ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。 作:YEBIS_nora
シャーレ視点、今回はあの子が登場します。
「先生...!今の爆発は...っ」
「うん...っ!急ごうヒナ、みんな!」
爆発音と共に立ち上る炎と煙を視界に捉えながら、先生は部隊の面々と市街を走り続けていた。
シャーレで任務直前の
カイテンジャーの本拠地に生徒が1人侵入し、直後から大きな戦闘が始まったと言うのだ。
最初こそ、その生徒が危ないという一心でシャーレを飛び出したものの...救援に向かおうとした
「...っ、見えた!全員、このまま突入するよ!」
「「「「了解!」」」」
『シッテムの箱』を戦術指揮画面に切り替え、破壊された扉の向こう__黒煙に包まれたカイテンジャーの本拠地内部へ、先生達シャーレは速度を緩めることなく突入した。
ハンカチで鼻と口元を覆い、数メートル続く黒煙のカーテンを抜けた...その直後。
「.........これ、は...」
眼前に広がる光景に、先生は呆然とした様子で声を漏らした。
辺りに飛び散っている、大小様々な瓦礫とそこから立ち上る炎。
そして最奥に積み上がる、ノドカが『合体ロボ』と呼んでいた筈の残骸の山。
「...っ!」
忙しなく動いていた先生の双眸が、ある一点を見てピタリと止まる。
カイテンジャー達が力無く倒れ伏す、兵器や特殊な金属が連なる山の頂上。
合体ロボの頭部らしきモノに右足をかけて立っていた
「「「「____っ!!」」」」
「...!?待って、みんな!」
瞬間であった。
言葉どころか、ハンドサインもアイコンタクトも交わすことなく...全く同じタイミングで愛銃を少女に向けて構えたのだ。
「......そっか、やっぱり先生は感じないみたいだね」
いつもの飄々とした雰囲気を微塵も感じないシグレの言葉に続いて、セリカとシュンも口を開く。
「この距離からでもビリビリ伝わってくる...先生、あの子ホントにどうなってるの...!?」
「...報告にあった『芯が凍りつく様な感覚』なんて表現では、到底片付けられる不気味さではありません...。先生、どうか最大級の警戒を...!」
その声音に、余裕は1ミリも介在していなかった。
自分だけ事態の変化に取り残されたような感覚に戸惑ってる
「連邦捜査部シャーレよ。銃を捨てて、手を頭の後ろで組んでちょうだい」
『.........』
「...っ、以前あった報告と今の状況から判断して、貴女はそこの指名手配犯達より危険だと認識しているわ...呼び掛けに応じないなら、発砲することも辞さないつもりだけど」
『...............』
「...そう。そちらがそのつもりなら「待って、ヒナ!」__っ!?先生、前に出てきちゃ...!」
弾かれたように先生は飛び出し、引き金を引き絞ろうとしたヒナの両肩に手を乗せる。
慌てて振り返ったヒナだったが...『私に任せて』と目で訴えかけてくる先生に根負けし、視線を前に戻して先生の隣まで引き下がった。
『......』
「...驚かせてごめん!キミと少し、話がしたいだけなんだ!」
ガスマスクの少女に呼び掛けながら、先生は後ろ手に『銃を降ろして』とハンドサインを出す。
『.........』
「......あれ...?」
「...プレッシャーが、弱まった...?」
...こちらが全員銃を降ろしたからか、はたまた先生の言葉に応じるつもりなのか。
少女がショットガンの銃口を下に向けたと同時に、生徒達が感じていたらしい重圧感が途端に軽くなったようだった。
「____この前は、助けてくれてありがとう!」
驚いたような複数の視線が自分に集まるのを感じながらも、先生はそれを気にすることはない。
彼女に再会した時に真っ先に伝えたかった言葉は、あの日からずっと決まっていたのだから。
『............』
件の少女は微動だにしないまま、依然として押し黙っている。
今度は別の言葉をかけてみようと、先生が口を開こうとした...その直前。
『...どういたしまして』
「...!」
彼女の方から、初めて言葉が返ってきた。
肉声と機械音声の間に位置するような、感情の色が見えにくい淡々とした声。
本当の声か人工的な声かは分からないけれど...彼女が自分の意思で発した声だということを、先生は直感で理解した。
「もしよければ、キミの名前を教えてほしいな。私は『...シャーレの先生』」
名乗る前に、少女の方から言葉が返ってくる。どうやら
「うん、知っててくれて嬉しいよ。それで...どうかな?もちろん、本当の名前じゃなくてもいいんだ!いつまでも『キミ』って呼ぶのは、ちょっと寂しいなって思ってるだけだから」
『.....................
