ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。   作:YEBIS_nora

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※注意:本話から独自設定が更に強くなります!読む方によっては2~3名の生徒たちの関係性や役割に強めの解釈違いが起きてしまう可能性がありますが、ご容赦いただけますと幸いです。

...大変お待たせいたしました。連絡もなく3ヶ月以上失踪して申しわけありません。
失踪理由を簡単にまとめると、年始から長期的な高熱+回復後に書いてみても全然しっくりくる文章が書けなくなっており、一度距離を置いていました。
詳しい内容については活動報告に書きますが、今は完全回復してるので不定期ながら更新していきます!




少女の瞳に映る者

「フフん♪シャーレへようこそ、アビドス対策委員会の皆々様!じゃあ早速、先生の所へ入部届けを出しに____ってちょおおおおおおおおッッ!!?」

 

 先生がアビドス自治区を訪れ、対策委員会と共に一連の騒動を治めてから何日か過ぎた頃。

 

 委員会メンバー総出でシャーレのオフィスに足を踏み入れ、ロビーで待っていた少女の姿をハッキリと視界に収めた小鳥遊ホシノは...次の瞬間には、彼女を抱きしめるように突進して床へ押し倒していた。

 

「...................気のせい...?」

「...おっとぉ?どうしていきなりちっちゃくて可愛らしい女の子に押し倒されて顔面をペタペタ触られてるのボク...!出会い頭からヒロインに押し倒される系のラブコメ漫画は割と好きだけど、自分が当事者になるとは思ってなかったかも!?」

 

 実際には数秒...しかしホシノにとっては何十秒にも引き伸ばされたような体感時間の、その中で。

 ホシノの瞳はどうしようもなく......目の前のサイカという少女と、もう帰ってこない筈の()()の面影を重ねて映していたのだから____

 

 

「____それでね、これがサイカちゃんと水族館に行った時の写真で〜、こっちが皆でサイカちゃんのお家へお泊まりに行った時の写真〜♪...ほら、これこれ!集まる前にサイカちゃんが焼き菓子作ってくれててさ、皆で食べながら沢山おしゃべりしたんだ〜♪」

「へぇ〜いいなぁ!すっごい楽しそ......うん?」

「...?どしたの、先生?」

 

「いやさ、画面のスクロールで見えた写真も全部そうだったけど...なんかホシノ、どの場面でもサイカの膝の上に座って抱きしめてもらってない?」

「...うへ、気付いてしまったんだね先生(せんせ)っ。あの背中で感じるお日様みたいな(ぬく)もりに、ふわりと包んでくれるフローラルな香り...おじさんはもう、数日置きにサイカちゃん成分を補充(チャージ)しないと生きていけない身体になっちゃったんだよぉ〜...!」

「何そのセラピー効果高そうな独自成分...!まあサイカも嫌がってなさそうだし良いんだけどさ」

 

 そんな出会いから数ヶ月。

 彼女____サイカが『先輩』とは何の関係もない人物であることは、シャーレでの活動を通してすぐに理解出来た。

 

「ところでホシノ?ずっとサイカの膝に乗ってた理由は分かったんだけど...今現在私の膝の上に座って(くつろ)いでるのはどういう理由なの...?」

「.........えへ〜♪///」

「う〜ん、へにょって可愛く笑いながら後頭部グリグリされても(せんせい)(はぐ)らかされないかもなぁ...!」

 

 よくよく見れば顔立ちも異なっているし、性格や趣味だって『先輩』とは似ても似つかない。

 背丈や骨格は殆ど同じであるものの...()()()()()()()()()()は『あり過ぎず無さ過ぎない』位で、今後急成長しても『先輩』に並ぶのはかなり厳しいだろう。

 

「...相変わらず、ホシノとサイカは仲がいいね」

「うへへ、そうでしょそうでしょ?シャーレや街中で見かけたら両腕をブンブン振って笑いかけてくれるし、空き時間にはカフェオレやお菓子を用意して添い寝までしてくれるし...叶うことなら、サイカちゃんをホントの妹としてお家にお迎えしたいくらいだよ〜」

 

「どっちかというとサイカの方がお姉ちゃんしてる気がするけど...でも、うん。サイカのこと、これからもよく見ててあげてね」

「...ん、もちろん」

 

 だからきっと、出会ってからほんの数日で気の許せる関係になれたのは...単純に、()()()()()()()()が自分の波長と良い感じに噛み合ったが故の必然なのだ。

 

