ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。 作:YEBIS_nora
悲報。めっちゃ頑張って準備した先生とのお出掛け、始まる前から終了する。
具体的には...待ち合わせ場所付近の物陰で先生を待っていたら、狙い澄ましたかのように1人の生徒____黒服さんから『キヴォトス最高の神秘』と評される小鳥遊ホシノちゃんが、振り向きざまの目と鼻の先に立っていたのだ。
待って待って待って待って...っ、ビックリし過ぎて素で『なんで...』ってリアクションしちゃったんだけど!?
おまけに場所移そうかって言ってきた時の
...やべー、やべーよぉ...ネルちゃんやツルギちゃんとバトルに発展した時と違って、今はメイン武器であるハンドガン二丁とサブで鋼線とナイフくらいしか持ってきてないんだけど。万が一戦闘になったら割と厳しい展開になる気しかしないですわ!
いやね、
監視カメラだって無かったし...それこそ盗聴器でも仕掛けていない限...り?
...まさか、バックにコタマちゃんがいるってこと!?いやでも、今のコタマちゃんは先生の衣服や携帯品に盗聴器を仕掛けたりしない筈...ついこの前それやって、先生に割と本気で注意されたばっかりだしね。
となると...あまり考えたくないけど、ホシノちゃんが単独で仕掛けてたってことになる......えっ、ホントにどうしちゃったの?纏う雰囲気どころか行動までいつもとかけ離れておりますわよ!?
とかなんとか考えていたら、ホシノちゃんが質問をぶつけてきた。
この防弾盾を知ってるかなんて変なことも聞かれたけど...その次に投げかけられた言葉で、ボクの心拍数は急激に上昇した。
____これ、もしかしたら『シキ』の正体がバレてるかもしれないと。
心做しか震えてるように見えるホシノちゃんの口から発せられた、『ユメ先輩なの?』という問い。
その名は以前____ボクが『反転』を習得するより前に、ノノミちゃんから教えて貰った『『
つまりは、遠回しに『貴女サイカちゃんでしょ?』って聞かれてるんじゃないのコレ!?
確証を得るため、もう心臓バクバクになりながら『私をどこまで知ってるの?』って聞いてみたんだけど...どうやら『シキ』が『サイカ』だってことはバレていなかったらしい。
『...記憶、喪失...?』と予想の斜め上な答えが返ってきたことから推し量るに、ホシノちゃんは割とマジで『シキ』を『ユメ先輩』だと思い込んでるってことになる......いや何で?『シキ
...むん。今はその辺を追究してる時間もないし、とりあえずホシノちゃんとの対話に専念しよう。
『ユメ先輩』と『シキ』が赤の他人であることを理解して貰えれば、このまま穏便に先生との待ち合わせ場所に戻れるかもしれないしね。
ということで一つ一つ、ボクがその防弾盾を知っていた理由や知っている限りの『ユメ先輩』に関する情報を話していったんだけど...ここに来てようやく、ホシノちゃんの状態が想像以上にヤバいことを痛感した。
宝石のようにキレイだった青と金色の双眸は、泥のように濁りきっていて。
まるで都合の悪い情報を本能的に拒むように、ボクの言葉を強く遮って。
...『ユメ先輩が生きていた』という妄執に取り憑かれたかのように......こちらの返答も待たずに一人でどんどん話を進めていたのだから。
......正直、あまりふざけてる場合じゃないのかもしれない。
身体中がビリビリと、『本気で警戒しろ』と告げている。
虚妄や妄執...何週間もかけてカタチを成してしまったソレに呑まれた今のホシノちゃんは...その内、真っ当な生徒が取らない手段にすら手を出しかねない危うさがあった。
...結局いつもの流れになってしまったけれど、こうなったらやるしかない。
なまじ頑丈なボク達は、場合によっては
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ネルちゃんやツルギちゃんとの激闘を経て、ボクも戦闘経験に裏打ちされた『読み』の精度がかなり向上した。
こちらがこう動けば相手はどう動き、その上でどんなアクションを起こして一撃入れる
...だからこそ、裏取りに成功して一撃決められると確信した瞬間......ホシノちゃんと目が合うのは異常事態だった。
ウソでしょ...っ!沢山の戦闘記録を見て『もしかしたら...?』って思ってたけど...
