ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。 作:YEBIS_nora
この回は取材形式のため、セリフ多めな構成になっていますが読んでいただけますと幸いです。
クロノスジャーナリズムスクール刊行の月刊誌、『月刊キヴォトス』。
編集部新人の1年生がデスクに戻ると、提出したテープ起こしが先輩の書いたメモと一緒に返却されていた。
『初めてのソロ取材お疲れ!『起こし』は一通り読んだけど、中々面白い話が聞き出せたみたいだね。テーマを『部員達から見た、シャーレに勤める
『それでほんっっとに申し訳ないんだけど...ページ数と読者ニーズの都合上、どうしても片方を大幅に削んないとダメっぽくてさ。
...先生と彼女についての印象、正直どちらの話も捨て難いのだが...そういった都合なら割り切るほかあるまい。
どうやって簡潔に纏めようかとグルグル思考を巡らせながら、新人の少女は改めてテープ起こしに目を通し始めた____
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01_放課後スイーツ部.mp3
「____ふむ、サイカちゃん...シャーレ部員の中で、
「シャーレに贈られた菓子折りの一部をとっておいてくれたり、作りたての焼き菓子を『あ〜ん』して食べさせてくれたり、スイーツに伴う哲学的な議論を一緒に深めてくれたり...私が彼女のお世話になっているエピソードは、とても数分では語りきれないかもしれないね」
「ある側面ではベストフレンドであり、またある側面では『
「長い長い長い長いっ!!ナツっ、アンタ向こうがちゃんと質問すらしてないのにどんだけ喋るつもりなのよ!クロノスの子も途中からポカンとしてるじゃないっ!」
「まあまあ...っ、ヨシミちゃんも落ち着いて...?」
「あー...なんかゴメンね?ナツっていつもこんなだから、気にしないで本題に入っていいよ?」
「......ふんふん、『サイカさんの第一印象はどうでしたか?』ね...まあ出会ってから数日一緒に過ごすまでの印象って言うなら、大体みんな同じ答えを返しそうだけど」
「____一言でいえば、平凡?」
「「凡庸...?」」
「ぼぼんが凡...!」
02_天雨アコ.mp3
「
「ええ......ええ。連邦生徒会から
「ですが実際、彼女の風貌や佇まいはあまりにも『普通』...話してみても『ちょっと漫画やアニメが好きな普通の女の子』という印象が増すばかりで、仕事のスピードやクオリティも『普通よりちょっとデキる程度』というのが率直な感想でした」
「彼女の戦闘能力について?...あぁ、それについては『自他ともに認める』という感じなので、明け透けに言ってしまっても問題ないでしょう」
「____非常に弱いです。それはもう...戦闘能力の低さはキヴォトスでも指折りかもしれませんね」
03_天童アリス・明星ヒマリ.mp3
「____はい、サイカは弱いです!多分先生の次くらいに、非戦闘型なマスコット寄りのステ振りになっていると思われます!」
「あらあら、いけませんよアリス。物事を簡潔にハッキリ伝えることは大事なことですが...特にメディアの方に対しては、誤解のないよう補足説明もするのが肝要です」
「ええ、ええ。
「シャーレの仕事上、先生が前線にいる状態で戦闘が始まってしまうことも珍しくありません。その中で『先生を守りながらどれだけ戦えるか』という指標は...一般企業の人事査定項目のように、客観的なデータとして各々が受け止めるべき事実なのです」
「...?ええ、私と戦っても瞬殺...まではいかなくとも普通に負けますよ。ですが訓練に顔を出す際、事前に『今度こそ一矢報いてやろう』としっかり戦略を練ってくるあの姿勢には、きっと他の部員達も好感を抱いていることでしょう」
「...『では彼女は組織にどう貢献しているのか』、ですか?ふふっ、とても良い質問です。超天才清楚系病弱美少女ハッカーである私をはじめ、個性的な部員が数多く在籍するシャーレにおいて、『古参部員』や『専属事務員』という肩書きだけで名前の覚えがよくなることは無かったでしょう」
「ではアリス。サイカちゃんの持つ素敵な個性...
