ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。 作:YEBIS_nora
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△月○○日
眼前で繰り広げられているのは...圧倒的なまでに、
キヴォトスで生まれ育ったのなら、初等教育で半ば強引にでも覚えざるを得ない『銃撃戦闘の基礎的な動き』すら...僅かにその面影が垣間見える程度の『型の読めない』戦闘スタイル。
高校生になって
学校側がこの才能を特別に評価して、『戦闘基礎』の単位を与え進級や進学を認めたか。
或いはこの子が、この都市で生きる上で必修とも言える『基礎』をおざなりにしても、周囲の人間が何も言えないほどの『お嬢様』であるかだろう。
そんなことを考えている間にも...少女は背後から銃身で殴りかかってきた不良を、後ろ髪を直すくらいの感覚で振るった裏拳で殴り飛ばす。
引き金を引きながら、目の前の空間をなぞるように愛銃を動かしただけで、前方の不良達が瞬く間に薙ぎ倒される。
天真爛漫に...文字起こしをしたら語尾に星のマークでも付いてきそうな声音で、襲いかかる不良達を煽るようなセリフを謳いながら。
...対するボクは、そんな不良達に呆気なくボコられた筈なのに...最早その痛みすら、どこか遠くでしか感じられない。
少なくともそれくらい...天賦の才を呆れる程自由に振るって戦う桃色髪の少女に、ただ目を奪われ続けていた。
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こんな状況になった経緯...といっても、そんな冗長に話すような内容じゃない。
ナギサさんへの改修報告も...なんか向こうの首長が一人サボってどっかに行っただ何だと騒いでいたけど呆気なく終わり、演習への参加をトリニティの生徒たちへ積極的に呼びかける旨の約束もしてくれるじゃん?
帰りの電車まで時間があるから、連邦生徒会の皆へのお土産にちょっとした焼き菓子の詰め合わせでも買ってこうかという話になるじゃん?
そんでリンちゃん先輩と二手に分かれてトリニティ自治区のお店を巡っていたら...ふと顔を向けた路地の先で、何やら大勢の不良に絡まれている女の子の姿が目に入っただけなのだ。
それならもう、次に取るべき
『目の前で揉め事が起こってんのに、ソレを見て見ぬフリなんてできるわけねーよなぁ!!』と脇目も振らずに飛び込んだのは...今思えば、ほんの数分だけ早計だったのかもしれないね。
最近イオリちゃん達とばかり訓練していたから、知らず知らずのうちに驕りが出てしまったのかもしれない。
あの子達とやり合って戦闘の体裁を保てているのは...あくまでも、事前の研究と準備がしっかりと出来ているからなのだ。
反転してない『神秘』状態で、尚且つ初見の相手だと割り増しで弱っちいボクはあっという間にボコられるし...割って入った数分後には、逆に助けようとした
しかもその子がめっっっっちゃ強いっていうね!
おいおい聞いてないぜツルギちゃん...トリニティにはキミ以外にも、こんなぶっ飛んだ強さを
ボクが知っている同世代の中でも、ぶっちぎりで闘いの『型』が読めないフリースタイラー...一歩どころか半歩踏み外せば『素人』と変わらないギリギリのラインを成立させているのは、その類い稀なる才能の賜物だと言う他ない。
...でもね?その中でも異彩を放っているとある要素にだけは、ど〜してもツッコミを入れざるを得ないですわ!
ヘイヘイどーなってんだよあのゴキゲンにぶっ飛んだパワーはよぉ!!なぁんであの華奢な
アレなのか?やっぱ飲んでるプロテインの違いなのか?トリニティにはボクの知らない高級プロテインが存在してるってのか!えぇッッ!!?
...むん、取り乱してつい地下生活者ソウル、通称『地下ちゃんソウル』が顔を覗かせてしましましたわ。会ったことないんだけどね☆
コホン...まあゲマトリアで得た知識も絡めて真面目に推し量るに、アレは先天的な『神秘』の特性による産物なのだろう。
アスナちゃんの因果逆転じみた直感能力や、ツルギちゃんの再生能力と同種のカテゴリー...マンガやアニメではフィジカル
あぁ全く...この吉報を、一刻も早く黒服さんに教えてあげたい。
このキヴォトスにはまだこんなにも、ボクの『
口角が吊り上がっていくのを自覚しながら...ボクは眼前の戦闘を目に焼き付けつつ、フル回転で思考を巡らせる。
一見『型』が無いように見えるが、本当に動き出しのクセは無いのか。軸足はどちらで、利き手じゃない方の腕の使い方は普段から意識していそうなのか。
視線の動かし方はどうか、相手からの攻撃を受ける上で、苦手にしていそうな
彼女の膂力を擬似再現するなら、ボクの持ち得る何と何を組み合わせればいいか。
____仮に彼女と闘うとしたら、どんなプランで攻め落とすか。
ああ...やっぱりボクは、生来『思考体力』だけはあるらしい。
普通の人なら途中で『疲れたからや〜めた!』ってなるラインを頻繁に越えるし、思考がどん詰まればしっかりガッツリ頭も痛むけど...それでも、考えることを止められないのだ。
だって試行錯誤の末に何か出来るようになると、めっっっちゃ気持ち良いからね♡
...まあ以前、『でもそれって〜、単にサイカちゃんがマゾ気質なだけなんじゃないの?くふふ♪』ってムツキちゃんに揶揄われたこともあるから、活動記録に書き記すだけで留めておくけれど。
おのれ許さん...許さんぞ......笑い殺してくれるぞ陸八魔アル...!
