ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。   作:YEBIS_nora

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一万文字超えてて草ァ!!!
でもいい感じに分割できるポイントもないので、一話にまとめて投稿します。
長くて食傷気味になるかもなので、飛ばし飛ばしでも読んでもらえたら嬉しいです!

※本話では一部キャラの解釈違いが出てくるかもしれません!
ご承知の上で読んでいただけると幸いです!


『謎のヒロインごっこ』活動記録~限界バチバチ訓練編~

 一丁のアサルトライフルを汗ばんだ両手で握り締めながら、鬱蒼と生い茂る木々の間をひた走る。

 並以下の身体能力(フィジカル)、ゴリゴリと消耗する体力...それに伴う五感の鈍り。

 ()()()()()()()現状のボクが未だに動いていられるのは...『予め準備していい』と言われて入念に仕掛けたトラップや暗器が、絶妙に嫌なタイミングで彼女達のリズムを乱しているからなのだろう。

 

 だけど...それだけで勝てるような相手なら、こんな苦労はしていない。

 キヴォトスの上澄みに位置する彼女達を()()()()()で仕留めるとなれば...相応の火薬量(かりょく)と、相応に手の込んだ仕掛けが必要になる。

 

 しかしソレに比例して、事前に察知されて回避される可能性も跳ね上がってしまう...故にリソースを割くべきは、『必要十分な仕事をしてくれるだけのトラップを、如何に相手の裏をかいて仕掛けるか』に収束する。

 ...或いは『神秘』による身体強化をブチ抜くことに特化した『()()()()()()()()()()()でも発明されない限り、この考え方(セオリー)が覆ることは無いだろう。

 

 ____閑話休題、直面してる戦況に話を戻そう。

 

 やや後方で響く爆発音、銃声......瞬く間に距離を詰めてくる三人分の足音。

 ...否、絶対に()()()()もこちらに追いつきかけている。

 

 思い至ってすぐ...木の上でやや緩めに張っておいた樹脂製のワイヤーが接触により千切れたようで、繋げておいた鳴子がカラカラと警告音を発する。

 ソレが意味するのは、足を使わずに移動している者が少なくとも一人はいるということ。

 

 個人差はあるものの、翼持ちの生徒は多少の距離なら飛行が可能...案の定、こちらの体力が尽き始めて感知能力が鈍るだろう瞬間を狙って『飛行』という手札を切ってきたのだ。

 

 その後もあの手この手で牽制を繰り返しながら走り回るが...ものの一分も掛からぬ内に、自身が包囲され始めているのを嫌でも感じ取ってしまう。

 『反転』していればもっと素早く広範囲を索敵感知出来るけど...ソレは現状、取るに足らない『たられば』だ。

 今この瞬間使えないのなら...そんなモノは、()()()()()()()()()()()()()()()なのだから。

 

 ...刻一刻と迫る会敵の瞬間。

 最短最小限の動きで首を振りつつ目を動かし、耳を澄まし、肌が粟立つ『起こり』に備えつつ...周囲の情報を、なるべく正確に感知(キャッチ)する。

 

 視界の隅で一瞬捉えた黒い翼。

 静音飛行しているためか、ギリギリ耳で拾えたドローンの滞空位置...その使い手は十中八九、獣のような低姿勢で木々や茂みの陰に潜んでいる。

 

 メイド服を来た亜麻色髪の少女は...どのタイミングで仕掛けてくるかまるで読めない。

 他の三人が仕掛けた後、最後の最後で漁夫ってくる可能性も考慮に入れておく必要があるだろう...彼女の思考傾向(パターン)に対するこちらの研究不足が、このタイミングで尾を引いた。

 

 ともすれば...優先して注意を払うべきは最後の一人。

 部員として、そして友人としても長い付き合い...戦闘思考的にも本人の性格的にも、()()()()()()として絶対最初に仕掛けてくる...!

