ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。   作:YEBIS_nora

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朝から夕方まで書き続けましたが、最後まで書き終えることができませんでした...。
申し訳ねぇ!今日のところはこの章を締める場面に必要な『役者』が出揃う場面までの更新になります!





舞台へ上がる大人達

 キヴォトスでも類を見ない威力の衝突を弾き返し、舞台の真ん中へと並び立った一人の『大人』____連邦捜査部『シャーレ』の先生。

 身に纏うは、穏やかながらもどこか凛々しい...面識の少ない生徒ですらドキリと息を呑むだろう『大人』の風格。

 

「____なぁぁぁぁぁにカッコつけてるんですかこっっのお馬鹿ッッッ!!!」

「へぶぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!?」

 

 ...そんな感じで引き締まっていた場の空気は......遅れて飛び込んできた少女のドロップキックによって、少年誌掲載のギャグ漫画みたいな勢いで霧散した。

 

「言いましたよね!ちゃんと言いましたよね!?先生の方が数秒早く現着しますけど、()()()が来るまで待っててくださいって言いましたよね!?なのにどうして激突(インパクト)寸前の間に生身で飛び込んじゃうんですかバカなんですか!?」

 

「待って違うんだよアコ!私が到着した時には2人とも思いっきり踏み込んだ直後だったし、生徒の内誰が干渉しても怪我をするのは明白だったから、寧ろ私の『()()()』を使った方が「私たちがついてる場面で!率先してっ!身体を張らないでくださいって言ってるんですっ!!」____ごめんなさぁい!!」

 

「..................なにこれ...?」

 

 温度差で風邪をひきそうな空気の弛緩具合に、()しものホシノも呆気にとられた様子でそう呟く。

 この数十分だけで精神テンションの『天』と『地』まで味わっているのに、ここから更に新鮮なリアクションをとれるパッションはどう頑張っても捻り出せそうになかった。

 

「____小鳥遊ホシノ...っ!」

「ホシノ先輩...っ!」

「......!」

 

 困惑気味のホシノの耳に、続けて2人の少女の...頼れる仲間と、大切な後輩の声が届く。

 

「...風紀委員長ちゃん、ノノミちゃん...」

「......っ、ギリギリだったけど...間に合ってよかった」

「.........先輩......っ」

「...?ノノミちゃ____っ!!?」

 

 ____バシンッ!!という痛々しい音が、薄暗い路地裏に響き渡る。

 頬に走る痛みと、振り抜かれた右手を視認したところで...ホシノはようやく、ノノミに平手打ちされたのだと理解した。

 

「............どうして...どうして()()、一人で行っちゃったんですか...っ」

「...っ」

「どうして、ホシノ先輩はいつもいつもっ......肝心なところで、私達を頼ってくれないんですか...っ」

「......ごめ「謝ったって許してあげませんっ!」...!」

 

 バッ!とノノミが顔を上げたことで...この場で初めて、ホシノは彼女の表情をその眼で捉える。

 ...零れ落ちる大粒の涙に、哀しみや安堵...様々な感情が複雑に混ざり合ったようなクシャクシャの表情。

 ただ一つ確かなことは...彼女にこんな表情(かお)をさせてしまったのは、他ならぬ自分なのだということ。

 

「......言葉じゃなく、行動で示してください...巻き込みたくないからって遠ざけずに、ちゃんと私達を頼るって...っ!...私達を、置いて行かないって...っ」

「____!......うん...約束する」

 

 強く、強く抱き締めてくるノノミにそう返し、ホシノは彼女の背中を優しく撫でる。

 この数週間ずっと張り詰めていたものが...お日様のような優しい体温によって溶かされていく。

 

「...あ、れ......?」

「小鳥遊ホシノ...!?」

 

 ぐらり、ぐらりと...ホシノの視界が歪み始める。

 身体中に(みなぎ)っていた高密度の『何か』が霧散したことで...身体に溜め込まれていた疲労感が、纏めて同時に襲いかかってきたのだ。

 

「う、そ...ダメなのに......まだ、終わってない、のに...!」

「...今はもう休んで......後は、()()()が引き継ぐから」

 

 『そういう意味じゃない...!』と声を上げる力すら、今の少女には残っていなかった。

 悔しさと申し訳なさが複雑に絡み合うホシノの眼差し...その先には、フラフラになりながらもゴミ袋の山から立ち上がる色鮮やかな少女の姿。

 

