本当は年末までに一話くらい上げるつもりだったけど、途中で執筆した丸々一話が手違いで全て消えたりインフルになったり仕事で忙しくなったり、またまた病気になったりとで遅くなっていたらいつの間にか年度も変わって春も過ぎ……となってしまいました!
今後も完結を目指しているのでまだまだ諦めていませんので、気長に応援お願いします。
ジダル王国・グルメカジノ……から外れたスラム地域の小さな小屋の中
そこに二人の男がコンパクトなガスコンロで簡易的な料理を作り、一つの鍋にそれぞれの箸をつつきながら食事していた。
その二人こそ言うまでもなく、ライズとゾンゲだった。
「ここに潜入して数か月……こんな食事にも慣れちまったな」
「なんでオレ様たちがこんなこと……!」
環境適正に優れたライズは今の簡素な生活に愛着が湧き始めていたが、飽き性のゾンゲはスラムでの生活に辟易し、不満を募らせていた。
「そもそも、これって美食屋の仕事じゃねーだろうが! カジノ潜入なんてIGOの奴でもよかったじゃねーか!?」
「非加盟国にIGO職員が理由なく入れるわけねーだろ。それに、今回の報酬でメテオガーリックを指名した以上、美食屋の仕事として成立したんだからいい加減受け入れろ」
「んなこと言ったって、こんなに長引くなんて思ってなかったんだよ!」
「それはそう」
ゾンゲの不満にしつこく思う反面、めんどくささに愚痴を言いたくなる気持ちは理解ができてしまう。
現在、俺たちはとある人物からの依頼でグルメカジノに蓄えられている食材を調査している。
ジダルはもともとからグルメ犯罪が横行しているスラム街だった。
殺人や盗難など種類問わず起こる犯罪の中で最も多いのは違法食材と麻薬食材だ。
ここで違法食材と麻薬食材の違いについて言及しておく。
まず違法食材だが、厳密には食べることが違法ではなく、その食材に対してライセンスを持たずに調理、及び飲食が禁止されている食材のことである。
調理を誤れば爆発、発毒するような食材を指すことが多いのだが、これについては厳密に言えば食べること自体は罪に問われない。
正確に言うなれば、ライセンスを持たずに調理したり食べさせたりすること自体が違法であり、適切な資格、調理技術を持ってさえいれば罪には問われない。
その証拠に、毒食材専門の料理人であるタイランが罪に問われず店として営業できている。
しかし、麻薬食材は違法食材と違い、その食材に対する資格はもとより存在しない。
そのため、調理、飲食だけにとどまらず所持していること自体が刑罰の対象となる。
つまり、違法食材よりも危険度も高い麻薬食材の方が重い罪に問われる。
そんな麻薬食材が最近になってネルグに流れ始めてきたのだ。
この事態については把握していたのだが、グルメカジノの調査をしている内に、ネルグに流れてくる麻薬食材がグルメカジノから流されてきたものだと判明したことが明らかになった。
そのことを初めて知ったゾンゲはともかく、原作知識から予測していたライズであってもグルメカジノから確固たる証拠を見つけてしまっては、完全にスルーすることなんて不可能なことだった。
そのため、依頼とは別にカジノの内情を調査するしかなかった。
「ほんと嫌になるぜ。日がな一日を美味いもの食べて過ごすだけで満足できないもんかね。麻薬食材なんて食えねーもんが流行ってる時点でイミわかんねー!」
「……食えること自体が幸せ、飽食の時代だからこそほとんどの人間が忘れちまってるんだよな」
ゾンゲの言う通り、こんな仕事早く終わらせて早く美味しい物が食べたいー!
