ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。 作:YEBIS_nora
今回から書き溜めてある数話分は作者の執筆リハビリも兼ねておりますので、特に戦闘描写については何卒寛大な目で読んでいただければ幸いです。
〇月✕日
カイテンジャーの本拠地を襲撃してから2日が経った、とある平日のシャーレにて。
館内放送で先生に呼び出され、『もしかして正体バレちゃった!?』とビクビクしながら応接室に入ったボクなわけなんだけど...そんな懸念は、既に中にいた少女の姿を見た途端に吹き飛んでいた。
先生の対面のソファーに座るのは、キヴォトス最強の一角である『ゲヘナ風紀委員長』空崎ヒナちゃん。
この間は内心ガクブルになりながらゼロ距離で対峙したんだけど......あの射殺さんばかりの覇気はどこへやら、その風貌はどっかの小動物みたいにシナシナになっていたのだ...!
シワシワの表情を浮かべながらプルプルしてるヒナちゃんに駆け寄りつつ先生に話を聞くと、原因の発端は件の謎の少女____ボクが演じる『シキ』との邂逅が大きかったようで。
曰く、『私は部隊のリーダーなのに...どんな状況、どんな相手でも先生と部隊メンバーを守るために動くべきだったはずなのにっ.........本当に何も____
そこから堰を切ったようにゲヘナの治安やら万魔殿のタチの悪いちょっかいのことやら普段溜め込んでるモノを半泣きで吐き出していった結果、どことなく水分の抜けたシナシナのヒナちゃんになってしまったらしい......いやそうはならないでしょ!なってるけど!
...しかしこう、なんと言えばいいんだろう。
ほぼ不意打ちみたいな感じで肉薄できたから
あぁ...なんとも不思議な感覚だ。
ほんのちょっぴりムズムズして、ドロっとしていて、それでいてジワジワと身体を火照らせる......およそ真っ当な生徒が抱いちゃいけないようなモノであるような気がして。
黒服さん達がボクを気に入ってくれたのは、『コレ』の片鱗をボクに見出していたからなのだろうか?
マンガやアニメを通して追体験するだけでは味わえない...その身をもって体験することでしか味わえない本物の____
____おっと、いけないいけない!ヒナちゃんの背中を撫でながらずっと黙りこんじゃってたよ。ゴメンね、先生。
改めてボクが呼ばれた理由聞いてみると、『ヒナをリラックスさせるために協力してほしい』とのこと。
『サイカお手製の
...ボクが鼻歌交じりでシンクに並べる道具の数々。その全ては、美味しいコーヒーを淹れるために買い揃えた
フフん♪特に最近は
丁寧にコーヒーを淹れて応接室に戻ったボクは、先生の隣に移動していたヒナちゃんが真ん中になるよう並んでソファーに腰掛ける。
...香ばしいコーヒーの香りが届いたのだろうか。ほんのちょびっとだけ、ヒナちゃんの表情に凛としたハリが戻った
____フフん♪さあさあヒナちゃん召し上がれ!ボクと黒服さんが先生の好みに合わせて配合した、特製『
...なんて、本当の名前は口が裂けても言えないので『特製コーヒー』とだけ伝え、それを聞いたヒナちゃんはプルプルした手でカップを持って一口飲んだわけなんだけど...うへへ♪どうやらヒナちゃんの口にもバッチリ合っていたらしい。
『美味しい...!』と言って目を輝かせたヒナちゃんに、ボクは右手でピースをつくって応えてみせた。せやろせやろ、イェイ♪
小さく前後に揺れながらコーヒーを飲むヒナちゃんの姿は、無邪気な子供みたいで大変可愛らしいね!
...そんなヒナちゃんを眺めること数分、お礼を言いながら掌を伸ばしてきた先生にグータッチを返しつつ、ボクはソファーから立ち上がる。
...もう戻っちゃうのかって?まあそうだね、今日中に完成させときたい資料もそこそこあるし。
『遅れそうな分は私も手伝うから』って...いやいや、ただでさえ先生忙しいんだからそういうのはダメでしょ〜?...それにボクがいたら、ヒナちゃんも思う存分
うんうん...えへぇ〜?もう明日の朝のコーヒーの予約?まあいくらでも淹れるけどさ、カフェインの摂りすぎには注意してよね。
うん......うん。んじゃ先生、後のことはよろしくね。
...ふぅ♪いきなり呼び出された時はどうなるかと思ったけど、シリアスな展開にならなくて良かった良かった。
仕事が終わったら、お礼がてら黒服さんに晩御飯をご馳走しよう。前より少しだけ先生と話す機会が増えたのは、紛れもなく黒服さんのおかげだからね!
