鍛え抜かれた足で大地を駆け、疾走する。
トリコたちと美味いものを食べて進化に進化を重ね、修羅場をくぐってきた俺の移動速度は既に一部の生物を除いて人間界上位に入るくらいの自負はある。
単純な速度はテリーよりちょびっと遅れる程度だが、それでも破格の速度である。
食林寺からの救援信号を受けてから休むことなく足を動かして数時間は経っているだろうが、息の乱れも疲労もない。
やがてロストフォレストに辿り着くが、構わずにそのまま突っ切る。
特殊な磁場で羅針盤もGPSをも狂わせる、一度はいれば二度と出れない樹海と言われる場所も食義を使えば問題ない。
食義により周りの樹木に警戒させないよう気配を殺すことで食林寺も姿を隠すことはなくなり、難なく見つけることができる。
本来のロストフォレストの攻略法はそうなのだが、今のロストフォレストはざわつき、明らかに怯えている。
生き物のように気を騒めかせて怯えるように震える様子に、俺は歯噛みしていた。
(まさか本当に、千代さんが来たってことはないよな……!)
トリコが恵方巻を作って食林寺に向かったことを聞いた日から秘かに準備は続けていた。
最悪の場合、過去にお世話になった恩人と戦う覚悟をしながらも、もしかしたら千代さんが美食會と共に攻めてくる可能性を僅かにもないと考えてしまった俺の落ち度はある。
本当に?
頭の中では千代さんの裏切りについては想定しているにも拘らず、今の千代さんが完全に裏切った訳でないと心が否定している。
最後に千代さんと会ったのはもう数年か前のことだけど、その頃には既に息子さんへの未練は多少あったにせよ区切りをつけていたように見えた。
だけど、そこから今日までの空白の間に心変わりがあってもおかしくなかった。
俺としたことが、一度気を許した相手には警戒を解いてしまうという悪癖が今回の事態を招いてしまった。
最後には過去と折り合いをつけて正気を取り戻すことになるのだが、それは今は亡き息子に対する未練があったから味方サイドに戻る隙……余地があったからだ。
しかし、今は既に息子への後悔の念も原作より低いから、逆に覚悟を決めて美食會に入った可能性すらある。
つまり、原作と違って最後まで敵サイドで終わってしまうかもしれない。
原作を知っているからと言って大局を変えようとした報いだというのなら、この責任は俺にある。
疑念を割り切って全力でロストフォレストを突っ切っていくと、懐かしの食林寺が見えてきた。
やばくね?
俺が近づいた時ならともかく、食林寺が平時の時に姿を現すなどあり得ない。
確実に、脅されて姿を見せている。
こんな芸当ができるのは間違いなく、あの人しかいない。
遅かったか、そんなことを思いながら食林寺を囲む塀を飛び越えたまさにその時、ワゴンさんが自信満々に演舞を千代さんに披露していた。
おま、ちょっ、アカーン!!
