楽しみにしていただいた皆様にお詫び申し上げます。
こんな穴だらけの作品ですが、お楽しみにしていただいている皆様には感謝の念が絶え。ません
引き続きお楽しみください!
ライブベアラーがグルメカジノ支配人を辞退してから幾何の日が経った。
結局、原作通りに改心した彼によってジダル王国の治安は劇的に改善した。
カジノはマッチ率いるグルメヤクザが統括し、国王のいなくなったジダル王国はライブベアラーが治めることとなった。
最初は色々と不安だったけど、原作通り国のかじ取りは緩やかだけど確実にいい方向に向かっている。
そのうち外交政策としてネルグを立て直したときのように改革を手伝ってやろうかね。
グルメカジノ編の後日談はここまでによう。
ここで重要になってくるのは会長が三虎との邂逅をしたことである。
特に俺の所に連絡は来ていないが、一時期会長が不在だったことと、帰ってから節ばあがIGOに行ってから戻ってきていないところを見ると原作通りになったことだろう。
それを裏付けるようにIGO本部から謎の巨大な圧を何となく感じている。
俺が原作に関わって少しずつ展開が変わっているのは感じるけど、こういった大筋は全く変わらないことは前々から分かっているため、基本的に俺にできることもないしやることも変わらない。
そんな訳で、俺は日常生活に戻って普通の生活を謳歌している。
「うん。美味い」
「ありがとうございます!」
俺の可愛い可愛い後輩であるののから連絡を受けて作ってもらった料理に舌鼓を打っていた。
「ゴリニラとジュラ紀から進化しないそのままの形態でいる太古の豚、ジュラシックポークのワイルドな味わいがある反面、臭いがひときわ強いレバーの下処理もあって臭みもない見事なレバニラ炒めだ。これだけ処理できるなら何も言うことはないな」
「よかったです。結構自信作だったのでより一層ホッとしました」
はー、と胸をなでおろす後輩に、俺はそんなに怖がられてるのかと思ってしまう。
あまり厳しくやってるつもりはないんだけど。
「先輩って普段は優しいんですけど、言う時はハッキリ言いますからね」
「下手に慰めると節ばあからのダメ出しで絶対に潰されるからね。ずっと節ばあの弟子志願者見て来たからよく分かるんだよ。あの婆さんの一言でエプロン畳んだ人を何人見て来たか……それに対してののはあからさまに可愛がられてるから将来有望だもんな」
「先輩ほどではないですよ。マスターも先輩と一緒だと凄く楽しそうで」
「毎回すごい形相でボコボコにしてくるんだけど?」
「気の置けない家族みたいじゃないですか」
「家族だからって何しても許されると思ったら大間違いだからな?」
そもそも並の料理人やランキング上位の料理人でさえもマスターからの批評は絶対なものだと受け入れるのに、それを真正面から意見する時点でこの兄弟子も大概だと思ってしまう。
そもそもマスターは見込みのない人に心を許す人ではないため、売り言葉買い言葉を投げ合ってる時点で二人の絆は他人が簡単に言葉にできるものではない。
「本日はお忙しい所、ご足労頂きありがとうございました」
「いいよ別に。先輩って言うのはこういう時にしか役に立たないしさ。それなら今食わせてもらったお返しに何か食わしたるよ」
「いいんですか!? 先輩の作るもの好きなんですよ!」
大げさに喜ぶ素直な後輩の姿にほっこりする。
こんな子があの妖怪婆にこれ以上毒されてしまうと思うと哀しくなってくる。
そんな風に思っていると喜んでいたののが何かを思い出したように「あ……」と漏らした。
「すみません……この後、マスターから受けた依頼があったのを忘れてました」
「ほう珍しい……あの婆さんが依頼だなんて相当信頼されてんな。こりゃ近いうちに抜かれるかも」
「それを言うなら先輩の方が凄く信頼されてるじゃないですか。私よりも下処理だとかほとんど任せられるなんて凄いですよ」
「あれはこき使われてるって言うの」
ののは節ばあを美化しすぎているのだろう、微笑ましい笑顔を浮かべている。
少し後輩の教育を心配しつつ、この日はののと別れて自宅に帰った。
この時、ののの用事について少し気にはなっていたが、あまり詮索しなくてもいいだろう。
そう思っていたのだが、その用事というものがどういったものだったのかは数日後のトリコからの電話によって知ることとなる。
『今から鍋池でマダムフィッシュを捕獲するとこなんだけどよ、来るよな!?』
もうそんなタイミングかぁ……
と、いう訳で鍋池にやって来ましたライズです。
「なんじゃこりゃああぁぁ! この池凍ってんじゃねえか!」