「(まだ、決着はついてないのに...あの子は、まだ舞台(あそこ)に立っているのに...!)」

 

 先生に弾き返されてしまったことも、大切な人達の優しい温かさも関係ない。

 持ってる全部を出し切った果てに、満身創痍でも再び立ち上がることが出来たのが相手(シキ)で...立てなかった方が自分(ホシノ)なのだ。

 

 本当は自分だって認めたくない...恐らく向こうも、こんな幕引きで決着がついたなんて思ってない。

 

「(だけど、それでも...!......私は、()()()()()()()()()()()()...っ)」

 

 ノノミの背に回していた右腕をシキの方へ伸ばして...ゆっくりと、掌で指鉄砲を形作る。

 

「(...ごめん、シキちゃん。こんなところで倒れちゃって......最後の最後で、ガッカリさせちゃったかな...?)」

 

 視界がぼやけて、瞼がどんどん下がってきて...最早(もはや)、彼女にこちらが見えてるかどうかも分からない。

 それでも...構えた指鉄砲から、胸中で燻るこの決意表明(おもい)が届くようにと、ホシノは最後の気力を振り絞る。

 

「____今度は、私が挑戦者(チャレンジャー)なんだから...覚悟しといて、よね...?」

 

 ...そこまでだった。

 ストンと腕から力が抜け落ち、ぐわりと視界が暗転し...悔しさと、気だるさと...少しの満足感に包まれながら。

 ホシノの意識は、ゆっくりと深い所へ沈んでいった。

 

 

-----------------

 

 

「(____間に合って良かった...)」

 

 数秒前まで戦場だった場所(バスケットコート)のど真ん中で、それはもう誠心誠意謝り倒し。

 若干涙目になってるアコのお説教から解放された先生は、呼吸を整えるように息をつく。

 

 ...正直キッカケから何まで、『偶然』によるものがあまりに大きかった。

 

 発端は、待ち合わせの時間から10分程度経過した頃...()()()()()()()()()()()()()()()()

 ...自分はまだ、シキという少女と交流が浅い筈なのに。

 寧ろ『もっと知りたい』と思ったから、今日こうしてお出掛けに誘った筈なのに。

 

 ____『彼女は『余程のこと』が無い限り、約束に1分でも遅れるような子じゃ無かった筈だ』という...()()()()()()()()()が、先生の脳裏をゾワりと撫でたのだ。

 

 ...続けざまに耳へ届いた、丁度先生の近くを通り過ぎた生徒2人の会話内容。

 曰く、『さっきここを通った時に揃って感じた()()()()()()()...結局何だったんだろうね?』と。

 

 『もしかしたら』と思った。

 『まさか』とも思った。

 それでも...一度思い始めたら止まらなかった。

 

 ____彼女は一度、この場所まで来ていたのではないかと。

 この場から離れざるを得なかった予想外の『()()』が、彼女の身に起きているのではないかと。

 

 ...そこからはあっという間だった。

 

 有り得そうなトラブルを頭の中で列挙しながら、周囲の生徒や通行人達に話を聞き続け。

 広大で複雑な都市部を前に、どうしても自分一人では捜索の限界を感じ...やむを得ず、外出前にシャーレのカフェスペースにいた生徒達を中心に事の経緯を洗いざらい話して捜索の協力をお願いして。

 

 ...その中で(ようや)く、ヒナとコタマ...そしてノノミ達アビドスの面々から、ホシノに対する違和感と『朝から行方が分からない』という事実を把握して。

 

 走って、走って...走って走って考えて...!