目の前と同時に戦場全体を見渡してるような『俯瞰視』の精度が、他の生徒達に比べて桁違い過ぎるっ!!
『避けられない...っ』と確信し、ボクは咄嗟に歯を食いしばる。
防御を捨てる代わりに攻撃と機動力を底上げしたボクの基本スタイルは、完璧に読み切られた上でのカウンターに対して『死ぬ気で耐える』以外の選択肢が無い____ッ!
...だけど、
それどころか、至近距離で耳を
バッと距離をとって正面に目を向けると...そこには悲痛な表情を浮かべて、恨めしげに右腕を左の拳で殴りつけるホシノちゃんの姿。
......そんな彼女を見て____ドクンッ!と。
ヘイローの奥底にある『アレ』とは違う...ボク自身の奥底にあるとても小さな『何か』が、微かに鳴動したような気がした。
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...時間が経てば経つ程に、形勢はどんどんボクの優位に傾いていった。
身体に染み付いているのだろう『俯瞰視』によって、ボクのチャンスメイクを何度も何度も封殺しているのにも関わらず...ただの一度も反撃が来ないのだから。
ついには『恐怖』の出力を二速に落として雑な攻撃をしても...容易にダメージを与えられてしまったのだから。
次第にボロボロになっていくホシノちゃんを見下ろしながらも...ボク自身、内心で渦巻くように膨れ上がる感情に酷く困惑していた。
...一体、ボクは何を躊躇っている?
ボクは『謎のヒロインごっこ』を楽しみたいがため...その他の
例え知り合いであろうとも...先約がある相手に対して勝手に因縁つけてきて、勝手に話を進めて、勝手に自滅しそうになっている相手のことなんて...このままさっさと倒して待ち合わせ場所に戻ればいいんじゃないのか?
そんな考えが
ボクの思考に反するように...小さな『ソレ』の鳴動が強くなっていく。
...
ボクはホシノちゃんの愛銃を鷲掴みにして、自身の身体のド真ん中へと押し当てる。
...さあ、撃ちなよホシノちゃん。
いくら『踏み込み』に自信があるボクだろうと、この距離から散弾を全て回避することは不可能だよ。
さあ撃って。
さあ。
さあ...!
____さあっ!!!!
...『出来ないよっっっ!!』という悲痛な声が、薄暗い路地裏に反響する。
震える声で告げられたのは...
『ユメ先輩』じゃないと分かっていても...それでも、引き金を引くことが出来なかったこと。
『ユメ先輩』を見つけたあの日の光景が重なって...
ポツリ、ポツリと語られる『剥き出しの言葉』を......ボクは最後まで聞き届けて。
その上で____崩れ落ちたホシノちゃんに、フルパワーの頭突きをお見舞いした。
...ああ、
でもここまで来てようやく、自分の中で渦巻く感情に合点がいったよ。
____こんな有様になってるホシノちゃんのことを、放っておけるわけないだろう...っ!!
ああそうだよ、ずっと前から知ってたよ。
初対面でいきなり押し倒されたあの日から...『反転』によって同一人物だとバレていない筈の今だってずっと...っ!
一見『ボク』を見ているようで、瞳の奥では違う誰かを重ねて見ていたことくらい...!!
...さっきまでは、別にそれでも良いって思ってた。
それでホシノちゃんとの関係性が円満に保たれるのなら...もう既に、
でも、そうじゃなかったんだ。
先生が気付いてくれるのを待つのでもなく、シロコちゃん達が指摘してくれるのを期待するのでもなく...もっと早くに、当事者であるボクが正面きって伝えるべきだったんだ...っ。
目の前の相手に、いなくなった『誰か』を過剰に重ねるその行為は...ボクと『ユメ先輩』に対するアイデンティティの冒涜だってことを...!
.........
でも、往々にしてあるのだ。
自覚はあっても、感情がソレを認めようとしない時が。
改めて誰かに突き付けられないと、ちゃんと自分の中へ落とし込めない時が。
...ほんの少しだけ、瞳に光が戻り始めたホシノちゃん。
もう一押しかな?と思い、敢えて『ユメ先輩』を
一瞬で胸ぐらを掴まれ、とんでもない形相でガンを飛ばされたボクは思わず素で『ゴメン』と返していた......もしかして、始めからこう煽った方が解決も早かったんじゃないんですの?
