ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。 作:YEBIS_nora
書いてたら文字数が増えまくっていた三人称視点ですが、お付き合いいただけると嬉しいです。
※作者は銃撃戦の知識が殆ど無いため、理にかなっていない描写等あるかもしれませんがご容赦頂けると幸いです。
「____よォ、
『......、』
「____っ!......はっ!噂通り、中々ヤバそうなプレッシャー出してくれんじゃねーか、オイ...!」
ネル達がターゲットと接触するのにあたり採用したのは、何の変哲もない『いつも通り』のプラン。
ターゲットのいる廃墟施設をスキャンし、建物周辺に協力者がいないか偵察しながらカリンの狙撃ポイントを決定し。
後はターゲットのいる部屋に、アカネの仕掛けた爆弾で
...部長であるネル曰く、『この手に限る』というヤツである。
「こっちの都合で
『......』
「ああ、もちろん『武器を捨てて大人しく付いてこい』なんて野暮なことは言わねぇ。
『............』
「......オイ、何とか言ったらどうだよ。まさか『先生がいないなら喋るつもりはありません』とか、ふざけたこと抜かすつもりじゃねーだろうな?」
『..................ンキー』
「あん?」
ガンを飛ばしながら首を傾げるネルを指さし、どこか気まずそうに顔を伏せた少女は言う。
『......
「............................................は?」
...堪らずネルの口から漏れたのは、ヒリついた空気が霧散するような素っ頓狂な声。
「ヤンキー苦手なんだって。言われてるよ、リーダー」
「るっせ、誰がヤンキーだっ...!......なぁ、
「落ち着いてください、部長。ここは
前に出たアカネは...
「コールサイン03、アカネと申します。我々のリーダーが少々苦手ということですので...代わりに私から、幾つかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
『......(コクン)』
「お〜、応じたね」
「ざっけんn「は〜い、静かにね〜リーダー♪」むぐっ.......!」
手で口を塞がれてバタバタしているネルを横目に、アカネはシキへ問いかける。
「そうですね...ではまず、貴女の『シキ』という名前は本名ですか?」
『......『シキ』は、この前適当につけた偽名...本名を教えるつもりはない』
「ありがとうございます...では次に、この『廃墟』を訪れた目的は?」
『...『デカグラマトン』の痕跡、またはソレに関連しそうな物を探しに来た......奥地は水没していたから、あまりめぼしいモノは手に入らなかったけど』
「『
『......答えるつもりはない』
淡々と繰り返されるやり取りの中、アカネは質問を誘導したりカマをかけてみたり...少しでも情報を引き出すために知恵を回した。
それでも、『答えない』意思を示された質問にそれ以上『なぜ?』と踏み込めなかったのは...少女から漏れ出る得体の知れない恐怖が、アカネの無意識に
「...最後に、先程リーダーが話していた件...我々と一緒にミレニアムに行って、もっと
『............ミレニアムには興味があるけど、それは出来ない』
「そうですか...困りましたね。クライアントも、どうしてもすぐ貴女に会いたいと我々に依頼を出しておりますので......心苦しくも、少々手荒な手段でお連れすることになってしまいますが...?」
『......それは、できればやめて欲しい』
「...何故でしょう?」
笑みを浮かべながら
『____
「『____は?』」
「...へぇ.........♪」
......再び、場の空気が固まった。
アカネからも、アスナからも...ずっと無線を繋いでいたカリンからも、纏う気配が急激に変わったことを肌で感じた。
本人が意図して発した
1秒
「____最高かよ、お前...っ!」
...久しぶりだった。
数多くの任務をこなし、『ミレニアム最強』とも噂されるようになった自分を前に、平然と勝つつもりで話を進めるヤツを目にするのは。
シャーレ部員として先生の力になるため協力し、親交を深め...将来的には『先生専属のメイド兼生涯のパートナー』を夢見ている彼女たちの前で、自分が先生に多少なりとも好かれているかのようなセリフを言ってのけるゴキゲンな命知らずを目にするのは。
傍らに立つ2人の
遠距離からこの部屋を狙うカリンも、きっと同じような
『.........』
全員の視線を受け止める少女も、ネル達の戦意を感じ取ったのだろう。
傍らを飛行するドローンにリュックを預け、ハンドガンのホルスターに指を添えて臨戦態勢に入る。
...言葉での応酬は最早ここまで。
ここから先は、より強かった方の主張がまかり通る...キヴォトスにおいて最もポピュラーで、最も理不尽なルールが支配する
「...コールサイン00、美甘ネル」
『......?』
「覚えときな...今からテメーをぶっ倒して、その無駄にスタイリッシュなガスマスクをひっぺがしてやるエージェントの名前をなァ!!」
ネルが愛銃の引き金を引くのと、カリンが発砲したタイミングは全くの同時だった。
二丁のサブマシンガンで横薙ぎにするように放った弾幕の回避先に迷い、僅かでもその場に踏み留まった時点で...割れた窓ガラスの隙間から、対戦車ライフルの弾丸が後頭部に突き刺さるという挨拶代わりの初見殺し。
反射で上に跳んだとしても、アカネとアスナに狙い撃ちにされる状況下で...ガスマスクの少女は、引き抜いたハンドガンの銃口を背後に向ける。
『____
「「「『...っ!』」」」
総毛立つような悪寒がネル達の身体を駆け抜けた直後____ズドンッッッッ!!!と。
普通のハンドガンからはとても出ない程の轟音と共に、得体の知れない『何か』を纏った銃弾が放たれ...