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〇月△日
シナシナヒナちゃん復活のお手伝いをした翌日。今日はシャーレの定例会議がある日である。
会議資料の作成や段取りはユウカちゃん達がすんごい手際でやってくれるからボクの出番はないんだけど...かといって何もしないのは心苦しいからね。
会議室のセッティングや出席者のお出迎えなんかは、ボクが率先してやるようにしてるわけなんだけど...なんか今日出席者多くない?イツメンにプラスして20人くらい人来る予定になってるんだけど?
名簿を見ながら首を傾げていると、入ってきたのは昨日ぶりの空崎ヒナちゃん。うんうん、表情も佇まいキリッとしてるね!先生成分を補充して、今日は気力十分って感じだよ。
...おっと?ヒナちゃんと目が合うや否や、袖を摘まれて壁際に引っ張られてしまった。
『......昨日は色々お世話になってしまったわね』と、指先で髪を弄りながらお礼を言ってくれるヒナちゃん。
うーむ、ああなった原因の張本人がボクなわけだからマッチポンプ感が否めないけど...ここは素直にお礼を受け取っておこう。大丈夫、昨日のヒナちゃんのことは先生同様絶対に口外しないから安心してね!
さてさて次は...おっ、ツルギちゃんだ!久しぶり〜......って、なんかめっちゃ汚れてない?もしかしてまた仕事で
仕方ないな〜。ほらほら、こっち来て身だしなみを整えましょうね〜。会議とはいえ先生と会えるんだもん。制服も髪の毛もキレイにして、一番可愛いツルギちゃんを見せつけてやんなきゃね♪
ツルギちゃんを送り出して戻ってみると...いつの間に後ろに回られたのか、ネルちゃん先輩がボクのお尻を軽く蹴り上げてきた。うひぃっ!?お疲れ様でっす!!
なんの取り柄もないボクのどこを気に入ったのか、ネルちゃん先輩は何かとつけてボクにちょっかいをかけてくるのだ。
...まあツルギちゃん同様、弱っちいボク相手でも訓練で
『おう、ウワサのコーヒー出してくれよ。4人分な』と半ばパシられる形で戻ってくると...出席者はもう全員会議室に揃ったようだった。
むーん、ホシノちゃんもいつの間にか席に着いてる...いつもは眠そうにしながら『眠気覚ましにカフェオレ淹れてほしいな〜』って可愛くおねだりしてくるんだけど...まあ
さてさて、そんなこんなで始まった定例会議もつつがなく進行して...最後の議題に挙がったのは、謎の少女『シキ』についての情報共有だった。
...驚きだったのは、立ち上がったヒナちゃんがこの会議の場で____シャーレの仲間とはいえトリニティやミレニアムといった別勢力の面々がいるこの場で、自身がシキ相手に何も出来なかった旨を包み隠さず報告したことだ。
何食わぬ顔で座ってるボクだけど、内心は緊張と興奮でドキドキしっぱなしだ。
何せキヴォトス最強の一角として名高いヒナちゃんが『シキ』の異質さを証言したことで、『謎のヒロイン』は『現状明確な敵対関係ではないが、いざそうなると厄介な存在』...通称『潜在脅威』という位置付けにランクアップしたわけなのだから...!
周りを見やれば、ユウカちゃん達同期の古参メンバーは真剣な面持ちでヒナちゃんの話に耳を傾け、アコちゃん達風紀委員は顔から少し血の気が引いてる様子。
ツルギちゃんとネルちゃん先輩は...わーお、すっごいギラギラした顔で話聞いてる...!絶対
ホシノちゃんは...ふむ、やっぱり今日は様子がおかしい。表面上はいつも通りなんだけど、どことなく雰囲気が張り詰めたような感じだ。アビドスの借金絡みでまた何かあったのだろうか?