 

 瞬間____ザンッッッッ!と地面を踏み込む音が、やや離れた場所から耳に届く。

 しかし、並の生徒なら六歩はかかる距離を二歩で詰められ...飛び込んできた銀髪少女の持つスナイパーライフルの銃身が、ギラリとこちらの懐に入り込む...っ。

 

 ...ある程度手の内を知っていたから、何とかこの状況(シチュエーション)まで読み切れた。

 後はほんの一瞬だけ...弾丸がこちらの身体に接触する瞬間に()()()()0().()1()()()()()()()()めれば、彼女達に『今の何やった!?』と問い詰められても口八丁で誤魔化せるだろう。

 

 ああ...それにしてもだ。

 日が落ち始め、夕闇が少しずつその領域を広げ始めた時分において...ずっと頭の中を渦巻いているのはただ一つ。

 

 走り回るのは全然いい。絶え間なく頭を使うのも慣れっこだから問題ないし、何なら考えること自体割と好きだからソレも良し。

 こうして実戦の機会を得られるのも、寧ろ大歓迎ってなものである。

 

 でもさ?

 なんかさ??

 それでもさぁ???

 

 ...せめて...っ、せめてちゃんとしたご飯食べてからこの訓練やりたかったかなって...!

 

 ____うおおおおおおおおお!!ボクのランチタイムどこいったんだこんにゃろおおおおおおおおおおお!!!

 ついでに()まれやヘイロー『順転』ッッッッッッ!!!

 

-----------------

 

 さて...どうしてボクが、お腹と背中がくっつきそうになりながらも戦闘訓練をおっぱじめるに至ったのか。

 元を辿れば...昼間ひとしきり笑わせたイチカちゃんとトキちゃんが、とんでもない集中力で映像記録を見返しているボクの姿を目撃してしまったことが原因である。

 

 誤解しないで欲しいのは、ボクが資料室に篭ってやっていたことが『謎のヒロインごっこ鑑賞会』だってバレたわけじゃないってこと。

 頭の中では自画自賛と自己批判でカーニバルだったけど、表立ったリアクションは口にも表情(かお)にも出してなかったわけだからね。

 

 恐らく他の部員なら『サイカのいつものアレか』で済んでいただろうけど、何分(なにぶん)二人はシャーレに来るようになってから日が浅い。

 例え各々の知り合いから聞いていたとしても、いざ直接目にすれば疑問に感じてしまうのだろう。

 

 朝早くからずっと引き篭もり、特段気配を消していたわけでもないのに自分達の入室に全く気付かず。

 大体5分くらいすぐ後ろに立っていたのに...どんどん映像分析に没入していく最古参の一般事務員。

 

 ____シャーレで()()()()()()()と言われる非戦闘員(ボク)が、どうしてそこまで戦闘研究に精を出しているのかと。

 

 むん...少し前までのボクなら、こんな感じの状況に陥ったら盛大にテンパっていたことだろう。

 分かりやすいところでいくと、ホシノちゃんにシキの正体らしき人物に心当たりがないか聞かれた時みたいにね。

 

 フフん、だけど安心してほしい...ヒトは誰しも、経験を糧として成長する生き物ですわ♪

 謎のヒロインごっこを始めてからぶっつけ本番で培ってきたロールプレイとペラ回し...段々『自信』による裏打ちもされてきたアドリブ力で()って、ウソとホントを絶妙に織り交ぜた『それっぽい理由』で乗り切ってやらァ!

 

 ......その結果がコレです、まる。

 

 うん、分かるよ?『具体的に言えや雑魚が!』って野次が飛んでくるだろうなってのは分かるけど...!でもボク自身、何をどう解釈されてこんなことになったのかホントに分かんないんだもん!!

 

 内心得意げになりつつ『それっぽい理由』を説明したら、何故か『今から楽しいことしに行くっすよ♪』って言われながら二人に両腕を拘束されて資料室から引っ張り出されるじゃん?

 丁度廊下ですれ違ったシロコちゃんとイオリちゃんにトキちゃんがゴニョニョ何かを伝えた途端、『自分達も行く』って言いながらテキパキと資材やら現場仕事や()()()()()()()()()()()()()()()()()()やらが準備されるじゃん?

