ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。 作:YEBIS_nora
ちょっと進捗が芳しく無く、明日の夕方までに書き終わるか微妙なラインですわ~!
お話の小出し続きで申し訳ありませんが、お付き合いいただけますと幸いです。
身体が軽い。
空気が甘い。
細胞の隅々まで迸る熱量が...ただひたすらに心地良い。
「____見ぃぃぃつっけたぁっ!!!」
『っ...!?』
数年振りの『滾り』が望むままに、小鳥遊ホシノは縦横無尽に裏通りを駆ける。
『
「様子見も兼ねてヒットアンドアウェイに切り替えるなら、まず間違いなくこっちのルートに入るよね?もし同じ立場なら、おじさんだってそうするよ」
『......使えるものh「使えるものは、なんだって...でしょ?
シキが鋼線を断ち切ると同時に、建設中ビルの屋上クレーンから
通常なら『落下地点であるその場から離れる』以外の選択肢はない筈の状況下で...少女は一歩も動かない。
シキを視界に捉えたまま...ただ一発、頭上に向けて発砲する。
「...うへ。な〜んか最初に比べて、攻撃の組み立てが短絡的になってる感じがするねぇ」
直後、轟音と共に大量の鉄パイプがホシノのもとへ降り注いだものの...直撃した物は一本も無い。
「つまりは攻めあぐねてる...具体的には、頭では読めてるけど身体が追いついてないって感じかな?」
無造作に撃ったようにしか見えない一発の散弾で、シキの
『さっきから...』
「ん〜?」
『さっきから、無駄によく喋るね...負けた時の言い訳にでもするつもり?』
「あははっ、言うねぇっ!そっちこそ、おじさんをゴキゲンにする
風を切る音だけを置き去りにし、同時に互いの懐へ飛び込んだ2人の戦いは
「____半歩遅いよ」
『...がっ......!?』
至近距離でシキの放った弾丸を最小限の動きで回避し、一瞬空いたスペースから脇腹に拳を叩き込むホシノ。
「__っ...!?いつの間に銃剣なんて...てかハンドガンに付けるとか考えがピーキー過ぎるでしょっ」
『...それで、勝って生き残れるのなら』
銃剣を装備したハンドガンの突きで隙をこじ開け、ガードが甘くなったボディーに膝蹴りをお見舞いする仮面の少女。
こちらが一撃入れれば即座に一撃返される、一進一退の攻防戦。
...しかし、時間が経てば経つ程に。
元いたバスケットコートに戻ってきた頃にはもう既に...戦局は、いっそ振り切れそうな度合いでホシノの方へと傾いていた。
『................が...っ!』
「...『相手の動きを鈍らせる不気味なプレッシャー』、一瞬で距離を詰められる程の『初速の速さ』......勿論厄介ではあるけれど、全く対応出来ない訳じゃない」
『......!』
「寧ろおじさん的に一番脅威なのは、
『暁のホルス』の眼によって...少しずつ、シキの『底』が暴かれる。
それでも『最強格』たる彼女達と渡り合えていたのは...足りないものを周囲の環境や道具で遠慮なく補いながら、自分の
「きっと脳が焼き切れそうなくらいキツいだろうにさ、正直感心するよ......でも、今の私には届かないかな」
『......っ』
...ギリッ!と。
仮面の下から、噛み締めた奥歯が軋んだような音が響く。
突き付けられたのは、シキの戦闘スタイルに付き纏うあまりに大きな落とし穴。
それ即ち...相手の実力が自分より上である程、『道具』や『環境』といった
もしも周りに、使えそうなものが殆ど何も無かったら。
もしも今日みたいに、いつもより携行している道具が少なかったら。
もしも相手が今のように...内なる『神秘』を解き放ち、高ステータスの暴力と化した最強格の少女だったら。
実力差を補う手段を失う程...長期戦になればなる程、シキという少女は『敗北』の瀬戸際へ自ら勝手に追い詰められていくのだと。
「...ねえ、教えてよシキちゃん」
...暗に、『もう勝敗は決した』とでも言うように。
シキに歩み寄りながらゆっくりとショットガンの銃身を持ち上げ、膨大な『神秘』を纏う少女は問い掛ける。