「分かりました!ズバり、サイカの高位ステータスは『コミュ力A』に『対人適応能力AAA』____どのコミュニティに属するどんな相手とも、すぐにお友達になれる
04_合歓垣フブキ・中務キリノ.mp3
「ん〜、厳密には...どんな相手に対しても、お互いにとって一番好意的かつ居心地の良い関係を築ける才能かな?友達、親友、ビジネスライク...姉貴分や妹分みたいな関係性になってる子もいるね。しかも一般生徒から自治組織...下手すれば生徒会所属の生徒まで、所属役職立場なんて関係ないって感じかな」
「ですが、サイカさんにお友達が多いのは事実です!シャーレ部員全員をはじめ、三大校やレッドウィンター自治区、山海経にハイランダー、ワイルドハントやオデュッセイア。D.U.の住民やシャーレと事務用品や部材の取引がある商社の方々とも、幅広い交友関係を築いていますよ!」
「...『それが具体的にどう役立つのか』って?あー...説明すると長くなるから、疲れたらキリノが引き継いでね?」
「一番貢献度の高いところだと、やっぱり『依頼の選別と各自治区の
「はい!各自治区からのそういった依頼を安易にシャーレが引き受けてしまうと、将来的に各自治組織の信頼低下や『ちょっとでも困ったらシャーレに頼ればいいや』と、生徒一人一人の『自立』と『自律』を促す機会の損失に繋がってしまいます」
「ですのでそういった依頼は前もって仕分け、対応可能な自治組織や当該自治区所属のシャーレ部員等にお願いするわけなんですが...サイカさんの場合、
「なんというかこう...『忙しいと思うんだけどさ、この依頼お願い出来ないかな?』って言って、『しょうがないな〜、今度クレープ奢ってよ?』って返事が来て引き継ぎ完了...みたいな。文字通りお友達に頼み事をするような感覚で、あっという間に捌いていくんです」
「...『それを毎日やってたら、他の仕事に手をつけられないんじゃ』って?そうそう、私も初当番の時めんど......大変そうだな〜って思ったんだけど、サイカちゃんってば『この自治区のこの手の依頼は、この組織のこの人やその部活のあの人に連絡とってみて』っていう対応フローを作ってクラウドに共有してるからさ、これが案外分担して対応出来ちゃうんだよ」
「......本人全く自覚ないんだけどさ、そんな幅広い交友関係をさも当然のように____先生同様、
05_火宮チナツ.mp3
「____先生が紡いできた多くの『縁』を、
「ゴホンッ...!まあ十中八九ご存知かもしれませんが...シャーレの部員はもれなく全員、先生に助けられたり、共に問題を解決した経験から『自分も先生を直接支えたい』と、大変さを覚悟で集まった生徒達です」
「ですが入部時期や所属校をはじめ、使用可能武器や適正ポジション、当番業務の習熟度やそれぞれの特技を活かした業務の内容など、部員一人一人に対して個別に管理しなくてはならない項目が多岐に渡っており...近い内に先生だけじゃ面倒を見きれなくなるから、私を含む古参部員達で手分けして管理しようと話し合ったんです」
「その際あっという間に『部員アーカイブ』の雛形を作成したのがサイカさんでした。毎度の事ながら、少し人見知りの傾向がある子ともすぐに仲良くなってしまうので...彼女が間に立った結果、部員間の連携が円滑に進んだことも一度や二度ではありません」
「もし彼女が専属事務員でなかったらと思うと、少しゾッとしてしまいますね。そうだった場合先生は...きっと今のように、生徒一人一人と丁寧に交流を深めることは出来なかったでしょうから」
06_早瀬ユウカ.mp3
「____先生の『人を惹き付ける素養』とは似て非なる、『人の『輪』にするりと溶け込める素養』...確か
「本人はおくびにも出さないけれど、幼少の頃からそれなりの苦労があった筈よ。あの戦闘能力の低さは、少しでも相手を怒らせたりトラブルに巻き込まれただけで『確実にダメージを負う』ことを暗に示しているんだから」
「だからこそ、あの子はさも当然のように人に尽くす。日常の中のちょっと面白い話なんかで誰かを楽しませる...多くの交友関係の内誰か一人でも、自分のことを『困っていたら助けたり匿ったりしてあげたい』と思って貰えたなら...それだけで、彼女の生存確率は大幅に向上するわけだから」