 先生はついに、『最強』2人が激突する直前のバスケットコートに辿り着いたのだ。

 

 ......咄嗟に『障壁』の展開をお願いしてしまったものだから、この後アロナの前でも正座して謝り倒すことになるのだろうが...一先(ひとま)ず今は置いておこう。

 

「本当に大丈夫、先生?」

「ヒナ...うん、私は大丈夫。ホシノの方は?」

「すぐに気を失ったわ...今は後輩の子が、チナツのところまで運んでいるところよ」

 

 『仲裁』をするなら、なるべく一緒に当事者2人の話を聞いておきたいところなのだが...そういう状況なら仕方ない。

 先生の視線は必然的に、フラフラと立ち上がった仮面の少女の方へと向けられる。

 

『............先生...』

「シキ...ごめん。咄嗟だったとは言え、そんなところまで弾き飛ばしちゃって」

『...別に、いい............今日はもう、会えないかと思ってた』

「____!...うん。遅くなっちゃったけど、こうしてキミに会えて良かった」

 

 ...見つめ合う2人の間に、ふわりと優しい風が吹き抜ける。

 喜びとはまたどこか異なる、温かで穏やかな感情が...胸の奥から巡っていくような感覚がした。

 

「...話してくれるかな?こうなっちゃった経緯とか、他にも色々」

『......(コクン)』

 

 シキは静かに頷いて...ポツリ、ポツリと、事態のあらましを説明する。

 

 待ち合わせ場所で待っていたら、どこか様子のおかしいホシノに連れて行かれたこと。

 長くなるから詳細は省くが...自分のことを、とある人物だと勘違いして行動を起こしたらしいこと...強引な手段になったけれど、何とか誤解を解いたこと。

 

 その()...それはそれとして後輩に恐い思いをさせた件を本人に謝罪してほしいホシノと、もうこの先理由をつけて立ち塞がらないでほしいシキ...双方の主張のぶつかり合いによって、つい先程まで路地裏を舞台に戦闘を繰り広げていたのだと。

 

「うん......うんっ。なんか事態が二転三転してるっぽくてこんがらがってきたけど...取り敢えず、ホシノの誤解が解けたのは確かなんだよね?」

『...(コクン)』

「そっか...なら、()()()()()()()()()()()()____ありがとうね、シキ」

『...!......やっぱり、変な人』

 

 先生の笑顔にピクリと肩を揺らして、シキは顔を逸らしながらそう呟く。

 しかし傷が痛むのか...崩れた重心を咄嗟に踏ん張って立て直す。

 

「...!ごめんシキ、これ以上の立ち話も辛いよね...!続きは傷の手当をしながら話そうか!」

 

 『私なんかより手当が上手な子達もいるから安心して』と続けて、先生はシキの方へと手を伸ばす。

 

『.........』

「......シキ...?」

 

 ...しかし少女は、差し出されたその手に反応を示さない。

 それどころか...一歩、一歩と後ろへ身体を後退させていく。

 

『......私は、安易に『そちら側』へ行くわけにはいかない』

「...!でも、そんな酷い怪我を放っておいたら...っ」

『どんな怪我だろうと関係ない......だって、私はまだほんの少ししか...』

「____残念ながら()()()()です。話の続きは取調べ室でお願い出来ますか?」

 

 少女の言葉を遮るように...或いは、2人の間で流れる独特な空気を断ち切るように。

 アコとヒナは揃って一歩前に踏み出し...淀みない動作で、愛銃の銃口を仮面の少女に向ける。

 

 ...否、()()()()()()()()()()()

 ____ジャキッッッッッッッ!!!!と...周囲のあちこちから、銃を構える音が一斉に響き渡る。

 

 バスケットコートを囲むビルの窓や屋上...先生が通った路地とは別の通りや、表通りに建つ商業施設の高層階に至るまで。

 久田(くだ)イズナが、和泉元(いずみもと)エイミが、天見ノドカが、静山マシロが。

 先生が直接連絡をしたコタマ達だけでなく...『先生から緊急の協力要請を受けた』という話が共有されて駆けつけた()()()()()()()が、たった一人の少女へと狙いを定めていた。

 

「...っ!ヒナっ、アコ____みんな!!お願いだから銃を下ろして!」

「...ごめんなさい......今だけは、先生のお願いでも聞くことは出来ない」

「委員長の仰る通りです、先生...何時(いつ)までも彼女に(ほだ)されていないで、いい加減周囲の惨状を見てください」

 

 言われてようやく、先生の眼は周囲の『景色』へとフォーカスを合わせる。

 ...無惨に捲れ上がったコート面に、強風でなぎ倒されたかのようなフェンスの残骸。

 部員達がシキの全周を取り囲むように銃口を向けられているのも...壁面が銃弾や衝突の余波により、外から内装が見える規模で抉られているからに他ならない。

 