「シキちゃんが言うところの『厄災』...それって一体どんな存在?キヴォトスが滅亡するとも言ってたけど、仮に本当ならシキちゃんはソレをどうやって知ったの?」
____ズドンッ!と。
容赦無く放たれた散弾が、シキの左肩に着弾する。
「...あまり素直に認めたくないけど、先生との仲も悪いどころか結構気が合ってる感じだったよね?......だったら、どうしてシャーレを頼らないの?どれだけ言葉を尽くしても信じて貰えないって、最初から諦めてたのかな?」
ズドンッ!ズドンッ!と。
間髪入れずに両脚を撃たれ、立っていられなくなったシキはその場でガクンと膝をつく。
「......優れた頭脳を持ってるからって言っても納得出来ないくらい、シキちゃんの動きは『
愛銃の弾を見せつけるように込めながら、ホシノの推理は止まらない。
「ミレニアムやトリニティはマンモス校だから、噂であの
____ジャキッ!と、敢えて大きな音を立て。
引き金を引けばシキの仮面を確実に砕ける近距離でショットガンを構えた小鳥遊ホシノは......行き着いてしまった核心の疑問を、見下ろす少女へ投げかける。
「もしかしてだけどさ____貴女、
『...............』
...沈黙が、その場を支配する。
仮面の少女はホシノの膝下辺りに視線を落としたまま、抜け殻になったかのようにピクリとも動かない。
「そう......うへ、まあおじさんも今すぐ答えて欲しいわけじゃないよ。今日はず〜っと、シキちゃんの度量の広さに甘えさせてもらってるわけなんだから」
申し訳なさそうな表情を浮かべながら、左手で頬を掻いたホシノは続ける。
一応ケンカの『お作法』として...決着を示すためにこの後気絶まで持っていくけれど、目が覚めるまでずっと傍で介抱すると。
目が覚めて、もし少しでも自分を認めてくれたなら...私とお友達になってくれると嬉しいなと。
「じゃあ、そろそろ締めようか......楽しかったよ。誰かに『本気』をぶつけるの...本当に、久しぶりだったから」
ホシノの愛銃____『Eye of Horus』の銃身に、高密度の『神秘』が集約される。
ソレは散弾を構成する一つ一つの弾丸にまで浸透し...一撃必殺の『魔弾』へと変貌する。
「...........叶うなら、また」
...か細くも、声に乗ってしまった言葉を掻き消すように。
今度こそ固まることのないその指で引き金を引き絞り、ズドンッッッ!!!という轟音が炸裂した____その刹那であった。
『____
____ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾッッッッッッ!!!!
「............は?」
...気付けば、銃口が斜め上を向いていた。
『神秘』を纏った散弾は炸裂し...ビルの壁面の一角を、まるで豆腐を崩したかのように抉り取る。
銃身を鷲掴みにした少女の手によって...弾が銃口から出てくる前に、無理矢理狙いを逸らされていた。
「ばっ...!あのタイミングでそんなことしたら手が____っ!?」
言い切る前に、ホシノの双眸はソレを捉えた。
銃弾に引っ掛けてズタズタになった指先と、衝撃で折れて力無くプラプラと揺れていた左手首...それが、僅か数秒で再生する瞬間を。
『...私はシキ』
本能的に一歩、一歩と後ろへ下がるホシノに構わず、少女はザンッ!!と地面を踏みしめる。
『とある目的を果たすため......ただの『生徒』で在ることを捨て、ただひたすらに準備を重ね...その過程として、
彼女が僅かに動く度、空気の『重さ』が増したようにすら錯覚する。
その身から漏れ出るプレッシャーが、実体を得たようにドス黒い『うねり』となる。
『誰にも譲るわけにはいかない____
陽が傾き始めた路地裏で今...並の生徒なら正気を失いかねない程の強大な『恐怖』が顕現した。
『......一つ、謝罪する』
「.......?」
『貴女に『本気』を望んでおいて...私は頭のどこかで、リソースをここまで引き出すことを忌避していた......