「……今夜にでもカジノに行くか」
「行くって……もう潜入しても得られる物なんて何も……」
「ここ最近、仕事に没頭しまくってたからイライラすんだよ……たまにはただの客として行ってもいいだろうが」
「いや、けどなぁ……」
「あそこに行くときは絶対に変装してったんだから大丈夫だろ。それに、カジノ自体の運営も問題ねえっていうんだから遊んでも別に良くね?」
内心で不満タラタラだった俺にゾンゲがカジノで遊ぼうと言ってきた。
それを潜入の隠語だと思って話すと、ゾンゲは言葉通り俺を遊びに誘っていただけだった。
ただ、ゾンゲには俺の苛立ちとかそういうのがバレてたようで、いつもよりも退く様子もなく強い意志を見せてくる。
腐っても俺のコンビ、どんなに口先がうまくなって頭の回転が早くなっても時折、この原始人に口で敵わない時が不思議とあるのだ。
結局、今回は俺の負けだった。
「……行くなら正装だけはしていけよ?」
「よっしゃあ! 久々の休日だぁ!」
「それじゃあ、チップ用の食材でも買って来るわ」
「いってら!」
カジノで豪遊することになったということで、すぐに準備に取り掛かる。
外に出る前にいくつか食材を取り出し、包丁を手に取って調理する。
片手に収まっていた特殊な食材は形を失い流動形になったところで
レベルアップした調理の腕により、特殊調理食材を更に特殊な調理を施すことで形を俺の思うように変えることができる。
それを応用し、変装する。
最初は顔だけの変装だったが、今では全身を覆うことで骨格や性別はもちろん、指紋や頑張れば声と網膜レベルでの変装もできるようになったので最新技術をもってしても騙せる。
更に変装だけでなく光学迷彩の様に周りの背景と同化して透明になることも可能だ。
食材の形が定まる頃には、俺の変装は既に完了している。
平凡な顔つきの男からモデル顔負けの金髪美女*1へと変貌した。
変装が完了した所でマントを頭から羽織って素性を隠しつつ、“ライズ”という人間の素性を徹底的に消しておく。
ただし、あまりに顔がよすぎるから絡まれる可能性もあるので、ここは精巧な人工のゴムマスクで変装する。
この美女の顔はカジノに行くとき用だ。
俺の普段の顔は恐らくカジノにバレている上に、しばらくは郊外のスラムにまで監視の目が回っていたから念のため今のうちに変装したということだ。
変装も終わり、外へ出て何の問題もなく食材の交換もできた。
そのまま帰ろうとしたら、途中でトリコ、ココ、小松が街を歩いているのが見えた。
あぁ、もうここに来たのか。
何でこう毎度毎度都合よく原作組と行動が被るのだろうか。
色々と都合がいいから別にいいんだけど。
これも食運だよね知ってた。
そんなことを考えながらも、トリコ達は俺の存在に気付いてないようだった。
これでトリコの鼻とココの視力をも欺けることが証明された。
そんなことを思いながら夜のカジノに向けて準備を始めるのだった。
そして、暗闇を煌々と照らすグルメカジノにやって来た。
「さて、それじゃあ遊ぶか!」
「それはいいんだがよぉ、こんな所まで来て女装かよ……」
「完璧な変装だろ? お前初めて見た時は童貞みたいな反応してたもんな。童貞だけど」
「殺すぞ」
ドレスアップした美女が自分の豊満な胸を揉みながらゲラゲラ笑う姿にゾンゲが凄い顔で突っ込んできた。
原始人の男と絶世の美女の並ぶ姿はあまりにもアンバランスだった。
周りから奇異な視線で見られているのにも構わずに二人はウキウキとした様子でカジノへ入っていった。
とりあえず、この一般客用のカジノで適当に遊んだ後、頃合いを見てVIPのグルメテイスティングの会場に向かおうかな。
勝負についても原作の流れから勝つと分かっているので、特段関わる必要もないし、ココにはこのカジノの情報も渡したから大丈夫だろ。