でも...うへへっ♪やっといつもの調子が出てきたじゃんか。
見てるこっちが気の抜けてくるその
奥底で響いていた鳴動も収まってきたことだし...
____ん〜っ!一時はどうなるかと思ったけど、ホシノちゃんが正気を取り戻してくれて良かった良かった!
さ〜てそれじゃあ____続き
...うん?な〜に驚いたような顔してんのさ。
セリカちゃんに恐い思いをさせちゃった件と、ホシノちゃん達を差し置いて先生とお出掛けしようとしてる件......ボクの前に立ち塞がる理由が2つも残っているのに、どうして『解散』なんて言葉が出てくるの?
...えっ、何。まさかさっきまでの一件について、『謎のヒロイン』であるボクなんかに負い目なんか感じちゃってるわけ?
ンもー...正気に戻ったら戻ったで、ホシノちゃんこういう所がちょっと不器用だからな〜。
いいですこと?別に『シキ』とホシノちゃんは友達でも味方同士でもないんだからさ。
『それはそれ、これはこれ』で堂々と割り切って、『先生とお出掛けしたいなら、この私を倒してから行けぃ!』とか威勢のいいことを言ってのける方が、ボクらの関係性としては丁度良いと思うぜ♪
ていうかさ...
後輩に恐い思いさせた貴女に、キッチリ落とし前をつけさせたい、惚れた相手と仲睦まじくお出掛けしようとしてる貴女を見ると、妬けてしまって仕方ない____如何なるモノにも縛られない、ありのままの貴女を見てみたい。
お互いに譲れないワガママがあるのなら...偶には立場も状況もかなぐり捨てて、思いっきりぶつかり合ってみるのも良いんじゃない?
...いや別に?ホシノちゃんを想っての提案じゃないからね?この先二度も三度も因縁つけられて絡まれるより、もうこの場で
どうせ遅刻が確定してるなら、『強敵をキッチリ倒してから主役と合流して、疲れやダメージを微塵も感じさせない様子で『早く行こ?』と歩き始める』的な強キャラムーブをやってみたいだけなんだからね?
...そんな感じのことをロールプレイを混じえて話したところで、ようやくホシノちゃんが立ち上がってくれた。
......うん。セリカちゃん達にはちょ〜っと『恐怖』の出力を誤った自覚も無きにしも非ずだから?後日お詫びの品をお送りしようと思いますわよ?
ボクがホシノちゃんに連れて行かれたのが待ち合わせ時間の20分前で、そっから30分経過してるわけだから...実質的な遅刻は現状10分だね。
...まあ正直めちゃんこ申し訳ないけれど...先生はどれだけ忙しくても、生徒のためなら1時間くらい平気で待てちゃうヒトだから。
ここでキッチリ
大丈夫大丈夫!長い付き合いのボクが言うんだから間違いないって!
...えっ、どうやったらあんな距離感で先生と話せるかって?...むん、改めて聞かれると言語化が難しいよね。
先生と話してる内に自然と収まりがいいカタチになっただけ...ってのがアンサーじゃダメ?ダメか〜。
____さっ!問答はそろそろお終いにしようか。
先生は1時間くらい待っててくれるだろうけど、個人的には
あっ、それともあれですか〜?もしかしてぇ____ボク相手にビビってるんですかぁぁぁぁぁぁ!?
な〜んてノリで煽ってみたら...........ホシノちゃんの全身から、とんでもない密度の『神秘』が
...うへへ、やれば出来るじゃんかよ全くもう。
いやね、一応予想はしてましたわよ?
ホシノちゃんも『最強格』に名を連ねる一人だから、土壇場で『神秘解放』に至る可能性は十分有りそうだなってことは。
...だけど、この
悦びが雰囲気に出ないよう気をつけながら...かつて『暁のホルス』と呼ばれていた、我が末恐ろしい姉貴分を見て思う。
____ボクはようやく、本気のホシノちゃんとぶつかり合えるらしい...!
果たして色彩ちゃんに『らしくない』行動を選択させるくらいに自己主張激しく動いていたモノは何なのか...。
次回は来週の土曜日に投稿予定です!