ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。   作:YEBIS_nora

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※今回のお話と今後の展開を踏まえ、過去投稿分の『インターン編①』の後半文面を修正しました。詳しくは後ほど投稿する活動報告をご覧ください。

駆け込みの生存報告を兼ねた投稿です。詳しいことは活動報告に書かせていただきます。


共鳴変質~観測値『Unknown』~

 

 観測当初...それは、単なる『誤差』として片付けられていたのだ。

 彼ら彼女らの想定規格(スペック)では、到底再現されない筈の値。

 ある意味『ノイズ』とも形容できる、あまりに不規則なチカラの揺らぎ。

 

 だがそれもここまで『強く』なってしまえば...いよいよ()って、『誤差』だ何だと見過ごすことなど出来ない。

 

「クックックッ......成程、これは確かに興味深い検証結果です。直接的な要因は、言うまでもなく『彼女』であるようですが」

 

 時間の概念が存在するのかも疑わしい不可解な空間...ゲマトリアの『会議室』。

 黒服はそう言って資料から顔を上げ、自分を呼び出した『同志』...マエストロとゴルコンダ、デカルコマニーの方へと目を向ける。

 

「スランピアで私が発現させたシロとクロ、そしてゴズ。ゴルコンダ達によって『発生』させた、『止め処無い奇談の図書館(The Library of Lore)』...それらの観測データに時折、規格(スペック)を大きく逸脱した不可解な値が記録されている」

 

 ギギギギギッ、と身体を軋ませながら腕を振ったマエストロが、空中に表示されていたディスプレイを黒服の前に移動させる。

 映っていたのは、『複製(ミメシス)』達や()()()()()()()()()()()()()()()にまつわる都市伝説が変質した存在の記録映像。

 

 ......映像中に、何故か『複製(ミメシス)』達に囲まれて(なんなら優しく抱き締められながら)居眠りしていたり、シュールな巨大怪獣にしか見えない実体ある都市伝説の頭部に乗って海をエンジョイしている少女が映ってはいるものの...最早()()()()()を黒服達はツッコんだりしない。

 今注目すべきなのは、動画ファイルの後半に一瞬だけ目視で確認出来る...『複製(ミメシス)』や都市伝説の()()()()()()()()()についてなのだから。

 

「戦闘時、休眠時...そして一応、『彼女』と戯れている『その他の時間』と、本日まで相当な量のデータを収集しました」

 

 阿吽の呼吸とも呼ぶべきか...ゴルコンダが一度言葉を切ったタイミングでデカルコマニーが片腕を軽く振り、先程の映像と同期させた心電図のような映像を投影させる。

 

「率直に申しますと、反応の強弱に規則性らしきものは特にありませんでした...彼女と戦う、彼女と距離を置く、彼女と遊ぶ____つまり接触頻度や環境変化に左右されることなく、この『因子』は徐々に広がり続けているようです」

 

 ウイルスの潜伏期間とはどこか異なる...まるで意識的に宿主となった存在に気取られないよう活動しているかのような静かな『侵食』。

 『この状態が正常だ』と、宿主に覚え込ませながら広がっているかのような...酷く不気味で緩やかな『変質』。

 これを静観した結果、後々どんな形で本格的に顕在化してしまうのか...深く考えずとも、容易に想像することが出来るだろう。

 

「ではどうする?今の段階なら...少々惜しいが、三体の『複製(ミメシス)』を一度『リセット』することも出来るだろう。再誕には少なくない時間が掛かるだろうが、態々(わざわざ)()の少女以外に『未知数』を抱える必要もあるまい」

「わたくし達の方も可能です...もっとも、今度は全く別の都市伝説が呼びかけに応じてしまうかもしれませんが」

『そういうこったぁ!!』

 

「ふむ......」

 

 マエストロとゴルコンダの話を聞き終え...黒服は顎に手を当てながら、再度あらゆる情報を頭の中で整理する。

 

 『合理』の側面だけで見れば、マエストロとゴルコンダの提案に同意するのがベストだろう。

 仮に『変数』や『未知数』を抱えるにしても...その対象が『アレ』由来のモノであるなら、一気に話が変わってくるというものだ。

 

 ...だが、黒服はもう知ってしまっている。

 究極のイレギュラーたる彼女を、あの手この手で効果的に誘導すれば。

 彼女と共に、己の中にある『ロマン』とも呼ぶべき『非合理』に...思い切って突っ走ってみれば。

 危険やデメリットは()()()...誰も予想だにしなかった胸躍る『結果』を、観測することだって出来るのだと。

 

 ...ならば、返す意見(ことば)はこれしかない。

 

「____ここは敢えて、『侵食』がより色濃く発現するまで様子を見ることにしましょう」

 

「なんだと...!」

「ほう...理由をお伺いしても?」

 

「クックックッ、10秒程お待ちを...私の頭の中にある内容(モノ)を、簡単なプレゼン資料として出力しますので」

 

