もう食運なんてコリゴリだあぁぁぁぁ!   作:おむれっつごー

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毎回書き忘れてしまいますが、誤字脱字の指摘ありがとうございます!

続きをどうぞ!


ピラミッド内部にて②

「なんだこりゃ?」

「こ、これは一体……」

 

ゾンゲの後を追っていた小松は驚愕した。

 

その部屋は謎の壁画に囲まれていた。

一見すると古代人が描いただけの貴重な絵画にしか見えないだろう。

 

しかし、小松にとって壁に描かれている絵画そのものが小松に語り掛けているような気がした。

いや、もっと言えばこの部屋が小松とゾンゲを呼び寄せた、というべきなのか。

 

「……」

 

そして、レドは絵画を優しく触れながらじっと見つめている。

まるで、何かを懐かしんで物思いにふけっているように。

 

「なんだよ、何もねえじゃねえか」

 

しかし、ゾンゲには絵画の価値が分からず、お宝がないか探しまわる。

そうして奥へ奥へと進み、部屋の最奥で祭られているように置かれている本を見つけた。

 

「ぬ!? こ、これはぁ……!」

「知っているんですか!? ゾンゲさん!」

 

本を見て恐れおののくゾンゲにただ事ではないと小松が駆け寄るも、ゾンゲが怯えている本からは何も感じられず、不審に思って手に取る。

 

「この本が何かあったんですか?」

「まだ中身は見るんじゃねえ! 見る前には必ず装備を整えてセーブするのが鉄則だろうが!」

「いや、何言ってるんですか?」

「まさか、何もわかってねえのか? これだから初心者は迂闊すぎんだよ気を付けろ!」

「えぇ……」

 

理由を聞くとさらに訳が分からなくなるのは小松にとって初めてのことだった。

 

「そんなゲームじゃあるまいし……それに、ボクたちがここに来るまでの間何もなかったじゃないですか。ほら、今も静かで……」

 

呆れながらも自分たちが通って来た道を振り返ったその時、小松に影が落ちる。

 

「え?」

 

自分の体に覆いかぶさろうとしているその姿に見覚えがあった。

それもそのはず、体がカラカラに乾いていて大型であろうとも、その姿はレドをそのまま大きくしたような姿なのだから。

 

「うわあああぁぁぁ!」

「ぎゃああぁぁぁキモイいいぃぃぃぃ!」

 

ミイラのような猛獣が小松とゾンゲに襲い掛かるその瞬間、絵画に見とれていたレドが二人の悲鳴に反応し、猛スピードで戻ってきて猛獣を殴り飛ばした。

 

「うおおおぉぉぉ! 助かったああぁぁぁぁ! よくやったレドおおおぉぉぉぉ!」

「いや、でも、立ち上がりましたよ!? 逃げましょう!」

「ギシャアアアァァァァァァ!!」

「あ、レド!」

 

興奮しているのか、レドは自分と同じ姿をした生物にも牙と闘争心をむき出しにしてとびかかり、猛獣と取っ組み合う。

相手は体が乾ききって力が発揮できていないにもかかわらず、体格の差によって実力は拮抗していた。

 

「おい、早く逃げるぞ!」

「え、でも、レドが……!」

「あいつはあんなのでやられるタマじゃねえよ! それよかここにいると巻き添えでやられちまうって!」

 

驚いて尻もちをついていた小松をゾンゲが手を取って一緒に逃げようとした時だった。

 

「ゴエエエェェェ!!」

「ぎゃあああぁぁぁ! 何かいたああぁぁぁ!」

「そんな、挟まれた!?」

 

一つ目の怪鳥のような猛獣が小松たちの前に立ちふさがる。

万事休すか、そんな考えが頭をよぎったその時、ゾンゲたちの背後から黒い影が通り過ぎ、怪鳥の体に食らいついた。

 

レドと取っ組み合っていた猛獣だった。

 

「ギシャアアァァァァァ!」

「ゴエエエェェェェェ!」

 

まるで何千年も空腹だったかのようにレドとの相手を棚上げして目の前の獲物を食らう。

それに抵抗する怪鳥も暴れまわって猛獣を振り払おうと暴れまわる。

そして、レドも乾いた猛獣へ取っ組み合う。

 

もはや収拾のつかない状況からゾンゲたちは逃げることしかできなかった。

 

二人が逃げようとしたとき、小松が足を止めて本を見た。

 

「これだけは……っ!」

「あ、おい!」

 

猛獣三匹が暴れまわる横を通って本を取り、素早く戻ってくる。

小松が戻ってきたのを確認したゾンゲは小松と共にその場から走って逃げた。

 