「表通りには殆ど被害が無いものの、裏通りについては広範囲に渡ってこの惨状です...街中で大暴れした当事者の一人が目の前にいる以上、『治安維持のためにこの場で取り押さえる』という判断を下すのは、シャーレ部員として何も間違っていないと思いますが?」

 

「それは...っ、そうかもしれないけれど...でもっ!まだ説得を諦めるには早すぎると思うんだ...っ!」

「彼女には十分な時間を与えたし、その()に至っては()()()()()()()()()()()()()()()...彼女の危険性を考えると、もうこうする以外に手段はないの」

「...お願いだ。私にもう少しだけ時間を「貴女達...先生をお願い」____っ!?」

 

 アコとヒナを止めようと、先生が一歩踏み出そうとした途端。

 背後から気配も無く現れた2人の少女に腕を強く抱き締められ、先生はその場に縫い付けられたかのように身動きを封じられる。

 

「ユウカ、ノア...っ!」

「ごめんなさい、先生...ですが、治安を維持するためにも『潜在脅威』の実態を調べるためにも、今この瞬間がまたとないチャンスなんです...!」

「これ程の力を振るえる生徒がいつまでも『正体不明』のままでは、いずれ各校の生徒会長(リーダー)達も静観をやめて諜報活動に乗り出してしまいます...各校の疑心暗鬼を防ぐためにも、今はどうかご理解ください、先生...」

 

 愛銃を片手に腕を拘束する2人の目を見て、先生は『そんな...っ』と言葉を漏らして再び前方を見やる。

 

 ...彼女達は何も、間違ったことは言っていない。

 治安を維持したい気持ちも、シキの正体や目的を明らかにして、『どの勢力に所属する生徒でどんな工作活動をしているのか』と()()()()()()()()()()()()()を防ぎたい気持ちだって...自分と何も変わらない。

 

 だけど、本当にこのやり方しか残っていないのか?

 瞳の奥に『恐怖』を宿しながら...それでも『ここでやるしかない』と覚悟を固めてしまった部員達に、踏み留まってもらえるような一手は残っていないのか...っ。

 

「最後の通告よ...武装を解除して、手を頭の後ろで組んでちょうだい」

 

 ...必死に思考を巡らせている間にも、時間は無情に流れていく。

 

『............』

「......そう...貴女も、覚悟は出来ているのね」

 

 身体の動きを封じられ...たった一枚の『カード』すら取り出せない今の自分では打開困難な銃撃戦(セカイ)が、刻一刻と近付いている。

 

「...っ!お願いだ、離してくれ2人とも...っ!」

「ちょっ...!?暴れないでください先生...!」

「申し訳ありません、先生...!ですが、この場だけはどうか...っ」

 

 精一杯の力で2人を振りほどこうと藻掻く中...ヒナの左手が、ゆっくりと顔と同じ高さまで上がっていって。

 それは振り下ろされた時...『一斉に攻撃を開始する』ことを示していて。

 

「...戦闘、開始」

「待っ____!」

 

 抵抗も虚しく、ヒナの口から『タイムリミット』を示す言葉が紡がれて。

 言葉と同時に、左手がシキの立つ方へと振り下ろされようとした____その瞬間であった。

 

「____()()()()()()...随分と込み入った状況になっているようですねぇ、先生...?」

「..........................あ......?」

 

 ...するりと耳に届いたその声に、思考が僅かにフリーズした。

 

 どう好意的に考えようが決して相容れないその人物が、この場に来ていることを認めたくなかったから。

 

 しかし我に返った直後には...その『大人』の存在を、視界に収めざるを得なかった。

 

「____黒、服......っ」

「お久しぶりです、先生......()()()()()銃を向けている皆さんにつきましては、お初にお目にかかります」

 

 多くの視線が集中していた筈の場所に、もう一人の『大人』が立っていた。

 (まばた)きの間隙(かんげき)を縫うように...まるで、夕暮れにより広がり始めた『影』の中を移動してきたかのように。

 

 黒いスーツを身に纏うその『大人』____『黒服』を名乗る『不可解な存在』は...左手を胸元に当て、芝居がかった動作で頭を下げるのだった。

 

 

 

 




次回、若干の脳破壊要素が入ります!
来週でこの章を終えられると思います!展開の進みが遅くて申し訳ないですが、お付き合いいただけますと幸いですわ!
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