 

 そんで『ん、どうせならこのシチュエーションをもっと活用(エンジョイ)すべき』とか言うや否や、シロコちゃんに目隠しされて両手両足縛られて車に放り込まれるじゃん??

 その後トキちゃんとシロコちゃんによる殆ど棒読みの()()()()()()()をBGMに数十分車に揺られた結果、現在地である山林訓練所で一人vs四人のゴキゲンな訓練することになっちゃってたんだから...っ!!

 

 どうしてぇ...?ボクってば一体どこでやらかしたんですの?

 取り敢えず『それっぽい理由』の滑り出しとして、『だって『現状を諦めるみたいに受け入れちゃったクソザコ事務員』より、『超スローペースでも強くなっているクソザコ事務員』の方が先生の力になれる場面も増えるかもでしょ?』って言ったこと?

 

 『次こそ最強格の面々に()()()()()、その最強格に勝ったことのあるシキって子を研究するのは順当な道筋じゃない?』って言ったこと??

 

 『例え身体能力や神秘(さいのう)の次元が違い過ぎて目が眩みそうになっても...その『戦い方』の要素をひたすら細分化していけば、必ず自分に取り入れられるモノを見つけられるからね♪』って言ったこと???

 

 分からん...分からんですわ。

 ボクの想定ではもっとこう...このくらいの嘘と本音をブレンドしつつ、『自分にとってはコレが当たり前ですよ〜』みたいな口調で無謀なイキリ具合を見せつければ、『あ〜.........まあアレだね、頑張ってね...!』みたいな感じのリアクションが返ってきてさっさと別の話題に移行していく筈だったのに...っ。

 

 蓋を開ければあっという間に飯抜き訓練ですわよ?厳密にはトキちゃんが持ってたポテチを一袋だけ食べたけど、それでもボクだけ空腹縛りプレイなのは変わらないんだが!?秒で消化されてお腹鳴り出したが!?

 

 もう息切れの音とかゼヒュゼヒュ言い出してるし、表情(かお)に至ってはとても先生には見せられない様相になっていることだろう。

 お昼過ぎから始めたこの訓練だって...ボクの体力回復も兼ねたインターバル込みで、まさかの三周目である。

 

 最初にボクが訓練所の特定区画内にトラップやら暗器やら____以前からシキの戦闘を()()()()()()()()()()()()()()()()()ソレらを仕掛けた後、モモトークで準備完了のメッセージを四人に送信。

 そのメッセの受信を合図に、イチカちゃん達四人がバラバラのスタート位置から区画に侵入し、より短い時間でボクを捕縛すべく立ち回るというのが基本的な流れだ。

 

 勿論イチカちゃん達の猛攻を掻い潜りながら反撃を狙うのは貴重な経験だけれど...『事前に色々仕掛ける時間が貰えてる』時点で、まるっと実戦想定の訓練とは言い難いけどね。

 『反転』した状態なら身体能力(フィジカル)や感知能力も向上して、初見の場所でも戦いながら色々仕掛けられるわけだけど...『神秘』状態のボクは、現状そこまで出来る余裕が無いくらいに弱いというのが事実である。

 

 ____閑話休題。語るべき本題に話を戻そう。

 

 とにかくお腹がペコペコでヤバいんですわ...!

 何でか知らないけど、四人ともあれだけ動いてんのに全然空腹感とか感じてないみたいだし!なんなら回を重ねる(ごと)に集中力が増していってる感じだし!

 

 二周目、三周目の訓練に入る前にも『何か食べさせて』ってお願いして手持ちの食べ物分けてもらったけど、飴玉と駄菓子とゼリー飲料一個じゃこの訓練での消費カロリー賄えないのよ!?

 まあ出発前に訓練資材用意する時、食糧のことを完全に忘れていたことはイオリちゃん達に謝られたけどね?『ん、だけどサイカは多少追い詰めた方が面白くなるから結果オーライだね』って返答には全力で待ったをかけたいですわ!