そしてお馴染みのゾンゲもいます。
今回は年中温かい出汁でできた鍋池にやって来たわけだが、今の池は冷えて分厚い氷に覆われている。
普通なら温かい鍋池は冬でも冷えることもなく、異常な寒波でもない限り凍ることのない池が凍ること自体ほぼあり得ない話だ。
自然現象として凍らないということもないが、今年の冬に異常な寒波が来たということもない以上、人為的なものだと分かってしまう。
ましてや、食材を一瞬で凍結させる能力と言えば後輩の姿しか思い浮かばない。
「うおおおおおお! 本当に凍ってんじゃねーか鍋池!」
「喚くなああぁぁ! 池は寒いときに凍るもんだろうがぁ! 騒いでんじゃねええ!」
「オメーもだよ」
「ゾンゲもライズお久ー!」
「お二人も来てたんですね!」
その後にやって来たトリコとリン、小松も凍った鍋池に驚く。
そこから順次到着してくる四天王たちも急な鍋池の凍結という異常事態に不審感を覚えながらも、表面が氷に覆われている今ならマダムフィッシュの警戒も少し薄れ、捕獲しやすくなっているという千載一遇のチャンスを逃すつもりはないらしい。
「という訳で、マダムフィッシュ捕獲したら調理よろしくな! オレが呼ばなかったらマダムフィッシュを食べる機会なんてなかっただろうから……分かってるよな!」
「キショい冗談はそこまでにしなトリコ。
「どうつもこいつもチョーシに乗ってんじゃねえぞ。
「少し落ち着いてくれ皆。ライズが困っている。本人の同意も無しに自分のコンビだと言い張るのは失礼なことだ。まず、ライズ自身が誰のコンビかをハッキリさせるところから話し合おう。トリコはもう小松くんがいるからお前はいいだろ別に」
「辛辣!?」
「相変わらずライズはモテモテだし」
「皆さん、ライズさんの料理が好きですもんね。ボクもです!」
「ライズのコンビはオレ様だっつてんだろいい加減にしろ!?」」
これはゾンゲもキれていい。
我の強い四天王がオレの所有権を巡ってモメ始めた。
俺とゾンゲの意思を当たり前のように無視してることと小松からヒロインの座を押し付けられた感が凄まじい。
ここで俺が言っても普通に無視されるため、ここは無視していこう。
このままいても巻き込まれてしまいかねないため、皆がワイワイしている間に俺が気配を消し、その場から離れる。
これで、誰にも気づかれることはない。
そもそも、ここに来たのにはマダムフィッシュ捕獲の他にも
鍋池から少し離れた森の、不特定の場所に辿り着いて辺りを見渡す。
それでいて小さな違和感も見逃さないように目を凝らしていると、わずかに違和感が残る程度の場所に目がいく。
恐らく、今の四天王なら誤魔化せるであろう全力の
傍から見た感じではトリコがセーフティーゾーンに入った時みたいになっているだろう。
流石に裏のチャンネルほどの隠蔽は無理であるが、この人間界では十分に通用する。
透明の幕を通った先の空間には大量の酒と野菜、その他食材が置かれている。
これは最初からそこに置かれていたものではなく、鍋池を凍らせに来たののに置いてもらったのだ。
幻の魚・マダムフィッシュはちょうど食べたかった食材だったので、トリコに呼ばれようがなかろうが来るつもりだった。
ただ、ここまで来てマダムフィッシュだけしか食べないのは流石にもったいない。
この美味な鍋の池なんて滅多に来る場所でもないから、ここで個人的に鍋パをするつもりで来た。
ここ最近、グルメカジノだけでなく俺はめっちゃ働きすぎだと感じる様になり、自分へのご褒美がほしいと思っていた。
最近ではベジタブルスカイの良質な土やエアアクアを使って米作りといった酪農も個人的に始めたため、そこで作った米の清酒を持ってきたことから、俺の本気度はうかがえるものだ。
野菜・肉類全般・酒と鍋に欠かせないもの全てが揃っていることを確認し、マダムフィッシュ以外の楽しみが待っていると自分を奮い立たせる。
食材全てを確認した所で、そろそろトリコたちの元へ戻ろう。
万が一にでも怪しまれれば最後、この
事は慎重に進めなければならない、この楽しみをおくびにも出さず、再び食材を隠蔽してトリコたちの元へ向かうと、既にマダムフィッシュ捕獲のために全員が動いていた。
原作の様に四天王がバラバラに移動して先にマダムフィッシュを捕獲しようと競っているようだ。
それはここにいるゾンゲも例に漏れず、一人で氷に穴をあけて服を脱いでいる。
この氷河に潜ろうとする辺り、いつものようにあまり考えてないな~、と遠くから眺めつつ小松と一緒に釣竿を垂らす。
「ユンユン!」
