こんなスターレイル   作:霧里

1 / 4
二次創作にありがちな色々。

設定ミス、解釈違いは許して欲しい。

ゆづき←うちの子の名前


ある日のラウンジで

「もうっ、ゆづっ! ウチの真似するのやめてってばっ!」

 

豪華な内装、優雅な音楽。

何処を切り取っても特等席に映る列車内に響いたのは、あんまりにも日常的な声だった。

 

桜色の髪を逆立て、丸っこいほっぺを更に膨らませた なのかが、肩を怒らせて見せる。

その勢いに気圧された ゆづきは、金色の瞳を見開くと、きょとんと驚きの顔に囚われていた。

 

「お、ぉぉぅ。なの…えっと、ごめんね?」

 

喧嘩するほど仲がいい。こんな時でさえ、お互いを愛称で呼びあったまま。

それはまるで、幼馴染のじゃれ合いで、付き合いの長い姉妹の戯れの様でもあった。

 

それでも、流石に今日は懲りたのか。

一見 肩を落とした風に、扉の向こうへ流れていくと、入れ替わりに丹恒が顔をのぞかせる。

 

「ゆづき? おい、なんの騒ぎだ?」

 

問いかけに背を向けたまま、その脇を器用にすり抜けると、ゆづきは車両の奥へと消えていった。

 

「三月」

 

居なくなったものはしょうがない。ゆづきを追いかけて問い詰めるより、そもそもが聞こえた大声の主を問い正す方が早かろうと、丹恒は鋭い視線を なのかへと向ける。

 

「あ、丹恒。ごめんね騒がしちゃってさ」

「謝罪は良い。原因を話せ」

「もう、丹恒ってば、そういうとこだってからに」

 

ともすれば冷たくも聞こえる丹恒の言葉。

そうじゃないとは分かっていても、やはりバツは悪く、兄に睨まれた妹の風体で、なのかは唇を尖らせた。

 

「ほら、あの子ったらウチらの真似するのがブームみたいな所あるじゃん? それでちょっと、つい、声を、大きくしすぎちゃって…ね?」

「なるほど」

 

どこか、言い訳をするような雰囲気の なのかに一つ頷き、丹恒は ゆづきが消えていった扉の方へと視線を向けた後、静かに目を閉じた。

 

「存外、アイツも不安なのかもしれんな」

「不安ってそんな…。いやいやいや、だってゆづき だよ?」

 

何を納得したもんか。丹恒の答えに、なのかは大げさなぐらいの反応を返さずに居られなかった。

 

何時も飄々としていて、何を考えているのか分からない。

居なくなったと思ったら、しれっとした顔で戻ってくる。

「任せて」と出どころの分からない自信は、いつになく自分達を不安にさせてくれたものだった。

 

「言いたいことは分かる。普段が普段だ…。何を考えてるか分からんというのもな」

 

皆まで言わない なのかの振りに、丹恒も頷いて見せると、次の言葉に繋がる少しの間。

その一呼吸分の隙間に、一日千秋分の溜息を吐き出していた。

 

「だが、忘れてはいないか? アイツは、あれでも記憶喪失なんだ」

 

宇宙ステーション・ヘルタで、ゆづきを助けたまではいいが、その以前の記憶がまるでない。

その後、火急の自体も手伝って、三月と二人で行動させて以来、彼女によく懐いているようではあった。

 

同年代の同性同士に加え、三月の性格もある。

馬が合っていたのかと思っていたが、改めて見ると刷り込みにも近い依存の影が見えないでもない。

 

それは、悩みなど無縁のように見える ゆづきが滲ませた、少女らしい不安。

そう思えばこそ、似た者同士か、彼女が三月に懐く理由も分からないでもなかった。

 

「そういった不安は三月、お前の方が分かるだろう? 先輩風を吹かせるのなら、ちゃんと面倒を見てやるんだな」

「先輩風だなんて…」

 

丹恒に指摘されて、言葉を飲み込む。

同年代のお友達、それも始めたできた後輩に、はしゃいでしまった部分が無いはずがない。

自分にだって自覚があるのだから、丹恒に気づかれてないはずがないのだ。

 

それはいい。

 

ちょっと調子に乗ってましたって、恥を忍べばそれで済む。

 

そんな些細な見栄よりも、自分が自分を許せなかったことは。

 

「あぁぁ、もうっ。し、失敗したぁ…ウチのバカぁ」

 

唸って悶て頭を抱えて、なのかは自分の頭を叩き出していた。

 

記憶喪失。その空虚感は身をもって分かっている。

知識だけは人並みに残っていても、そこに至るまでの経緯が何もない。

足場もないのに立っていろだなんて、出来るわけもなく、その不自由さにどれだけ藻掻いている事か。

 

忘れてた。忘れてしまっていた。

 

ゆづきが あんまりにもあっけらかんとしていたから、不安の種を見つけて上げられなかった。

「ちゃんと面倒を見ろ」丹恒に言われた小言は数え切れないけれど、これ以上に耳が痛い言葉も無い。

 

「何処へ行く?」

「ゆづきの所っ、謝んないとっ。一人にしておけないじゃんっ」

「待て。あいつがしつこかったのも確かだ。たまには良い薬なんじゃないか?」

「丹恒っ、アンタそういう所だかんねっ。直したほうが良いよっ」

 

ビシィっと丹恒に指を突きつけた なのかは、そのまま ゆづきの後を追うように扉の向こうへと消えていった。

 

「良いわよね、若いって。仲良くケンカ出来て羨ましいわ」

 

ラウンジであれだけ騒いでいたのだ。当然他の者に聞こえていないはずもなく。

一部始終を眺めていた姫子は、駆け出す なのかを見送りながら、丹恒へと声を掛けていた。

 

「姫子。前から聞きたかったのだが。それは振りなのか?」

 

冗談めかして若い若いと、口癖のように聞こえる度に気にかかる。

確かに自分たちよりは大人だろう。三月や、ゆづき、彼女たちに比べれば、その落ち着き様は妙齢の女性と言って差し支えはない。

 

だがしかし。自分を年寄り扱いするような、その言動はいかにも自虐的で、あるいは承認欲求から来てるであろう、ゆづきの言動にも近いものを感じずにはいられなかった。

 

「振り?」

「君もまだ若いじゃないか。と、言われたいのかと気になってな」

「丹恒。アンタそういうとこよ」

 

無遠慮というか、気の置けない関係といえば聞こえは良いけれど。

それでも、大人の女性をからかうには刺々しい物言いに、さすがの姫子も眉根を寄せてしまっていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。