 ふとサイカが微笑んだ時...ごく稀に、どこかのほほんとした『先輩(あのひと)』の笑顔が()ぎるのも。

 添い寝をしてくれるサイカがギュッと抱き締めてくれた時...ごく稀に、嫌がる自分に構わず飛びついてきた『先輩(あのひと)』の(ぬく)もりを想起してしまうのも...きっと自分の思い過ごし。

 

 彼女と過ごす時間があまりに温かいものだから...思考が勝手に、かつての記憶と結び付けているだけなのだと。

 

 

「____はい、しゅーりょー♪...うへ。久々だったけど、相変わらず戦闘面(こっち)の進歩は相変わらずだねぇサイカちゃん」

「ぜぇ、ぜぇ...っ!ホントそれね...各校の実力者達と手合わせし放題な超絶羨ま環境で訓練してるっていうのに、未だに銃弾一発すら当てられないとか...ぜぇ...っ、我ながら、クソザコ過ぎ.........ヴォエッ!お吐瀉(としゃ)出ちゃいそう...」

「およそ年頃の女の子が発しちゃいけないような音とセリフ回しだねぇ...よしよ〜し、おじさんが背中をさすってしんぜよう」

 

「ぴゃ〜、ありがてぇ......いつもごめんね、ホシノちゃん。何度も訓練付き合ってくれてるのに、ちっとも成長を見せられなくてさ...」

「もー、そんなこと気にしなくていいのに〜。最低限の自衛は出来るレベルにはなってるし、成長にはそれぞれのペースがあるんだから、そんなに焦らなくてもいいんだよ」

 

「ぐぬぅ...でも、ボクだってシャーレの一員として「それに、無理して上の強さを求めなくても大丈夫」............え...?」

「サイカちゃんも先生も、もしもの時はおじさん達が____()()、必ず守り抜いてみせるからね」

「____っ.........そう、だね...ホシノちゃんがいてくれるなら、これ以上に頼もしいこともないよね...っ!」

 

 訓練の場ですらサイカの負傷を避けているのも、彼女がサポートの得意な非戦闘員だからであって......間違っても、彼女を実戦の場に立たせたくないという身勝手な願望によるモノではないのだと。

 

 

 ...あぁ、言われなくても分かっている。

 自分がまだ彼女の____『ユメ先輩』の死とそれに伴う後悔を、完全に理解と納得へ落としきれていないということは。

 目の前の確固たる個人に別の『誰か』を重ね過ぎることは...相手からしても、あまり気持ちのいいモノではないということは。

 

 ...『ユメ先輩』がいなくなってから、もう年単位で時間が経った。

 3年生になり、かわいい後輩達ができ、心から信頼できる大人と...時々胸がギュッとなるくらい、特別な気持ちを抱かせてくれる人と出会うことができた。

 

 ...だからいい加減、自分も気持ちの整理をちゃんとつけよう。

 過去を振り返るのは特別な日だけにして、全身全霊で現在(いま)に目を向けて生きていこう。

 

 大きな事件が鳴りを潜めていた、とある満月の日の夜。両手を組んだホシノはベッドの中でギュッと決意を固めて...ゆっくりと微睡みの底へと意識を沈めていく。

 

 ____数週間後、そんな決意に容易く亀裂が入ることなど知る由もないままに。

 

 

「____入るよ、風紀委員長ちゃん」

「...っ!?小鳥遊ホシノ...その、彼女の容態は...?」

「.........ん、セリカちゃんなら大分(だいぶ)落ち着いてきてるよ。一報を受けた時は疑わしかったけど、()()()()()()()()()()()()()()しね」

「そう......ごめんなさい。私がついていながら、貴女の後輩に怖い思いをさせてしまったわ」

「うへ。謝罪は受け取っておくけどさ、そんなに強く責任を感じる必要はないよ。部隊リーダーとして最後まで矢面に立ってくれてた風紀委員長ちゃんを責め立てるだなんて、おじさん含め誰も望んでないんだから」

 

 先生から『セリカを迎えに来て...可能なら、今日は対策委員会みんなで彼女の傍にいてあげてほしい』と連絡を受けたホシノ達が駆けつけたのは、シャーレの任務予定に入っていたカイテンジャーの拠点前。

 ゲヘナの救急医学部やヴァルキューレの車両と簡易テントがひしめく現場でセリカと合流した(のち)...ホシノは渦巻く感情をどうにか抑え込みながら、空崎ヒナのもとへ話を聞きに訪れていた。

 