トリコと小松が食義の修業にやってきてからというもの、修業は想像以上のスピードで進み、トリコは最後の修業に臨んでいる。
当初はシャボンフルーツのレプリカを捕獲することはもとより、食林寺を歩き回ることさえ困難を極めていたのだが、既に二人は師範が用意した修業を完璧にこなすまでになった。
初級を通り越して師範代クラスの最難関の修業とも知らずに完遂した二人のために、珍師範がトリコに最後の修業を施し、師範代のシュウに留守を任せてバブルウェイへ向かった。
他の師範代を全員招集させる指示を残して。
食義を修めた師範代は漏れなく全員が実力者であり、珍師範が不在であろうとも大抵のことは対応できる。
そんな師範代が集まれば来る敵も形無しと、思っていた。
その認識は正しい、相手が美食會であれば支部長クラスであっても一歩も引くことはない。
世間ではあまり知られていないが、食林寺の師範代は人間界屈指の武闘集団と言える。
しかし、今回の相手が悪すぎた。
「おやおや、みんな随分と出世したのう」
「ち、千代さん!!」
襲撃してきた犯人は、かつて食林寺の師範代を務めた凄腕料理人のトップにして、現師範にして美食人間国宝の一人、珍鎮々の元コンビであった千代。
その他、様々な猛獣を混合して作った灰汁獣と呼ばれる人工生物と、かつて小松と競い合っていた料理人・大竹その人だった。
「竹ちゃん!?」
「…………」
驚愕の小松の姿に視線を向ける大竹に構わず、師範代たちは千代に次げる。
「千代さん。事情を、お聞かせ願いたい……」
「お前たちに用はない。珍ちゃんはどこじゃ?」
師範代からの問いにも耳を貸さず、師範を連れてくるようにと要求する。
かつての同門の同志に向けるにはあまりに強大な殺気に師範代たちもたじろぐ。
「食林寺の支部は既に壊滅させた」
「!?」
「食林寺の奥義である『食没』は今後、我々の脅威となるからね……元を断たせてもらうよ」
一切の淀みもない敵対宣言に師範代たちの空気が変わった。
困惑はあれど、相手から宣戦布告があった以上、格上だろうと覚悟を決めない者など師範代にはいない。
「あなたに何が起こったかなど窺い知れるものではありませんが、師範が聞いたらさぞお嘆きになりますでしょう」
「世界中の料理人から尊敬を集めていたあなたが、まさか美食會に……なればこそ、食義の聖域を侵させるわけにはいきません」
師範代の一人、大柄で長髪のワゴンが出刃包丁型のヌンチャクを取り出す。
戦い前のプリショットルーティンで戦意を高めるためのニンチャクの型を実演するも、千代からの反応は冷ややかだった。
「多少は腕に覚えがありそうだけど、まだ動きに無駄が多いね」
「私の動きに無駄が?」
何を馬鹿な―――その言葉が続くことはなかった。
ガキン、辺りに轟く金属音が何の前触れもなく響いた。
踏ん張らなければ吹き飛ばされてしまうほどの衝撃に誰もが顔をしかめて踏ん張った。
「……っ!!」
「何が……!?」
誰もが状況も掴めないでいる中、千代だけがポツリと呟いた。
「……珍ちゃんも嫌なことをしてくれる」
師範代たちに見せていた冷酷な冷たい目が暖かな光が宿る。
それに気づく者はこの場にいなかった。
「……っ!!」
千代が放った斬撃を間一髪で受け止め、冷や汗を流すライズの姿に千代は人知れず顔を俯かせた。
マジで間一髪だった!
後コンマ数秒でも遅れていたらワゴンさんの体がエラいことになっていただろう。
本当にギリギリの様子だったから本当に間一髪だったのだろう。
不可視の斬撃を弾いた包丁を握る手が震えているのは恐怖だけではないだろう。
一歩間違えれば俺の手首がすっぱりと無くなっていた可能性すらあった。
遅れて怖気がやってくる。
「ライズさん!?」
急に現れた俺にワゴンさんが驚いているようだが、悪いけどそれに応える余裕がない。
なんせ、今、目の前にしているのは世界屈指の実力者であり、一瞬の隙さえ見せてしまえばその瞬間に命を刈り取ってすらくる。
「来て早々悪いんだけど、千代婆の相手は俺がするから、師範代たちは、あのゴーレムの相手たのんます」
「そんな……!? 相手はあの千代さんですよ!? 全員でかかった方が……!」
「今の一撃に反応できてればそういう手もありましたがね、千代婆が本気なら今の一瞬で全員やられてましたよ」
「それ、は……」
「流石はライズ、一番現実が見えてるのう……逃げてばっかりのお前にわたしが倒せると?」
千代婆からの圧力がより一層増し、師範代たちは気迫に押されて後退する。
しかし、
「何言ってんだ倒すなんて無理だろう」
「えぇ!?」
正直に言うとシュウさんが驚きと言ったように声を上げるが、本当のことだから仕方がない。
俺の実力自体ははっきり言ってゾンゲ以下小松以上のクソ雑魚なんだから。
そんな俺にできることは珍師範が戻ってくるまでの時間稼ぎだけだ。
「そんな自信満々に言ってどうするんですか!? 千代さんの前で!」
「言わなくても、どうせ見透かされてるんだ。その上で凌ぎ切ってやる!」
「ひっひっひ……相変わらず合理的で、後ろ向きな子だねぇ」
あれ? 今一瞬だけ昔の感じに戻った気が……?