 えっ何なの?ボクっていつの間にか、作者に歪んだ愛され方されてるせいで頻繁にキツイ場面に放り込まれる漫画のキャラみたいな見方されてたの???

 

 あー......ヤバい。シロコちゃんの言葉に引っ張られてる訳じゃないけど、空腹と三回ボコボコにされた疲労やダメージで段々頭回んなくなってきた。

 どうする?もう四周目いっちゃう?行くならまだ使ってない区画にトラップ仕掛けてくるけど?

 

 ...んぇ?『強引に付き合わせといて何ですけど...反撃とか考えずに、もっと防戦することだけに集中してもらってもいいっすよ?』って?

 えへぇ〜?どうしたのさ急に変なこと言い出して。

 

 ____でも、()()()()()()()()()()

 

 いやね?色々仕掛ける時間とか貰ってるし、皆に相当手も抜いて貰ってるボクが言えたもんじゃないのは分かってるんだけど...これ実戦訓練なんだよね?

 だったら()()()()()()()()()使()()()、猛攻を掻い潜る立ち回りをしなくちゃ意味ないっしょ♪

 

 『実戦』って名前が付くなら、やっぱ使える範囲にあるモノ全部使って勝ちにいきたいじゃん?

 ボクにとっては、こうして訓練に混ぜてくれたり、仮想でも戦いの場に立てる機会そのものが貴重だからね...もっと強くなるために、一戦だって無駄にはできないよ。

 

 ちなみに余談なんだけど...『順転』を習得して以降、『謎のヒロイン』としての戦績と『一般事務員』としての戦績は分けて考えるようにしている。

 なんとなく慢心に繋がりそうだったからって理由もあるけれど...一番はやはり、ボクの中にある『最終形態』の構想に『神秘』状態での創意工夫や強化が不可欠だと判断したからだ。

 

 組成がちぐはぐで総量すら不確かな『神秘』と、訓練すればするだけ使える量も時間も増していく『恐怖』...()()()()じゃ、とてもじゃないけどボクの理想に届かない。

 今まで____『反転』を経験する以前までやってきた努力は、残念ながら大して実を結ばなかった。

 だけど今なら...『反転』を習得し、黒服さん達の知識も借りられる今ならば、ある程度の方向性を定めて努力を積むことが出来る。

 

 そのためにも『順転』の解釈をもっと拡げて、何やらちぐはぐらしい『神秘』の組成を少しずつでも解き明かして。

 そして、『謎のヒロイン』としてだけでなく『一般事務員』としても最強格に渡り合える...そんな自分になってみせるのだ。

 

 まあその辺の話はこのくらいにして...どったのイチカちゃん?やけに神妙な顔しちゃって。

 『本当に...本気も本気で、私達にも____あの先輩達にも勝つ気でいるんですね』って?

 

 もー、イチカちゃんってば今日どうしちゃったのさ!声のトーンが上がったり下がったり忙しないですわよ?

 

 ____もっちろん!ボクは必ず、皆に勝ってみせるとも!!

 

 『いつか勝つ』なんて先送りにするような言葉じゃない...『次こそ勝つ』ために幾らでも知恵を絞って、使えるものは全部使って。

 この後の訓練も......例えその次が、訓練だろうと実戦だろうと変わらず挑み続けて。

 そんで勝てたら...今度は『次も勝つ』ために、何度だって自分を再構築してやるぜ☆

 未練がましく『変わること』を躊躇うような過去の栄光や成功体験なんて、最初(ハナ)から一つも持ち合わせていないのだから。

 

 ...ヘイヘイどうしたのさ皆、揃いも揃って面白い表情(かお)しちゃって。

 同じ目標(ターゲット)を狙ってるライバルの前で、そんな呆けた表情(かお)なんか晒しちゃっていいのかにゃ〜ん?

 

 『ライバル...?』って...うっはは!何を今更!