「...それで、風紀委員長ちゃん____()()()()()()()()()()()()()()()...?」

「...っ!?......以前チナツ達が遭遇した、『不気味なヘイローを持つ少女』...本名かは不明だけど、本人は『シキ』と名乗っていたわ」

「シキ......目算の身長体重は?外見は?使用武器と戦い方、他に特徴になりうる要素は「少し待って、小鳥遊ホシノ...っ!」......ごめん...」

「......先生の指揮管制用ドローンも特に壊されていないから、その映像を流すわ......まさかとは思うけど、1人で報復に行くつもりじゃないのよね...?」

「いやいや〜、流石にそんな短気は起こさないよ〜。動く時は皆で十分な調査をして、しっかり態勢を整えてか...ら...............え...?」

 

 ヒナのスマホで再生される動画から目を離すことなく、ホシノは彼女の問いかけに努めて柔らかい声音で返そうとしたが...それが最後まで続くことはなかった。

 

 ____ザザッ、ザザザッ...!

 

 ...サイカと出会った時とは、比べ物にならなかった。

 

 ____ザザザザザ...ザザザザザザザザッッ...!!

 

 淡い虹色の長髪に、見たことのない制服とスタイリッシュなガスマスク。肉声と機械音声の間に位置するような、感情の色が見えにくい淡々とした声。

 ()()()のどこをとっても、『先輩』との共通点は殆ど無いに等しいはずなのに。

 

 映像の中の少女の立ち姿と、瓦礫の山を降りてくる際の歩き方と重心移動の仕方などという...重要指名手配犯を追う捜査員くらいしか注視していないような情報だけしか得られていないはずなのに。

 

 ...ザザザザッ____ザザザザザザザザザザザザザザザザッッッッ!!!!

 

 何秒経っても、何度も目を擦っても、太ももを強くつねっても。

 思考(りせい)とはどこか本質的に異なる、本能に根ざした『魂』と呼ぶべき左胸の鳴動が...いっそ不気味とも思える程に、シキという少女と『先輩』の面影を重ねて離さなかった。

 

「..................ぁ......、」

 

 ノイズのように映り込む、砂塵飛び交うかつての情景。

 少女(ホシノ)の深層に刻み込まれた、大切な人との別離の記憶。

 

 手足の指先が冷えきっていく感覚が、膝から崩れ落ちてしまいそうな喪失感が。

 侵食し、入り混じり____現実と記憶の世界の境界を、酷く曖昧に歪めていく。

 

「......小鳥遊ホシノ...?」

「......見せてくれてありがと、風紀委員長ちゃん。まだ報告とかやることもあるだろうけど...今日は早めに休んでね」

「...!待っ...」

 

 引き留めるように手を伸ばそうとするヒナの姿を視界の端に捉えていながら...小鳥遊ホシノは、早歩きでその場を後にする。

 

 ...ヒナのもとを訪ねる前と後で、最終目標は全く別のモノへと切り替わっていた。

 

 

「......『D.U.』、アビドス、百鬼夜行、山海経、レッドウィンター、オデュッセイアにワイルドハント。2()()()()()()で調べてもらった三大校の自治区でも、『不気味なヘイローを持つ少女』の目撃情報はなし......『ブラックマーケットを歩いていると、ごく稀に視界に映る女生徒の幽霊の噂』?......態々(わざわざ)調査結果に記載したってことは、何か関連性があるってこと...?」

 

 水面下で調べを進めるホシノの傍に、『仲間』と呼べる人物は存在しない。

 

「(この前の定例会議の内容を鑑みても、姿を確認した事例が少なすぎて法則性なんてあったものじゃない...)」

 

 1()()()()()()()()()()()()少女のことを...止められる者は誰もいない。

 

「____ならヤマを張るべきは............()()

 

 

-----------------

 

 

「うへ〜、急に押しかけちゃってなんか悪いねぇコタマちゃん」

「いえいえ、今は副部長達も全員出払ってて暇でしたから。こちら粗茶...というかお茶がないので『妖怪MAX(エナドリ)』になりますが、とりあえずどうぞ」

「いえいえいえ〜、それじゃあありがたく〜」

 

「......それで、今日はどういったご要件でしょう。アビドスの委員長さんが態々(わざわざ)1人で来るだなんて一体...?」

「いや〜、別に大した用じゃないんだけどねぇ____これ、な〜んだ」

「____!?どうして貴女がそれを「ダメだよ〜コタマちゃん。いくら先生のリラックスした声を録りたいからって、()()()()()()()()()()()()()()なんかに盗聴器(こんなもの)仕掛けちゃ〜」...............それを、どうするつもりですか...」

 

「うへ。別にコレを先生に渡そうとか、このことを告発しようとかは考えてないよ〜......コタマちゃんが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()部員限定で配布している『とある大人の日常記録(バイノーラルボイス)』シリーズには、おじさんもお世話になっているからねぇ〜」