そう思っていたけど、よく見ると好戦的な顔をしていたので気のせいだった。
「
「へぇ、そこの所少しだけ教えてくれたら嬉しいんだけどなぁ……」
「いくらお前でもそれは教えられないのう。まあ、そんな建前はどうでもいい……ライズ、息子の数少ない友のお前を傷つけたくはない」
その時、威圧感は和らいで穏やかな笑みを向けてきた。
敵意や害意が全く感じられない、嘘偽りのない慈しみの表情だ。
その僅かな優しさは俺にだけしか向けられてないようで、師範代たちには相変わらず威圧しているようで誰も冷汗が止まっていない。
だからこそ、俺としてもはいそうですか、と引き下がるわけにはいかなくなった。
少なくとも千代婆の本意を知らなくてはならない。
「じゃあ、俺に免じてここを退くってのは?」
「生憎だが、そういう訳にはいかんのじゃ。ここで食義を断たねばならん……それでも立ち塞がるのなら」
「!?」
瞬間、再び不可視の斬撃が俺の胴体めがけて飛んできた。
俺の体が骨を残してはじけ飛ぶ幻視が一瞬だけ見えて防ぎはしたが、完全に防ぎきれなかった。
「痛って……!」
「ライズさん!!」
「お前じゃから切り傷で済んだ。そこで突っ立っている有象無象だったら今ので終いじゃったよ」
さっきよりも繊細で力強い一撃に腕を斬られたが、そこまで深くない。
薄皮一枚で済んだのは俺の防御力の強さと、千代婆との相手に手慣れているからだ。
下積み時代に何回も相手したときの戦いの記憶がある。
この中で一番千代婆と打ち合ってきたからこそ、相手がどうやって、どのタイミングで仕掛けてくるかが何となくわかる。
「……っ! シュウ、ワゴンも、師範代はあの灰汁獣を対処するぞ!」
「しかし……っ!」
「悔しいが、我らでは千代さんを止めるのは無理だ……ライズに頼るほかない」
「っ!」
コッポゥさんが歯噛みしながらも指示を出せば、歯噛みしながらも自分たちの不利を悟って師範代全員が灰汁獣の方へと向かう。
切り替えが早くて助かった。
これで被害は少なくなるはずだ。
だからと言って確実にどうにかできる、と無責任に言えるものではない。
僅かとは言え、傷を付けられたのは大分久しぶりだ。
油断すれば本当にひっくり返される。
「一刀・雷切り!」
「味流し!」
回転を伴った突きの一撃を包丁でいなす。
そのまま流れるように斬り合いは激化していく。
「表層かつら剥き!」
「匙盾!」
俺の腕をかつら剥きにする一撃を最小のスプーンで防いで逸らす。
千代婆の使っている包丁は本命でないけれど、その破壊力は普通の包丁よりも一線を画す業物であるが、俺の包丁は戦闘用とはいえ一般の美食屋でも買えるような安価な物であり、材質からして武器のスペックは圧倒的に負けている。
食義をフル活用して包丁を繊細に使って防ぎ続けても、そのスペック差からやがて包丁は折れる。
俺と千代婆の戦闘力だけでなく、全ての面でこっちが不利なのは明白だった。
「俺のことは殺さないんじゃなかったっけ!?」
「こっちが殺す気でやらねばお前を気絶させることも叶わんじゃろう! お前はどうやっても凌ぐから全力を出せるわい!」
「そっち方面で信用しないで、もらえるかなぁ!」
多分、下積み時代お世話になってきた恩師(という名の鬼教官ども)の中で最も俺とゾンゲに優しかったと思われる千代婆からの死刑宣告に口角が引き攣る。
特にこの人の食義は殺気とか害意とか感じないからマジで予測しづらい。
(あれ?)