「...うん!よろしくね、シキ!」
長い逡巡の末、ようやく彼女の名前を知ることが出来た。
...心做しか
こうして相手の一つ一つを知る度に本気で喜べる素養もまた、彼が『先生』に選ばれた理由の一つであることを、当の本人が知ることはないだろう。
「...対話の掴みは大丈夫みたいね、先生?」
「うん。ありがとね、ヒナ」
先生の言葉に頷いて、再び前に踏み出したヒナが彼女____シキに対して問い掛ける。
「なるべく事を荒立てたくないから、正直に答えて頂戴...どうして、指名手配犯である彼女達と1人で戦ったの?貴女の目的は何?」
『.........』
「っ.........先生...?」
「ヒナ、落ち着こうヒナ...!ちょっと1回深呼吸しよう、ねっ?」
仄かに怒気が漏れ出したヒナを宥めながら、先生は慌ててシキに声をかける。
「シキ...っ!無理にとは言わないけど、ヒナの質問にも答えてあげてほしいなっ。最近特に忙しいらしくて、ほんのちょっとだけ気持ちに余裕が無いみたいなんだ...!」
『......
「「「「......へぇ」」」」
...シキの放った一言で、少女達が揃って低い声を漏らす。
先生を慕う生徒の1人として、各々が本能的に察知したのだ。
この少女は、多分
『...ここへ来たのは、試してみたかったから』
「...試す?」
『(コクリ)...噂の『カイテンジャー』さん達の実力が、どれくらいのモノなのか』
「...自分の強さがどの程度か、試してみたかったってこと?」
『......それもあるけど、本命はそうじゃない』
シキは静かに首を横に振り...右腕で
____
「......厄、災...?」
先生の呟きに対し、シキはコクリと首肯する。
『この都市の内側か、外側からか...そう遠くない未来に引き起こされる、同時多発的な未曾有の大災害......始まったら最後、
「............それは......ッ!?」
突然襲ってきた激しい頭痛に、先生は途中で言葉を切ってしまう。
...それは、ズキズキとしながらも酷く粘ついた不快な感覚だった。
あまりにも荒唐無稽な話なのに...
「____笑わせないで頂戴」
...呆れてものも言えない状態だと判断されたのだろうか。
神妙な顔で額に手を当てている先生に代わり、ヒナがそう一蹴して銃を構え直す。
「そんな作り込みの甘い妄想を聞いてあげられるほど、こちらも暇ではないの...その手の話が好きな子を取り調べ担当にしてあげるから、武器を捨てて大人しくシャーレまで付いてきて」
『......始めから、信じてもらおうだなんて思ってない』
一歩、一歩と。合体ロボの頭部から足を放し、残骸の山を下りてくるガスマスクの少女。
『他の誰もが信じなくても、
ザリッ...と。
彼女の右足が、大地を踏みしめる音が聞こえた...その直後。
「.........は......?」
空崎ヒナの口から、
...文字通りの、刹那であった。
無意識的に行う瞬きの隙間を縫うように、少女の身体が
...そして、額に突きつけられる指鉄砲。
キヴォトス最強の一角であるヒナの背後をとるより難易度の高い芸当を、シキという少女は呆気ない様子で実践してみせたのだ。
『...全ては、
「「「「____っ!!!?」」」」
瞬間____ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾッッッッッッ!!!!と。
...それはまるで、置き去りにしてきたかのように。
発せられた光に遅れて、音がこちらへ到達する花火のように。
最初とは比べ物にならないレベルの『恐怖』が、ヒナ達4人に降り掛かったのだ。
「.........ぁ...っ」
...3人が腰を抜かしたようにへたり込む中、ヒナだけは膝を折ることを許されない。
ヒナの腰に腕を回し、依然額に指鉄砲を突きつけたままの少女は...耳元に顔を寄せ、初めて感情の色を乗せた声で呟いた。
『____貴女が『妄想』と揶揄する存在を殺し尽くすために...私は、
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「シュン!セリカ!シグレ!...みんな!まずはゆっくり息を整えてっ!」
件の少女____シキがこの場を立ち去ってから数十秒。
視界が明滅する程の頭痛が和らいできた先生は、慌てて部員達のケアにあたっていた。
「さあ、ヒナもっ!私に合わせて息を吸って...!」
「.........せん、せい」
...微かに脚を震わせながらも。
抱き寄せていたシキがその場を離れてなお、最後まで膝を折らなかった最強の少女は、浅い呼吸を繰り返しながら先生を見やる。
「...彼女は、想定よりも遥かに危険よ」
「...それは、今決められるようなことじゃないよ。とにかくまずは呼吸を「聞いて、先生...!」...!?」
先生の両腕を痛いくらいに掴んで。
泣きつくように身を寄せてきた小柄な少女は、それでも真っ直ぐ先生の目を見て訴えかける。
「____あんな重くてドス黒い
「......ヒナ...」
...彼女たち生徒が感じている恐怖がどれ程のものかを、先生は推し量ることしか出来ない。
シキの言うことがどこまで本当なのか、今は判断する材料があまりにも少な過ぎる。
「...それでも今は、みんなのことが優先だよ」
ヒナの頭を優しく撫でながら、先生は待機指示を出していたノドカ達やヴァルキューレに連絡をとる。
熟考すべき事案であるとしても、今やるべきことを蔑ろにしていい理由には決してならない。
「(......シキ...)」
だから今は動きながら、今日の一件を脳と心に刻みこむのだ。
再び彼女と出会えた時、もっとその心に寄り添える存在になるために。
色彩ちゃん「...やっべ、盛り上がって最後のヤツ出力上げすぎちゃったかも」
厄災絡みの発言が特大ブーメランですわ~!