「あはは、ユンはいつも以上に楽しそうだね。故郷のアイスヘルみたいだからかな? そうだライズさん! エサのミミズを持ってきたんですけど、使います?」
「お、旨ミミズとは奮発したなー。俺は自前の味ワームを持ってきたからしばらく頑張ってみるよ」
「味ワーム! 大人気の釣り餌ですよね!? いいなぁ、そっちも使ってみたいなぁ」
「なら、お互いに餌を交換してみるか?」
「いいんですか!? 是非、お願いします!」
比較的穏やかな雰囲気でマダムフィッシュ捕獲が始まった。
あれから時間がどれだけ経っただろう。
俺たちはその場から少し移動を繰り返しながらのんびりと釣りを続けたり、池に潜ったゾンゲがサニーの触手に絡まったりゼブラの音攻撃に巻き込まれたりと各々思いのままにマダムフィッシュを追っている。
俺と小松でたまにエサを交換してユンが遊ぶ姿にほっこりしながら釣りを続け、ある程度魚が釣れたところでお互いに一息ついた。
「大分、釣れましたねー。酒サケとちょうちょウナギが採れちゃいました」
「こっちはトゲウナギとワカメダカ、カツオオカミと大漁だ。これだけで今日ここに来た甲斐があった……」
「あはは、たしかにこれだけでも満足しちゃいそうですけど、目玉はマダムフィッシュ! まだまだ頑張りましょう!」
お互いの戦果を見せ合いながらまだ見ぬマダムフィッシュに意欲を見せる。
マダムフィッシュ、その名を改めて耳にした時、ふと思い出した。
「そういえば、あまり知られてないんだけど、マダムフィッシュが更に美味しくなる裏技があるんだと」
「え!? そんなのがあるんですか!?」
小松が驚くのも無理はない。
俺も原作にない知られざる情報を節ばあから初めて聞いた時は仰天したのだから。
「そもそもマダムフィッシュはあまりの警戒心の高さから交尾期間もタイミングもシビアすぎて、オスが水中に漂わせた精子に卵を産むんだ」
「産卵形態が鮭に似てますね」
「だな。ただそれだと卵の着床率が低いからほとんどの体力を使って卵を大量に生む。そのせいで身が瘦せてしまうんだとか」
「そうなんですか。それでも世間では絶品だって絶賛されるほど美味しいのに、それ以上に美味しいなんて想像もできません……どうすればもっと美味しくなるんですか?」
目力を強くして続きを促す小松に俺も続けようとするも、そのタイミングでいつの間にか池から潜り終えたゾンゲが大きい声を上げた。
「ライズウウウゥゥゥ! なんも取れねえぞぉ!」
「あ、ごめん。ウチのが泣きそうだからあやしてくる」
「あはは……」
苦笑する小松に一言残し、坊主だったであろうゾンゲの元へ向かう。
近寄ると案の定、不漁だったのかパンツ一丁でゾンゲが地団太を踏んでいた。
「で、どうだった?」
「なんの成果も、得られませんでしたぁ!」
「見りゃ分かるから、煽って悪かったから泣くなよ」
「泣いてねーよ!」
珍しくゾンゲから泣きが入ったのでとりあえず謝る。
「なんか殺されかけた! 水中で髪が絡みついてきたし、すげえ痺れて痛かった!」
やっぱサニーの触手とゼブラの声にやられたっぽい。
普通にダメージを負ったのもそうだけど、一匹も採れなかったのが地味に精神に利いてる様子である。
とりあえずゾンゲを休ませるために池へ上がらせる。
偶に落ち込むことはあったけど、こういう時は必ず美味い物を食えばまた騒がしいほどに元気が戻ることを知っている。
それ故にそれほど心配していない。
そして、しばらく振りだから忘れていた。
こういう失敗したと思っている時にこそ、食運が何の前触れもなく気まぐれに訪れるということも。
「あ」
「何だ、どうした?」
「パンツの中に何かいた」
「うおおい! 勝手に入れんな!」
意気消沈としたゾンゲがパンツの中に紛れていたであろう超小型の魚をグルメケースの中に放り込んだ。
衛生的な意味でもそうだけど、もしも肉食の魚だったら今まで釣ってきた魚が食われかねないから止めてほしい。
すると、遠くから再び氷が割れる音がしたので視線を向けると俺たち以外の全員が集まってマダムフィッシュを釣り上げていた光景が映った。
「タイミングがいいのやら悪いのやら……」
森の中へ消えていくゾンゲを再び呼び戻すか、そう思いながらも釣り上げたマダムフィッシュに興奮醒め止まぬトリコたちの元へ戻りながらチラッとゾンゲの入れた小型の魚を見る。
小さく透き通った青の、何の変哲もない魚。
あまりに小さく、この広大な鍋池で生きていけるのかと思うくらいに小さい魚から視線を戻す。
二度見て、三度見る。
「…………っっっ!!??」
マ ジ で か っ !?