『.........、』
そして残るは、正面の弾幕。
少女が選択した回避先は...上ではなく下だった。
しゃがむ程度では被弾してしまう僅かな隙間に、瞬時の開脚前屈で身体を潜り込ませて初撃の弾幕を全て躱し切る。
「マジか...堪んねぇな、お前!」
『...こっちの番』
跳び箱を跳ぶように両手で
「......................ヒッ...っ」
「っと...!危な〜...」
だがアスナとアカネ...2人の実際の
「(...機動力はあたしと互角。あの不気味なプレッシャーが増したのは、ようやくエンジンが温まってきたってことか?...クソが)」
依然部屋の中で銃撃戦を続けつつも、ネルは左の口角を吊り上げて相手の戦闘能力を分析し続ける。
シキが使用する武器は一見どこにでも売っていそうな二丁のハンドガンだが...対戦車ライフルの弾を貫通した以上、どんな魔改造がされているか分かったものでは無い。
加えて、あのしなやかな身体能力と爆発的な加速。
今でこそ3人それぞれのリロードをフォローし合い、シキの動ける範囲を制限するよう弾幕を張っているが...懐に入られたら最後、
故に狙うは...シキが再びリロードのため、回避行動に専念する数秒間。
『リーダー、配置についた...!』
「来たか...!テメェら!」
「「..........(コクン)」」
僅かなアイコンタクトで
それを阻止しようとシキも反撃と回避を続けるが...ハンドガンの装填数はそう多くはない。
...狙っていた
「____
「了解...今っ!!!」
『...!』
直後にシキの頭上...鉄筋コンクリートの天井が、
合図の内容から、アカネが爆弾を起爆したことは明らかだが...シキとしてはどこか腑に落ちない。
鉄筋コンクリートを粉々にする威力の爆弾を戦闘中に仕掛けていたなら、必ず目立つし意識しなくても視界に入る。
もっと言うなら、わざわざ粉々にせずとも瓦礫として頭上から落とした方が遥かに威力が高いはず。
...だがその疑問は、次の瞬間には解決することになる。
崩落した天井の更に先...上階からこちらに銃口を向ける、もう1人のメイドの姿によって。
『...!天井じゃなく
「正解...そんでもって____目ぇ離しちまったなァ、あたしら3人からッ!!!」
ガスマスクの少女は弾かれたように視線を戻すが、ネル達からすればもう遅い。
目前にはネルが迫り、背後からはアカネが後頭部に狙いをつけ、愛銃を構えたアスナはスライディングでシキの足元に潜り込んだ。
「終いだ...っ!」
上下前後から突きつけられる銃口。
初撃を回避したような曲芸技を使おうと、絶対に被弾は避けられない必殺の距離。
ミレニアムの最強エージェント達が今、ゲヘナ風紀委員長を封殺した得体の知れない少女を仕留めるべく同時に引き金を引き絞る...!!
......その瞬間であった。
『____
____ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾッッッッッッ!!!!
...彼女から漏れ出る、異質なプレッシャーが。
予め『来る』と分かっていれば、少し身体の動きが鈍くなる程度で済んでいたモノが...強大な重力になったかのように膨れ上がり、ネル達4人に容赦なく降り掛かったのだ。
「なっ...!?」
...思考は真っ白だった。
普段『反射』だと思ってるモノとはレベルが違う...もっと
「テメェらっ......!?」
頭を振って気付けをし、再び前方へ目を向けたネルの目が捉えたのは...力無くその場で崩れ落ちる
「.................................ぁ...な、ん.......っ」
「......あは.........これ、ヤバいかも............っ」
「...リー...ダー............!」
震えながらへたり込むアカネに、異様に汗をかきながら何とか上体だけを起こせた様子のアスナ。
天井の穴から辛うじて姿が見えるカリンの手から、彼女の
『...