それまでは基本的に自由時間と思っているので、今日は遊んですごそうと決めた。
「今日は儲けてやんぜ!」
「うおおおおぉぉ! 目指せ億万長者ぁ!」
俺はゾンゲと一緒に意気揚々と換金して手始めにスロットに手を伸ばした。
「カジノはこれで中止です! どうもありがとうございました!(ヤケ)」
「早えよ! まだ一時間くらいしか経ってねえから」
俺がゲームの中止を訴えるとゾンゲが不満タラタラに反論してきた。
言いたいことは分かる、ゾンゲの不満ももっともなんだけど、理由を説明させてほしい。
「勝ちすぎたんだよ。俺ら」
「ウソだろ?」
そう、俺が早く切り上げようと思った原因は俺たちの食運が良すぎたことだった。
考えてみれば幸運、豪運、奇運を強く引き寄せる俺らがギャンブルとか結果見えてたわ。
日々のストレスから解放されたことで頭が働いてなかった。
これは最近分かったことだが、基本的に食運は食材や料理が関わらないと発動しないのだが、食運がとりわけ強いと料理や食材調達以外でもあり余った運が働いてしまって、良くも悪くも可能性が低い事象を引き起こしてしまうのだ。
つまり、俺とゾンゲが固まってギャンブルをするだけで勝ち確になってしまう。
ちなみに、ゲーム始めて一時間未満の戦績はこうなっている。
ブラックジャック……勝ち(1000万円)
バカラ……勝ち(5000万円)
ルーレット……勝ち(3000万円)
スロット……勝ち(1億円)
スロットの大当たり演出でクラッカーが鳴り、大量の100万円コインが溢れるように排出されたあたりから背中から嫌な汗が流れ、周りのSPから警戒感Maxの視線を感じた時から視線だけで周りを見渡し、逃走経路を確認した。
でかすぎる食運のせいでわざと負けようとしたり、ディーラーからのイカサマも全て突破するから、どうあがいても俺たちは勝つしか道はなくなる。
止まるんじゃねえぞ、とか言ってる場合じゃなくて止まれないんだよこっちはふざけんな。
もうまともにギャンブルを楽しめなくなっちまった。
勝負が見えているギャンブルに俺のモチベは一気に下がり、もう切り上げてもいいんじゃないかと思ってしまう。
「もう俺、トリコたちと合流してくるわ。お前はどうする?」
「オレ様はこのまま大勝ちしまくって、ここの覇者になってやる! お前ももう少し楽しめる余裕あったらいいのにな」
「こういう性格なんだよチクショウ! こうなったら大勝ちしてここの景品全部巻き上げちまえ!」
「当たり前だぁ!」
「うるせえ!」
単純に大勝ちしている今を楽しむゾンゲの能天気さが今だけは羨ましくなる。
人ってのは結果の良し悪しに関わらず結果が見えないからこそ努力できるんだろうが、こんな風に最初から結果が見えてしまうと、どうしてもやる気がなくなってしまう。
終盤のジョアのように食運をON・OFF切り替えができるならよかったんだが、今のレベルではそれもできない。
しかも、食運は消費されるものであり、決して無限ではない。
こういうところで遺憾なく勝手に消費されてしまうといざという時にカラになることもあり得るのだ。
マジで恨むぞ食運よ。
人から見れば贅沢な悩みを内心で吐き捨てながら、俺はゾンゲと別れ、トリコ達の気配を辿っていくのだった。
あり得ない。
こんなことがあっていいはずがない。
このグルメカジノの支配人を任されてから今までずっと、私は負けなしだった。
気に入った記憶を食べるためにどんな努力も厭わなかった私が、こんな……っ!
「終わりだライブベアラー、お前が勝つには、もうそのポイズンポテトを食べる他にない」
こんな素人どもに、負けるだなんて……絶対にあり得ない!
(どこで、間違えた……!)