____閑話休題。
そんなボクの生態もあり...どうやら途中から、戦闘そっちのけで思考の海にフルダイブしていたようで。
唐突に頬を軽く突っつかれたことで意識が引き戻されると____不良達を全滅させたらしい件の女の子が、至近距離でボクの顔を覗き込んでいた。
う〜ん待ってくれ...っ!改めて近くで見ると、やっぱとんでもない美少女じゃないかこの子!!!
つばの広いキャペリンを目深に被りながらも輝いて見える、三つ編みで前に垂らされた桃色の長髪に、明らかにお高そうな淡いピンクの
おまけに伊達っぽい丸メガネ越しでもあまりにお顔が整い過ぎていて...咄嗟に出てきたのは、『どっかのお姫様...?』というなんとも場違いな言葉だった...!
やっべミスった...っ!んなこと言う前に助けてくれたお礼言うのが先でしょうがべらんめぇ!
ほら見ろよ...あの子もいきなり意味分からんこと言われたから、キョトンとした
ぐぬぬ、急いで立て直さねば...そうだっ!学籍的にも服装的にも推定高確率でお嬢様だし、ボクも全力のお嬢様ロールで対応すればパーフェクトコミュニケーションまで持っていけるんじゃないか!?
そうだよ、こういう時こそ使うべきだよ!ただ先生とふざけ合うためだけに練習したわけじゃないことを、今この場で証明してやろうじゃねーかこんにゃろー!!!!!
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____サイカは激怒した。
必ずや、この『選択』の神様をも真っ青にさせるようなバッドコミュニケーションを決め込む己自身を断罪しなければならないと。
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!アドリブがっ!アドリブがあまりにも下手過ぎるっっっっっ!!!!!
『謎のヒロインごっこ』してる時の頭の冴えはどこに消えやがったんだ!!
なぁにが『おほほのほ!助けに入ったつもりが逆に助けていただく形になってしまい面目次第もございませんわ!ごめんあそばせ!』だよ!(半ギレ)
『お礼と言ってはなんですが、これからアテクシとお紅茶をしばきに行きませんこと!どんなお高い店でも、
『
ぐおおおおおっ!まさか昨夜の寝不足がこんな形で思考の足を引っ張るだなんて...っ!
おまけに以前先生がぶっ込んできた『ガテン系お嬢様ロール』が思考に混ざっちまったせいで、『誇張し過ぎたモノマネ』ジャンルにすら入れないお嬢様モドキが爆誕しちまったじゃねーかこんちくしょぉぉぉぉぉぉ!!!!!
ほれ見ろぉ!眼前にいる
突然要らない助けに入ってきてあっという間にボコられてたヤツに、全員ボコして声掛けたら急に怒涛のイカれワード浴びせられたら誰だってこうなるわ!!
今すぐにでも現実逃避したいけど、その前にまず土下座だね...!不審者として通報される前に、誠心誠意己の失態を謝っておかないと!!
そう思い立ち地面に膝を叩き付けたその時...目の前に立つ少女も、全く同じタイミングで両膝をつく。
『えっ何事!?』と顔を前に向けた瞬間には____我慢の限界だったと言わんばかりに、彼女はお腹を抱えて笑い出した...!
んんっ!?一体何がどうなってやがりますの!?
こんなゴミみたいなロールで笑ってくれるのなんて先生だけだと思ってたのに...まさかこの子の笑いのツボもボクらと似てるなんていう、奇跡的な確率を引き当てることに成功したのか...!?
とか考えてる間にも...彼女は倒れ込むように、ボクの右の鎖骨辺りへ自身の額を押し付けてひたすらに笑う。
む〜ん、完全にツボにハマっておりますわね。もしかしなくても、この子が落ち着くまでずっとこの体勢続けてなきゃいけないパターンじゃないですの!?
...周囲には倒れ伏したまま、未だ意識の戻らない不良達。
お嬢様らしい笑い方なんて知ったこっちゃねーと言わんばかりの爆笑を続ける無傷の美少女に、そんな彼女に肩を貸して身動きの取れないボロボロのボク。
ここまで状況がカオスになってくると、一周回って落ち着きを取り戻せるというものである。
とりあえず...アレだね。正義実現委員会に連絡して、この状況を何とかしてもらおう。
この子にアフタヌーンティーをご馳走するのは、状況説明が一通り済んでからだね。
思い立って即座に通報を済ませたところで、どうやらこの子も笑いのツボから抜け始めてきたらしい。
えっ、なになに...普段どんな生活してたら、そんなトンチキなセリフ言えるようになるのって?うはははは!んなもんシャーレで先生と過ごすようになればあっという間よ!