「なあ、なんだったんですかあれは~!」

「き、きっとこのピラミッドの主が呪いによって蘇ったんだ! 呪いによって蘇ったボスを攻略するには、何かしらの特殊なアイテムかイベントをこなさねえと倒せねえ場合がある!」

「いや、絶対に違いますよね!?」

 

ある意味では余裕な様子のゾンゲの言葉を横に聞き流しながら、とにかく猛獣たちが殺し合う危険地帯から少しでも離れる様にと走る足を止めない。

そして、二人は走った先の曲がり角を曲がった時、巨大な影が立ちはだかった。

 

「え……」

「ぎゃああぁぁぁ! 今度はなんだよおおおぉぉぉ!?」

 

全身がうろこで覆われており、異様な形相の四足歩行の怪物が佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

少し時は遡る。

 

トリコたちは小松たちを探す傍らで出くわした猛獣たちを倒し、エネルギー補給のために食っていく。

 

更にはライズの存在がかなり大きく、猛獣たちに対して効果的な倒し方を指揮することで肉が正しく熟成され、常に高い栄養価の食事にありつけていた。

 

もし、トリコとゼブラだけだったらほとんどクズ肉で効率の悪いエネルギー補給を強いられていたであろう。

 

そんなことは起こらず、思っていたよりも早い段階でエネルギー補給もでき、充実した食事もできてストレスもなかった。

まさに理想形での食事を繰り返し、補給を続けてきた結果――

 

「あ」

 

ゼブラの声が戻った。

 

「ゼブラ! 声が戻ったのか!?」

「あぁ、意外と早く戻れたな」

「小松たちは無事か!?」

「祈ってな」

 

声が戻ってすぐに反響マップを開く。

 

この時まで、ゼブラはわずかに聞こえてくる音で小松たちの状況を大まかでしかないが、把握していた。

 

しかし、即座に反響マップを開いたことで、より具体的な状況を把握し、焦燥と共に音弾を小松たちに飛ばす。

 

「てめえら! そっちに行くんじゃねえ!」

 

だが、タイミングが遅かったのか、巨大な猛獣と小松たちが遭遇してしまった。

それにより即座に吠え弾で威嚇しようとするも、逆にかき消された。

 

舌打ちと共にゼブラは既に次の行動に移していた。

 

「トリコ、坊主! 近道するぞ」

 

二人はゼブラが深く息を吸い込む姿に次に何をやるのか分かってしまう。

 

「あ、おい!」

「まあ、そうなるよな!」

 

二人が耳をふさいだその瞬間、ゼブラを中心とした無差別破壊が起こった。

 

「サウンドバズーカ!」

 

ピラミッド内部を破壊しつくし、床をぶち抜く。

それでも勢いは止まらない。

 

そのまま小松たちのいる下層エリアまで破壊し尽くした。

 

「え!?」

「ぎゃあぁぁぁ! もうこれ以上イベント消化なんか間に合わねえって!」

 

天井が崩れ、あわや瓦礫に押しつぶされると思われた時、小松に迫っていた瓦礫が真っ二つに切られた。

真っ二つになった瓦礫の向こう側から現れた、小松が最も待ち焦がれた姿が小松の名を叫んだ。

 

「小松!」

「ドリゴざああぁぁん!! 来てくれたんですね!?」

 

互いに離れてから数時間であれど、お互いに命を懸けた時間も相まって二人の再会は劇的なものだった。

 

そして、お互いの無事を喜んでいたのはトリコ達だけでなかった。

 

「ゾンゲええぇぇぇ!」

「うおおおぉぉぉ! 心の友よおおおおおぉぉぉぉぉ!」

 

グッチャグッチャに汚く涙で濡れた泣き顔も今となっては懐かしいと思えた。

離れていたからこそ分かる、お互いが必要不可欠な存在だったと実感しながら落下してくるライズと待ち構えるゾンゲが再会のハグをかました。

 

 

――瞬間、二人の足場だけがぽっかりと崩落した。

 

「「え」」

「「「あ」」」

 

その場の全員が目を点にしてその一瞬だけ時間が止まった感覚を覚えた。

しかし、現実は無情である。

 

「「ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………――」」

 

崩落場所から天にまで届くような悲鳴が時間と共に小さくなっていき、最後には聞こえなくなっていった。

 

「…………」

「…………ゼブラ」

「……あれだ、間が悪かったって奴だ」

「おい」

 

さっきまでこの空間を支配していたピラミッドの主のサラマンダースフィンクスの威圧と小松たちとの感動的な空気も全て吹き飛び、この場に似合わない微妙な空気が一瞬だけ流れ込んだという。