滅多に見れない、正真正銘貴重な魚故に図鑑でも見覚えが無さ過ぎて反応が遅れてしまったが、間違いない!
鍋池に生息する生物については全て調べてきたが、その図鑑にすらも写真は撮られておらず、人伝でしか特徴が伝えられていない伝説の魚が、今ここにいる。
その魚自体は特に強い訳でもマダムフィッシュのように隠れるのが美味い訳でもない、あまりにも弱すぎて他の魚から捕食されやすいが故に実際の捕獲難易度はマダムフィッシュよりも確実に上である。
俺でさえも見つかればいいなとしか思っていなかったほどに捕獲が絶望的だったマダムフィッシュの同種のオス。
別名・ムッシュと言われる超特殊調理食材だった。
「待って待って待ってえええ! まだ食うなあああぁぁぁぁぁ!!」
さっきまでのまったりとした空気はどこへやら、今まさにマダムフィッシュを食べようとしているトリコたちに向かって必死に叫んだ。
「で、この魚がなんなんだ?」
あれから今にもマダムフィッシュにかぶりつこうとするトリコたち(主にゼブラ)を何とか思い止まらせ、マダムフィッシュに近づいてゾンゲの捕まえた魚に全員の視線が集まる。
「ちっさ! ショボ! こんな
「これと言って特徴的でもないし電磁波にも何もない……というか今にも消え入りそうなほどに弱弱しいね」
「何でもいいからとっととやれ」
サニーとココは魚の特異性に何も感じずわずかに疑心を抱き、ゼブラは早く食べたいのか急かす。
自分としてもここで長々と説明する気はないので、百聞は一見に如かずと言わんばかりにダムフィッシュの腹部に小さい魚を押し付けるとその瞬間。
魚はマダムフィッシュの中に吸い込まれた。
「うわ!? 魚が吸い込まれましたよ!?」
「食べられたの!?」
「違う違う。これがマダムフィッシュの交尾だよ」
小松とリンの大騒ぎが少し面白くて少し笑いながら話すとトリコが補足する。
「そういえばチョウチンアンコウのオスはメスの腹部に嚙みつくことでメスの体の一部となり、精子をメスの体に直接送り込むんだとか」
「その代わり、オスは精巣だけを残してその他すべての臓器は退化する形でメスの体の一部となるというね」
「子孫を確実に残すためとはいえ、一生を精子提供だけに捧げるとか美しさの欠片も
原作でも生物の生態に詳しいトリコたちはすぐに理解してくれるから、こういう時助かる。
「マダムフィッシュと同種のオスはムッシュという名があって、この魚は見ての通り、凄く貧弱だから他の魚にすぐに食べられるし、マダムフィッシュの様に警戒心が強い訳でも隠れるのがうまい訳でもない、それどころか体外生殖のために卵に大量の精子をかける過程で体力を使い果たして死ぬまである。ていうかゼブラの声で死ななかったのがマジの奇跡ですらある」
「うぅ、愛のない夫婦生活……」
「いや、夫婦生活すらしてませんけど……」
「フン……」
リンが何か思う所があるのか項垂れている。
恐らく、トリコとの愛のない生活を連想してしまったのだろう……放っておいても大丈夫だろう。
ゼブラの音攻撃で死ななかったのはゾンゲが身代わりになってくれたからだろう。
「ただし、この体内交尾においては事情の全てが変わる。オスが体内に入ることでムッシュとマダムフィッシュの両方が最小の体力で産卵が可能となる。そら、もう来たぞ」
説明するまでもなく、マダムフィッシュの腹部が一瞬だけ膨れたと思った瞬間、巨大な卵を産卵した。
「うお!? 急に産卵が!?」
「この大量の有精卵にマダムフィッシュとムッシュに少なからずあった有害物質が保護膜として一緒に排出されることで身は引き締まり、僅かなえぐみや生臭さが綺麗に消える。この辺はフグと同じ生態だ」
