ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。   作:YEBIS_nora

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ここから暫く重めの話が続きます。
何なら扱うテーマも正解が一つじゃないタイプなので、序盤中盤は賛否両論あると思いますが、最終的には作者の趣味(ギラギラのバチバチ)に持っていく所存です!



不振と停滞

 喫茶店での一件から数週間が経ち...キヴォトスでは本格的に、合同火力演習に向けた準備が始まっていた。

 連邦生徒会の面々が慌ただしく奔走し、必要に応じて他校生や契約した業者とも協力して、演習ステージやギミックを次々と完成させていく。

 演習に参加する生徒達も続々と部隊を組み始め...各々の目標ステージクリアを目指して訓練に精を出す姿が各地で見られるようになるのも、この時期ならではの風物詩である。

 

 そして連邦捜査部シャーレに至っても、業務を理由にこの行事をスルーすることは出来ないし端からするつもりもない。

 各校でも名の知られている面々が多く部員として在籍している以上、参加を希望していたり『上』から参加を要請されている生徒には、是非ともそちらを優先してほしいと予め通達していたのだ。

 

 故にここ最近は一部生徒に任せる調査を控えめにして、その分を演習に参加しない部員が一時的に受け持つという臨時シフトの運用を開始。

 加えてせめてもの協力として、シャーレが保有する複数の演習施設を終日解放していた...その中で。

 

 

 ____()()()()()()は、同時多発的に顕在化した。

 

 

「ちょっとホシノ先輩...っ!タンクの先輩がそんなに先行してたら部隊演習の意味無いでしょ!?」

「ぁ......いや〜、ごめんごめん。おじさんってばついうっかr『...!?ホシノ先輩、屋上にスナイパー...!』____しまっ...!?」

 

「.........ん...」

 

 

「____グ......ガァァァァァァァッ!!!」

「ツルギ...!?いくらなんでもそれは無理攻めが過ぎます!!」

 

「.........あーあー...」

「...イチカ先輩?」

「...ん?ああいや、別に何でもないっすよ____いや〜しっかし、ありゃ普段の三割増しで被弾してるっすね...!今日は新しい連携の練習も兼ねてましたけど...取り敢えず、全員で援護に回りましょうか」

 

 

「____だらァッッッ!!!掃討(ぜんめつ)!アカネ、スコアは...!」

「...その......先程のスコアより、更に下がっています...」

「...~~~~~~っ!クソッ!もっかいだお前ら!!」

 

「......ネル先輩...」

「...?おーいトキちゃん、次は私とポジション交代してスタートだからね?」

「____!...はい、直ちに配置へ向かいます」

 

 

「.........早瀬ユウカ、これは一体...」

「...どうもこうも見ての通りよ、ヒナ委員長」

 

 呆然とした表情で複数のライブ映像に目を向けるヒナの隣で、早瀬ユウカは皺の寄った眉間にコツコツとペンを当てながら言葉を続ける。

 

「小鳥遊ホシノ、剣先ツルギ、美甘ネル____来たる合同火力演習で大活躍する予定だったであろう三人が、揃ってスランプに陥ってしまったみたいなの...」

 

-----------------

 

 ...そんなやり取りが、演習施設の一角で交わされていた同時刻。

 

 ふわりと、吹き抜ける風に袖を靡かせて。

 屋外演習場のナイター照明の上に立ち、少女達を見下ろす影がひとつ。

 

「____あらあら、成程...『もしや』とは思いましたが、他の女の映像記録や報告書にも偶には目を通してみるものですね」

 

 狐坂ワカモ。

 矯正局を脱獄した『七囚人』の一人にして...かつてはその心の赴くままに、大規模な破壊と略奪を繰り返していた『災厄の狐』。

 そして現在は、より隠密性と要求戦闘レベルの高い調査任務を積極的に任されている____シャーレの先生の懐刀。

 

「(やはり囚われ始めましたか...『神秘解放』がその身に(もたら)す、()()()()()()に)」

 

 初回の没入から囚われ始めるまでの期間に多少個人差はあるだろうと思ってはいたが...まさか三人が同時期に陥ってしまうとは、『先達』である彼女にとっても意外な経過であったと言えるだろう。

 

「(...尤も、理由(きっかけ)を考えればそれも当然と言えるかもしれませんが)」

 

 ...思い起こすまでもない。

 脳裏に()()()()()、鮮烈な強さと底の見えない『恐怖』を共存させる少女の姿。

 ギリギリながらも己と引き分け、あの()()()()()()に足を踏み入れた眼下の三人をも打倒してみせた...この学園都市(キヴォトス)における、最も新しい『特異点』。

 

「......っ」

 

 手の平に爪が食い込むほど、両の手に強く力が入る。

 奥歯がギリギリと軋む音が、骨を伝導して耳朶を打つ。

 

 ...自分ですらこうなのだ。

 彼女達の胸中に渦巻いているだろう数多の感情は、想像するに(かた)くない。

 

「(まあ...だからと言って、(わたくし)が何かをしてあげる()()など無いわけですが)」

 

 狐坂ワカモは、シャーレの先生の懐刀。

 先生本人の意向...もといお願いにより、24時間365日の護衛は許されていないが、要請さえあれば何時(いつ)どこだろうと駆けつける準備をしている。

 シャーレに籍を置いているのもあくまで『先生のお傍にいるため』であり...他の部員のことなんて、正直どうなろうと知ったことではない。

 

 ...それに、自分にだって因縁はあるのだ。

 

「(あの女を始末するのは、このワカモ以外に有り得ない...だというのに)」

 

 間違いなく、そう思っている筈なのに。

 彼女は未だに、ナイター照明の上から動けない___否、動かない。

 

 狐の面を僅かにずらし、開けた視界で眼下の面々を改めて眺めながら...狐坂ワカモは考える。

 ____この胸にグルグルと居座り続ける(わだかま)りは、一体何なのだろうかと。

 

 

 




ここの所フォローで入ってる仕事のストレスでテンションがおかしくなりそうですわ〜!
今回は2500文字にも届いてないボリュームで申し訳ないです!
なるべく早く続きを仕上げます!
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