人というのは、望まない結末を前にすると後悔の念か、反省の意からか過去を振り返る。
もちろん、それは今まさに決断を迫られているライブベアラーとて例外ではなかった。
たとえ反省したとしても、敗北が決定した
今の危機的状況に陥る数刻前、美食四天王のトリコとココの記憶を奪ってやろうとVIPルームに招き、食の神経衰弱……グルメテイスティングを仕掛けた。
トリコの戦闘力と食欲、ココの視力、小松の調理技術でライブベアラーのイカサマにも食らいついてきた。
最初は予想以上の抵抗にライブベアラーも驚きはしたが、結果は揺るがないと自分に言い聞かせた。
むしろ、トリコたちの記憶という最上のご馳走前のウォーミングアップとして嬉々として迎え撃った。
それこそが全ての間違いだった。
トリコたちの実力とポテンシャルの高さを見誤り、ただ目の前の
自分のことを捕食者と勘違いしたことが破滅に繋がったのだ。
ココの頭脳とトリコの食欲、小松の料理の実力がライブベアラーのイカサマを真っ向から打ち破ったことで追い詰められ、胃に仕込んだ生分解性プラスチックもチーズ白菜によって分解された今、この状態でポイズンポテトを食べることなどできはしない。
今の今まで勝利を確信していた歓喜と愉悦から一転し、絶望のどん底に叩き落とされた落差によってライブベアラーの正気は音を立てて崩壊した。
「認めないわああああぁぁぁぁ! こんなことおおおおぉぉぉぉ!!」
ライブベアラーに残された活路は一つ、実力でトリコたちを叩き潰すこと。
トリコたちを地下料理界構成員が取り囲み、トリコたちとマッチ率いるグルメヤクザが迎え撃つ。
両者の衝突後、まもなくして地下料理界は完全な敗北という結果を残して幕を下ろした。
(まあ、ここまでは原作そのままだったな)
俺が姿を隠した状態で原作そのままのグルメテイスティングを見届けたライズはココに叩きのめされたライブベアラーが意識を取り戻し、トリコたちをカジノ最深部へ案内している所をこっそり尾行している。
このまま姿を現してもいいけど、このまま俺がいなくてもメテオガーリックも難なくゲットできるだろう。
ここまで様子見に来たのは、万が一にも原作と外れてトリコたちが負けないようにするための備えとしてだったのだが、杞憂に終わってよかったよかった。
後はこのまま帰れば労せずともココから今回の報酬であるメテオガーリックを貰えるはず。
長きに渡る仕事の結末を見届けてその場を後にしようと彼らに背を向けたその時、不意に両肩を叩かれた。
「いい加減、お前も一緒に来い」
「今回の陰の立役者がコソコソしてちゃ恰好つかないだろ?」
トリコとココの手がそれぞれ俺の肩を掴んでいる。
完全にバレテーラ。
「トリコさん? ココさん?」
「何だ? お前の手の者か?」
「し、知らないわよ……私の部下は全員、あんたたちにやられたんだから」
小松は二人が何をしているのか理解できていない。
彼からすれば空中に手を置いて喋っているようにしか見えていないのだからその疑問も当然である。
同じくライズの姿を視認できていないマッチは刀をライブベアラーの首に添えるが、予想外の出来事にライブベアラーも戸惑っている。
「……臭いも電磁波も対策してきたんだけど、なんでわかるんだよ」
「以前ならいざ知らず、オレの鼻も成長してんだよ」
「ボクの目もね」
二人を侮っていたわけではない、ただオレの想定を超えただけだった。
こんな筈ではなかったと、ため息を漏らしながら隠れる意味もなくなったので、擬態を剥がす。
「
「ぎええええぇぇぇぇ! なんか出てきたああああぁぁ!」
体に纏わせていた光学迷彩の役割をしていた薄い膜状の食材を脱いでみんなの前に姿を見せると小松が大げさに驚く。
小松ほどでないにしろ、マッチもライブベアラーも目を見開いて驚いている。
「どうも、俺です」
「ライズさん!? 何でここに!?」
「お前……姿見せねえと思ってたらずっと近くにいやがったのか」
「見物だけしてたとは聞き捨てならねえな。仕事で来たんだよ。細かいことは雇い主から聞いてくれ。俺はもう疲れた」