「なんだ!? あのでかかった巨体が一回り小さくなった!?」
「だが、マダムフィッシュの電磁波がひときわ輝きを増した……旨味が増しているのか!」
やがて、マダムフィッシュが最後の卵を産み落とした直後、マダムフィッシュの体が大きく脈動を始めながら体の大きさが再び元に戻る。
「今度は大きくなったし!?」
「交尾が終わったことでムッシュがマダムフィッシュに吸収されたんだ。ムッシュの生命力は交尾のために使い果たされるのがほとんどだが、正しい交尾を果たしたことであり余った生命力がマダムフィッシュの栄養となり、マダムフィッシュにとっての適合食材がムッシュということもあって細胞が進化、引き締まった身に脂がのる」
「て、ことはまさか!?」
「あぁ、そうだ!」
そう、これはマダムフィッシュの進化……何もしなくても美味なマダムフィッシュに正しい調理法を施すことで旨みが倍増する。
「これが、旨さ200%の、完熟マダムフィッシュだ!」
「「「うおおおおおおおおぉぉぉ!」」」
「すっげえええぇぇぇ! さっきよりもサイズがでかくなったのに身の引き締まり具合がさっきまでの比じゃねえ!」
「しかもマダムフィッシュが輝いた!? 毒袋を抜いたフグ鯨みたいですよ!」
「随分と食いごたえがありそうじゃねえか」
恐らく、原作よりも完成されたマダムフィッシュの姿に達成感が満たされる。
よく考えれば、今回は小松、俺、ゾンゲの食運が招き寄せた奇跡ともいえる。
食運さまさまである。
小松の食運がマダムフィッシュを、ゾンゲと俺がムッシュを引き寄せた結果、原作を超える味を生み出した。
それ故に胸の内から熱いものがこみ上げる一方、森の中へ消えたゾンゲを思い出した。
今回の功労者も今なら機嫌も直っているだろう、そう思っているとすっっごいいい声が響いた。
「お前らあああぁぁぁぁ! 森の中でいい物見つけたぞおおおぉぉぉ!」
「おわあああああああぁぁぁぁぁ!?」
こ、こいつ!
俺の持ってきた酒や食材抱えて戻ってきやがったあ!?
なんでお前がそれを!?
「ってなんじゃこりゃあああぁぁぁ!? このバカでけえ魚は!?」
「おう、こいつがマダムフィッシュだ。お前もお手柄だったじゃねえかよ」
「ゾンゲが捕まえた小さい魚でさらに美味しく仕上がった完熟のマダムフィッシュだよ」
「お
「バカなくせにな」
「ていうか、ゾンゲの持ってるその食材はなに?」
ゾンゲがトリコたちと何か喋っているようだけど、今の俺はそれどころではない。
今の問題はゾンゲが持ってきた俺の食材の方が問題だ。
恐らく、適当にほっつき歩いていたら俺の食品偽装に足を引っかけたか何とかでバレたんだ。
でなきゃトリコたちでも気づけなかったカモフラージュを突破できるわけがない。
ここに来てゾンゲの食運が俺に牙を向けてきた。
いや、終わったことを悔いてもどうしようもない。
それよりも、自分へのご褒美ということで皆に隠して、後で一人で楽しもうとしていたため、間違いなく全員から食材を隠してたことを間違いなく詰められる。
背中から冷たい汗が流れるのを感じながらも、なんとかこの場をやり過ごすことだけ考える。
「こらこらゾンゲくん。そんな、落ちてるものを勝手に拾ってくるもんじゃないよ。他の美食屋のものかもしれないんだよ?」
「え? でもこの酒のロゴってお前が初めての醸造で作った酒一号だとかで作ったものにソックリだぞ?」
「い、いや~。世間のロゴなんて皆似たり寄ったりだし、き、気のせいじゃないかな~……」
くそー!
初めての醸造に成功したから調子乗ってオリジナルのロゴなんて張ったのが間違いだった!