ここまで考えて違和感に気付いた。
それは原作を知る俺だけにしか分からない、細かな疑問。
(今の千代婆から、憎悪や敵意が感じられないのは本当に当然なのか?)
思えば、今の千代婆は亡くなった息子のことで怒りを、憎悪を抱いているはずだ。
だからこそ、本来は食への感謝が肝である食義に怒りや憎しみ、悲しみなどの衝動的に膨れ上がる感情は食義の繊細なコントロールを乱す。
だからこそ、感謝という感情で心と体を完全に律して最適な体捌きを本能的に導き出すのだ。
たとえ千代婆ほどの達人であろうともそのルールからは逃れられない。
そもそも、千代婆の心残りである「息子に食事の楽しさを教える」という願いは過去に行ったGTロボの味覚伝達技術で叶えられた。
その時の二人の様子から、俺はもう大丈夫と判断した。
千代婆は本当に、敵なのか?
「戦いの最中に考え事とは、随分と成長したねぇ! 婆ちゃんの体でも労わっているのかい!?」
「っば!」
別のことに気を回した一瞬の隙を突いて放たれた斬撃が鼻先を掠めた。
あっぶな、余計なことを考えながら相手できる人じゃねーわ。
真相はどうあれ、今はとりあえず時間稼ぎに徹するだけ。
だからこそ、この場ではノッキングが望ましい。
アルファロ戦の時以降から、数少ない取り得である最速の反射能力を活かした神速のノッキングを鍛えてきた。
あれから、神速のノッキングを自分なりに研究し、把握したのだ。
静電気の原理と同じだ。
物質と物質が擦れ合えば電荷が生まれる。
俺は心拍数を毎分1800*1まで跳ね上げ、血液中の赤血球……鉄分を血管壁に超高速で摩擦させて電荷を生んでいる。
全身の汗腺から滲み出た塩分混じりの汗が体の表面で、体内ではグルメ細胞が『導線』となり微弱ではあるが全身を、ライズそのものを『電気そのもの』に限りなく近い物へ変換する。
だからこそ、一瞬だけ光の速度に達することができる。
「消え……っ!」
いくら千代婆ほどの実力者と言えど、反射速度には追い付けない。
光速で千代婆の懐へと潜り、繊細な動作でかあのじょのお腹に手を当ててノッキングを全ての電気を込めながら打ち込んだ。
「スタンガンノッキング!」
「グ……ゴゲ……ッ!」
ノッキングが通るシュコンと音と共にけたたましいバチっと電気が通った音が重なった。
単純にノッキングに電気を纏わせる単純な技だが、相手を硬直させるという意味ではかなりえげつない技だ。
ノッキングと感電で動けない体を動かすのはそう簡単じゃない。
一瞬だけしか使えない技と言えど、効果はバツグン。
大漁の汗と体力を消費するが、千代婆を捕まえられることを考えればかなり有用な技だった。
「ぐ、……それは、センチュリースープの時の技だね……繊細さが増して反応できなかったよ」
「あの時は覚醒直後で力もあり余ってグルメ細胞のパワーに振り回されただけだったけど、ちゃんと理解してからは使用感も大分変ったよ。ていうか、アイスヘルのことも知ってんのね」
「ふふ、お前とゾンゲだけは特別なのさ……もっと言えばボスの三虎を始めとしてお前の情報は美食會に属するもの全員に叩き込まれているのさ」
「俺に恨みでもある? 俺の情報だけ徹底させてるってどういうこと?」
「もっと言えば、偶にお前の姿を遠目から見てるそうだよ。この日に限ってボスが不在だから料理人にとって唯一休める憩いの時間さ」
「おいコラ犯罪組織のボス」
何やってんだあの人。
ていうか俺、たびたび見られてたってマジ?
言われてみればあの日以降から俺の作り置きした料理が少量だけ減っていることがあったような……まさかな?