 そりゃそうでしょうよトキちゃんよぉ。今ボクの前にいる四人がキヴォトスで一番____最強格である自分の先輩を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 トキちゃんはネルちゃん先輩で、イチカちゃんはやっぱりツルギちゃんだよね。

 シロコちゃんはホシノちゃんだし...イオリちゃんだって、ずっとヒナちゃんに及ばないまま卒業されるのって何か嫌じゃない?

 

 だからライバル、故にライバル。

 ワクワクするっしょ?こういう方がさ。

 

 時に知恵を出し合って、時に互いの技術を戦いながら盗みあって...競い合って。

 そんで自分や誰かが最強格を超えるに至ったその時は____皆でお金出し合って、ちょっとお高い焼肉でも食べにいこーぜ♪

 

 そう話を締めくくったところで...ボクは(ようや)く、場の空気が不気味なくらい静まり返っていることに気が付いた。

 

 ............えっ。どうしたの皆、俯くみたいに下向いて。

 前髪で目元隠れちゃってるからマジで表情読めないんだけど?もしかして知らない内に、皆にとってのとんでもない地雷とか踏み抜いちゃってた??

 

 疲れた頭で喋りまくる中でどんな失言をやらかしたのかと、冷や汗を滲ませながらグルグルと自分の発言を思い起こそうとした瞬間......耐えきれなくなったように()()が吹き出し、揃って各人各様の笑い声を上げ始めた。

 ......スナイパーライフルを傍らに置く、銀髪ツインテールの少女を除いて。

 

 びっっっっっっくりした......も〜、紛らわしいリアクションするの止めてよホントに〜。

 

 『いや〜、噂の『サイカ語録』も、実際目の当たりにすると笑えるくらいインパクト凄いっすね』じゃないよ〜。マジで寿命縮んだかと思ったじゃん...!

 ............えっ、てか『サイカ語録』って何?ボク今までそんな単語聞いた事すら無かったんだけど!?...ええい、はぐらかすんじゃねーですわ!

 うーん待って?目ぇ逸らしながら両手の人差し指で口元にバッテン作らないで?キレイ系のイチカちゃんにソレやられたらキュンときちゃうでしょうが!!

 

 うんそうね、『控えめに言っても雑魚である貴女が、私のライバルを名乗るなんて片腹痛いです』ってご指摘はぐうの音も出ないよね。

 でもその後の『まずは一年ほど、私の下でメイドの何たるかを学んでください。先生と関わる仕事を除いて、全て貴女のために取っておきますから』はおかしくない!?(てい)良くサボろうとしてんの隠す気すら無いじゃん!

 相変わらず冗談か本気か判断に迷うポーカーフェイス...まあそれがトキちゃんの魅力の一つではあるよね。

 

 ...ちょっとシロコちゃん?今しれっと聞き捨てならないこと言わなかった?

 『ん、サイカは......そう。煽り厨だから、人をその気にさせるのがとても上手い』はギリギリ悪口(アウト)なワードチョイスじゃないですの???

 相変わらず絞り出した言葉の語弊が凄いですわ!

 

 あと腕組みながらドヤ顔で頷くのやめてね?

 『やっぱりある程度追い詰めた方が良い味を出す』じゃないが?もしかしてアレなの?シロコちゃんってボクの厄介古参ファンか何かなの??

 

 

 ......それで...どうしてイオリちゃん浮かない表情のままなのかにゃ~ん...?

 やっぱり何かが地雷ワードだった?土下座の準備した方がいい??

 

 言いながらいそいそと地面に膝をつき始めたところで、『いや待って待って...!全然そういうんじゃないからっ!』と我に返ったイオリちゃんに土下座キャンセルを要求された。

 危ない危ない...ボクの『土下座』を決めてから実行するまでの脳内コマンド入力が爆速過ぎるあまり、あともう少し介入が遅かったら額と地面がこんにちはしてるとこでしたわ...!