「うっひょー! これなんて市場に滅多に出回らない幻の一品じゃねーか! うまそー!」
「酒だけじゃなくていい食材が入ってるね。フグ鯨、ルビークラブ、にんにくガニにシンデレラ牛……その他にも最高級の野菜もたっぷりだ」
「鍋池の出汁で即席しゃぶしゃぶができそうですね!」
「これ、鍋パできるし!」
「ちょうど腹も減ってた所だ。気が利いてるじゃねえか」
これは、このまま流れに乗ってうやむやにするべきか。
いや、でも、この鍋池に数日間滞在して食材調達を予定していて、その間の食料でもある。
正直に言って、この場を見逃してもらうか……悩んでいると四つの手が力強く俺の肩をポンと叩いてギリギリとこの場から逃がさんと言わんばかりに強く押さえつけられた。
痛い痛いめっちゃ痛い。
「どうしたんだい。さっきから顔色が悪いよ?」
「こんなビューティーな食事を一人だけ楽しもうだなんて、んな卑怯なことする奴なんてこの場にいないよな?」
「さっきから心音が嘘をついているチョーシにのった奴のソレに聞こえるんだが、何か言いてえことがあんなら飯と酒に免じてやる」
「オレ等を相手に隠せてたのは素直にすげえと思うが、ここまで来てシラを切るのは無しだぜ」
「わぁ……あ……」
「泣いちゃったし!」
「泣いちゃいましたよ!?」
「泣いたぞコイツ!」
暗に「いい加減に吐け」という圧に充てられて思わず泣いちゃった。
しょもしょもになりながら土下座しながら全て白状すると、全員が深い溜息と呆れを見せた。
「最初からそう言えばいいのに」
「まあ、確かにたまには一人で楽しみたい気持ちも分かっちまうけどな。事情話したところで
「おいこらサニー! オレを何だと思ってやがる!?」
理解を見せるココとサニーに対してトリコが心外だとばかりに揉めそうになるところで小松が間に入る。
「落ち着きましょうよ皆さん! さっきの話を聞いた通りだと、この食材はこれからここで食料調達を一人でするための数日間の食料でもあるんですよね?」
「あ、はい……」
「なら、ボクたちでライズさんの仕事を手伝う代わりに皆で分け合って食べさせてもらうってことで、如何でしょうか?」
小松の提案に皆は「仕方ない」と言わんばかりに破顔する。
「それならいいかな。前のグルメカジノの時は報酬以上の仕事もしてもらったし、日ごろから毒のアドバイスももらっているからそのお返しにもなるしね」
「今回オレらを騙そうとした件は整体してもらうことでチャラな。与作から聞いたぞ。あのグルメ整体師のマリーから整体術の免許皆伝を受けたそうらしいじゃん?」
「ライズって整体できんの? じゃあウチもよろしくー!」
「ここらで誰がお前等のコンビに相応しいかってことを思い知らせてやろうじゃねえか。いい加減小僧と坊主のコンを自称しているネズミどもに格の違いを見せつけてやらねえとな」
「だからこいつのコンビはオレ様だって言ってんだろ!」
「小松はオレのコンビだろうが! 巻き込むんじゃねえよ!」
「小僧は連帯責任だ」
「ふざけんな!?」
何だかすぐに空気がいつもの感じに戻って体から力が抜けていく。
間違いなく一発殴られるのは覚悟してたからより一層に。
今回、少し欲が出て美食を独り占めしようとしたことに食運が何か思うことがあったのか。
それとも食材たちがこうなることを望んだことで食運がそれに応えたからなのか。
どっちが真実なのかは俺には分からないが、これで良かったのだろう。
いつもよりも食運に振り回された一日は絶品のマダムフィッシュと持参してきた美食に舌鼓を打って幕を閉じるのだった。
ライズ:一人抜け駆けしようとして挙句、全てバレて泣かされたマヌケ。マダムフィッシュの完全調理と美食の提供によって許された。
マダムフィッシュ:原作では特筆された点がなかったのでオリジナル要素を付け加えて原作よりおいしく仕上げる形にした。
ゾンゲ:全員から食運を引き寄せるお守りの擬人化として見られているため、滅多なことがない限り仲間外れにされることはない。
のの:ライズからの頼まれごとを引き受けた例として後日、完全調理したマダムフィッシュを譲ってもらってホクホク顔。後に節ばあと舌鼓を打って満足した。
ゼブラ:ライズだから今回のウソは見逃した。ライズと小松以外で同じことすれば問答無用で半殺しにしてた。