「...なんてそれっぽく分析してみたわけだけど、実際本人はそんな打算で人と関わってないと思うわ。傍から見てても、特に気が合ってる人のタイプに傾向なんてなさそうだったし......もし神様なんて
「......ああでも、もうちょっと自分のワガママを全面に出していいんじゃないかって思うこともあるわ。先生にも言えることだけど、あの子も大概自分のことを後回しにしがちな節があるんだもの。確かにあの子が常駐して間を取り持ってくれるおかげで誰と誰を当番にしても円滑に業務が回せて先生の負担軽減にも繋がってるけど、発足当初からずっと一緒に仕事してきた身からすると貴女の献身の上で先生への個人的なアプローチが叶ってるような____」
____以下、文字起こしが不可能なほど早口だったため割愛。
「.........ごめんなさい、少し取り乱したわ。それで、他に何か聞きたいことはあるかしら?」
「...?『先程の話に挙がってた『代行』について』?...ああ、これって意外と知られてない情報なのかしらね。そもそも当の本人すら、『下っ端の中から適当に選ばれただけ』って
「____連邦生徒会首席行政官兼、連邦生徒会長代行『七神リン』...サイカをシャーレの専属事務員として指名したのは、他ならぬあの人なのよ」
07_七神リン首席行政官.mp3
「...なるほど。それでタイミング良くシャーレに足を運んでいた私を見つけた途端走り寄り、勢い余って体当たりまでしてきたわけですね......ああいえ、別に怒ってはいませんから安心してください」
「どこから話しましょうか...彼女は確か............?...すみません。少々疲れが溜まっていて、彼女がどの部署から異動してきたのか
「...そうですね。皆さん仰っていたように仕事は『普通』にこなしていましたが、部署に馴染むのはあっという間でしたね。異動して3日が経つ頃には、あだ名で呼び合う関係になっている生徒も何人かいました」
「......ええ、こんな話だけ聞くと非常に優秀なのではと思うでしょう。当初は私もそう思い、
「...連邦生徒会長からの評価、ですか?残念ながら、それは当人に聞いていただかないと分からないと思いますが...?...............そういえば...」
「...流石に耳
「会長は
「...話を戻しましょうか。そんな彼女をシャーレに託そうと決めたきっかけとなったのは......記憶に新しい、サンクトゥムタワーの
「我々『統括室』は膨れ上がった業務に並行して、各行政委員会のフォローに追われていましたが...そんな有事の
「文化室、財務室、防衛室、交通室...彼女にはあらゆる行政委員会のヘルプに入って貰いましたが、特にシナジーが高かったのが『調停室』です。やむを得なかったのか、
「...情報が『理解』に繋がり始めましたか?お察しの通り、彼女の能力を十分に活かすのなら...段階的な承認を幾つも得る必要のある『
「それに彼女は...恐らく無意識ではありますが、『人が一人で出来ることには限りがある』ことを知っています......きっと、キヴォトスに住む生徒の中で誰よりも」
「そうですね...これを本人に伝えたら、また重荷になってしまいそうなので言えませんが」
「____サイカさんなら先生の良き『相棒』として、
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...後日発売された『月刊キヴォトス』最新号にて、誌面後半の見開き1ページで『部員達から聞いた!シャーレの先生と事務員さんの実態を徹底深掘り!!』というタイトルの記事が掲載された。
しかしその大半は先生についての言及ばかりであり......ただ読んだだけでは誰一人、彼女の個性を知ることは叶わないのだった。
あらすじにも記載のとおり、色彩ちゃんは突出した能力が無くて存在感が薄いと「思い込んでる」生徒なので、実際の評価と自己評価が異なっていることを示すお話です。
...多くの人の輪に溶け込めるということは、水面下で何かを「詰ませる」ことも不可能ではなかったり。
次回は来週の土曜日に投稿予定です!