ヒナちゃんからの報告が終わり、今度はユウカちゃん主導でシキが話していた『厄災』について心当たりがないか話し合ってるところなんだけど...うへへ、これがなんともくすぐったい。
それもそうだろう、あの時『謎のヒロイン』として話した『厄災』絡みの内容は、参考ソースもなんも無い単なる『設定』なのだから!
いや〜、我ながらいい感じに謎めいた設定に仕上がったと思ってるよ。
あーでもないこーでもないって何日も頭ん中で設定こねくり回してさ、ある日疲れて昼寝しちゃった時に...
その様相はまさに『厄災』!目が覚めてからはバチバチに頭が冴え渡って、ものの数分で設定を纏めあげることが出来たのだ!
ぐっすり寝ると頭の中が整理されるって言うし、やっぱアイデア出しする時はしっかり睡眠をとらなきゃね♪
結局『厄災』についてはトリニティの古書が一番有力そうだけど、『ティーパーティー』が閲覧を許可してくれるか分からないということで、ミレニアムの特異現象捜査部が主導で調査を始めることになった。
ヒマリちゃん達に無駄な時間を使わせてしまうことに罪悪感を感じるけど...ボクはもう止まるわけにはいかないのだ。沢山差し入れするから許してね。
最後に先生から、『皆シキを見ると本能的に『怖い』って思うらしいけど...もし出会ったら、
...むっふふ〜ん♪テンションが盛り上がって『
先生はもちろん、会議を通して共有されたシキの印象も申し分無し!これからはより一層、シャーレ全体の反応を楽しみながら『謎のヒロインごっこ』が出来そうだね!
うへへへへ!午後からもお仕事頑張りながら、次の
...って、うん?どしたのユウカちゃん。先生も一緒で、なんかあったの?
____有給溜まり過ぎ?...えっ、ボクって有給とかあったの?
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____ぬばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!1週間シャーレに出入りできなくなっちゃったよお゛お゛お゛お゛お゛っ!!!
先生にも見せられないようなきったねぇ泣き顔を晒すボクを見て、小馬鹿にしたように鼻で笑ってくる黒服さん。
...ムカついたボクが突進して黒服さんの高そうなスーツを涙と鼻水でベチャベチャにするまで、およそ1秒もかからなかった。
だって知らなかったんだもん!他の部員達と違って、シャーレ専属事務員のボクには普通に有給が付与されてるなんてこと!
『有給取得義務の期限がギリギリだから、纏めて5日分消化してきて』ってマジ?『謎のヒロイン』の異質さが際立ってきて、一番皆の反応の鮮度が高くなるだろうこのタイミングで!?
ゔあ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ!見たかった!仕事中、唐突に天井を見上げた先生が『シキ...か』とか呟いてイマイチ仕事に集中出来てないところとか!特異現象捜査部の初動報告を聞いて、どの方向から捜査を進めればいいか悩んでるユウカちゃん達の
...『大泣きしながらそんなセリフが出てくるところは、素直に感心してますよ』って?よせやい照れるぜ☆でも黒服さんだって人のこと言えないんじゃないかな!
しかしホントにどうしようか。こうなった以上皆の反応を楽しむことは諦めざるを得ないとして、土日含めた7日間をどうやって過ごしたものか。
今はイッキ見したいアニメや特撮も特にないし...強いて言えば『
なんて色々考えていると...もうスーツのことは諦めて、腰に引っ付いてるボクの頭に手を置いた黒服さんが1つ提案をしてくれた。
曰く、『特訓ついでに我々のお手伝いをしてみませんか?』とのこと。
ボクに特訓場所や戦闘の機会を提供する代わりに、黒服さん達の活動を少しの間お手伝いするという...まあ黒服さんお得意の『契約』というやつだ。
『単純に、
『ゲマトリアにインターン』って...なんか先生が見たらひっくり返りそうな字面だね。
でもまあ...うんっ!面白そうだしやってみようじゃないか!黒服さん達には色々お世話になってるし、惰性で1週間を過ごすより遥かに有意義そうだしね!
ということで黒服さんと新たな『契約』を交わし、ゲマトリアへのインターンシップ____過酷で怒濤の1週間が始まった!
次回の投稿は土曜日を予定してます!