「そんなことまで...では、一体何を...?」

 

「____コタマちゃんが持ってる盗聴器の中で一番小型軽量録音機能付きで保存容量が大きいやつ...私に譲ってほしいんだよね」

 

 

-----------------

 

 

『......シキ。もう少しだけ、キミの時間を私に貰えないかな...?』

『............』

『もっと、知りたいんだ____キミの趣味とか、最近ハマってるもののこととか』

『............えっ...?』

 

『もう一度...今度はどこか練り歩いたりしながら、こうやってお話することって出来ないかな...!』

『上手く言えないけど......情熱的なお誘い、だね』

 

『...先生』

『うん?』

『.........またね』

『____!うんっ、また明明後日に!』

 

 

「........................()()()()

 

 

-----------------

 

 

 ...他に得られる情報はないかと、盗聴器が録音していた先生と彼女のやり取りを何度も聴き返し。

 先輩のことや当時の自分のことを、何度も何度も思い返し...そして迎えた、先生と謎の少女シキが......実質的なデートをする日。

 

「..................、」

 

 今日に至るまでロクに熟睡など出来ず、どこかフワフワとした感覚に包まれている小鳥遊ホシノは...()()()()()()()()()()()()1()()()()()()()姿()を捉え、気配を悟られないよう周囲の空気に溶け込むようにしてその距離をゆっくりと縮めていた。

 

『......』

 

 少女の装いがいつもと違うことも、いつも被っているガスマスクがいつもと違うデザインになっていることも見えている筈なのに...そちらに関心が向くことはない。

 

 ...実際のところ。

 僅かに残る自身の冷静な部分が、『そんな期待は(まやか)しだ』と告げている。

 

 ヘイローの形は当人とあまりにもかけ離れているし...なにより、あの場にはユメ先輩が()()()()()()()()()()()のだと否応なく突き付けてくるだけの物品が、確かに散乱していたのだから。

 どれだけ都合よく考えても、彼女(シキ)が先輩の『血縁者』である可能性や小・中学校時代に生活を共にしていた関係者という線が精々の筈...それなのに。

 

「____やあやあ、そこのキレイなおねーさん♪もしかして、誰かと待ち合わせしてるのかな?」

『..................なんで...』

「うへ......ず〜っと探してたんだよ?潜伏先はどこなのか、目的は何なのか...誰を張っていれば、見つけられる可能性が一番高いのか」

 

 ...こうして、彼女と至近距離で対峙するだけで。

 声を聞いて、纏う雰囲気を肌で感じる...それだけで。

 元々思考の大半を占めていた、まず有り得ない筈の『期待』が更に膨れ上がってしまう。

 

 その瞳に映るモノが、果たして『現実』なのか『虚妄』であるのか......最早彼女一人では、見分けることすら叶わない。

 

「____()()()()()()()()()()

 

 ...貴女は誰なのか、自分のことを覚えているのか...()()()()()()()、先生の周囲で怪しげな行動を起こしているのか。

 一旦場所を移して色々質問するつもりだが...ホシノの最終目標は変わらない。

 

 彼女のことを、自らが守るべき場所に...後輩達の待つアビドス自治区へ連れて行く。

 多少強引な手段になろうとも...何としても、絶対に____

 

 

 

「____よし、到着!ちょっと待ち合わせの時間ギリギリになっちゃったけど...うん、()()()()()()()()()()()()()()

 

 ......裏切られ、騙され続けてきた自分が唯一信頼を向けている筈の先生(かれ)にすら...ホシノは徹底して悟らせまいと『普段通り』を演じ抜き、シキという少女へ行き着いた。

 そんな彼女が作り出した、たった1分のすれ違い。

 それでいて、彼にとっては明確な周回遅れに繋がりかねない...たった1分のすれ違い。

 

「(連絡先、この前ちゃんと聞いとけばよかったな...)」

 

 『生徒すべての味方』たる一人の大人は...事態の変化に気付くための情報すら、まだ何一つ掴めていない。

 

 

 




...厳しい構想かもという自覚はありますが、「この目に映る情報は、オマエとユメ先輩との共通点の少なさを示している。だが俺の魂がそれを否定してんだよ!」的なやつです。
対策委員会編Vol.3の今後の展開によっては、今以上に本編との乖離が酷くなるかもしれないですが、どうかご容赦ください。

次回は明日、色彩ちゃん視点の前に幕間を挟みます。
色彩ちゃんのあれこれを、ゲマトリアの皆さんに語っていただきます。
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