俺に指を差されたココに視線が集まるも、当の本人は穏やかな笑みを崩すことなく穏やかに俺を労った。
だが、トリコは俺を離さないどころかグッと引き寄せてきた。
「ここまで来たならお前も最後まで付き合え! メテオガーリックの調理にお前も付けばあっという間だぜ!」
「おい、そこまでやるって言って……」
今回、グルメテイスティングに参加したわけでもないのに同席していいものかと思い、適当な理由で帰ろうとするもトリコは離さない。
こういう時の強引さは他の追随を許さないことを知っているため、どうするかと心が揺らいでしまう。
「メテオガーリックは特殊調理食材よ? 一人加わったところでどうにかなるものじゃないわ」
「ライズを甘く見ると恥かくぞ。お前も、ここまで言われて黙ってる訳ねえだろ」
「すまないが、小松くんのアシストをしてくれないかな。君が付いていればより良い結果になると思うんだ」
ライブベアラーの軽い意趣返しの挑発に俺よりも先にマッチが引っ掛かり、ココが追加依頼という体で引き留めてくる。
当の本人の意思を尊重してくれ。
「あれからボクも成長しました! 少しだけでもいいので是非、見ていってください!」
最後に小松からの悪意0%の純粋なまなざしに敗北を喫した。
ここまで言われて帰るのも憚られるし、これでもやりたいこと色々とあるんだけど……もう割り切って思いっきり堪能していくか。
「……少しだけ様子見て問題なさそうだったら休ませて。今日までマジで疲れたから少し休みたい……」
「やった! それじゃあ早速取り掛かりましょう!」
オレの答えに満足した小松は大急ぎで調理場へと向かっていく。
ココから毒でノッキングされたライブベアラーを預かってから少し遅れて付いて行くのだった。
という訳で現在、メテオガーリックを調べている小松を少し離れた場所から俺とライブベアラーが並んで見物している。
とはいえ、特殊調理食材のメテオガーリックには流石の小松も戸惑い、そんな様子を見てライブベアラーはほくそ笑む。
「あの様子じゃあメテオガーリックの完全調理もいつになるのやら……ライズちゃんも手伝った方が良いんじゃない?」
「あれくらいならすぐにどうとでもなる。もう少し見てな。面白いモンが見れるからよ」
オレの言葉につまらなさそうに鼻を鳴らすも、その表情はすぐに一変する。
「あ、剥けた」とアッサリと外皮を剥いたことに「え!?」と驚愕を表情に出す。
「おぉ、予想以上に早かったな。成長してる証拠でよしよし」
「ノーヒントで皮の剥き方を……刃を入れるのだって緻密なコントロールが必要なのよ!? こんなのって……!」
ライブベアラーもここに来て小松の異常性に気が付いたようだ。
俺たち観客の声も届いていないのか作業を続ける小松に何かしら感じるところがあったのか口を閉じて彼の作業を見届ける。
しばらく小松の作業を見物していると、ライブベアラーが俺に声をかけてきた。
「あなた、ここには何しに来たの?」
「何って、仕事をちゃんと完遂できるか見届けに来たってのもあるけど、今日はその仕事終わりのオフとして遊びに来ただけだ」
質問の意図が分からず、隠す理由もないので噓偽りなく答えるも、その答えに納得してないようだった。
「心にもないことを……四天王ココから聞いたわよ。あなた、最初からココにグルメテイスティングの攻略法を教えていたでしょ」
「まあね。グルメカジノが仕入れている食材を調査して、あんたが扱い慣れていて食べるのも調理するのも難しい物を重点的にピックアップしてヤマを張っただけで済んだから意外と楽だったよ。今日ので見せた食べ合わせによるポイズンポテトの食べ合わせ戦法もドンピシャで当たってたし」
雑談しながら懐に入れていた紙の束を未だ身動きの取れないライブベアラーの眼前に持っていって一枚ずつめくって見せていくと彼の顔色が一瞬で真っ青になった。
「なに……これ……」
「簡単に言えば対ライブベアラー用グルメテイスティング攻略手順って奴。今回のポイズンポテト中毒ルートもあるし、エレキバナナによるオーバードーズルート、他にも幻覚作用誘発ルートや食べ合わせによる食材爆発ルートってのもダメ元で作ってみた」