 

 気を取り直して話を聞いてみると...どうやら先程のボクの話があまりに予想の斜め上だったから、ちょっとフリーズしてしまったらしい。

 『委員長の強さやカリスマ性には勿論憧れてるけど、『超えたい』とか『勝ちたい』とかは...正直、考えたことないよ』とのこと。

 

 なるほどねぇ。確かに普段のイオリちゃんやゲヘナ風紀委員を見てる感じ...ヒナちゃんという存在は、単なる『組織のリーダー』という枠組みに収まってない。

 『治安維持活動における最終ライン』であり『ゲヘナ最大の抑止力』。他にも色々と形容出来そうだけど...現場に降り立つだけで『秩序』を発生させる圧倒的な存在のように認識しているように感じるのは、ボクの考え過ぎじゃないのだろう。

 『ゲヘナ』という混沌環境も相まって、キヴォトス全土で見たときの『最強格』の知名度もヒナちゃんが断トツで一位なわけだしね。

 

 だけど...という言葉が頭の中に()ぎった時、イオリちゃんの口からも同じ言葉がこぼれ落ちた。

 曰く、『だけど『今より強くなりたい』って気持ちは、私の中にもちゃんとある』。

 『それはきっと...ゲヘナの治安維持や、少しでも委員長の役に立つための要素(チカラ)になるはずだから』と。

 

 ...うん。どんな方向であれ、それぞれがそれぞれなりの意義をこの突発訓練に見出(みいだ)せてるなら無問題(モーマンタイ)だよ!

 

 てゆーかほんっっっとにイオリちゃんは実直で可愛いなぁ!

 『ところでさっきまでの流れ...あれって私も何かボケた方が良かったのか!?』なんてセリフで場の空気を戻そうとするなんて、誰にでも出来ることじゃないですわ!

 良いんだよぉ、イオリちゃんはそのままで。あっちの三人はボクにツッコミ入れさせて愉しむ目的でボケ散らかしてただけだからねぇ。

 

 あぁ...もぉ()()天使。()()癒し。やっぱりイオリちゃんだけが、ツッコミで疲弊したボクの心を支えてくれるんだね。

 っべーわ、もう決めたわ。後で家に祭壇作ってイオリちゃんの写真飾って(たてまつ)ることにするわ。

 

 取り敢えずアレでいい?結構前に落とし穴に嵌ってモモトークで先生とボクを呼び出した時に撮った写真でいい?

 あの写真ならお気に入り過ぎて既に現像済ませてあるから、(うち)に帰ったら最短最速で祭壇の完成までもっていけますわ!

 

 えっ絶対ダメ?焼却処分しろですって...!どぉしてそんな酷いこと言うの!?

 ボクと先生が空き時間でコツコツ制作している『イオリちゃん写真集(現物版&電子版)』!その中でも珠玉の一枚だというのにっ!

 

 イオリちゃんの凛々しさと可愛さと素直さをキヴォトス全土に布教することも連邦捜査部(シャーレ)の使命でしょうが!?

 ()()()()()()()()()()()()()()止められるわけ......あっちょっと待ってその勢いと強さでブレーンバスターは止めて?ボクも前よりちょっとだけ頑丈になったけど流石にソレはダメージ大き____ぐわあああああああああああ!!!!!!?

 

 ....................................ヴォエッ、割とマジで息できねーですわ。キヴォトス人でなきゃ死んでましたわね。

 仰向けでぶっ倒れながらビクンビクンしていると...こちらを取り囲むようにしゃがみこんだ四人が、拾ってきた木の枝でツンツンとボクの全身を突つき始める。

 

 やれ『サイカちゃんって頭良いんだか悪いんだか分かんなくなることあるっすよね?』やら、『いや良い悪いとかじゃないから。先生と同じで頭のおかしいヘンタイなだけだから』やら。

 『ん、未だ矯正局に収監されずにシャバで生活出来てるところは素直に尊敬してる』とか『成程...シャーレの専属になるためには、こういった変態性について深く理解する必要があるようですね』だとか。

 

 それはもう好き勝手言われてるわけだけど、次の瞬間には五人で吹き出すように笑えているのは...お互いが冗談で言っていることを、同じくらい理解出来ているからで。

 ふざけていい場面以外____つまるところ内心では、互いの存在や各々が大切にしているモノや矜恃を同じくらい尊重し合える仲間だと...短い付き合いながら思うことが出来ているからなのだと。

