分かってるよ。そうしねえと肉が熟成されなくて不味くなっちまうんだからな」
トリコがげんなりしてグルメピラミッドでの戦闘に辟易している。
ゼブラも少しやり辛そうにしているも、口に出さないのが華であろう。
一度だけミスして普通に倒した猛獣の肉だけが固くて生臭かったから、それ以降はトリコとゼブラも俺の指示に完璧に従うようになっている。
やはり正しい手順を踏んだ方が美味くなり、エネルギー摂取効率も上がるのだから当然だろう。
ここで出てくる猛獣はさながら、特殊捕獲食材といった所か。
そして、過去に学んだ知識を頭の中で統合し、このピラミッドの文明形式が理解できた気がした。
「もしかしたらここは古代の料理人育成所だったのかもしれねえ」
「料理人の育成? こんな所で?」
「他の部族では特定の試練を乗り越えることで成人扱いされるとかってあるだろ? 原始人がリーガルマンモスのジュエルミートを求婚相手に婚約指輪として渡すように、特殊な猛獣たちを適切に処理できてこそ一流の料理人として認められる、という文化がここにはあったのかもしれないってな」
実際にここを作ったのはニトロっぽいんだけど、建造理由は間違ってない気がするんだよね。
「なるほど、意図的に集めた猛獣が文明の崩壊と共に放し飼いにされて野生化し、完全に迷宮化されたのがグルメピラミッドって訳か」
「てことはだ、ここで採れるというメロウコーラの捕獲方法も特殊中の特殊って訳だ」
「マジかよ……おい頼むぜ。小松がいない以上、食材の声を聞けるのはお前だけなんだからよ」
「しょうがないな~、そこまで言われちゃね~」
「おま、もしかして調子に乗ってるな!? いつもはこんな頼りにされないからって!」
「調子に乗れるときに乗るのが、この世を渡っていくコツなのさ」
とはいえ、どこかでカカと合流したいから確約はできない。
いずれ小松と合流するのは分かっているから、その後の成り行きで上手くやるしかない。
そんな会話をしていると、声を出せないゼブラが指を盛大に鳴らして歩みを早めた。
トリコの嗅覚では分からないかもしれないが、俺はわずかな振動を足で感知していた。
このタイミングだと、恐らく小松がデロウス包丁で猛獣を撃退したのだろう。
となると、地下水が入ったはず。
さて、ここからどう動くか。
ライズがどう動くか、思案していた時に小松たちはゼブラたちと同じくピラミッドの中を探索していた。
しかし、ゼブラからの吠え弾の支援も見込めない状況の中で猛獣と鉢合わせてしまった。
あわやピンチと思われたその時、小松、ゾンゲ、レドにゼブラからの最後の声としてサウンドアーマーが付与されていた。
そして小松に宛てられた音弾による助言からデロウス包丁を猛獣にふるったことでピラミッド内で崩落が起こり、三人は落下して今に至る。
「これ、ちゃんと……進めているんでしょうか……」
「建物の崩落で敵から逃れて新たな探索ルートが開けるのは定番イベントなれど、危機から逃れたということと、順調に目的地へ進んでいるという安心感を与えてくれる……メロウコーラはオレ様たちの進む先にあり! つまり、問題なし!」
「またゲームの話してる……」
小松も度重なるゾンゲのゲーム脳発言に慣れつつある自分に悲しさすら覚える。
レドはゾンゲの発言に特に何の反応も見せない。
「でも、まさか一振りでここまでの破壊力だなんて……ここでは無暗に振り回すのは止めよう……」
「うおおおぉぉぉ、ここだけ豪華な造りになってるってことは、ここにはきっとお宝があるぜー!」
「いや、無暗に動き回るのも止めましょうよ!!」
元気だなぁ、と呆れながらもここに迷い込んだのが自分一人だけじゃなくてよかったと思う。
ゾンゲの能天気さはこういう場面では意外と気持ちを落ち着かせる謎の安心感がある。
そして、小松は知る由もないが、ゾンゲの一挙一動が目当ての食材の元へ向かう道しるべとなっている。
小松だけでもいずれは目的地へたどり着くのは確かなのだろうが、ゾンゲが一緒にいることでよりスピーディーに食材の元へ導かれていることはこの場の誰も思いもしてないのだろう。
「……」
「えっと、行きましょうか?」
「(コク)」
数ある棺桶に目もくれずに走るゾンゲを小松とレドは歩いて付いて行く。
「……」
その後ろで棺桶の中から光る眼に見つめられていることにも気づかずに。