「それっぽく言ってるけど全部私の殺害予告じゃないのよ!」
びっしり書かれたグルメテイスティングの必勝法……つまりライブベアラーを是が非でも死に追いやる悪魔のレシピと言っておこう。
そもそもこのカジノでライブベアラーとまともにやり合ってもイカサマされるんだから勝てるわけがない。
だから、原作ココの使った手を焼き増しする形になるが、否が応でもギブアップに追い込む必要があった。
そのため、潜伏中はありとあらゆる伝手を使ってカジノが仕入れている食材全てを把握し、ゲームで使用する食材を予測してチャートを作り上げた。
幸いと言ってもいいか分からないけど、ライブベアラーにしかまともに調理できない食材のピックアップは簡単だった。
その中から原作の食べ合わせも含め、他の食べ合わせも作ればいいだけだった。
もちろん、それはあくまで俺の予測でしかないから後はココ頼りの賭けになってしまったが、問題なかったからよいだろう。
一連の流れを話すとライブベアラーは顔を引きつらせて化け物を見るかのような目でこっちを見ていた。
「トリコの仲間だっていうのに、アンタだけ邪悪さがにじみ出てるじゃない!? ここまでする必要ある!?」
「ネルグにドラッグ流されましたが? 危うく別のギャングと抗争勃発一歩手前にまで追い詰められたけど何か問題でも?」
「いや、それは……」
「なんだ黙り込んで? 言いたいことがあるならスッキリ言っちまえよ。もうゲームは終わったんだからお互い何もなかったでいいじゃないか。なにビビってんだよ、おい、笑えよライブベアラー」
「……」
原作で分かっていたからネルグに薬物は入ってこなかったが、それでも腹が立つものは腹が立つ。
何故か青ざめて化け物を見たかのような顔を向けているのを見て少し留飲が下がった。
そんな視線を無視して小松に目を向けると四苦八苦しながらも的確に答えを見つけながら調理を確実に進めている。
俺がいなくても大丈夫だろうと思ってトリコたちの元へ向かう。
このまま俺がいるとライブベアラー改心イベントも起こらなくなってしまいそうなので、このまま調理場を出ていく。
「じゃ、俺は展望台で待ってるわ」
「そうですか。それで、その……」
「大丈夫だって。ガーリックは君に心を開いている……完璧に調理したガーリック、期待してる」
「ありがとうございます! 絶対に美味しく調理しますね!」
本人も臆した様子もないから手を振って応える。
ただ、ここに来て何もせずに帰るのは少し申し訳ない。
懐にしまっておいた包丁でメテオガーリックに一閃した。
「!!!???」
これはメテオガーリックの緊張を解くためだけの効果しかないので、原作より少し調理を簡単にしただけに過ぎない。
何やらライブベアラーが後ろですっごい顔して絶句していたようだが、それを無視して宴の場へ向かう。
その後、合流したゾンゲも加えた全員でメテオガーリックを食べたり、原作通りライブベアラーが改心したりしてグルメカジノ編は幕を下ろすのだった。
食品偽装(フーズ・フー):アルファベットで表すと「Foods Who」と呼び、特定の食材に特殊調理を行うことで見た目や色を変えるという性質を活かして自身の変装に使ったり、光学迷彩の様に周りの景色に同化する。姿形だけでなく指紋や網膜など細かい箇所も精密に変えるため、少なくとも厳重な監視を掻い潜るだけのステルス性能はある。
ライズ:第二の故郷と言えるネルグに手を出されて実は内心で噴火直前だった。ライブベアラーに対する怒りは全て仕事にぶつけた。
ココ:ライズに仕事を振りはしたが、予想以上に成果を上げたことにめっちゃビックリ。数百に及ぶライブベアラーの攻略本(殺害方法を記録したデスノート)に本気度を感じて少しビビった。
ライブベアラー:得体の知れない実力のライズから数百ものデスノートを見せられ、最初にバイツァ・ダストを食らった岸部露伴の気分を味わった。自分は最初から終わっていたことに対する絶望を味わった後に小松という光に脳を焼かれた。
ついでにたった一太刀でメテオガーリックの調理難易度を下げるという神の一手を打ったライズの腕前に戦慄させられたことも改心に至る切欠となった。