 

 

 

 

 

「いやぁ、随分と深くまで落とされたな~……」

「い、生きてる……ここはまだ天国じゃねーよな?」

 

ゼブラの大規模破壊によってさらに下層まで落とされたライズとゾンゲは普通に生きていた。

ライズの生命力であれば普通に大丈夫であるが、ゾンゲに至ってはゼブラが張ってくれたささやかなサウンドアーマーのおかげである。

 

そんなこともあって無事に下層に降り立った二人が辺りを見回すと、そこは壁一面が石造りの特に何もない個室だった。

 

何もなければそれでもよかったのだ。

 

「部屋のど真ん中に棺桶さえなければね」

「……」

 

ライズとゾンゲの視線は部屋のど真ん中に置かれている棺桶に注がれている。

ただの棺桶なら問題なかったのだが、棺桶の中身に心当たりがあるライズと、ちょうどミイラに襲われたゾンゲに至っては嫌な予感しかしていない。

 

ゾンゲはともかく、ライズはここに来た目的の物(であろう)を前に重要な思い違いをしていたことに今さら気付いた。

 

(カカが空腹のあまり襲ってきたらどうしよう……)

 

よく考えれば、カカもここで出会ったニトロの様に長い間ずっと食べずにいる恐れがある。

その結果、空腹のあまり、寝起き直後に出会った生物に襲い掛かるんじゃないかと思った。

 

(干からびているとはいえ、カカを抑えるのに俺とゾンゲじゃあ厳しい戦いになるし、かといって万が一にもトリコかゼブラが来ようものならカカを殺しかねない……)

 

ここまで厳しい旅を続けていたライズは今までこの可能性に気付かなかったのかと自分の迂闊さを呪いながら冷や汗を流していた。

 

ここでカカが正気を保ってくれる以外、どうにもできない状況なのだ。

 

カカ襲い掛かる→二人で逃げ回って時間を稼ぐ→トリコたちがやってくる→カカ殺害

 

「どうしたライズ!? 呪いか!?」

「いや~、本っ当に自分って呪われてんじゃないかと思えてくるよ」

 

運が悪かった時に起こる最悪の未来に体が震えてくる。

ゾンゲも何故か過剰に棺桶に恐怖を抱いているが、この様子なら刺激するような真似はしないと分かることだけが唯一の希望である。

 

そんな風に部屋の隅っこに固まってガタガタ震えていると、不意に棺桶がひとりでに開いた。

 

「「え」」

 

な、なんで!?

水は入ってきていないはず!

 

そう思っていると、その答えは棺桶の下から湧き出てきた湧き水が雄弁に語っていた。

 

「うっそだろ、こんなタイミングで湧き水が出やがった!?」

「もう終わりだああああぁぁぁ! このまま呪われるんだああぁぁぁ!!」

 

これも食運なのか、地下から出てきた湧き水が棺桶の隙間から入ったに違いない。

 

あばば……まだ何も対策してないというのに……

 

後はもう、祈るだけしかないのか……!?

 

「そうだ!? ライズ、食えるもの全て渡せば見逃してくれるんじゃねえのか!?」

「え、いや、それは逆に刺激するんじゃあ……」

「ばっかおめぇ、お供え物さえすれば見逃してもらえるかもしれねえ……あわよくばそのまま成仏してくれるかも……」

「あれはそういう霊的な物じゃないと思うが、だが、祈るだけってよりはやる価値はある!」

 

中途半端に食材を与えれば逆に食欲を刺激して手が付けられなくなるんじゃないかという不安もあるが、少しだけでも飢えを満たせば冷静になってくれるかもしれないという希望も確かにある。

相手の気分次第などという運任せよりも、少しでも幸運を上げての運任せに頼る方がましだ。

 

思い立ったが吉日と言わんばかりに水や途中の街やピラミッド内で採った食材を揃えて棺桶の前に供える形で置き、少し距離を置いたところで俺たちは正座して頭を下げて待つ。

 

顔を伏せて状況は分からないが、重い石がすれる音、そして落下して棺桶の蓋が完全に開いた音だけが残る。

 

心臓がバクンバクンと響く中、近くに誰かが寄ってきた気配を感じた。

 

ハアァァァ……

 

こえええええええぇぇぇぇ!

近くで生暖かい吐息をかけられて心臓が一瞬だけキュッとなった。

 

普段から強い奴に睨まれる恐怖を感じているが、こういう得体のしれないものを前にすると出てくる恐怖の方が苦手だあぁ~……っ!

え? お前なら逃げられるって? 馬鹿野郎、確かに逃げられるかもだけど、強い奴と怖いものは苦手なんだよ!