 

 あぁ...どうしたもんかね、黒服さん。

 こんな人として出来た彼女達に黙って『謎のヒロインごっこ』をしているボクは...100%ロクな死に方しないだろうし、死んだところで地獄にしか行けなさそうだ。

 

 まあ、かといって止まるつもりは無いんだけど。

 どれだけ無理ゲーじみてても、罪悪感を覚えても...とどまることを知らないこの『謎のヒロインごっこ』に対するモチベーションは。

 もうどうしようもなく、ボクのアイデンティティに根付いているのだから。

 

 

 さ〜てとっ!そんじゃそろそろ、時間的に最後のナイター山林訓練を始めますかね!

 ちゃちゃっとトラップの準備済ませてくるから、四人とももうちょっと待ってて頂戴な。

 

 ...うん?『開始のメッセージはやる気がブチ上がるヤツ期待してるっすよ』って?

 えへぇ〜、何さその無茶振り...!シロコちゃんがそう形容したからって、マジでボクに『煽り厨』キャラ定着させようとしてないそれ!?

 

 全く困っちゃうね...なんて呟きながら駆け足で移動し、暗視ゴーグルを付けたボクはテキパキと仕掛けを済ませて潜伏ポイントでモモトークを開く。

 

 やれやれ...これから始まる訓練は一段とバチバチになりそうだ。

 本人達は気付いてないかもだけど、さっき入口でボクを見送ってくれた時の雰囲気が半端なかったからね。

 

 パッチリと開眼していたイチカちゃんに、無表情ながらも眼を爛々とさせてミニスカノースリーブメイド服に換装し始めたトキちゃん。

 殆ど捕食者(ケモノ)のソレに近いギラついた雰囲気で(うっす)らと笑うシロコちゃんに...バチンッ!と両手で頬を叩いた直後、肌で感じるレベルで集中を深め始めたイオリちゃん。

 

 ほんの一ミリだって侮れない...『最強格』という光があまりに強烈過ぎるだけで、彼女達四人はキヴォトス全土で見ても上位数%に入る正真正銘の傑物なのだから。

 

 そんな彼女達にこそ伝えよう。

 クソザコ事務員であるボクを...まあ割と強引ではあったけれど、こんなレベルの高い訓練にノリノリで混ぜてくれたことへの感謝と敬意を込めて。

 他の人へ言ったら怒りと反感を買うに違いない...それでも今のボクと彼女達との関係性なら、戦意を滾らせるゴキゲンな燃料になることを信じて。

 

 さあ()ろう。

 派手に()ろう。

 

 勇気を出して試すこと、喰らうダメージ、全力でブン回した思考の足跡...それら全てが経験値。

 沢山勝って沢山負けて...そんで『道のりの最後』ではなく『道のりの途中』で、最強格にだってなってやろう。

 

 まあつまり____もたもたしてっと追い抜いちゃうぞ☆次の世代のエース共!!!

 

 

 

 

 ...ノリと勢いで始まった、次世代の担い手達との限界バチバチ戦闘訓練。

 帰りの車内にて、この試みは満場一致で『凄く有意義』という結論になり。

 

 ボクらは以前にも増して頻繁にスケジュール調整の連絡を取り合い、その後も夜な夜な合同で特訓をするようになったのだった。

 

 

 

 




トキは留年して一年生のままですが、本作では戦闘キャリアは二年生相当の次世代エース候補として扱おうと思います。
高校の部活とかで考えても、部長(リーダー)とエースが別というのも珍しくないという判断です。
トキとエイミの次世代ダブルエース案も考えましたが、エイミの動機付けが難しそうだったので断念しました。

原作でもイベストとかで、イチカのガッツリな過去編とかやってくんないかなぁ~(願望)

次回更新も『なるべく近いうちに』でお願いします!
ちょっと知恵熱出てきたので!
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