そうそう、シャーレ!ボクも今は連邦生徒会の制服着てるけど、本来の所属はそっちなんだよね。見ての通りバチクソに弱っちいから、まだ戦闘任務に参加したことないんだけど!
ていうかその節はホントに迷惑をおかけして申し訳ございませんですわ...
うん?『......私のことを知ってるから、自分が弱いって分かってても助けに入ったの』って?
ん〜、ちょっと意図が微妙に分かんないぞ...!?
そりゃボクはキミの名前も素性も知らないけれど...知ってようが知っていまいが、強かろうが弱かろうが、十中八九割って入っちゃったんじゃないかな?
何故ならボクは、先生の教え子として名を連ねる生徒の一人!
余計なお世話と言われようが、『
『わーお......益々興味湧いてきたかも』って...それってつまり、もっと先生やシャーレのこと知りたくなってきたってこと!?嬉しいな〜、マジで面白いところだよ!見学や仮入部はいつでも大歓迎ですわ!
モモトークの交換?うん是非是非!シャーレでの生活とか〜、先生の激推しポイントとか〜、チャットでも通話でも簡潔にわかり易く解説するから安心してね!
おっ、届いた届いた。名前は〜...ミカちゃんね!うんうん、出で立ちから溢れ出る雰囲気にもピッタリ...な、なま...え........?
......待って。
ボクの記憶違いじゃなければ...この名前、数時間前にティーパーティーで滅茶苦茶飛び交ってたような気がしなくもなくもなくもなくももももももももも____!
頭の中で繋がってしまった激ヤバな予感によって、スマホを持つ手がガタガタと震え始めた直後...通報を受け駆け付けてきた
ぐわああああああああ!!!『ミカ様を発見!!』とか慌てた様子で報告してりゅぅぅぅぅぅぅ!!!
ド平日のこの時間帯に私服なのも珍しいなって思ってたけど、やっぱソレ変装だったのかよぉ!!
地べたに四つん這いになりながら絶叫するボクに、『あはっ☆知らなかったんじゃなくて気付いてなかっただけみたいだね!』とか言って天真爛漫な笑顔をみせるミカちゃん____改め、パテル分派首長の聖園ミカさん。
うーわ、メガネ外して三つ編み解いたらマジで資料に載ってた写真と同じじゃん!
こんな節穴過ぎる観察眼じゃ、この先シャーレの指名手配犯捜索で役に立つことすら出来ねーですわよ!!
むん...てか今はそんなこと気にしてる場合じゃないんだよ。
喫緊の問題は...この状況だと間違いなく、事情聴取の時間が倍近く長引いてしまうということだ...!
このキヴォトスにおいて、生徒同士の
当事者の面々が一般生徒ばかりなら、自治組織への状況説明をすれば割とすんなり事後処理のフェーズに移行することが殆どなのだ。
だけど今回の場合...つまりはミカさんのような政治的にもかなり重要な人物が現場にいたとなれば、全く話は変わってくる。
具体的には、『まさかミカ様を
ここは良くも悪くもトリニティ...厳格な組織になっていけばなっていくほど、やたらと『手続き』を重視するのは有名な話なのだ...!
うーん、ミカさんや?『アフタヌーンティーはまた今度だね☆とりあえず...お迎えが来るまでお話してよっか!』ってのは流石に諦めが早すぎませんこと!?
何かこう...貴女が擁護したらボクの拘束時間が短縮されたりしないんでしょうか?ボク今日中にリンちゃん先輩と『D.U.』に戻らなくちゃいけないんですけど!?いや『無理無理☆』じゃなくて!!
......えっ、てか何で
____あっハイ分かりました呼び方も喋り方も戻しますっ!ミカちゃんって呼ぶからボクの左腕を握り潰そうとするの止めてェ!!
ええんか!?何がとは言わないけど下手したら飛び散りますわよ!?この現場が冗談抜きにR18-Gになる可能性だってあるんだからね!!?
...なんて騒いでる間にも、パテル分派の面々や救護騎士団。ついにはリンちゃん先輩まで続々とやって来て。
揉め事自体の事情聴取やら、ボクとミカちゃんが
加えて、無鉄砲にも不良達と対峙して怪我をしたことに対しリンちゃん先輩から割とガチなお説教を受けたり。
ティーパーティーの取り調べ本部でやたら種類だけ多い各種手続きを全部済ませた頃には...ガッツリ日も落ち、泣く泣くもう一泊することになるボク達なのだった。
デカグラマトン編ストーリー完走しました...!
めっっっっちゃ良かった...!
お出しされる情報がうめ...うめ...
それでも...それでも一つだけ言わせてくれぇ。
____黒服ゥ!!再登場する日をいつまでも待ってるからなぁ!!!!!
次話に続きます!