 

気が動転しているのか一人で誰かに突っ込みを入れていると、俺たちを品定めするように近くにいた存在の気配が遠ざかり、カチャカチャと音が少し響いたと思ったその後、数分もしないうちに気配が消えた。

 

 

「……行ったか?」

「多分、あそこに置いていた食材も全て消えてる」

 

カカ(と思わしき)ニトロがどうやって消えたのかは分からないが、危機察知能力の長けた俺たちの勘が確かに告げているのだから間違いない。

とりあえず、危機が去ったということに。

 

「やべぇ……あやうく呪われるところだった。これもオレ様の機転のおかげか」

「いや、機転というか運がよかったのが大きいと思う」

 

ゾンゲは緊張から解放されたのかいつもの調子を取り戻していたのだが、俺の方は微妙な気分だった。

 

今回の件、ゾンゲにとっては命が助かったという点では幸運でも、俺にとっては不完全燃焼となった。

ここに来るまで大分視野が狭くなっていたらしい、原作のターニングポイントということもあってプレッシャーを感じていたのだろう。

 

咄嗟のことで軽くパニクった結果、カカと接触できたものの、何も伝えられずに終わってしまった。

変な所でアドリブを入れて原作の流れを極力変えたくないという無意識的な躊躇いが少しあったのだろう。

この時点で原作などあってないようなものだろうに。

 

こういう所も今後の課題かな。

 

こうなると、本当に後は食運頼みとなってしまった。

せめてゾンゲと関わって食運がどうにか仕事してくれたらいいな、と思いつつ気持ちを切り替える。

 

それはさっきから俺たちが落ちてきた上層階で聞こえていた戦闘音が静まっていたからだ。

 

少し心に引っかかるカカとの件も全て一旦忘れて落ちてきた穴を見上げる。

 

「とりあえず、上も静かになったし、戻るか」

「おうよ! あいつらも俺たちがいねえと心細いに違いねえからな。さっさと戻ろうぜ」

「じゃあ、戻ってあのでかい奴相手にするかもしれないけど、そこは覚悟しとけよ」

「あいたた……なんだか急に腹の様子が、オレ様はここで休んでから行くからお前はオレ様に気にすることなく上に戻ってもいいぞ」

「元気そうだし、先に上に届けてやるよ」

 

穴に落ちる直前まで直面していたサラマンダースフィンクスのことを思い出したのかゾンゲが演技っぽくうずくまるのをライズは慣れた感じでスルーし、具現化したスプーンに乗せる。

 

「え、ライズ? ライズさん? 何をしようとして……」

「少し揺れるから舌噛むなよー」

「え、おい、嘘だろ? 嘘だよね? 嘘だと言って――」

「スプーン……カタパルト!」

 

怖気づくゾンゲを尻目にライズの振り上げた手の動きと連動してスプーンがゾンゲを勢いよく上へ放り投げた。

 

「アイキャンフラーーーーーーーイイイイィィ!?」

 

ゾンゲはギャグテイストな悲鳴を上げながら落ちてきた穴に向かって一直線に飛んで行った。

 

 

 

 

 

穴に落ちていったライズたちの身を案じていたトリコたちは「ライズたちだから大丈夫か」という過去の実績から出る謎の信頼から、すぐにサラマンダースフィンクスへと向き合った。

サラマンダースフィンクスが目的のコーラであるとトリコの鼻と小松が道中拾った本に示されていたということで、一戦交えた。

 

小松が調理方法を指示し、トリコとゼブラが調理を行うこととなり、サラマンダースフィンクスと一戦交える。

捕獲レベル92を誇る人間界屈指の猛獣との相手は一筋縄ではいかず、満タンにまで溜まった体力も一気に使い果たしてしまった。

 

しかし、その甲斐あってサラマンダースフィンクスを泣かせ、見事にメロウコーラを捕獲した……かに思われた直後のことだった。

 

謎の猛獣が突如として乱入して油断していたトリコとゼブラを殴り飛ばし、メロウコーラを横取りしてしまった。

 

そして、現在、その一部始終を見ていた小松は腰を抜かして目の前の惨状に悲痛な叫びを漏らした。

 

「トリコさあん! ゼブラさあん!」

 

信頼している二人が為すすべもなく倒されて地面に伏す姿は小松にとって受け入れがたい現実だった。

そんな小松を突然現れた猛獣があざ笑うかのようにほくそ笑んだ気がした。

 

無力にも泣き叫ぶ弱い生き物、そう思っているのだろう、猛獣は何の感慨もなく小松にとどめを刺そうと拳を握って地を蹴った。

小松がその驚異的な速度に反応できるはずもなく無防備な姿を晒している。

 