言いながら、シキは穿いていたロングスカートを膝上でビリビリと破り捨てる。
上着を脱ぎ、帽子を取り、アクセントとして一部を三つ編みにしていた髪も解き...『この戦いの後先生に会いに行く』という選択肢を自ら捨て去るように、どんどん身軽になっていく。
『私は、誰が相手でも勝ち続ける...狐面の彼女とだけは痛み分けだったけど、次は必ず打ち倒す』
「なにを...」
『それに...私個人としてはどうでも良いけど、
「..................ははっ」
...聞かれていた。
内心を見透かされていた。
本当は、動揺するべき場面なのかもしれない。
本来なら、たじろいだり息を呑むようなリアクションをすべきなのかもしれない。
それなのに、ホシノの胸にはどうしようもなく......この『気持ち』を見つけてくれたことへの、歓喜の熱量が溢れていた。
「......いいのかな」
『...?』
「こんな...最っ高にワクワクする時間を、あと5分も味わっちゃっていいのかな...っ」
『...好きにすればいい......私もそうするから』
「...うへへっ、決まりだね♪____じゃあ行くよッッッ!!!!」
表と裏、『神秘』と『恐怖』。
対極の『最強』に位置する2人の狂宴は、そこから更に激化する。
通常有り得ない威力の弾丸がバスケットコートの中を飛び交い、時に弾丸同士がぶつかり合い。
お互いが一瞬の隙をついて肉薄し、交えた拳の余波が嵐のように吹き荒れ続け...周囲の景色を変えていく。
先程暴いた、シキという少女の『地力』...
『道具』にも『環境』にも左右されない、剥き出しの『力』そのものが...文字通り、
「(もっと......もっと出し切れる...!)」
無惨にめくれ上がったバスケットコートを駆けながら...小鳥遊ホシノは、自分が想像以上に『
『......!』
イメージの中にある理想的な動きに、身体がピッタリ着いてきているのが分かる。
相手の目線、腕の向き、身体の重心移動、相手が読んでいるだろうこちらの回避パターン...あらゆる情報が光速で処理されて、
「(『
...先にあるのは、甘美で危うい脳内麻薬。
自分が最も理想とする攻撃が決まるよう、
それでも...力に溺れてしまう可能性を理解していながらも、小鳥遊ホシノは迷わない。
「(____貴女が
目の前にいるシキという少女が、毎秒のように示してくれるから。
ホシノの中にあるこの『力』は、決して『孤高』の証明にはならないことを。
____全身全霊の自分と対等以上に渡り合える存在が、この都市に
...セリカの件も先生との件も、変わらずホシノの原動力になっている。
だけど今はそれと同じくらい____目の前の少女をぶっ飛ばして、己の『最強』を叫びたくて仕方ないっ!!
『ガラ空き...っ』
「ざ〜んねん♪バッチリ誘ってるんだよねぇっ!!」
ギリギリ目で追えるスピードの中段回し蹴りが脇腹に突き刺さる直前...ホシノはその脚を片手で受け止め、そのまま少女の太腿へ容赦なく散弾を叩き込む。
「____
『......貴女の思考スケールに収まる程、私の『底』は浅くない』
ハンドガンの弾倉切れを突いて接近した少女の腹を横薙ぎにするように、シキは『斬撃そのものを『恐怖』で覆った衝撃波』を放って装填時間を確保する。
...仮に、2人の戦闘を間近で追える者がいたならば。
デタラメが飛び交いながらも、攻防の一つ一つが洗練されたその闘いは...まるで動きの一つ一つが『映える』ように整えられた、映画や舞台演劇における
しかしその裏で展開されているのは、最早未来予知の領域にすら届きそうな『読み合い』の応酬。
こちらがこう動いたら、相手は間違いなくこう対応してくる。
...