いや、それはどうでもいい、気になるけど触れない方が良い気がする。
それよりも優先するのは千代婆に何もさせないよう俺が見ていることだ。
なぜ、そんな疑問も浮かぶけど今やることはそれじゃないからだ。
「気になるかえ? なんで美食會に、て顔しとるよ」
「へぇ……そんな顔してた?」
「婆ちゃんには分かるさ」
「……そんな顔するなら最初からやんないでよこんなこと」
本当は耳を貸す道理などないけど、今の千代婆の顔が昔のように穏やかだった。
だからこそ分からない、なんでこんなことになっているのか。
今の千代婆からは敵意も害意もないけど、実際には食林寺を壊滅させている。
明確な敵対行為をしたのだから疑う余地はないというのに。
俺以外の誰もが戦いに集中している中、なぜ、俺だけが他所に心をやれるのか……その迂闊さを突きつけられるのはこの直後のことだった。
「そう、あたしだからお前のことはちゃんとわかってる。お前の優しさも……あたしの真意を測ろうとしていることも」
「もしかして、油断させようとしてる? 無駄だよ、相手が誰だろうとも手を抜くことは絶対にない。こんなことになった経緯はしっかりと捕まえてからにするよ」
「そうだろうねぇ。真意が分からない者には油断しない……
言い終えるや否や、千代婆は自身の体に包丁を突き立てて完全にノッキングを解いた。
「は?」
「味抜き」
「ノッキングが……!?」
千代婆にかけたノッキングは相手のツボを押すと普通のノッキングと筋肉そのものに電気を流して麻痺させたやつだぞ!?
しかも、大分深く突いたから千代婆はもちろん、節婆でもそう簡単には解けないはずだ。
実際の時間にしてコンマ一秒にも満たない思考の停滞。
右往左往する思考を断ち切って再びノッキングをかけようと動いたライズからすれば致命的な刹那の時間だった。
「敵には容赦のないお前でも、
コンマ一秒の隙の中で千代婆は俺の懐に入り込み、腹部に手を添えた。
「弾界」
「げふっ!」
か細い手からは考えられないほどの衝撃に襲われて後方に飛ばされた。
威力はないが、吹っ飛ばすことを目的とした技ということもあり、俺は食林寺から強制的に追い出され、放物線を描いて遥か彼方に追いやられた。
ライズを吹っ飛ばした千代は腰を軽くたたいてため息を一つ漏らしながら師範代に抑えられている灰汁獣と見慣れぬ料理人と話している大竹を一瞥するが、何も言うことはない。
美食會の命の下に動いてはいるが、胸のうちに抱くそれぞれの目的については口を挟むことはない。
灰汁獣については師範代たち相手に一歩も引けを取らないほどの暴れっぷりだが、特に間に入ることはない。
美食會からの命はあくまでシャボンフルーツの確保であり、食林寺の殲滅は可能であれば、の話だ。
たとえ完遂できなかったとしてもシャボンフルーツさえ確保できればそれでよし。
「おや珍ちゃん。速かったねぇ」
「千代ちゃん……! 半信半疑ではあったが、本当に美食會に!」
若干の戸惑いはあれども、珍はすぐさま体の膨張と共に自身の力を解放し、『スプーン』で千代と自身の足場を浮かばせる。
「久しぶりに、デートでもしようや」
食林寺を戦いの余波に巻き込ませないようにはるか上空へ浮かび上がる中、抵抗する様子もない千代は笑みを絶やさない。
「デート? これはデートじゃない
『あの日』の夫婦喧嘩の続きじゃよ」
その言葉に珍は驚愕に体を強張らせた。
ライズ:あらゆる害意、敵意、殺意を感じることができる……が、一度でも仲間と認めた者に対しては無意識的に警戒を解き、危機感知が鈍化し、情によって行動が僅かに遅れる。
千代:原作ほどのわだかまりはない。ライズとゾンゲだけは特別。
師範代:全員五体満足で灰汁獣の対処中
灰汁獣:今のところ誰も食えずにイライラ
小松:原作通り
大竹:小松と話しながらも、別の所に気が向いている。
「ライズ……」
トリコ:原作通りに食義と食没を会得してシャボンフルーツで補給中
珍師範:思った以上に千代からは穏やかな気配に疑問を抱きつつ、迎え撃つ姿勢は崩さない。