敵前で堂々と弾倉を替え、片方のハンドガンをホルスターにしまいながら少女は呟く。
『...でも、これでお終い』
「...!?がァ____っ!!」
次の瞬間には、ネルの身体がくの字に折れ曲がっていた。
鳩尾に突き刺さっているのは、カリンの愛銃『ホークアイ』の銃口。
ネルが瞬きをした刹那の間に...ガスマスクの少女はライフルを拾って槍のように構え、急加速して真っ直ぐ突っ込んできたのだ。
...そして、ズドンッッ!!!と響く発砲音。
ほぼゼロ距離で対戦車ライフルの弾丸を喰らったネルの身体は吹き飛ばされ...鉄筋コンクリートの壁に勢いよく打ち付けられた。
「ごっ..............ぁ...........................、」
「リーダー...っ!」
『...もう行くね』
...上体だけをネルに向けて叫びかけるアスナと、ライフルを床に置き、踵を返して歩き始めるガスマスクの少女の姿が...
あれだけの一撃を喰らって尚、ネルは無理やり思考を回して意識を繋ぎ止めていた。
「(...アイツ、あとどれくらい余力を残してやがる......ゲヘナの風紀委員長が喰らったのはどの段階だ...?)」
先程シキが『ようやく3人』と呟いていたことを都合良く解釈するなら...あの少女は推定二段階目である今の出力まで、あまり引き上げたくなかったとも考えられる。
何せミレニアムでもトップクラスの戦闘能力を誇るエージェントが3人、直接攻撃を受けずに行動不能になる程の得体の知れない『何か』だ。
原理も扱い方もサッパリ分からないが...一切の疲労を伴わないような代物でないことは、直感で理解出来る。
「(...確かにあたしも動きが鈍って一発喰らっちまったが......でも、
空崎ヒナのことを『実力はほぼ互角だが、自分の方が頭一個分は
...ならば、より高密度なプレッシャーを瞬間的にぶつけられた?
だとするなら、あの少女の上限値は一体どこまで____
「...あぁ、全くよォ____
『____っ!』
絞り出すように張り上げられた、鋭い目付きの少女の声に。
ザリッ!と力強く地面を踏みしめる背後からの足音に...ガスマスクの少女は、初めて明確な動揺を表に出した。
『...確かに、鳩尾へ撃ち込んだ筈...』
「......ハッ!こちとら『しぶとさ』には特別自信があるもんだからなァ!!」
『...凄いね.........ホント、羨ましいくらいに』
ギラついた笑みを浮かべて右肩を回しているものの...美甘ネルがこういう性格でなかったら、恐らく先程の一撃でダウンしていたことだろう。
彼女の身体を駆け巡る高揚感は、久しく感じられなかった
迎え撃つでも、掃討するでも、拮抗している相手とぶつかり合うでもない...自分が相手に『挑戦する』という熱い感覚。
その昂りが、熱量が、アドレナリンが...
「____勝負は、まだこっからだろ...!」
『...っ!』
「......何、それ...リーダー...?」
シキとアスナの瞳が捉えたのは、後頭部の斜め上に浮かぶ彼女のヘイロー。
「...アスナ、気合いで動けるか?」
「えっ!?...あー...うん。少し厳しいかも...?」
「じゃあ根性で身体動かしてこっから離脱しろ......
「...あはっ!無茶言うね、リーダー......でも...うん、任せて」
幸いにして、アスナ達3人に目立った外傷はない。
ガスマスクの少女から距離をとり、掻き乱された精神を落ち着かせることが出来れば、十分に戦線復帰は可能だろう。
『...ソレ、やっぱり貴女も出来るんだね』
「あ?
...無論、あの3人が戻ってくるまで長引かせるつもりはない。
愛銃の弾倉を使い切るより早く。
最高にノッている今の状態が途切れ、あの底知れぬ『恐怖』に呑まれてしまうより早く...目の前の少女から勝利をもぎ取るだけ...!
「____第二ラウンド、スタートだ...っ!!」
後半に続きます。