そんな無力な生物に向けて必殺の拳を人体急所の部分に叩き込もうとしたその瞬間――猛獣と小松の間の床が突如として爆ぜた。

 

「っ!?」

 

小松に重い一撃を入れる瞬間、珍妙な顔をしたモジャモジャの珍獣が地面から生えてきた。

しかし、猛獣に勢いをつけた拳は止める理由などなく突然現れた珍獣諸共潰し、食ってやろうと全力の拳を珍獣の顔に叩き込んだ。

 

グニュリ

 

しかし、拳から伝わってきたのは肉を叩き潰し、骨を砕く感触などではなく、摩擦が0になったと思わせるような表面を滑るような感覚。

命を容易く奪う拳が珍獣の顔の表面を覆う粘液によって滑り、勢い余った猛獣の体勢は崩れて突進した勢いのまま獲物たちと一緒に壁に突っ込む形となった。

 

「ぎょわああぁぁぁぁ!」

「ぎゃああぁぁぁぁぁ!」

 

情けない声が響いたと同時に壁に激突し、穴をあけた。

 

「ア”--ッ!!」

 

三人まとめて瓦礫に埋もれるも、狩りを邪魔された猛獣が真っ先に苛立ちのまま瓦礫を押しのけて這い上がってきた。

すぐに体勢を立て直して一緒に転がった獲物二体を確認すると、二人は目を回して倒れていた。

 

ただ気絶しただけの獲物が反撃できるような状態でないと確認するや否や、今度こそ仕留めてやると言わんばかりに筋肉を倍以上に膨張させた腕を振り上げて拳を握る。

 

仕留める――獲物二体の頭部を破壊しようと拳を振り下ろしたその直後、背後から謎の巨大な手に全身を掴まれた。

 

「あぶねえ……これから第二ラウンドだったのか。なら、小松の代わりに選手交代だ」

 

謎の巨大な手と同じ動きをする小柄な生物がまた一匹、現れた。

今、自分を掴む手の正体は間違いなく奴だ。

 

全力で自分を掴む手を振りほどこうとしても、力が強くて振りほどけない。

手を破壊しようにも硬くて逃れられない。

 

この中で一番厄介な相手だと認識した瞬間、巨大な手は大きく振りかぶり、自分を勢いよく壁に向かって投げた。

 

「ッッ!?」

 

突然のことに驚きはしたものの、単純な腕力は弱いのか地に足をつけて踏ん張るだけでその場で止まることはできた。

しかし、距離を取られたことにより、さっきまでの苛立ちは消え失せて警戒心だけが上がった。

 

敵はたった一人、そう思っていた所で思わぬ事態が起こった。

 

たった今、殴り倒したはずの二人が起き上がってきたのだ。

 

「ゼブラ、ライズ……ここはオレがやる」

「いや、ここは確実に倒すために力を合わせる、いや、合わせさせるぜ」

「バカ言え。こいつを殺すのは、オレだぁ!!」

 

さっきまで勢いを失っていた生物が再び息を吹き返し、殺気を向けてきた。

 

数千年ぶりの三体の獲物は寝起き直後に相手にするには強烈すぎた。

 

 

17連 釘パンチ!

 

メテオノイズ!

 

ゼブラ直伝――コマンダーボイス!

 

 

これはきっと試練だ。

これを切り抜けられなければ生き残れない。

 

そう思い立ったのだろう猛獣は三人に向かって駆け出した。




ライズ:思わぬ形でカカとの出会いを果たしたが、マトモにコミュニケーション採れたか不安。気持ち切り替えてすぐに復帰し、ゼブラから教わった新技で二人の指揮に入る。

ゾンゲ:ライズと一緒に落ちた穴から復帰したが、幸か不幸かニトロと衝突し、気絶中。とっさに体中から衝撃を和らげる防御膜を張ったおかげで気絶だけで済んだ。

小松:絶妙なタイミングでゾンゲがクッションになったおかげで目を回して気絶するだけに収まった幸運枠二人目。絶賛気絶中

レド:食事を終えてパワーアップを果たしたニトロにぶん殴られて気絶中。原作で言及された様に共食いをしてグルメ細胞の爆発を防ぐために捕食されることから免れた。

トリコ&ゼブラ:原作と同じく怒りとオートファジーで第二ラウンド開始。ライズの指揮というバフが入ってパワーアップ中。

謎の生物:なんかおっかない二匹(トリコとゼブラ)と得体のしれない奴(ライズ)を倒すために立ち向かう。途中で主人公みたいな描写になったが、こいつは敵です。
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