...なんて思っているだろうから、敢えて釣られたフリをする相手に乗せられたフリをして、反撃ギリギリになったらタイミングを外しにかかろう。
...そう、思っているだろうから。
そうやって、こちらを欺こうとしているだろうから____
たった一手の攻撃で無尽蔵に分岐する未来の主導権を奪い合いながら、互いの肉体と
「ぶっ...!!?」
『...
____ゴォッッッッ!!!!と。また一つ、轟音が炸裂し...シキとホシノは吹き飛ばされた勢いそのままに距離をとる。
...身体はお互い裂傷だらけで、全身の至る所に痛々しい
気を抜いたらそのまま視界が暗転しそうなコンディションで、ホシノがそれでも意識を繋ぎ止めていられるのは...ドバドバと脳から溢れ出ているアドレナリンやらエンドルフィンやらのおかげなのだろう。
対するシキの方はどうなのか...残念ながら、仮面でその表情を伺い知ることは叶わなかった。
「......ゲホッ...........ねえ、シキちゃんさ」
『...っ.........何?』
「____私が勝っても、いじけて泣いたりしないでよね?」
『......上等』
...多くを語らなくても、互いが互いの状態を理解していた。
シキが『四速』と呟いてから既に5分が経過していることも、ホシノのヘイローが切れかけの蛍光灯みたいに明滅を始めていることも。
ホシノの左肩が外れたまま戻ってないことも、シキの太腿の筋肉が断裂する一歩手前であることも。
____次の衝突の後に立っていた方が、この
「...もっと......もっと、もっともっともっともっと____ッ!!」
『____っ!!!』
同時に地面を蹴り上げた『
身を焦がす程の『熱量』すら帯び始めた正反対のエネルギーが、彼女達のボルテージに呼応して更に大きく膨れ上がる...!
『「____!!!!!!」』
正真正銘最後の一撃。
周囲の音も景色も色合いも、自身の叫びも身体の感覚すらも
「____ストォォォォォォォォップッッッッ!!!!!」
____バヂィッッッッッッ!!!!
「なっ____!?」
『____っ!?』
激しい音と衝撃が、2人の間で炸裂する。
本来ぶつかる筈だったソレとは別ベクトルのエネルギーによって、ホシノとシキは跳ね返されるように後ろへ吹き飛ばされた。
お互いに積んである廃タイヤやゴミ袋の山に背中から突っ込みながら、急いで上体を起こして周囲の状況を探ろうとする...その中で。
「____追いついたよ、2人とも」
...舞い上がる砂埃と
「ほんの数十分前まで...ううん。正直今も、事態を完璧に把握しているとは言えないけれど」
...胸元に掲げられた、充電ギリギリのように激しく画面を明滅させるタブレット端末。
あれだけの衝突を割り込みで弾き返した要因がソレにあることを、ホシノは直感で理解する。
「有り得そうなトラブルを列挙して、部員の皆に片っ端から連絡して、街を歩いてる生徒達に『幽霊を見た時みたいな緊張感に襲われなかったか』をひたすら聞き回って......走って、走って...走って走って考えて...!」
...そして、そんな『奇跡』じみた芸当を正しく扱える存在は......このキヴォトスにおいてただ一人。
「...それでようやく、私はここまで追いついた」
連邦捜査部『シャーレ』の先生。
連邦生徒会長に見出されし、この都市に住む『生徒すべての味方』を体現する
「2人とも、事の経緯をしっかり聞かせてもらうよ?____生徒のケンカを仲裁するのも、『
或いは『執念』とも呼ぶべき、『大人の役目』に対する強い感情。
或いは彼の素養たる、人と人とを『繋ぐ』力。
通常間に合う筈のない周回遅れを飛び越えて...一人の『大人』が、最強達の間へ並び立つ。
色彩ちゃん は 月◯天衝(簡易版) を おぼえた!
次回は無事書き終えれば明日投稿いたします!あと二話くらいでこの章は終わります!