 案の定驚いたような反応を示すマエストロ達の前に、黒服は自身の前にあったディスプレイを軽く指を振ってスライドさせる。

 

 そして訪れる...沈黙の時間。

 或いは、黒服の案と自身の『目的』や行動指針とを織り交ぜて思考する『計算の余白』とでも言うべきか。

 

 だが、黒服が『同志』と呼ぶ彼らなのだ。

 検討に要する時間は、そう長くは掛からなかった。

 

「...黒服」

「何でしょう、ゴルコンダ?」

「貴方...やはり、少し変わりましたね」

 

 ...唯一予想外だったのは、その『同志』にそんな言葉をかけられたことについてだろう。

 

「...それは、悪い意味で捉えていいのですか?」

「いいえ、寧ろ逆です...少なくともわたくしとデカルコマニーは、今の貴方の方がより面白い『解』を導き出してくれると考えていますよ?」

『そういうこったぁ!!』

 

 ゴルコンダを片手に持ち直してビシッとサムズアップを向けるデカルコマニーを見て、黒服は軽く首を横に振りながら笑い声を零す。

 『貴方達も随分変わったと思いますが...』という言葉は、敢えて飲み込んでおくことにした。

 

「では...マエストロ、貴方は?」

「...端的に言って、かなり興味深い提案だ...だが、良いんだな?」

 

 一度言葉を切るようにギギッと身体を軋ませ、マエストロは続ける。

 

 ____()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは...これまで以上に困難になってくるぞ?と。

 

「......そうですね。貴方達の協力もあり、今日までなんとかやり過ごしてきましたが...仰る通り、少しでも下手を打てばあっという間に『彼女』の特異性が露見するでしょう」

 

 ですが、と...僅かに声量を上げた黒服は続ける。

 その危険性を抱えてでも、実行すべき価値があるのだと。

 

「仮にベアトリーチェやその他の勢力が何かに勘付いても、直接介入される前に決めてしまえば問題ありません...この企みが成されれば、『彼女』の総合戦力は反論の余地も無いレベルで()()()()()()()になるのですから」

 

「...分かった。ならば賛同しよう」

「わたくし達も改めて賛成を...では、手始めに?」

「ええ、手始めにベアトリーチェの注意を逸らす新たな算段や細工を整えつつ......ずっと放置していた『彼ら』を、再び捜索することにいたしましょう」

 

 賛同してくれたマエストロ達に芝居がかった動作でお辞儀をした(のち)...黒服はそう言って、中央のモニターにキヴォトス全土が描かれた地図を表示させる。

 

 ...『複製(ミメシス)』達や『止め処無い奇談の図書館(The Library of Lore)』は、それぞれ自覚症状も無いまま緩やかな『侵食』を受けていた。

 だが、『彼ら』の場合はそうならない。

 何しろ『彼ら』は、人間と並ぶかそれを凌駕する知能を授けられた『預言者』達。

 自身に取り込まれた異物をスキャンしない筈も無く...下手をすれば、『侵食』と真っ向から反発し合っている可能性すらあるだろう。

 

 『パス』が断ち切られたこと自体に、黒服は別に後悔も惜しさも感じていない。

 それどころか...ここに来て『パス』以上に()()()()()()()が得られる可能性が高まったのだ。

 ならば『悪い大人』らしく、利用できそうなモノは何でも利用して____(おの)が探究を深めよう。

 

 ...無邪気に狂った我らが姫が、()の『厄災』を退ける未来のためにも。

 

 

「それでは暗躍を始めましょう...ちなみに余談ですが、プランの名前(タイトル)は資料の表紙に記載したもので問題ありませんか?」

「.........確認だが...この()()()()()()()()()アイデアの詳細を、少女に共有するわけではないのだろう?」

「ええ、勿論...彼女が最大限のポテンシャルを発揮するには、フレッシュなリアクションとアドリブ...そして精神の高揚が必要不可欠ですから」

 

 ...『とか言ってるけどどう思う?』みたいな雰囲気を出しながら黒服を指さし、マエストロはゴルコンダ達に顔を向ける。

 

「まあ良いのではないですか?彼女が全容を知るのは恐らく最後の方になるとはいえ...好みそうなネーミングにしておくというのも、ある意味一興ではあるのかと」

『そういうこったぁ!!』

 

「クックックッ!...何やら小馬鹿にされた気がしますが、ここは敢えて気にしないでおきましょう」

 

 笑いながら軽く指を振り、黒服はディスプレイ上の資料を一気に1ページ目までスワイプさせる。

 ...マエストロ達は何かツッコみたかったようだが、実際他に適した名前もそう無いだろう。

 この悪巧みの中心にいるのは紛れもなく...アニメや特撮好きが高じて()()()『謎のヒロインごっこ』を始めるに至った、色彩豊かな一人の少女なのだから。

 

「____特殊作戦『調伏の儀』...改めてご協力のほど、よろしくお願いいたします」

 

 

 

 




明日もう一話投稿できると思います!
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